モーラ島攻略戦 後編 ②
話がコロコロと。
「……排除完了。死体を一箇所に集めろ」
隊長機に指示に機械歩兵が一斉に死体回収作業を開始する。
物言わぬ屍となった海賊兵達が一箇所に集められているのを尻目に、スカイホークに通信を入れる。地下だからなのか少々繋がるのが遅く、ノイズがやや酷い。
「a中隊からスカイホークへ。敵海賊兵を全て掃討した」
『ザザッーー、スカイホークからa中隊、よくやった。ミストラル級強襲揚陸艦から工作中隊を載せたハインド01と02をそちらへ向かわせている。それに乗り帰投せよ。座標を送信する』
「座標を受領。それと何だが海賊兵の死体はどう処理すればいい?」
『死体は洞窟の外へ出して処分するが、それは工作兵が担当する』
「了解した、通信終了。……全機、作業は中断。ここから撤収するぞ」
「死体回収は如何するのですか?」
「それは後続の特殊工兵隊がやってくれるそうだ。」
通信を切った後、配下の機械歩兵に作業を中止させて、地下ドックからの撤収作業を開始する。装備や機器に異常がないかチェックし、し終えたら再び洞窟に向かう。
「ようやく攻略戦も終わりか。……大破した機体は無く、小破した機体が数機程のみ。なんと言うか早かったな」
「航空隊による防御施設への爆撃が成功したのと、敵が戦闘にやや不慣れな人間だけだったからここまで順調にいけたのだ。敵防御施設が健在な状態での空挺降下や、敵が実戦経験が豊富な人間だったら、この島を占領出来たのはもっと先だったかもしれん」
「本拠地に帰投したら、主やヤマト様に装備の改修、特に自動小銃の改修を進言してみるか。どうも今の装備だと先行きが不安だ」
「少なくとも我々機械歩兵同士の戦闘では常に優位性を保っておきたいところだな」
色々と人間臭い会話を交わしながら洞窟を抜け、行きとは違うルートを移動する。マップの現在地の西側、その数十メートル先に開けた場所があり、そこが回収地点だ。
少々急な坂道を下り、ゴツゴツした岩の地面を渡って約十数分。開けた場所にたどり着いた。そこはヘリが数機入れる程のスペースがあり、近くには小さな川が流れている。
『ハインド01からa中隊。後数分で目的地に到達する』
「a中隊からハインド01。此方は既に到着した。近くの樹木で待機する」
『……早いな………了解した』
暫くして2機のMill24ハインドがメインローターが回転する際に発生する風で草木を揺らしながら、開けた場所に着陸する。
ハインドのハッチが開いて中から8機、計16機の特殊工作兵が降りてきた。ヘッドに工具のマークが刻まれ、武器は基本装備の12.7ミリ小銃だが半数以上の機体は火炎放射器や高圧洗浄機を装備している。
「あれが工作用の機械歩兵…」
「陣地構築や後方支援を専門とする機械歩兵らしい。確か名前はエンジニアだったか」
「一部の機体が高圧洗浄機を装備してるのは恐らく地下ドックの清掃か。結構埃が酷かったしな」
此方を見向きもせず、真っ直ぐ森の中へと進んでいく特殊工作兵エンジニアを見ながら二手に分かれて2機のハインドに乗り込む。
「全機乗ったな?離陸してくれ、ハインド」
「了解、離陸する」
a中隊全機が搭乗したのを確認すると最初に01が、続いて02が離陸し、北西で待機しているミストラル級強襲揚陸艦の元へと帰投したのだった。
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『其方が送信した情報は確かに受理しました。後にマスターへ報告しておきます。……それと、モーラ島攻略の指揮お疲れ様です、スカイホーク』
「ありがとうございます。ヤマト様」
モーラ島の攻略成功の報告と情報データの送信をしたスカイホークは、ヤマトから激励を受けていた。
『後の処理は此方が引き受けます。貴機は一旦基地へ帰投して下さい』
「了解、すぐ帰投致します。通信終了」
通信を切り、機首を北西へと向けて帰路につき始める。
途中、機体の右下に視界を向ければミストラル級強襲揚陸艦の飛行甲板に2機のハインドが着陸しようとしており、建築資材を満載したトラックや47式作業支援車が次々と島に上陸していた。
既に47式作業支援車が破壊された防空施設や建造物の解体作業を行い、出た端材を後部のコンテナへ積み込んでいる。その後一旦大和まで戻り端材を資材に変換して貰うのだろう。
更に沖合には4隻のゴルシコフ級フリゲートに護衛されたおおすみ型輸送艦2隻が真っ直ぐモーラ島へ向かうのが確認できる。そしてその上空には数機のYAK141が艦隊を護るかのように編隊を組んで飛行していた。
ーーーー!。
「主の目標…………?レーダーに反応」
何かを呟こうした瞬間、不意にスカイホークのレーダーに白い点が写る。数は一。大きさからして巡洋艦クラスか。
「…メディカルスキャン開始…対象、レーダー。………診断結果…レーダーシステムに異常は認められず」
念のため自身のレーダー診断プログラムをしてみるも、診断結果は特に異常なし。ならば写っているのは魔物かどこかの国の兵器。
「……!反応が消失?」
飛行していたYAK141に追跡するよう指示しようとしたその時、反応はレーダー上から消失した。
「……ゴーストだったのか?」
疑問に満ちる中、そのまま帰投するのであった。
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「……行ったわね」
一隻の飛行艦に搭乗している女性が右上のレーダーを見ながら、そう呟く。
身長は約170センチと女性としては高く年齢は20代後半辺り、腰まである緑髪をポニーテールで一つに纏めている。服装は蒼に赤色のラインが入ったレオタードドレスだが所々に赤のチップが付いている。靴は黒に白のラインが入ったブーツ。先端はナイフのように鋭く尖っており、凶器にもなりそうだ。
ーーーマリア・ウェルフ。階級は太尉。シュネージュ北西方面海軍第八遊撃飛行艦隊の隊長である。
遊撃艦隊はその名の通り哨戒、海域調査、通商破壊、破壊工作などありとあらゆる任務をこなすことを目的としている。そしてその中でも高い戦果を挙げているのがこの第八遊撃飛行艦隊、通称“フェアリー”である。先月にはカテゴリーSランクのB29スーパーフォートレスの大群を殲滅している。
そして彼女らが搭乗しているのはエプリクス級重巡洋飛行艦。全長は200メートル、最大全幅34メートルで、武装は艦首に36センチ衝撃振動砲一基、両舷に127ミリ単装砲六基、艦対空誘導弾発射機4基、20ミリ迎撃機関砲四基である。
『未確認機、完全に遠ざかりました。隊長』
モニターの一つに写る赤毛のショートヘアの女性がやれやれと安徳した表情をする。
ーーーヴァネッサ・レイリス。階級は中尉。遊撃艦隊の副隊長だ。年齢はマリアより一つ年上。
彼女の言う通り、レーダー上の白い点は中央から徐々に遠ざかっていった。
『……あの未確認機や戦闘機に船って一体何処の国の物なんでしょう』
やや左上に別のモニターが開かれ、更に別の女性ーー否、少女の顔が映る。
背中辺りまで伸ばした黒髪に真紅の瞳。顔立は何処か幼くて、保護欲を感じさせる。
彼女の名はアリサ・ホルスト。年齢は18。この艦隊に入隊したのは約半年前。ピカピカの新人である。しかし彼女も入隊する前はカテゴリーAのノースカロライナ級を単艦で撃破している実績を持つ。
「確認してはみたけど国籍を示すものは何処にもない」
『国籍を示すものがない?また何処かの賊か冒険者パーティか何かじゃないのですか?』
ヴァネッサが疑問を口にする。
「普通なら私もそう思うのだけれど、唯の賊か冒険者にしては保有してる兵器が少々気になる……」
マリアが言うには海賊や冒険者の所有する兵器は大抵、かつての列強国が使用していた旧式のものが多い。しかし彼女が見たのは今の列強国が使用しているものと同じ性能を持っていた。そんな海賊や冒険者がいるのならある意味有名になっているし、国も確保や討伐に動く。
『魔物か何かでしょうか?』
「それはないわね。魔物なら魔核探知機に反応が出るはず」
アリサがあれが魔物ではないかと考えるが、すぐに否定された。
『じゃあ、あの未確認機は一体……』
「とにかくこのことは司令に報告する。全艦、進路を南東へ、帰投するわ」
『え?正体不明艦の件は』
『アリサ、今はそれどころじゃないだろ。あの警戒機、一瞬とはいえ此方のカモフラージュシステムを見破ったんだから』
精鋭飛行艦隊フェアリーはそのままカセリヌ島へと帰投した。
次何にしよう。




