【98】オモチャノクニ
せっかくのハロウィンなんでホラー風にしてみました。
少しでもゾクリとしていただけたら幸いですm(_ _)m
今回は①『南の賢者』ことショウコさんの回想
②第三者視点での現状
③東の国の雰囲気
みたいな文章の構成になっています
◇
転生したとき、私は『お人形』になっていた。
手足の動かし方もわからずに、ただただ己が
どこにいるのか、己が何物であるのかを探し、
求めて――この『力』を手に入れた。
祖国を離れ、恋人と離れ離れになり、
辛いことも苦しいこともあったけれど、
一番つらかったのは、いっとき東の国に監禁されていたこと。
道端に落ちて雨に濡れて、ぼろぼろになった人形の私を、
拾った女の子がいたのだ。
その女の子は自らを、『東の魔女』と称した。
彼女は私を人間のすがたに変え、私に自由を与えた。
そして転生チート能力に目覚めた私は知恵を集め、
書庫を作り、精霊を使役し、いつしか『南の賢者』と
呼ばれるようにまでなっていた。
与えられたその自由が、仮初の自由だと気づかずに……。
◇
「魔女のいたずらごときに、屈する賢者ではありません」
賢者さんは紫色の光を周囲に展開し、
例の『オノマトペ』をささやく。
「ぱら、ぱら」
すると、彼女の展開した魔法陣がガラスのように砕け散る。
散った破片が宙にとどまり、それが一段と強い光を発する。
「さあ、破ってください。魔女の結界を!」
以前、ゴーディの泥人形を葬った殺戮のオノマトペ。
今度はそれを、結界を破るのに使用するというのか。
イズミが感嘆すると同時に――ピカッと鋭い光が
辺りを包み込む。地上から見たら、きっと大きな
線香花火が発射されたのだと幻視するだろう。
事実、それほどまでに。
賢者が放った紫色の閃光は、
芸術品のようにきらびやかだった。
その次の瞬間。
「……戻った」
イズミはぱちくりと瞬きをする。
そこには地上が、硬そうで鋭い岩肌の
洞窟が、目の前に広がっていた。
「……はあ、はあ……。さすが神崎さん、
なかなか高度な術式でしたよ」
賢者は、珍しく息を切らしながらその仕事ぶりを賞賛した。
神崎。
それが、このイタズラの術式を貼った
犯人の――『東の魔女』の名前である。
四方偉人最後の一人にして、イズミやショウコと同じ異世界人。もと、日本人である。
果たしてその者は、敵か、味方か。
『紫の傷跡』を奪還する上での鍵となるのか、はたまた、
『西の勇者』ホカリ・セイタの打開につながるかどうか。
すべては魔性の女の名を冠する、その女に託された。
「魔王よ、進みましょう。東の城塞は、すぐそこです」
◇
そこは、おそらく『簡素』という言葉から最もかけ離れたクニだった。
パーパラリラー……パーパパーリラリラ……と、
年中休む間もなくクニに流れ続ける陽気な音楽。
その発信源は、そこかしこに建てられている
大きな時計塔。
円盤の奥に蠢いているのは、どこか無機質な
微笑みを浮かべる無数の人形たちだ。
ある人形は手元にタンバリンを持ち、
またある人形は笛を構えていた。
そのすべての人形の目は、
死んでいる。
されど、回り続ける。
時計の秒針が動く毎秒、
それらは楽器を鳴らしながら回り続ける。
シャンシャンと、パーパララ〜……と。
その中の一体。
女の子のお人形だろうか。
腕に文字のタトゥーが刻まれている。
ローマ字で、キサラギショウコ、と。
――ギョロリ。
『ショウコ』の目玉が、動いた。
そして、喋る。
「ああ、愛しの愛しのキサラギちゃん……。
早く戻っていらっしゃいなあ♫。また私が、
私だけの『お人形』に変えてあげるるるるるるるr」
カチリ。
また秒針が動く。
無数の人形たちの命を、
削っていくように。
ぜってぇ敵だろこんなやつ……。
さて、やっと『東の魔女』が出てきましたね。
これでようやく終章付近……。とはいいつつ、
本当に年内に終わるでしょうか。終わらんな、
きっと^^;




