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4. 変化した日常

 1か月が経過し、大分状況が落ち着いてきた。

 落ち着いたといっても元の生活に戻っれたわけではなく、あの異形の者たちが出てきた日は『大崩壊』と呼ばれ、海岸沿いや一部都市部は崩壊し、日常生活は大きく変化した。


 混乱のため正確な人数は把握できていないが、日本も半数以上の人が亡くなり人口が四千万人前後まで減少してしまった。


 日本以外の諸外国の情報も少し入ってきているが、戦える人材がゲームのプレイヤーだったことから、発展途上国では人材が少なく、抵抗できず無くなってしまった国もあった。


 今回の騒動で、問題となっている謎の生物は、神話研究社からの報告から、クトゥルフ神話に語られているものと判明している。

 そのため、先に現れた生物もカエル面は「深きものども」、黒いタール状の生き物は「ショゴス」と呼ばれるようになった。

 地域によっては他の生物も確認されているが、積極的に討伐されるように国によって賞金が懸けられる形となった。

 賞金は倒した際に残される魔石を専用の窓口に持っていく事で支払われる。

 そのため、賞金稼ぎとして生活を送る一部のプレイヤーも出始めたが、ほとんどは各地の集団で身を守りながら生活を送っていた。


 崇一も、自分が通っていた地元の高校を中心としたグループに兄妹で身を寄せていた。

 校舎に住む形となったため両親の亡骸は、家族で自宅の庭に埋葬した。

 崇一は家族を守ればそれだけでいいので、ファンデーションで刺青を一部隠し、周囲にはSSランクではなくCランクとして生活を送っていた。



 割り当てられた部屋で崇一は朝ごはんを食べていた。配給品のおにぎりだったのだが、以前は太り気味だった崇一には量が物足りなかった。仕方がないこととはいえ、最近このような食事が続いたため、思わぬダイエットになり以前は出ていたお腹がへこみ複雑な心境だった。


「そういえば、崇司。

 今日のお前の分担は、防御壁の作成だったよな」


「そうだよ」


「とりあえず、現場から離れすぎるなよ。何があるか分からないからな

 あと、何かあったらすぐに逃げろよ」


「兄貴よりかはうまくやるよ。兄貴より運動神経はあるから」


「…そうか」


 崇司みたいなEランクのプレイヤーは積極的に敵と戦うものも少数いたが、だいたいはプレイヤー以外の人に比べたら強くなった力を使って、壁の作成などの力仕事に取り組んでいるものが多かった。

 崇司も最初は戦うと言っていたが、響子の願いもあり作業班に入っていた。

 崇一は他C、Bランクプレイヤーと一緒に周囲のパトロールを交代で参加していた。


 食事が終了後、崇司はそのまま作業に向かい、夜のパトロールまで予定がなかった崇一は、テレビが置いてある講堂へ響子と一緒に移動した。

 講堂につくと、すでに何人かの人が集まってテレビを見ていた。4局しかなくなってしまったチャンネルの一つでは、東京で結成されギルドの案内が流れていた。


「へぇ、ギルドねぇ」


「昨日も放送されてたけど、戦闘時に単独で動かないようにチームの斡旋や、賞金の手続きの代行などをするんだって。あとギルドによっては護衛依頼をうけたりもするって。もうしばらくして落ち着いたらああゆうギルドに登録するのもありじゃない?」


「そうだなぁ…でも大丈夫だよ。

 一応、ここのローテーションでも単独で動くことは無いし」


「ずっとここに居るわけじゃないでしょ?

 やっぱり避難所だからプライバシーも少ないし、快適な環境じゃないし。

 ここ数日で出ていく人も何人かいたよ」


 響子と会話しながら、テレビを見ていると一部のギルドメンバーが紹介されていた。

 某ジャ○ーズのアイドルや、人気が出始めていた若手アクション俳優なども紹介されていた。

 その中に崇一も好きな美少女アイドルも含まれていた。


「松永輝夜も所属してるってことはプレイヤーだったんだな。どのランクなんだろ?」


「さぁ、特に情報はないみたいだけど…。ただ、赤染あかぞめ君がSランクだってのは言ってたけど」


「赤染? あぁ○ニーズのやつね」


「そう、すごいよね。昨日のニュースで戦っている姿が映ったんだけど、かっこよかったよ」


 崇一は、周囲に聞こえないよう小声で響子に反論した。


「すごいって…。俺の方が強いよ?」


「何言ってんの。自称Cランクでしょ? それに顔が全然違う!

 赤染くんはかっこいいけど、兄さんは…まぁブサイクとまでは言わないけど、かっこいいわけじゃないでしょ。比較にならない」


「う」


「それに、自分から戦おうとしないし…」


「別に戦う必要はないだろ。最近では自衛隊、警察に志願して入るプレイヤーもいるみたいだし、そいつらに任せておけばいいんだよ。俺は周りの人だけ助けられればそれでいい」


 ここに居ても小言が続きそうなので、崇一は講堂から出て行った。

 適当にうろついた後に割り当てられた教室に戻ろうかと廊下をうろついていると、反対側から5人の集団がやってきた。

 このような状況なので、教師や市の職員などの大人が中心となって配給や他所の集団との交渉などを実施してくれているが、力を持つ一部の上位プレイヤーが集団を仕切り、大人にも支持を出すようになっていた。ちょうど来たのはこの高校に集まっている集団をしきっているプレイヤーで、崇一の同級生だった。


(うわっ、嫌な奴らにあっちゃったな。ここ1週間ほど顔も見なかったのに…)


 典型的なオタクだった崇一は、学校でも友人が少なく、一人で本を読んだり居眠りしているか、そもそもゲームのため学校を休み来てない日もあった。

 それに加え生来の野暮ったさと身長が175cmで若干肥満気味だったどんくさそうな外見から、素行の悪い連中にでくの坊扱いされからまれることもあった。

 特に5人の真ん中にいる美細津みさいず重弘しげひろは、この学校の素行の悪い連中の筆頭で崇一のクラスメートでもあった。現在はこの集団の最上位のAランクで、同ランクの取り巻き下瀬しもせひろしと一緒にこの学校を仕切っていた。

 残りの3人は最近取り巻きに入った高校生と中学生の男と、高校生の女だった。


 特に会話する相手でもないので、そのまま素通りしようとしたら、美細津が声をかけてきた。


「よぉ、九条。相変わらず1人か?さびしい奴だな」


「…」


「そうだ、お前にこいつを貸してやるよ。

 代わりにちょっと頼みごとがあるんだけどいいよな?」


「はぁ? なんで?」


 崇一が疑問を口にすると、取り巻きの一人嵯峨そが雄一ゆういちがいきなり襟首を掴んできた。


「口答えするなよ。Cランクの分際で。

 美細津さんが頼んでるんだ。お前は頷くだけでいいんだよ」


「そうですよ。Bランクの俺たちにですか勝てないんですから。Aランクの美細津さんと下瀬さんに従って無理しない方がいいですよ。セ・ン・パ・イ」


 背の若干低めの中学生 金田かねだ義明よしあきが、さげすんだ視線で口元をゆがめながら言ってきた。


「大した話じゃない、お前、今日の夜見回りの当番だったろ?

 それを明日の昼の当番と交代してもらいたいだけだ」


「それだけか?」


「おお、それだけだ」


「わかった」


「お、じゃぁ今日の夜は俺らが行くから。

 他の担当のやつらには言っておいてやるから心配するな。

 ほら、綾こいつの相手してやれ」


 美細津に背中を押されて、隣のクラスの須田すだあやが前に出てきた。

 須田は、茶色のショートカットで、美少女ではないが明るく竹を割ったような性格で人気があった。同じバスケ部の加藤の恋人で学校でも有名なカップルだったが、2週間ほど前から美細津達と行動するようになっていた。


「じゃぁな」


 須田を置いて、美細津達は直ぐに去って行った。

 崇一は、困惑した顔で須田を見ることしか出来なかった。

 しばらくして、立っているだけの状況に耐えられなくなり、崇一は声をかけて部屋に戻ることにした。


「じゃあ…」


 そのまま須田の方を振り向くこともなく、崇一は部屋に戻った。



 部屋につくと、響子が戻ってきていた。


「ただいま」


「おかえり、で、兄さん、後ろの人誰?」


「え、誰って?」


後ろを向くと、少し離れた扉の外に須田が着いてきていた。


「えっと、何か用?」


「…言われたから…」


 崇一が質問すると、ぼそぼそっと返事があった。


「気にしなくていいよ。部屋にでも戻れば?」


「…分かった…」


 須田が去っていくのを見て、崇一は響子と顔を見合わせた。


「何だったんだ?」


「私に言われても…。兄さんについてきたんだし」


「そういわれてもな。途中で美細津たちにあっちゃってな。

 その時、相手してやれって須田さんを残しって行ったんだよ。

 別に何もするつもりもないからそのままほっておいただけなんだけど」


「ふーん」


「でもなぁ、須田さんって美細津とつるむような人じゃなかったと思ったんだけど」


「もしかしたら、あの噂って本当かも」


「何?」


「あの美細津中心のメンバーがプレイヤーじゃない女の子を何人か無理やり囲ってるって」


「げっ、まじ?」


「うん。そういう噂」


「お前は大丈夫だよな?」


「うん。どうやら1人だけの人を狙ってるって。家族とかいる人は手を出してないって噂だよ。

 まぁ確証がないけど、結構みんなしってるよ」


 崇一は、あまり周りを気にしないので知らなかった。

 しかし、嫌な話を続ける気もなかったので連絡だけ済ませることにした。


「そうだ、今日の夜のパトロール無くなったから」


「なんで?」


「美細津が代われって。明日の昼になった」


「わかった。でもなんで代わりたかったんだろ?」


「さぁな、明日の昼に予定でもあったんじゃないか?」


「だったら、さぼりそうな気がするけど?」


「そうだよなぁ。 う~ん、考えてもわからん。気にするだけ無駄だよ」


「そっか、あ、じゃぁいつものように行くの?」


「ああ、いつどうなるか分からないから、お金はあった方がいいだろ?

 幸いパトロールがなくなったから、また魔石集めでもするよ」


「うん。気を付けてね」


「大丈夫だって」


 崇一は予定が変わっても夜の外出が変わらないため、軽く仮眠をとって置くことにし、自分のスペースで横になった。





 日が完全に沈んで暗くなってから崇一は移動を開始した。

 大崩壊前であれば、街灯や、駅前や繁華街などの明かりで全く困ることが無かったが、現在では電気が供給されていない場所も多く田舎の村に行った時のように月明かりだけが頼りのような状態になっており、隠れて行動するには最適な環境になっていた。

 パトロールといっても高校を中心とした一部だけなので、見つからないように崇一は高校を離れ、海岸まで出てきていた。


 砂浜を移動しながら、敵が出てこないか散策していると鉤づめをもったチンパンジーみたいななのが10mほど先にいるのを見つけた。


「ヴーアミかぁ?

 あいつら紫なんだよなぁ。まぁ無いよりましか」


 崇一は、右手を敵に向けて呪文を唱えた。

 SSランクなら呪文を唱える必要はないのだが、Cランクとしているので念のため呪文を唱えるようにしていた。


「ウィンドシェル」


 右手から風の玉が飛び、ヴーアミに当たり右腕を飛ばした。

 ヴーアミがこちらに向かって駆け出してきたのをみて、連続して魔法を使い蜂の巣にした。

 最初の戦闘では精神的に追い詰められていたが、この一ヶ月で何度も戦ってきて崇一も戦闘に慣れ、落ち着いて対処できるようになっていた。


「ま、こんなもんだろ。

 お、色が青みがかってる」


 いつもどおり落ちている魔石を回収すると、いつもより色合いが違い喜んだ。

 魔石は色により買い取り価格が変わるのである。色は、紫→青→緑→黄色→橙→赤と変化していき、価格も三千円から五百万円となっていた。

 色はくっきりと分かれるわけではなく、敵の強さにより色合いが変化していくため、同じタイプの敵でも紫と青みがかった紫など様々であった。

 また、販売せずに自分で魔法を込めて使う方法もあるが、崇一は強い魔石が手に入っていないので今のところすべて売る予定であった。





 それから砂浜を進みつつショゴスを2体しとめ、海辺沿いの林に近づいていた。

 林の中は、視界が悪いので入るのを避けるため、戻ろうとしたところで小さな悲鳴が聞こえてきた。


「イヤァァ」


 崇一は、声が聞こえた方に急いで進むと、男3人に手足を抑え込まれ、襲われている少女がいた。

 気づかれないように近づくと、襲っている男たちは美細津と取り巻きの3人だった。

 1人が警戒しているみたいだが、町側を警戒しているようで、海側の崇一は気づかれてはいないようだった。


「もうやめてぇ…」


「あきらめろ。俺以外にもこいつらもいるからなぁ」


 美細津が嫌がる女に覆いかぶさって、残りの2人は手足を押さえ、へらへら笑っていた。

 遠目でちらっと見えた左手に模様らしきものがあることからボブカットの少女も、プレイヤーなのだろう。

 美細津達の噂は聞いていたが、あくまで噂なので気にしていなかったが、目の前で実行されていれば別であった。

 崇一は、カッなったまま、警戒している男の右側に回り込み、声をかけた。


「おい、金田」


「だ、誰だっ」


「俺だよ」


「てめぇ、なんでこんなところにいる?」


「気にするな。どうせ答えを聞いても意味がない」


「はぁ、何を言っ」


 崇一は、近づきながら後ろ手に構えた双龍で、金田の首と胸を切り裂いた。

 急に聞こえた他者の声に、美細津達も慌てて体を起こしたが、いきなり殺されるとは思っていなかったのだろう金田の倒れる死体を見て呆然としていた。

 少女の方は、金田が殺されたのが見えなかったのか、新たに表れた人に助けを求めた。


「お願い、助けて」


「少し待ってて」


 美細津達は、崇一の言葉を聞き、はっとして慌てて動き出した。

 美細津は、ズボンを履きながら金田の死体踏んで進んでくる崇一に声をかけた。

 下瀬と嵯峨もストレージから両刃の斧と、サーベルとラウンドシールドを取り出した。


「九条、てめぇ、何してやがる」


「Cランクの分際で、逆らおうってのかよ」


「金田に何しやがった」


 崇一は、無言で風を操り美細津達3人の両足を切断した。


「ぎゃあああ」


「いでえええぇぇ」


「ああああああ」


 地面に倒れ、苦痛にもがいているところに近づくと美細津が声をかけてきた。


「てめぇ、何しやがった」


「何って? 知ってるだろ。

 Cランクまで詠唱で規定魔法が使える、Bランクから無詠唱で魔法が使えるって。

 単純に無詠唱で魔法を使っただけだよ」


「な、てめぇCランクじゃなかったのか?」


「面倒事を避けるため、Cランクって誤魔化してたから」


「くらえ!」


 崇一と美細津が会話している間に、下瀬が複数発生させた水弾を打ってきた。

 崇一は無言で上昇気流を作り、水弾を上方にそらした。


「な」


 美細津は同じAランクの下瀬の攻撃を軽くそらした崇一に驚いた。無詠唱を使い始めるBランクではなくAランクかそれ以上と気が付いたのだろう。

 崇一は、起き上がれない下瀬と嵯峨に近づき、それぞれの背中に双龍を振り下ろし留めをさした。


「ぐぁ」


「がっ」


 そのまま、美細津も殺そうと向き直ると、美細津が手を挙げて止めてきた。


「ちょっと待ってくれ。

たっ、助けてくれ」


「待ってくれって言って、お前らは待つのか?

その子だって言っただろ」


「た、頼むよ。

そうだ。金をやるから。昨日までに倒したやつので50万はあるんだ」


「別に金なんかいらないよ。お前たちより稼ぐ自信もあるしな」


「無抵抗な人を殺すのか。殺人だぞ」


「今更、お前たちだって好き勝手に色々やってんだろ?

 だいたい暴力で人を襲うなら、より強い暴力で襲われる覚悟があるだろ」


 崇一はこれ以上美細津の発言を聞いていたくなくなり、小さな竜巻を発生させ美細津を切り刻んだ。


「はぁぁぁぁ」


 崇一は、りきんでいた力を溜息とともに抜いた。

 もともと日頃のうっ憤もあったし、敵を倒していく内に生き物を殺す事に慣れてしまったのか後悔の念は出てこなかった。

 ただ、もう自分が何事もなく普通の生活には戻れないだろうと思い憂鬱になったが、今は助けるべきひとが居たので落ち込んでいられなった。


 一呼吸置き、美細津達が動かないことを確認したあと、少女のところに行き、ストレージに念のため入れていた毛布を掛けてあげた。


「もう大丈夫だよ」


「ああああああああああ」


 少女は崇一の顔を見ると、急に泣きついてきた。


「大丈夫。大丈夫だから」


 崇一は驚いて、一瞬固まってしまったが、妹に接してるんだと考えるようにしながら、少女が落ち着くまで、頭を撫でてあげた。

 よく見てみると、同じクラスだった佐伯さえき美香みかだと分かった。

 佐伯は、小柄な身長とスレンダーな体型、ボブカットの黒髪とテニスで日焼けした肌で活発な雰囲気のあったクラスで一番の美少女であった。


「そうか…」


 そこで崇一は、美細津達が今日のローテーションを代われと言ってきた理由がわかった。

 昼間のとき、もう少し考えて気付けていれば防げたかもと思うと佐伯に申し訳なかった。

 しばらくして、佐伯が落ち着いたようなので、出来るだけ笑顔で声をかけた。

 コミュニケーション力が不足しているうえ、家族以外の女性に慣れていないのでひきつったような笑顔だったが。


「佐伯さんだよね?

 俺のこと覚えてる? 同じクラスの九条だけど」


「うん」


「このままここに居ても仕方ないし、戻ろう?」


「でもこのまま学校に戻りたくない…」


「そ、そうだよね。じゃぁ、俺の家が途中にあるからまずそこに行こう。

 変な意図はないから、シャワーが使えるかもしれないから提案しただけで、いい?」


「わかった」


 崇一の家に着くころには、佐伯は少し落ち着きを取り戻していた。

 崇一は、先に家に入りシャワーが使えるか確認した。

 幸い水はでるが、停電のため温水にならなかった。


「えっと、水しか出ないけどシャワー浴びる?」


「浴びる。ありがとう」


 玄関で立っていた佐伯に声をかけ、中へ入るように促した。


「じゃぁ、そこの扉が脱衣所だから、籠にあるタオルを使って」


「わかった」


 佐伯が風呂に入っている間に、妹の部屋に行き服を借り、脱衣室に持って行った。


「ここに着替え置いておくから、妹のだけど着れると思う。

 俺は、居間のほうにいるから…」


 声だけかけて直ぐに居間に向かった。

 正直なところ佐伯のシャワーシーンに興味はあったが、このような状況では覗きなどする気もおきなかった。






 しばらくして、佐伯が居間に入ってきた。


「九条くん、お風呂ありがとう」


「いや、気にしないで…

 とりあえず、座ったら、少しして落ち着いたら学校に戻ろう」


「うん」


 崇一はこのようなときどう声をかけてよいか分からず、またアニメやゲームなどのオタク分野以外の話題がなくただ座って足元を見ていた。

 そんな崇一を見て、埒があかないと思ったのか佐伯の方から声をかけてきた。


「えっと、九条くん。

 助けてくれてありがとう。ちゃんとお礼を言えてなかったから…」


「ああ、えっと大変だったね。大丈夫?  …って大丈夫じゃないよね。ごめん」


「いいから気にしないで。逆にもうこの件を出さないでいてくれた方が助かる」


「わかった」


「えっと、九条くんに聞きたいことがあるんだけど?


「何?」


「九条くんって、私と同じCランクって聞いてたけど、本当のランクは?」


「SS」


「SSって一番上のランクでしょ。すごいじゃない。何で隠してたの?」


「テレビで上位ランクほど強い耐性が求められるって言ってたから。ゲーム内ではたくさんいたけど、このランクになると生存者が少ないかもって思って。

 実際に、この付近ではSSランクは見ないし。もしSSランクだって周囲にしられてたら何を言われるか分からなくて。

 あと、俺は両親にたのまれた家族が守れればいいって、強いともしかしたら強制的に戦場に連れて行かれるかもってのも考えた」


「そっか。じゃぁ周りには言わない。安心して」


「ありがとう」


「それはこっちだってば。でも九条くんと話したのって初めてかも」


「そうだね。基本的に小説を読むか、寝てたし」


「だよねぇ。あはははは」


「ははははは」




 それから学校に戻ったが、いつもより帰りが遅くなったので怒った響子の説教が待っていた。



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