【101】終わりの鐘の音
某歌い手の缶バッチ、5件のファミマを巡るも惨敗。
さすがです。
「「「うおおおおおおおおおォッ!」」」
――うっひゃあ……!
進軍する部隊から轟く兵士たちの怒号、
地面を踏みつける蹄の豪雨、馬の嘶き、
巻き起こる砂塵のような土埃。
それは時代劇や、歴戦アニメでしか見たことがない
圧倒的な迫力感だった。3D映画? なにそれ、
おいしいんですかぁ(煽り)?
やばい、これは興奮する……!
「イズミ殿下! 街が見えます」
偵察班長のイルガスがの声が、
レイの権能声帯を通して私の耳に届く。
遥か前方には、朝焼けにかすみがかった白の城壁と、
上空まで天高く伸び――そびえる大きな塔があった。
私をそれを横のショウコさんに伝達。彼女が頷いて、
当初の作戦通り『東の城塞』への突貫を開始した。
しかし……。
「……待て! 全隊とまれッ」
鬼気迫ったゲイブの声が響く。
「ゲイブさん、状況の報告を」
ショウコさんが言う。
レイの権能声帯は万能だ。マナの周波数を整えれば、
他者に『時空のマリアコール』の権能を付与することが
可能だ。さすが、うちの参謀その2である。
ゲイブは、いつもと違って慎重な声音で言う。
「――東のクニから逃亡して来たと名乗る
冒険者を保護した。イズミ姉貴、来てくれ」
☆
ゲイブの報告どおり――最前列にはイルガスとゲイブ、
そして、肩を子羊のように震わせる冒険者と思われる
男がふたり。
「あ、あんたら……。まさか、『北の魔王』の軍か?」
「いかにも。私は北の魔王――タドコロ・イズミ」
この肩書を名乗るにも慣れてきて、
ずいぶんと様になってきました。
イルガスが親指を立てていて草。
「た、頼む! 俺たちを助けてくれ!」
かわいそうなほど震えている冒険者たち。
まるで私が転生初日に遭遇したザコLevel
冒険者たちみたいな風貌である。
「ごめんね、今の私たちすんごい忙しいんだけど」
「ただとは言わねえ、情報を渡す!」
「情報?」なんのことでっしゃろか。
「さっき――ハーフゴブリンを名乗る
ゴブリンと冒険者数名が、東の城塞へ
向かって行ったんだ」
「――ハーフゴブリンだと?」
いちばんの反応を見せたのは、ゲイブだった。
「マッティア……? どうしてこんな戦地に」
イルガスが口元を覆ってすぐに思案し始めるが、
情報があまりも少なすぎて思考するに値しない。
「あの野郎死にてェのか……!」とうめくゲイブ。
私は、いたって冷静に口を開く。
「同胞たちの情報、感謝します」
そしてすかさず、Levelカンストの権能を起動。
「――それで、あなたたちの願いはなに?」
もしハメようとしているなら、一瞬で潰す。
そんな気配を滲み出させる。
今の私には、簡単な芸当だ。
「この気配……やはり北の魔王だ!」
「心強いぞ……! これなら本当に、東の魔女を!」
「……あれぇ? うん、ちょっとまって? いま、
あなた達を脅してるつもりなんだけどなあ? 私」
まったく動じてくれない。どころか、
彼らの表情に希望が満ちている。
あのー! 私魔王なんだけど!
「魔王殿! どうか、東の魔女を打倒してくれ!
あの方は、俺たち国民を『人形』に変えて――」
ゴ―――ン。ゴ―――ン
冒険者が言い終わる前に、
前方から鐘の音が響いた。
淡い山脈の光につつまれている塔から、
不気味なほどにきれいな鐘の音が、
響く、轟く、ささやくように鳴る。
「終焉の鐘の音……」
冒険者がつぶやく。それと同時に、
彼らは走り出した。見えない敵から
全力で逃げるように。
『さぁ、遊びましょう?』
鐘の音が、とたんに人の声帯がこもった『声』に変わる。
次の瞬間、私たちは東の城塞――その大広間と
思われる空間に、強制転移させられていたのだ。
来週の火曜日は近所のファミマに早朝7時から待機します……(きっつい)。




