異世界へ
いろいろ無理矢理詰め込んでみました
(どこだ?ここは)
三笠晃は突然の出来事に混乱していた。何も前触れもなく目の前が歩いていた道から蒼白い空間に突如入れ替わったからだった。
「なんじゃここは?」
「私達、さっきまで教室にいたのに」
「何かのドッキリか?」
この空間には晃だけではなく高校の制服を着た生徒やサラリーマンらしき男など、様々な人々がいた。
周りを確認してみると、上空にはダイヤモンドのような菱形の鉱石が浮いており、下には蒼く透き通った湖が広がって、水中には未知の魚が優雅におよいでいた。
(ここは一体……もしかして天国?)
そんなことを考えていると、突然目の前に画面が現れた。
「ぬ?」
「何これ?」
「何か書いてあるぞ」
晃だけではなく、他の人の目の前にも謎の画面が現れているようで、そこには何やら文章が書かれている。
『地球の皆様。混乱されてるようですが、落ち着いてお読みください。あなた方は我々神のミスにより、この異次元空間に転移してしまいました。しかし元の世界へ戻すことはできないので、別の世界、パンドラへと転移させていただきます。パンドラはその80%が海であり、陸地は諸島がほとんどであります。また、魔物も存在しますが姿は貴方方が想像しているものとは大きく異なります。詳しいことは転移した後、貴方方をサポートするAIが教えます。このAIは普段は球型の状態ですが、人型に変化する場合もあります。それでは転移させる前にあなた方に、パンドラでの生活の拠点となる船を提供します。』
すると再び画面がひかりだし、タブレットのような物が出てきた。晃のタブレットの画面にはこう記述されていた。
艦名 大和
艦種 戦艦
管理者 三笠晃
耐久力 15000
シールド 0
固有搭載兵器 なし
固有技術 ???
保有拠点 なし
(まるでゲームだな。だが戦艦って確か……)
晃は内心でそう呟く。戦艦は対艦ミサイルの登場や莫大な維持費等が理由で姿を消したはず。なら……。
「ふむ、儂が使うのはこのシャルル・ド・ゴールという空母か」
「アーレイバーグ級駆逐艦ってなんだろう?強いのかな?」
「俺はヴァンガード級原子力潜水艦か。確かイギリス海軍だったかな?」
「私は武装商船か」
他の人々は皆、駆逐艦や原子力潜水艦といった現代艦艇であるようだ。中には商船(自衛装備付)も混じっているようだが。
(大戦期の艦艇は俺だけか)
そう考えているとまた、画面が現れた。
『船の提供が確認出来ましたでしょうか?もうひとつ言っておきますが、パンドラでは艦隊と呼ばれるパーティを組むことができます。パーティを組めば魔物との戦闘で有利になったり、拠点があれば交易が可能になって、ちょっとした小遣い稼ぎが出来たりします。が、流石にここでは不可能なので転移した後でおねがいします。それでは転移を開始します。なるべく海上都市の近くに転移させるのでご安心ください』
画面が消え、空間が輝き始めた。
空間の輝きは更に増し、思わず目を閉じてしまう。
三笠晃達100万人の人間は、異世界パンドラへと旅立った。
--------------∞-------------
カタカタカタカタカタカタカタ ピッ。
「……ふうっ」
晃達がいた空間とは違う別の空間にある一室で、銀髪碧眼の少女がパソコンらしき機械を使って何やら作業をしている。
「作業完了っと。後は神議長に報告するだけね」
その少女は背中から白い羽根を広げ、片手に資料の入ったカバンを持って高層ビルの50倍はありそうな巨大なタワーへと向かう。
少女はタワーの頂上へあっという間に着くと、神議長がいる部屋の扉をノックする。
「開いておるぞ」
「失礼します、神議長」
扉を開いた先には、古風な椅子に座る老人がいた。
「それで、用件はなんじゃ?」
「はい、異次元空間に迷いこんでしまった地球の方々計100万人に対して、船の提供及び別次元の世界パンドラへの転送が完了しました。尚、その資料はこちらに」
カバンから資料を取りだし老人に渡す。
「ふむ、確かに確認した」
資料を受け取り神議長は満足そうに頷いた。
「それと地球の人々には神のミスと伝えたのですが、本当によろしいのですか?」
「本当のことを伝えても、彼らには理解出来まい。神のミスというほうがある程度説明がつく。」
「そうですか……では私はこれで」
少女は一礼し、神議長の部屋を退室した。
(やれやれ。またあの現象が起きてしまうとは。これで3回目じゃぞ全く)
神議長は内心でブツブツと文句をいう。
(原因の究明に、地球管理局長への状況説明、神王様への報告、転移させた地球人の記録観察……あー。やることが多すぎる)
今にも目の前にある机をひっくり返してやりたい気分だ。
(それに……)
視線を下に向ける。彼が手に持っているのは一枚の資料。ある青年に提供した船のステータスやカタログスペックだ。その船は全長約900メートル以上、前部に巨大な主砲、両舷には対空装備がハリネズミの如く並んでいる。
(この青年に支給した船……やけにステータスが低いのだが……)
他の人々に提供した船のほとんどは高いステータスを持っている。しかし青年の船のステータスはとても低く、パンドラを生き抜くのは難しい。そう神議長は考える。
(……まさかのう)
神議長の脳内にある予想が浮かんだのだが、それはないと掻き消された。