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【16】契約は果たしたよ


「――グルゥオアア嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!」


「怯むな! これ以上、人間でもねえ奴らにでかい顔させるんじゃねえ!」

「俺たちの村は、俺らが守るんだ!」


起き上がった恐竜の魔獣に、村人たちが束になって襲いかかる。

図体が大きいので、その刃は足元までしか届かない。


でも、村人たちが戦力に加わったのは。

ゴブリン達にとっても力強い増援だった。


「……よしッ、体制が崩れたぞ!」


それに、肝心の頭部は――


「お主らぁ! 我を差し置いて、何を面白そうなことをやっている!

わぁれも混ぜろよぉぉおおお!」


ジヲォンがなんとかしてくれるから。


「ギィアアアア嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼!」


彼は並列する複数の目玉を、ただの一閃で何個も切り裂いた。

血飛沫を浴びながらも物怖じしないその表情は、まさしく鬼神。

剣豪将軍の姿だった。


「加勢するぞ、ジヲォン殿!」


すかさず、ゴブリン陣営から黒い影が飛び出す。

騎士の格好に身を包んだ黒衣の剣士――ブラッドフォードだ。


ほとんど同じ剣閃で、残りの目玉を駆逐していく。

嬌声をあげながら再び昏倒する魔獣を前に、武人の二人は剣先を合わせた。


「ブラッドフォードか! 心強い、どうだろう、共闘してはくれぬか!」

「かのジヲォン殿が、このオレに背中をお預けになられると仰せか!

喜んで承ろう! よもや、人間のオレに遅れを取るなどはしまい?」


「無論!」


そんな彼らを筆頭に、村人とゴブリンの混同部隊は魔獣との奮闘を極めつつあった。


え、私は戦闘に参加しないのかって?


することがあるんだよ。

私が片付けなくちゃいけない、因縁の相手が。



「――なんだ、ありゃあ……?」


ブラッドの兄は、外に出るなり俄然に飛び込んだ魔獣の姿に腰を抜かしていた。

これでも冒険者なのだと意気込んでいた割に、なんとも情けない。

あろうことか、尻尾を巻いて逃げ出す気である。

でも――


「逃がさないよ」


私が彼の目の前に滑り込んで、行く手を阻む。

すると男は、露骨に驚いた表情を見せた。


「レベル……カンストだと!?」

「そうだよ。私は世界で唯一のLevelカンストゴブリン――名をイズミ」


おもむろにこん棒を突き立てると、男の喉仏が大きく動いた。


「あなたも、ちゃんと戦いなさいよ。村の皆が、自分たちの負債を打倒しようと剣を握って槍を振るっているのに、あなたはただ逃げてるだけじゃない。あなたもあの魔獣を作り出した原因の一つなんだから……いや、あなたなんかその最たるものでしょう。ブラッドが抱えていた、『負の本流』。どれだけ大きいものだったか、貴方に想像がつくの?」


「……何を言ってるかよく分かんねえが、指示には従うぜ?

これでも命が惜しいんだ。少しでも助かる方向を選ぶから、殺さないでくれるか?」


「分かった。早く行きなさい」


私はこん棒を下ろして、男の背中を押す。

すると。


「はっ、バカが! 狩られるのはテメエだぜ色物が!」


さっと振り向きざま、どこから出したか弓を引き絞っていた。

でも私は、既にそこにはいない。


「――は?」


男が状況を理解する頃には、もう私は男の後ろを取っていた。

すぐに手足を拘束し、その腐った瞳を覗き込む。


「――あなた、さっきも私の部下に不意打ちしようとしてたよね?

あれ、私メチャクチャ怒ってるからね? 激おこプンプン丸だから。

いやマジで。それに――今日からここは、私が統治するの。

私の王国にあなたは必要ない。出て行ってください」


――そして失禁までした男は、手首を縛られながらも敗走していった。


「……まあ、こんなもんか」


契約は果たしたよ、ブラッド。


後はその辺の魔獣たちが、勝手にあの男を食い散らかしてくれるでしょう。


――ズゥン。


間際、ひときわ大きな地響きが鳴る。

恐竜の体躯をした獰猛な魔獣が、今度こそ完全に倒れていた。



「「「……おおおお!」」」


魔獣が倒れていたそこには、数え切れないほどの宝石と大金がドロップしていた。

生臭い死骸は消えて、ドロップアイテムに変わる。

んん、なんとも異世界らしい仕様である。


「村人の皆さんに対する、当然の報酬です。

ボスモンスターを倒したのなら、それだけの報酬は貰えて然るべきだと私は思います」


「……まさかアンタ。

このドロップアイテムを俺らに施すために、あんな魔獣を召喚したのか?」


全貌の眼差しを向けられた私は、薄く微笑み返す。


「安心してください。この利益は、全てキズル村に収めます。私達ゴブリンは貴方たち人間の資源を取りすぎてしまったし、これでお互い様って事に、させてくれませんかねえ……」


さすがに腹の虫が良かったかな……なんて、思っていたのだが。

村人たちは男女問わず、ブラッドまでもが膝を付き、私を仰いだ。


「―――」


これでまた明日を乗り越えられる、祖父母に治療を受けさせられる、夢の企業ができる。


それぞれがぞれぞれの喜びの笑顔を咲き誇らせる中で、ブラッドが言った。



「――貴殿こそ、オレたちの王だイズミ殿。我らキズル村一同、あなたに忠誠を誓います」



「――ッ…………うん。ありがとう、皆!」



これで、名実ともにこの領地は私の支配下になったわけだ。



「やりましたね、皇女殿下」と微笑んだイルガス。

「見事なお手際でした」と深々と頭を下げてレイ。

「いやあ、久々に血が騒ぎましたなあ!」と興奮冷めやらぬと言った感じでジヲォン。


ゴブリンからも、人からも期待の視線を浴びるなか、私は口を開いた。


「とりあえず、今日からゴブリンと人は共存関係になってもらいます。そうした方が、資源的な問題も武力的問題も、きっと解決されるからです。……さて。資源分配などの制度は後々決めるとして、私が統治するからには、絶対に守って欲しい決まりごとがあります」


緊張を紛らわせるために息を吸って、皆の目を見ながら宣言した。


「――必ず、安息日を設けてもらうこと」




長くなりそうなんで、ここで切りますねw

……本当は今日で一章終わらせるつもりだったんだけどなー……(^_^;)


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