モーラ島攻略戦 後編①
南東方面 大和艦橋内
『マスター。スカイホークから報告。モーラ島の飛行場及び主要施設を完全に制圧したとのことです』
「……こちら側の被害は?」
『機械歩兵が数機程が損傷したのみで、大破した機体はありません』
「……そうか」
『それともう一つ。空挺型機械歩兵と二式クロの実戦データを、マスターのタブレットにアップロードしておきました』
晃はタブレットを操作し、ヤマトから送られてきたデータを見る。そこには機械歩兵と二式クロに関する戦闘データが記載されていた。
彼が今回のモーラ島攻略を空挺降下による制圧とした理由。それは単純に新兵器として配備された空挺型機械歩兵と二式クロを実戦で使えるかどうか、データを取ることだった。
空挺型機械歩兵は機械歩兵の標準基本装備である12.7ミリ小銃や防御シールドの他に背部にジェットパックを装備している。装甲がやや薄いのが欠点だが機動性は他の機械歩兵よりも高い。
二式クロは九五式ハゴをベースにし、背部と足裏に高機動スラスターを装備した二脚型降下歩行兵器だ。武装は30ミリ機関砲二門と84ミリ燃料気化擲弾発射機一門を装備。此方も機動性を重視しているため、装甲はやや薄めである。
(……被害は今の所ゼロ。良い結果だな)
今回の戦闘データを見る限り結果は良好といえた。今後の改良や生産にも目処はついた。
『後、海賊の残党兵についてですがどうしますか?』
「……残らず排除するように伝えろ」
『了解です』
海賊のようなならず者は捕虜にしてもデメリットしかない。一人残らず全て排除するようヤマトにそう伝えるのだった。
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日が段々と落ち始め、辺りが暗くなり始めた頃。ほとんど光を遮ってしまう程深い森の中を機械歩兵達が草木を掻き分けながら進んでいた。
「レーダーに複数の反応あり」
「全機、セレクターを"3"に切り替えろ」
ヘッドのレーダーに逃亡している海賊兵の反応があったため、12.7ミリ自動小銃のセレクターを三点バーストに切り替える。
「反応の位置からしてあの洞窟の中にいるようですね」
機械歩兵の一機が指差す方向には奥がかなり深そうな洞窟。入り口には塞いだつもりなのか土嚢が中途半端に積み上げられていた。
それを楽々と乗り越え、更に奥へと進む。
「どこまで続いてるのでしょう」
「分からん。警戒を怠るな」
メインカメラをナイトビジョンに切り替えて、警戒しながら進むこと約15分。真っ暗闇の洞窟の前方に僅かな光源と扉が見える。この洞窟の出口か何かだろう。
扉へとたどり着き、トラップの類がないかチェックする。
「ブービートラップは仕掛けられてはいないみたいだな」
そう言いながら隊長機が右脚で扉を蹴りあげた。扉は凄まじい勢いで吹っ飛び、辺りに土煙が舞う。
そして土煙に紛れて突入する。が敵の攻撃はない。
「……後で旗艦に報告だな」
彼らが侵入した場所。そこは比較的大きな地下ドックだった。係留施設には小型の空母や駆逐艦が停泊し、更にその周辺には補給や修理を担う作業ボットが並んでいる。
階段を降りて、薄汚れた通路を進む。ここも余り清掃はされていないようで、ネズミ等が徘徊し、歩く度に埃が微かに舞っていた。
周囲を警戒しながら進むも海賊兵の姿はどこにもなく、静かだ。
「"スキャン"」
隊長機がそう呟いた瞬間、赤色の波紋が頭上に揺らめき周囲へ拡散する。機械歩兵の固有技術の一つ"スキャン"。障害物を通り越しての探知が可能な優れものだ。但し有効範囲がやや短いのと敵に察知されやすいのが難点だが。
「……反応を探知」
左の通路へと曲がり、コンテナが並んでいる場所にたどり着く。
「……目標を視認」
メインカメラの先には必死に小型ボートを動かそうとしている十数人の海賊兵の姿があった。
「おい!!まだ動かせねえのか!?」
「急かすな!!いまやってる!!」
「早くしろよ!モタついてんと奴らが来るぞ!!」
スキンヘッドの男が頭にバンダナを巻いた男に何やら騒いでいる。内容からして、ボートのエンジンがなかなか掛からず、手こずっているようだ。恐らく"スキャン"には気づいていない。
その間に気づかれぬように近づき障害物へ身を隠す。
「あのバンダナの男を仕留めろ」
「了解」
機械歩兵の一機が半身身を乗り出し、自動小銃を海賊の方へ構える。カメラスコープの倍率を二倍にし、照準をバンダナ男の頭に合わせ発砲。
ーーータタタッ
乾いた音と同時にバンダナ男の側頭部に大穴が開き、脳髄が飛び出る。そして何が起きたのかわからないまま絶命した。
「ひ、ヒィィィィ!!」
目の前で突然仲間が死体となったために尻餅をついてパニック状態となる海賊兵達。
「射撃開始」
パニックになっている隙を見逃さず、機械歩兵全機がボートに向けて一斉に発砲する。
「ぎっ!?」
「がぁ!?」
パニック状態になった海賊兵達は碌な反撃すら行えずに、バースト射撃で一人一人確実に頭を撃ち抜かれる。
「対戦車手榴弾投擲」
別の機械歩兵数機が対戦車手榴弾をボートに向かって投擲。
ーーーー!!
激しい爆発とともにボートは木っ端微塵になる。乗っていた海賊兵も全員爆発に巻き込まれ、火達磨になりながら海面へ吹き飛ばされた。
「…排除完了」
海面に浮かび上がった死体を一見しながら隊長機は通信を入れる。
「a隊長からスカイホーク、追撃していた海賊兵の殲滅を確認」
『スカイホークからa中隊。飛行場での戦闘で逃げ出した海賊兵がそちらへ向かっている。迎撃態勢をとり、全て排除せよ』
「……a中隊、了解」
終わったと思ったらスカイホークから追加の指示が出された。
「各機、マガジンの残弾をチェック」
マガジンの残弾を確認しつつ先程通った地下ドックの入り口近くへと移動する。
「ここで海賊兵を待ち伏せする。05から09はペアに別れて、両端の高台に陣を展開。銃を狙撃モードにして待機」
「「「了解」」」
05から09が背中のジェットパックで高台へと到達。セレクターを"タ"にし、伏せた状態で待ち構える。他は作業ボットや積荷の近く等、待ち伏せに適した場所へと移動した。
「レーダーに反応。複数」
準備が整ったところでレーダーに、こちらへ向かってくる反応を探知。B中隊と交戦して敗走中の海賊兵共だ。
「全機、気を引き締めろ」
地下ドックの入り口に銃口を向け、そのまま獲物が来るのを待ち続ける。
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一方、飛行場での戦闘で防衛に失敗した海賊兵らは、満身創痍の体で機械歩兵から逃げていた。少しでも軽くするために軽機関銃やアサルトライフル等は投棄しており、武器は拳銃かサブマシンガン位である。
後方では今だ銃声や爆発音が響き渡り、彼らの精神を徐々に蝕んでいった。
「はっ、ぜっ、はっ」
「兄貴……旦那……くそっ!」
「畜生!何なんだよ!!あいつらは!!」
恐怖に満ちた表情で時々後ろを振り返りながら必死に走り、洞窟の先にある地下ドックへと向かっていた。そこに停泊している船舶を確保し、このモーラ島から脱出しようとしているのである。
「ぜぇ、ぜぇ、ここまでくればもう安心か」
「だな。早く地下ドックに行って、とっととこの島から脱出しようぜ」
漸く地下ドックの入り口近くにたどり着いて、息を整える。長らく走り続けていたためか地面にへたり込む者や仰向けになる者までいた。
が
「ん?」
「どうした?」
海賊兵の一人が怪訝な表情になる。彼の視線の先には地下ドックの入り口。ここを通れば脱出用の船舶が確保出来て脱出可能になるのだが。
唐突に嫌な予感をしながらも入り口に入る。中は何故か真っ暗でほとんど何も見えず、かろうじて地面が薄っすらと見えるくらいだ。
懐中電灯を点けて地面を照らして進む。
「?」
懐中電灯のライトが照らした物。くの字にひしゃ曲げた鉄製の扉だった。
「!?」
背筋が一気に凍りつき、顔面を蒼白させる。鉄製の扉が自然にこんなひしゃげてなどいるはずがない。ということはつまり……。
「て、ーーー」
何かを叫ぼうと瞬間、一発の銃声と同時に額に大穴が開き後方へ大きく仰け反って倒れ伏した。懐中電灯のレンズは割れ、辺り一帯が闇に飲み込まれる。
「う、うわぁぁぁ!!」
「な、なんだ!?」
突然光源が失われたことに混乱する海賊兵達。更に絶叫が場の混乱をより一層激しくさせる。
「が!?」
「げはぁ!?」
そして再び鳴り響く銃声。頭を撃ち抜かれて次々と地に倒れ伏す。
「く、くそぉ!何処だ!?何処だぁ!?」
半狂乱状態になってサブマシンガンや拳銃を手当たり次第乱射する者まで出てきた。しかしそれは敵に自分の位置を教えているだけで、全く意味がない愚かな行動である。
逆に額に大穴を開けられ黙らせられた。
「ぐぶっ!!」
最後になった一人が腹に銃弾を浴びて倒れる。
「が……は……」
目は虚ろになっており、腹からは血が大量に流れて地面に広がっていく。
朦朧とした意識の中でカシャン、カシャンと金属音が鳴り響く。それは段々と此方へ近づいる。
「う……あ……」
視界に写るのは黒い金属で出来た人型の何か。その頭部から何も感じさせない程冷たい赤く光る二つの目。
そして自分の額に向けられている銃口。
「オメェらは……一体…な…に者……なん……だ」
「…………」
ーーーー!!
問いに返されたのは一発の銃弾。最後の海賊兵は体をびくんと震わせ絶命したのだった。
「殲滅完了」
中々うまくいかない……




