【99】ガッタイ技!
今回のおしながき(?)
①割と長いです
②最初のところはおさらいです
③ずっとこんなシーン書きたかった
……その後も、『東の魔女』の嫌がらせみたいな
トラップは続いた。魔女を知るショウコさん曰く、
それが彼女の趣味らしい。
「……まったく、悪趣味な方なんですよ」とのこと。
そんな雑談もほどほどに、私たち――南北連合軍は
次々と魔法陣のトラップを踏破し、東の城塞への
道を辿っていた。
そして、遠征三日目のよる。
目的地である東の城塞まで、
残り一晩で到着する頃合い。
私は、幹部たちに招集をかけた。
◇
「はいっ、じゃあまず。ここまでお疲れさまでした!」
「「「乾杯!」」」
みんなで盃を持ち合ってカチンと鳴らす。
もちろん私は麦ジュースでありますよ。
いやあ、ね? さすがに魔性の王とは言うけどね、
日本に住んでいた頃の良心の呵責と申しますか……。
「いやあ、魔女の悪戯はなかなか骨が折れますな」
「ハハッ! ジヲォン爺さんが言うとシャレになんねえ」
「こらゲイブ。またジヲォン殿に失礼なことを……!」
「いいのですよブラッド。ジヲォン殿は自分いじりを
楽しんでいる節がありますから」
「そうなのですか? レイ殿?」
「ええそうですね。ですがその辺は、弟子である
彼が一番くわしいでしょう。ねえ? イルガス」
「ぶっ……! きゅ、急に話を振るな! こっちは
なれない酒を無理して飲んでいるんだ」
みんな思い思いに過ごしているなあ、うん。
……でもなんでイルガスは無理して飲んでいるんだろうか。
もっと素直になればいいのになあ、色々と。
っていうか、ジヲォンの弟子だったんだね。
知らんかった。私の権力をフル活用して、
その旨を聞き出してみると。
「……鬼神の弟子が、酒も飲めないでは話にならないですから」
とのことだった。
なんかかわいい。
「ええい、やめろイルガス。若いのに
無理して飲む必要はないぞ」
するとジヲォンが頬を赤く染めながら、
酒の匂いがする口を大きく開けて笑った。
「殿下、こやつは昔っから律儀でしてなあ。
――剣を教えていたころから、ずっとです」
感慨深くつぶやきながら、
鬼神はまた酒を煽った。
「……さて、場も暖まってきたところで」
ショウコさんが音頭をとり、
場の全員が彼女にふりかえった。
「明日の作戦の確認をいたしましょうか」
空気がいっきに引き締められる感覚がする。
その空気に満足してか、ショウコさんは
その頬に微笑を浮かべながら。
「明日、ついに我々は『西の勇者』が駐屯していると
思われる東の城塞へと踏みこみ、『紫の傷跡』を持つ
少女を奪還します。その目的は―……」
「安易に異世界への扉を開かないため―……ですね」
私が相づち代わりに返事をすると、
ショウコさんもうなずいて。
「ええ。前『西の勇者』ユキミヤ・リョウヘイはその
力を悪用して、『紫の傷跡』を持つ少女の人命と
引き換えに、日本とのトビラを開こうとしました」
みんなが、その悪行めいた行いに顔をしかめる。
「現『西の勇者』ホカリ・セイタも、いつ邪な
心を抱くかわかりません。ですので『紫の傷跡』の
所有者であるユキミヤ・エマは、我々が保護します」
「……どっちがワルモノなんだか」
ぽつりと、つぶやいたのはゴーディだった。
いたのか『不快』の王子よ! 忘れてたわ。
「なにか異見が? ゴーディ」
「滅相もない、賢者サマ。ただ、どっちが勇者で
どっちが魔王なんだか、分からないって話ですヨ」
それだけですと皮肉を切って、
彼は場から離れていった。
相変わらずよくわからない人だなあ……。
彼の権能である『不快』は恐るべき力だ。
周りの木々や建物を強制的に腐敗させて、それを
すべて己の意のままに操る。即ち『不快』の権化。
彼らが作ったという泥人形が主である
ショウコさんに一掃されて以来、
鳴りを潜めてはいるけれど……。
何かしでかしてくれそうで、やっぱり不安は拭いきれない。
「……うちの陣営のものが、失礼を致しました。
では、明日の作戦をおおまかに説明いたします。
明日、東の城塞への突撃時間は―……」
その後も作戦会議は夜を徹して続き、
そして翌日の朝――。長きにわたる
今回の遠征、その最終プログラムが
発動しようとしていた。
さあ、戦うぞ。
私に集う、最強で最高の家臣たちとともに!
◇
「うおッしゃあああああああい!」
人間とゴブリンをあわせた、総勢5千の大軍。
その陣頭指揮を任されたのは、
我らが特攻隊長ゲイブだった。
草原に並み居る魔獣たちを、
軒並みになぎ倒していく。
「そこをどけ、ザコどもがああああァ!」
圧倒的な戦闘が、
その牙と腕力によって奏でられていく。
突進をしかけるイノシシの魔獣、
角をつかんで、折りながら投擲。
あまりの豪速に身が爆ぜる。
それによってあぶり出された狼の魔獣、
突き立てられた牙を顎ごと塞ぎながら
頚椎をつかみ、そのまま握り潰す。
それを、また投げる。
魔獣の死体の山が、
見るみるうちに建築されていく。
「イクぜ決め台詞! ――うなれ筋肉! 聴けよ世界!
俺こそは天下の『北の魔王』タドコロ・イズミに仕えし
最強の牙! 名はゲイブ・ザッハーク! 先代王の血を
引きし、ゴブリン村をまとめる長なり!」
楽しそうな哄笑を巻き上げながら、
死体の山は面白いように積み上がっていく。
血の濁流が、臓腑の谷が、増築されていく。
「――オイ、ブラッド! あっちから大物がくるぞ」
ゲイブが視線を向けた先には、なんじゃありゃ。
巨大なゴーレムのような物体が蠢いているではないか。
あれではまるで城壁だ。からみあった蔦がその強固さを
誇張するように伸び、偽装したその体躯はあまりに絶壁。
うん、もうなんとなくわかる。
あれも『東の魔女』が作ったものでしょ、
どう考えても。いやほんと悪趣味だな〜。
そんな圧倒的な「壁の大軍」を前に、
特攻隊長ゲイブが取った行動は。
「『アレ』をやる時が来たなァ! なあブラッド!」
「ふっ、バカがはしゃぐな。子どもか」
「ガキで結構ォ! ――ガッタイ技ってのは、
いつの時代もどの種族でも男のロマンスだぜ」
ニヤリと頬をゆがめる、ふたりの男たち。
次の瞬間、ゲイブの体が淡い光に包まれていく。
その周囲には、残光のようなオーブが彼を囲い、
加護を与えるようにゲイブの体にとぐろを巻く。
「喰らいやがれ。ドラゴンゾンビ戦で編み出した、
オレたちふたりのガッタイ技!」
ブラッドフォード――権能――『反発異粒子』+(プラス)
ゲイブ・ザッハーク――権能――『絶対意思』=
『絶対無重圧』
「ッはあああああああああああァ!」
光の鱗片をまとったゲイブは、そのまま
蔦の城壁たちを刺突で破砕! に、留まらず。
「まだだああああああああああァ!」
閃光のように縦横無尽に飛び回り、
砕け散ったゴーレムたちの体躯を
これでもかと蹂躙していく。
やがてその欠片が石ころサイズになる頃には、
あたりの草原が――風圧で平原になっていた。
ゲイブは満足そうに鼻をすすって、言った。
「何人たりとも、オレたちの歩みは止められねえ。
勇者だろうがなんだろうがなァ、イズミと愉快な
仲間たちの前では無力ってこと、刻みやがれ!!」
獣の頂点――ゴブリン猊下の正当な王子サマは、
東での決戦を前に――最強の勝どきを上げた。
歯がいてぇ




