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【78】人ならざる者の夢

……今回、過去最高に長いかもしれないです。

マッティアくんの話は疲れちゃったので

書けません☆


「ねえイズミさん。あなた――彼氏は

いたことある? 処女、で合ってる?」


「……は、はい?」


あまりにも爽やかな笑顔で言うので、

一瞬ナニを言われているのか

頭が追いつかず、無理解が

冷や汗として体外に出た。


あっはっはっ。

急にナニをおっしゃいますやら!

や〜ね〜奥さん、こんな田舎女が

エッチなんてーしたことあるわけ

ないでしょ〜? や〜ね〜奥さん

ヤダわーも〜! もうっ。スミに

おけないんだからんっ!



……なーんて言える雰囲気じゃないし、

テンションでもないんだけどな、私。


――え? 本気でそれ訊いてる?


毎晩ベッドの中でしていることと

言ったら、ゲーム内のアーミーがヘッド

ショットされているところを見て

ニヤニヤすることぐらいしか

脳のないThe陰キャな私が、

夜な夜なギッタンバッタン

ギッタンバッタンどこぞの

格ゲーとは名ばかりのエロゲー

みたいにくんずほぐれつな

肉弾戦を繰り広げていると、

本気で思って訊いてるの?


「いや、んな訳ないでしょ!?」


つい本音のツッコミが出てしまった。

「ふふっ。そうよね、イズミさんうぶそうだもの」


「う……。なんか釈然としない」


これしきで赤らむ私のほうが、

おかしいのだろうか。

なんかバカにされた

ようでスッキリしない。


「……で、それがどんな重要な話になるの? ショウコさん」


彼女の夜の武勇伝を聞かされたって嬉しくないんだけど……。


「ああ、ごめんなさいね。話がズレていたわね。

なにが訊きたかったのかって言うと、あなたに

『人間だったころの記憶』はある? ってこと

なのだけれど……」


「……――え?」


なに、その。


「日本にいた頃の記憶がないみたいな言い方……」


それはありえない。サラッと言われたけど、

さっきまでショウコさんが匂わせていた

話は、確実に日本での出来事を語ろうと

している内容だった。それに、お名前。

彼女のキサラギ・ショウコという名前が

何よりを物語っているじゃないか。


彼女は、日本人で、その記憶がなくてはおかしいのだ。


「私はね、転生したときに一度、記憶をなくしているの」


淡々とした微笑をくずさないまま、彼女は続ける。


「イズミさん。あなた、転生したときにどんな

ボーナスをもらった?」


「……LEVELカンストの、能力だけど」


「……なるほどね。それで、転生した

時の体型と種族が、ゴブリンだったと」


口元に指を添えたのを合図に、少しだ

ショウコさんの言葉が止まった。


彼女は『人間化』の薬を知っている。

私が今、人の形を保っているのが

薬のおかげであるということ。


転生した直後は、完璧な

ゴブリンであったと

言うこと。


「……転生したときは、

どういう状況だった?」


「冒険者が近くにいた」


「襲われたの?」


「いや、私を怖がって逃げてった」


あの時はまだ何が起こってるのか

よく分かってなかったんだよな。

しょうがないよね、転生した

ばっかりの時だし。


「……なるほど」


「……ショウコさん、結局なにが言いたいの?」


「あのね、イズミさん」


ショウコさんは微笑に少しだけ

苦しみを滲ませて、言った。


「既知のこととは思うけど、転生した時点で私たちは

人間じゃなくなってる。あなたはゴブリン――私は、

人形に変わった。本来なら、人間だったときの体が

拒絶反応を起こして、痛みで自我を保てないはず」


――私がさっき握手をしたときに義手だと

思った彼女の右手は、『人間化』の薬に

頼らない彼女本来の姿の鱗片だと言う。

本当の右手は、転生したときに

失くなってしまったのだそうだ。


「私は『人間化の薬』を飲まないと、

人形になってしまうの。今月はまだ

飲んでないから、この右手はその

代償、と言ったところね」


私も、『薬』を飲まないと

ガビガビで緑色の肌になってしまう。


そうだ。それはもう、人間ではない。


分かってはいたけど、いざ自覚すると

自分の人間性との乖離に怖くなる。

緑色の肌の人間なんて、いないの

だから――私も割り切らなければ。


「自分が『人形』になったとき、

私は自分自身が分からなかった。

もちろん、権能のこともね」

キサラギ・ショウコの権能スキル――殺戮のオノマトペ。


その正体も理屈も分からないが、

私のLEVELカンストにも勝る

無敵の異能力だ。一体誰が、

彼女にそんな能力を――私に、

そんな能力を与えたのだろうか。


――彼女が口を開かなくても、

自然と疑問符が浮かび上がって、

それをショウコさんに求めようとしている私がいて。

彼女が言いたい真実は――すぐそこにある気がした。


「私に自分の出自、権能を教えてくれた人の

名前は――ロウム・クロノウェル」


聞き覚えがありまくる名前だった。

それは、禁書庫の管理人の

少女のお名前である。


「イズミさん、『北の魔王』を継承する際に、

あの少女のもとを訪れたことがあるわね?」


「うん。それで正式的に二代目ロードの座を

引き継いだの。嬉しかったなあ……」



あの日。



――これからあなたは、人々から恐怖され、

萎縮され、魔の者から敬われる存在になる。


『――私はみんなの王になる。それはもう、

決まっていることだから――』



あの啖呵を切ったあの日、

私の運命は決まっていたのかもしれない。


しかし――かの『南の賢者』は、

そんな感慨に浸るスキを与えなかった。


「継承のときに変な夢を見なかった?」


「継承のとき……? ――うッ」


頭痛がした。

それは、思い出したくない

類の夢だった。


――辺り一面の焼け野原、

黒い消炎が死臭をかき消し、

死臭が黒を帯びる死の世界。

ゴブリンの死体が、無残に、

無慈悲に転がる死の世界。


その中には、私の家臣たちの姿もあって――。


やがて血が滴る剣を持った男が

私をも切り捨てる。そんな悪夢。


『君がこの道を選んだ。だから彼らは死んだ』


夢のなかに居た男が、私に話しかけてくる。


『そうだよ、イズミ。君があの時、ロードとなっていなければ……。

北の魔王になっていなければ、こんな地獄は起きなかったんだ……』


彼は、震える声で、泣きそうな声音で。


崩れ落ちてしまいそうな悲しみや恐怖を、

そこに立つためだけの原動力に変えて。

そんな『憤怒』に突き動かされた男が、

私を見て、言う。


『だから、君も死ね。贖罪の大火を、その身を持って味わうがいい。

僕の名前はホカリ・セイタ。北の魔王を殺した、西の勇者だ――!」





「――ホカリ・セイタ?」





「思い出したようね。あなたと

ともに転生された、男の名を。

私の彼氏の真名を」




所々の脈絡が分からない方は、

お手数ですが【21】をご覧

くださいm(_ _)m

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