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【S4】不遇の勇者の誕生祭④


「……それで、私に何の用があったんですか?」


時たま、ちらちらと後ろを盗み見ながら歩いていると、ユキミヤさんが切り出してきた。


ちなみに僕は、こんな姿の彼女を行き交う人々に見せるわけにも行かないので。

防具屋で買った大きめのマントで、彼女を庇うようにしながら歩いていた。


「ああ、あれ? あれはねえ……ごめん。その場しのぎの嘘なんだ」

「へえ、そうだったんですか」

「でも、君の学校の中に、用があって探している人がいるのは本当なんだ」

「なんて名前の人ですか?」

「名前? 名前……あ……」


――なんて事だ、人を探すのに名前を聴くのを忘れるなんて。


バカか僕は、いやバカだ僕は。

ついでに、お爺さんもバカだ。地図だけ渡してどうすんねんアホ。


「……分かんない」

「……あなた、さっきといい、意外と抜けてるんですね」


反論の仕様もございません(泣)。でも、抜けてる部分で言ったなら。


「あのお爺さんも大概だと思うんだけどなあ……」


恨めしげに呟くと、なぜかユキミヤさんの耳がピクリと反応した。


「もしかしてそのお爺さんって、顎が長くて白い髭が特徴的でやけに世話焼きだったりします?」

「そうそう、それでいて人探しさせるのに名前を教えないおっちょこちょい……って、え?」


何で知ってるのと問いただす前に、ユキミヤさんは深いため息をついた。


「ならその探し人は、きっと私ですね。伯父が、迷惑をおかけいたしました」


……君かあ。




「おお愛しの孫よ! よくぞ帰った!」


しかもこのお爺さん、随分と孫を溺愛しているようである。

僕一人の時とテンションがえらい違いだ。


「ただいま」

「どっ、どうしたんじゃその服装は! 男の目の前ではしたない!」

「……自分から濡れに行ったんじゃないもん」


そこで僕は、僕が見た限りの一部始終を、お爺さんに話した。

語り終えると、僕は日本でもされたことがないほど、頭を下げて感謝された。


「あ、頭を上げてくださいお爺さん。僕だって拾ってくれた恩義があるんですから」

「それとは関係なく、本当に感謝しているんじゃ。孫を庇ってくれて、ありがとう」


感謝されて嫌になる人間はいない。

素直に嬉しかった僕は、少しだけ不用心になっていたのかもしれない。


「……どうしてユキミヤさんは、そんな仕打ちを?」


人の核心に踏み込むのは得意じゃないが、気にならなわけがない。


ユキミヤさんはクライスくんから『術士としては低級』と言われていた。

それは果たして成績的な問題なのか、或るいは……。


あと、彼女の名前。


ユキミヤ――雪宮は、日本人の名前だ。


「――あなたみたいな人に助けられたのは、これで二度目……」


わずかな沈黙の後、彼女はそれに答えてくれた。


「……かもしれない」


……なぜ自分で言いかけて不完全なんだ。


「記憶が曖昧なの。私には、四歳から下の記憶がない」


そう言って、彼女は髪をかき分けた。

そこには菊一文字に刻まれた、紫色の傷の痕が。


「儂は純血のエルフだが、この子は違う。

ハーフエルフじゃ。エルフは本来、高い知識と魔術回廊を身に着けている。

ユキミヤ程の歳の妖精種にとって、幼少の記憶はまだ目に新しいと言える」


「でも幼少の頃の私は、とある事故にあった……らしいの。そこで記憶が飛んでしまった」


ユキミヤさんはそっと目を伏せて、小さく呟いた。


「……変な名前をした、貴族の男性」


その続きを、お爺さんが引き継ぐ。


「ユキミヤ・リョウヘイ――事故から孫を守り、

一度名を失った孫の名付け親、その男の名じゃ」



男の子を語り部にすると理屈っぽくなるから苦手です……(^_^;)


総合PVが1000を超えました。ありがとうございますm(_ _)m

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