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カミがセカイをコワスまで  作者: 彩羽燐
第一章 「Restart to World」
5/8

第四話 「知られたくない名前」

2038年6月20日 13時12分


 前回のあらすじ!少女を助けた後、お礼がしたいと言われ遠慮したのだが少女の気迫に根負けし、しょうがなく近くのファミレスに連れて行かれた。あらすじ終わりッ!



「うっぷ・・・ちょ、ちょっとまって。いっぱい頼むのはいいんだけど、そこまで食えないから・・・お礼受ける側にもなって・・・」


「あんだけいっぱい動いていたんです!こんなんじゃエネルギー回復できないですよ!ささ、いっぱい食べてください!」


「いや、もう、げん・・・かい・・・」


「そうですか・・・嬉しくて、ついやりすぎちゃいました。ごめんなさい」


 ま、さか飯で殺そうとしてくる奴がいるなんて・・・もう、ゴールしていいよね?


 ――――10分後


「やっと腹が落ち着いた気がする・・・さて、まず君の名前は?あ、ワルアクのプレイヤーネームでね。」


「えっと・・・はい!私の名前は"ミヤ"と言います!」


 にっこりスマイルをしながら、元気よくミヤと名乗った少女は、身長が少し低め、小顔でショートヘアー、胸もそこそこあるようで、結構可愛い容姿をしていた。

 うん、可愛い。アイドルか何かかな?

 見た目からして年齢は16歳だろうか。だが少し中学生という雰囲気も拭えなかった。今時のJKというのはみんなこんな可愛いのか?学校行ってないからわからない。


「ヒーローさんって俺のことだったのか。なんて恥ずかしい呼び方を・・・俺の名前は、だな。俺の、名前、は・・・」


 ―――しまった。自分で振っといて、あの名前を言うことを忘れてた。顔を合わせてあの名前を言うの初めてだ。急に恥ずかしくなってきたぞ・・・どうしようどうしよう。ゲーム初心者っぽいし、こんな名前絶対笑われるじゃん・・・


 ちなみに、今まで他のゲーム内で関わってきたプレイヤーには密かに"Xx†陸ノ神†xX"という名前は馬鹿にされていたりする。


「どうしたんですか?お名前を・・・」


「え、あ、ああ。俺は、そそそそそう!"リク"だ!"リク"って名前だヨ」


「リクさんって言うんですね!リクさん、ありがとうございます!」


 ―――あぶねー。とりまあんな名前使ってるのバレなくて済んだ。早く話を逸らさねば。


「さ、さあ。お互い自己紹介も済んだし、本題に入ろうか。」


「本題、ですか?」


「ああ、君があの場所に居合わせた理由だ。あそこは一応Lv.15くらいのエネミーが出るエリアだ。だから君はLv.15以上な訳なんだろうが・・・ゲーム初心者だったりする?」


「あ、え、はい。ゲームはこれが初めてです。レベルは1です。エリアがあるのも初めて知りました・・・。」


 やはり、とリクヤは逡巡する。もしかしたらそういうエリアということを知らずに入っていったのだろう。

 そしてあのネームドエネミー。従来のゲームはこういう場合、突然出現(ランダムエンカウント)することはなく、固定接触(シンボルエンカウント)が普通なのである。

 しかもあそこまで大きいのだ。気配すら察知できず、マップにもレベルに見合わないエネミーが近くに居たのにも関わらず危険信号さえ出さなかった。

 ということは――――


突然遭遇(ランダムエンカウント)・・・した」


「はい・・・エネミー?を探していたら突然目の前に現れて、襲われそうになりました」


 ―――まさか、エリアに見合わないレベルのエネミーがポップする可能性があるなんて。ネームドエネミーが存在するのも初めて知った。

 いろいろ掲示板など見ていたが、そのような報告は上がっていなかった。 

 バグか?だが、コアユーザーではなく、年齢層も幅広いユーザーが多いゲームで初心者殺しなんて、あっていいのだろうか。

 この一連は、一旦バグと考えていいだろう。それにより恐怖したプレイヤーを救うのが第一だ。


「そうか。それは怖かっただろうに・・・ゲーム始めたてで絶望するなんて、損しかしないからな。助けることができて本当に良かった。せっかく初めてのゲームなんだ、楽しまずに終わるなんていい思い出にできないだろう?」


「そう、ですね・・・怖くて逃げ出そうと思っちゃいました。やめたい、とも思いました・・・」


 リクヤはその言葉を聞き、


「・・・なら、俺が教えてあげようか?っ、いや!ナンパとかじゃなくてだな!?ただ見捨てておけないというかなんというか」


「なななナンパだなんて!そんなこと思いませんよ!むしろありがたいです。助けてもらったのに、ご教授願えられるなんて」


「いやぁ、俺は初心者ユーザー歓迎のスタンスだから。いいっていいって。危なっかしいし」


 ミヤは嬉しそうに笑顔を見せてきた。


 その笑顔、気軽にしちゃダメだよ。


「そ、それじゃあ、ふ、フレンドでしたっけ?なりましょう!」


「そうだな。操作わからないだろうから、こっちから送るよ」


 ―――ハッ!そういえば、フレンドになったら名前ってバレてしまうんだった!すっかり忘れていた。ホントは"リク"じゃないって思われるぞ・・・なけなしの金で名前変えるか?仕方ない・・・これは俺の肩身を守るためだああああ!


「ちょ~っと待っててな~」


 素早く課金の操作を終え、名前変更アイテムを購入した。


「あ、ああ・・・500円消えた・・・」


「え?なんですか?」


「いいいいや!?何でもないよ!?」


 そして名前を"リク"に変更しようとした時だった。


 ピコン!


「お?メールが届いたな。レンか?」


 操作を中断し、ワルアクのメールボックスアイコンに手を伸ばし、件名を確認した。


<『ワールド・アクション』プレイヤーの皆さまへ。大型アップデート情報>


「ワルアク運営からか!アップデート情報だと!?随分と早いアップデートだな」


 名前で羞恥していたことをすっかり忘れ、メールの内容に心が踊らないわけがなかった。


「あ、それ私にも来ました!読みますか?」


「すげえ気になる。今読んでみるか」


 期待を胸いっぱいに、メールを開いた。


<日々、『World:action -ワールド・アクション-』をプレイしただきありがとうございます。


 もうじき、『ワールド・アクション』がリリースされて1週間が経ちました。皆様のご利用ありがとうございます。急ではございますが、リリース1ヶ月記念という形で、来る7月25日に「大規模アップデートパッチ」を無料配布いたします。アップデート内容は以下のとおりです。



 ・突発的事象(ミッション)の追加


 ・NPCの配置、自発的事象(クエスト)の追加


 ・エネミーの追加


 ・レベルキャップ解放


 ・称号の追加


 ・各エネミーの調整

 


 と、なります。

 各アップデート項目の詳細は、公式HPにて特設ページを追加いたしました。日を追って情報は解禁していきます。こまめにご確認ください。

 アップデートは、7月25日より自動的に開始致します。午前1時~午前9時まではサーバーに接続はできませんので、ご了承ください。>


 戦慄した、が一番正しい表現だろうか。予想以上の内容に、息を飲まずにはいられなかった。

 『ワールド・アクション』が、よりMMORPGに近づいた興奮が、自身の心臓を早鐘させる。

 もっとも、特設ページに飛んで詳細を見たらもっと驚き、更に興奮すること間違いなしだろう。


「アップデートでこんなに興奮するなんてな、笑っちゃいそうだぞ・・・」


「・・・ん~?これって、そんなにすごいんですか?」


「ばっ、おま、ええ!?これがどんだけユーザーを興奮させるかわからないのか!?」


「ゲームあんまりやったことがないので・・・すみません」


「ぐっ、そういえば、そうだった・・・。まあいい、これは後でにしておこう。忘れそうになったけど、今フレンド申請送るから」


 先ほどの戦慄により手が震えているが、慣れた手つきでフレンド申請を送る。


 だが何か忘れているような――――


「今送ったぞ。認証の仕方はわかるな?」


「多分、ですけど・・・あ、今ピコン!って鳴りました!このアイコンかな?」


「それで、俺の名前をタップして承認を押してくれ」


「あれ?リクさんの名前ありませんよ?」


 ん?おかしいな、名前を変えたはずだが?


 そう思い、メールボックスが開いているMRデスクトップに視線を落とす。そしてメールウィンドウの後ろにあるネーム変更の手続きをしたはずのウィンドウをタップして――――


「このえっくすえっくすじゅうじ・・・?りくのかみ?しん?じゅうj」


「ああああああああああ!!!!変更作業途中でやめてたあああああああ!!!!」


「ひぅ!!!大声出さないでくださ~い!!」


 あれほど隠したかった名前を自分のミスでいとも容易くバレてしまったリクヤは、それ以降テンションが上がることはなかった。




-------------------------------------------------------------------------------------


 その後、しっかり名前の変更を行い、明日レクチャーをする約束をしミヤ別れファミレスを後にした。

 あの傷は絶対に後世に残すと謎の誓いを胸に刻みながら、帰路についたリクヤはまた別のことを考えていた。

 大規模アップデートパッチのことではない。ミヤが体験した『ネームドエネミーの突然遭遇(ランダムエンカウント)の件である。

 実際、それはあるのではないかと薄々思っていた。数多のゲームをしてきた者として、その可能性はあるのではないかと感じていた。だがプレイヤーがプレイ状況を自由に投稿する掲示板を何件か見ているが、そのような事例は投稿されておらず、またリクヤ自身も体験をしたことがなかった為、ネームドの突然遭遇(ランダムエンカウント)のシステムは導入されていないものだと思っていた。

 だが、実際に見てしまった。しかも初見殺し並という、恐ろしいバランス崩壊。

 バグ、という線も考えられるが今のご時世にバグは珍しいものだ。エネミーの動向もモニタリングしているだろうし、気づかないわけがない。あの時のメールでバグ報告がされているはずだ。

 ならば、自然に考えて「仕様(システム)」と結論を出すことになってしまう。


「それはユーザーにとって正解か・・・?」


 理不尽なゲームバランスはただのクソゲーだ。レベル差でどうしようもないエネミーと出会うはずのない場所で遭遇(エンカウント)だなんてバランス崩壊以上の問題だ。しかもこんな大きいタイトルで、日本中が注目するタイトルで、こんなバグが発覚したらコアユーザーは真っ先にアンチに回るだろう。帰ったらバグ報告スレで書き込もうと思ったが、考えれば考えるほどリスクの方が膨れ上がっていった。

 

 ・・・一個人がどうにもできない問題だ。もう考えるのは止そう。運営は何らか対処取ってくれるだろう。ま、これで絶望させるようなゲームだったらアンチになってやろう。


 いつの間にか家に着いていた


「ただいまー」


 返事は返ってこなかった。姉はまだ仕事らしい事を意味していた。


 キッチンへ行き、買い溜めしておいたカップラーメンを一つ棚から取り出し、階段を上り自室へ戻った。


 ベッドへダイブし、今日一日ぶんの疲れを吐き出すような長いため息を吐いた。主にネームドエネミーとの対戦が理由だったりするのだが―――――


『ピロン♪』


 脳内に効果音が響いた。『ライフ・タッチ』に誰かからメールが届いた様だった。

 まあこのアカウントでメールのやり取りしてる人は身内覗いて1人だけなのだが。


「レンからかな?」


<遅い時間にごめん、レベル上げどこまで行った?俺は20レベルで少し事情が有って止まってるよ。


その事情っていうのが、このゲームに少し怪しいところがあってさ。情報収集に数日徹してたからなんだ。


その際に、少し怪しい情報を手に入れたよ。

なんでも、低レベルエリアに高レベルエネミーが出現するバグがあるらしんだ。レベルが10は上、しかもステータスに補正がかかってる。もし本当ならバランス崩壊だよ・・・。しかもそのバグが起きる原因にもう一個のバグがあって・・・原因のバグが何かはわかってないのだけど、少し怪しいよね。運営が早めに対応しないのも含め、だね。

なにか似たような情報があったら知らせてね。>


 メールを見た途端、逡巡した。まさかレンが同じ日に情報を入手していたとは。まさか、この日大量にこの事例が起きていたと?考えられるが、各エリアにネームドエネミーが出現(ポップ)されたということになるのか。


 リクヤは素早く仮想キーボードをタイプして、今日の出来事をメールにしてレン送った。


<うっす、レベル進捗だが、俺は21レベルまで上がったぞ。見つける敵全て薙ぎ払ってるぜ。でも、レンが情報収集に徹してるとは思わなかった。マメなんだな。


 その怪しいバグだが、今日俺が出くわしたのと同じだ。帰り道、女の子の悲鳴が聞こえてな、少し尋常じゃないと思って駆けつけたら、レベル15のエリアにレベル27のネームドエネミーと遭遇した。その子は初心者だったから、でかいものを見てビックリして恐怖していたんだろうが、あれは俺の目から見て別格だった。とても27レベルに見えなかったんだ・・・。バランス崩壊もいいところさ。なんとか勝てたが、あれが多発してるとなると、問題だな。レンも気をつけろよ、確かにデータなんだがあれは違った。少し俺も調べてみるよ。今度細かく説明する。都合つく日にち教えてな。おやすみ>


 ポン、と送信ボタンをタップしてメールが送信されるのを待った。やがて送信されると、さっそく作業に取り掛かった。


 まずは今回のバグについてだ。多発してることがわかった時点で誰かが書き込みをしているはず、そう考えたのだ。

 目の前に半透明に表示されている検索エンジンをタップし、様々なキーワードで検索をかける。バグ報告スレ、バグまとめ掲示板、ワルアクまとめ記事etc....


 結果は、ヒットしなかった。どれだけ検索しても、それらしきスレなどは見つからなかった。

 なぜだ?揉み消している?ワルアク運営が?

 下手したら信用問題になりかねないのに、揉み消すなんてことするのか。謎は深まるばかりだった。人伝えでしかバグの存在を知ることができないのだろうか。


 考えを膨らませていたら、自然と瞼が重たくなってきた。ダメだ。まだ、するべきことは終わっていない。必死に眠気を打ち消そうとするが、あの1戦が不意に脳内再生されると同時に、リクヤは眠りについたのだった。



 仮想デスクトップの右端で、何かがロードされた。


<称号:No.001壁を見る(シー・アクション)を獲得しました>


 もし寝るのが3秒遅かったら、この称号を手にしたことをリクヤは知ることができていただろう。

どうもです、彩羽燐と申します。


執筆をしていて、なかなかPV数とか見れてなかったんですが、もうすぐ200PVいってしまうという・・・!こんな趣味全開な小説を一瞬でも読んでくれて本当にありがとうございます。予想していた反応よりすごくてとても嬉しいです。誤字脱字、感想等ありましたらぜひお願い致します。



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