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22. 決意

 崇一達が車で道を進んでいると、5分もしないうちに前からやってくる軽トラックが見えた。

 啓太が運転しており、荷台に泰介、啓次、詩織が乗って、助手席には政樹も乗っていた。

 軽トラックに気付くと崇一は車を道の脇に止め、下りて手を振った。



「崇一! 大丈夫か? 輝夜ちゃんは?」


「輝夜ちゃんは無事?」


「輝夜は?」



 崇一に気付くと、全員が車から降りて走り寄ってきた。

 政樹が車から降りたのをみて輝夜も車から降りてきた。



「輝夜! 無事か? 怪我はないか? あいつらにひどいことされなかったか?」


「大丈夫、大丈夫だから。最悪の事態になるまえにシュウが助けてくれたから」



 政樹は輝夜に走り寄ると、コートの上から肩、腕などをポンポンと叩きながら確認してきた。

 あまりにも政樹が慌てているので、逆に輝夜は落ち着いて返答が出来た。



「最悪の事態って、何かされたのか?」



 輝夜の返答で何かはされのかと政樹が怒りの形相で輝夜の肩を掴んできた。



「ちょっと服を破かれて下着姿を見られただけだってば」


「ホントか? 本当にそれ以外はないんだな?」


「だからその前にシュウが助けてくれたから!」


「良かった…」



 輝夜の身に本当に大した事が無かったと分かり政樹は輝夜を抱きしめた。



「パパ、ちょっと痛いってば、心配かけた事は謝るからとりあえず離して」



 あまりにきつく抱きしめられたので輝夜は慌てて離すように政樹に言った。



「ああ、すまない。でも本当によかった」


「ありがとう、パパ」


「良かったな輝夜ちゃん」


「ホント崇一が間に合ったみたいで良かったよ」


「詩織さん、泰介君、啓太さん、啓次さんもありがとう」



 輝夜は助けに来てくれた泰介達にもお礼を言った。

 輝夜が無事なことに安堵してしばらく輝夜が泰介達と話す様子を見ていたが、輝夜をさらった奴らの事を思い出し崇一のところにやってきた。



「崇一君、あいつらは?」


「この先の別荘に」


「生きてるのか?」


「いいえ。殺しました。生かしておいた方が良かったですか?」


「いや、いいんだ。もし生きてたら私が止めをさしてやろうと思っただけだ。

 娘を助けてくれて、本当にありがとう」


「いやお礼なんていいですよ。頭を上げてください。こっちの方が政樹さんたちにはお世話になってるんですから」



 政樹が急に頭を下げて礼を言ってきたので、崇一は慌てて上げさせた。



「いや、娘を助けて貰ったんだお礼ぐらい言わせてくれ」


「分かりましたから頭は上げてくださいよ」



 政樹がやっと頭を上げるのをみて崇一はほっとした。

 目上の人に頭を下げられるなんてことが今まで無かったので逆に困ってしまったのである。

 崇一が困っているのをみて輝夜が助け船を出してきた。



「パパ、シュウを困らせないで…。

 それと出来れば早く戻りたいんだけど。コートだけだから違和感がすごいし、早くお風呂に入ってすっきりしたいし」


「そうだな。じゃぁ皆戻ろう」



 崇一達は全員軽トラックに乗り込み、急ぐ必要がなかったので帰りはのんびりとギルドに戻った。


 ギルドに戻ってから今度は瑠璃に頭を下げられ、慌てている崇一が笑われるなどはあったが輝夜の無事が伝えられると受付のところに心配で集まっていた仲間たちもそれぞれの仕事に戻って行った。




 その日の夕食後、既にシャワーを浴びて着替えていた輝夜が崇一に声をかけてきた。



「シュウ、ちょっと話があるんだけどこの後部屋に来てもらっていいかな」


「ああ、いいよ」


「ありがと」



 崇一と部屋に戻ると輝夜はお茶を用意しはじめた。

 崇一は初めて妹以外の女子の部屋に入ったので、どうすればよいか分からず立ったまま部屋を眺めていた。



「シュウ、確かコーヒーよりお茶の方がいいんだよね?」


「あれ? そんなこと話したっけ?」


「うん、ゲームで。兄さんはコーヒー派だったんだけど、シュウはお茶の方がいいって言い争ったことがあるでしょ」


「ああ、あの時ね…」


「兄さんもシュウも引かなくて、何だかんだで1週間ぐらい主張してたから。はい、どうぞ。

 あと立ってないで座ったら」


「ありがとう」



 崇一にお茶をすすめて輝夜が座ったのをみて、崇一も向かい側に座った。

 ここに来る間にも輝夜が自分に話したい事が何か考えていたが一向に分からなかったので、お茶を一口飲んだあと崇一は自分から話を切り出した。



「で、輝夜。話って何?」


「う、うん…」



 輝夜は急に頬を赤らめると下を向いてしまった。

 崇一は話を切り出せばいつものようにすんなり話し出すと思っていたので、想定していなかった輝夜のしぐさに心臓が跳ねた。

 しばらく2人とも無言だったが、輝夜は一旦自分の胸に手を当て心を落ち着けて、うんと一回頷くと崇一の方をみて話し出した。



「えっと、話というかお願いがあってね」


「ああ…」


「今日あんな事があったでしょ。それでね。ちょっと怖いというか、不安というか……、嫌な事があったから忘れたいっていうか………。

 とりあえず、シュウに今晩一緒にいて欲しい…なって…。ダメ?」



 輝夜は話しているうちにだんだんと崇一の方を見ていられなくなり下を向いてしまった。

 最後には不安そうに上目がちに自分を見ている輝夜が何を言っているが崇一は直ぐに理解出来なかった。



「ねぇ、シュウ。ダメかな?」



 崇一が無言でいるので、軽蔑されるかもと輝夜は不安になりもう一度確認してきた。

 その頃に輝夜が言っていることを理解して崇一は真っ赤になった。



「お前、何を言ってるのか分かってるのか? ゲーム中ならともかく今は俺は男でお前は女だぞ。

 一晩一緒にって……」


「分かってるよ」


「本当に分かってるか? 俺だって男だぞ一晩一緒にいて何もしないってのはあり得ないぞ。

 ゲームの中では同じ宿やテントってのも確かにあったけど状況が違うからな!」


「分かってる。シュウだから言ってるの。と言うかシュウ以外にこんな事言わないよ…。

 今日襲われそうになって、やっぱりシュウ以外とは嫌だって気付いたから…」


「いや、そう言ってもらえるのはうれしいけど、俺はかっこいい訳でもないし、輝夜の周りにならアイドルとかかっこいい人も多いだろ」



 崇一は芸能活動をしている輝夜の周りには美形が多いので、そいつらには勝てないと思っていたので素直に受け取りがたかった。



「別に顔で選んでるわけじゃないから、シュウのことはゲームだけの付き合いだったけど小学校のころから好きだったから。

 会ってから結構アタックしてるつもりだったんだけど気付かなかった?」



 輝夜はゲーム中とはいえ長い付き合いがある崇一が多少捻くれた感性を持っていることは分っていたので、ストレートに言った方が伝わると思い、自分の顔が赤くなっていることは分ったが昔から好きだったことを伝えた。


 最初はいきなり言われた驚きもあり、いつものようにからかわれているのではと疑っていたが、崇一も同じく長い付き合いなので輝夜の真剣な表情をみて本心から言ってくれていることが分かった。



「ごめん。てっきりゲームの付き合いの延長で異性として認識されていないか、からかわれているだけだと思ってた」


「…やっぱり…、…いいや、過去の事を言っても仕方ないし…

 で、私の気持ちは伝えたけど、それでもダメ? それとも私ってそんなに魅力ないかな?」



 輝夜は崇一へのアタックの際恥ずかしさ等もあり、出来るだけゲーム内での言動に近づけたり、からかうような雰囲気で接していたのを少しくやんだが、今は置いておいて話を進めることにした。

 再度の輝夜からの質問に崇一は覚悟を決めた、正直なはなし輝夜は魅力的なので以前から抱きたいとは心の隅で思っていたが行き成りの誘いで躊躇してしまっていたが、流石にここまで女から言われて尻込みしてたらダメだと思ったのである。



「本当にいいんだな? 初めてだからうまくないだろうし、途中で嫌だって言ってもたぶん止める自信なんてないぞ」


「いいも何も私から誘ってるんだし、嫌なんていうわけないよ。それに初めてなのはお互い様だし…」



 輝夜はさっきまで戸惑っていた崇一がまっすぐ自分を見てきたので崇一の心が決まった事が分かり微笑んだ。

 崇一はそんな輝夜を見て、自分から近づき輝夜を抱きしめるとキスをした。輝夜は初めて崇一からキスしてもらった喜びで一瞬呆然としていたが、直ぐに自分からも崇一を抱きしめた。崇一は何度か軽くキスをして輝夜が受け入れてくれる事が分かるとフレンチキスに移行していったが、輝夜は一瞬目を開いただけで、直ぐに閉じてより強く崇一を抱きしめた。






 翌朝、崇一は左腕に重さを感じて目が覚めた。目覚めた直後で少しぼーっとしていた崇一は、裸の輝夜が自分の腕を抱いているのか分からず慌てた。輝夜が目を覚まさないように慎重に腕を外そうとしたが、思ったより強く抱いているらしく外すことが出来なかった。しばらくして意識がはっきりしてきたことで今の状況の原因を思い出し腕を外すのをあきらめた。嬉しそうに寝ている輝夜を見て、このまま輝夜を抱こうかとも考えたが、朝からってのも気が引けたので、天井を眺めながらここ数日の事を思い出した。


 闘技大会が決まってから埼玉県の代表と長野のギルドから輝夜にだけ勧誘が来た。ユニオンを抜ける際にSSだと周囲にもばれたので自分の事も広まっているだろうと考えていたが、ここ数日の件で大崩壊前とくらべ情報伝達が悪くなっているため自分の事は広まっていないと判断出来た。埼玉県側の対応は問題ないが、今後も芦屋達のような奴らが来ないとも限らない。輝夜を守るために自分に何が出来るかと考えていると、輝夜もいつのまにか目を覚ましたのか崇一の方を見ていた。



「おはよう、シュウ。どうしたの何かずっと天井を見てたけど…」


「おはよう。ちょっと考え事をしてた」


「考え事?」


「ああ…。………輝夜、俺闘技大会に出るよ」



 昨日まで闘技大会への参加については乗り気ではなかった崇一が急に出ると断言したことを輝夜は疑問に思った。



「どうしたの急に、興味なさそうだったから出ないと思ってたけど?」


「いや、ここ数日の状況からするとギルドにいるSSは輝夜だけとしか周囲は認識してないだろ。でもこのギルドを守るためには輝夜だけじゃなく他にもSSが居るってことを周知しなくちゃいけないと思ったんだ。

 でも、ユニオンを出た際に俺もSSってばれてるから知られているかもと思ったけど、県ですら俺の事を知らなかった。大崩壊前はともかく今はもっと積極的に情報を流さない限り、それこそ輝夜みたいにテレビに出るとかしない限りは広まらないって分かったんだ。だから闘技大会はちょうどいいと思うんだ…」



 崇一は輝夜を守るというのが恥ずかしくギルドを守るためと説明したが、輝夜は崇一の意図が分かりうれしくなり崇一に抱き着いた。



「ありがとう。シュウ」


「別にお前のためだけじゃないぞ、響子もいるし、守や美香さん、啓太さんとか守りたい人がいるから…」


「分かってるって、要はシュウもSSだって周知してうちのギルド自体に手を出されにくい状況を作ろうってことでしょ」


「ああ」


「ってことは、泰介君にも勝ち抜く必要はなくても出てもらった方がいいかな?」


「そうだな。その方がいいだろうな。まぁ昨日の感じだとすんなり出てくれそうだけど、一応今日話してみよう」


「うん」



 話が済むとどちらからともなく軽いキスをして2人は起き上がった。

 そのあとシャワー等すませて一緒に食堂に行くと、既に食事を終え出る人達もいた。崇一は泰介がまだいるか見渡したが見つからなかったので、食事をしていた守達に声をかけた。



「おはよう。守、美香さん、啓太さん、啓次さん、詩織さん」


「「「「おはよう」」」」


「おう、今日はゆっくりだな」


「まぁ、昨日の疲れもあったんで今日はゆっくりしようかと、ここいいですか?」


「そうか、ああ、いいぞ」



 崇一は啓太の質問に答えつつ、席に座った。



「泰介ってもう出ました?」


「いや、俺らが来たときはいなかったし、特に出たって話は聞いてないからこれから起きてくるんじゃないか? どうした?」



 崇一が泰介の所在を確認すると、昨日の今日ということもあり啓太は何かあったのかと眉をひそめた。



「あ、いやちょっと闘技大会の件で話そうと思っただけで大した事ないですよ」


「そうか」



 崇一は守達、前回のミーティングに参加していないメンバーもいたので話を濁した。

 啓太もここで話す事ではないと判断し、直ぐに流した。


 崇一と輝夜は泰介達がいないのならと朝食をとることにし、カウンターで食事を受け取るとまた守達のテーブルに戻って一緒に食事を始めた。

 しばらくは食事をしながら雑談をしていたが、先に食べ終わった詩織が食器を片づけた後、輝夜の横に移動してきて小声で輝夜に話しかけた。



「ねぇ、輝夜。昨日はどうだった?」


「どうって、動けない、話せないって状況で襲われかけたんだから、どうもこうもなく私が殺してやりたかったぐらいだけど? なんでそんなこと聞くの?」



 輝夜は小声で質問された意図が分からず、食事の合間に普通に返答した。



「いや、昨日の昼じゃなくて夜のこと」


「なっ」



 輝夜は詩織の意図が分かり真っ赤になって止まってしまった。

 急に食事を止めたので、何かあったかと崇一達が輝夜を見てきた。



「輝夜、どうかしたのか? 詩織さん何言ったんですか?」


「な、なんでもないから、気にしないで。詩織さんちょっといい」



 向かいに座っていた崇一が輝夜と詩織に声をかけてきたので、輝夜は慌てて詩織を掴むと席を離れた。

 食堂の人気のない方の隅に詩織を連れていくと、輝夜は顔を赤らめたまま問い詰めた。



「なんで」


「なんでって、歩き方見りゃわかるわよ。私も初めてのときはそうだったし」



 輝夜が混乱のためか「なんで」としか言えなかったが、詩織は涼しい顔で輝夜の質問の意図を察して答えた。



「ま、その反応からしても間違いなさそうだし、私は祝福してるんだからそんな睨まないでよ。

 じゃ戻ろっか。ほら皆も不審がってるから」


「ほらって詩織さんが変な事聞いてくるからで…、ほかの人には言わないでくださいね」


「別に広める気はないから、でも男子は気づかないだろうけど女子は気付く人は気づくからね」


「…わかりました…」


「拗ねないの。はいじゃあ戻るわよ」



 詩織に言われ、輝夜は他の人にも気づかれるだろうことと、女子の集まりなどで質問責めが想定出来てちょっと落ち込んだ。

 詩織はそんな肩を落とす輝夜を押して席にもどって、こっちを見ている男子たちに問題ないと示すように手をヒラヒラとした。

 無言でジェスチャーだけする詩織を見て聞いても答えないだろうと判断した崇一達は食事と雑談に戻った。



 朝食の時間があと少しで終わるというタイミングで泰介達が駆け込んできた。頭の寝癖や寝ぼけた視線から本当に今しがた起きた事が分かった。

 泰介達はカウンターで食事を受け取ると、席について慌てて食事を開始した。

 食事自体は指定の時間にカウンターで受け取れば食べられるのだが、指定時間以後に食器を返却すると自分で洗わなければいけないのだ。指定時間前ならば返却口に返すだけで当番の人がまとめて洗ってくれるので、おそらくその時間に食器返却を間に合わせるつもりなのだろう。何人かはいっぺんに食べ過ぎてのどに詰まったのか胸を叩いているものもいた。



「おい、そんな焦って食べなくてもいいだろ。自分で洗えばいいんだから」



 泰介に用があり泰介達の席に近づいていた崇一は、呆れて泰介達に声をかけた。



「シュウ、後にして」



 泰介は口に食べ物が入ったままそれだけ言うと食事に戻った。うまく聞き取れなかったが様子などから言いたい事が分かった崇一は、食後に話があるとだけ伝えて席に戻った。

 しばらく啓太たちと話をしていると泰介がやってきた。



「で、シュウ話って?」


「もういいのか? ちょっと話があってな時間あるか?」


公貞きみさだ頼牙らいがが洗い物してるから大丈夫だよ」



 どうやら2名ほど返却時間に間に合わなかったみたいだったが、泰介は間に合ったみたいでのんびりと返事をしてきた。



「闘技大会の件なんだけど、ちょっといいか。啓太さんもいいですか?」



 崇一は、泰介と啓太に声をかけて席を立つと食堂から出て、応接室にやってきた。応接室には昨日のうちに仮のドアを付けてあったので全員が入ると扉を閉めた。



「で、崇一どうしたんだ? 闘技大会の件って言ってたが出ないってことか?」



 啓太は崇一が乗り気でなかったのを知っているので出ない事を決めたんだろうと思っていた。



「いや、ギルドの代表として闘技大会に出ることにした。ただ、一緒に泰介にも出てもらえればと思って」


「俺? なんでシュウが出るんなら意味がないじゃん。シュウが負けるような相手に俺勝てないよ」


「そうだぞ、お前の方が知ってるだろ泰介は戦闘タイプじゃないから出ても厳しいぞ」



 崇一の言葉を聞いて泰介も啓太も何で泰介が出る必要があるのか分からなかった。

 困惑した顔で崇一を見ている2人に崇一の後ろにいた輝夜が声をかけた。



「泰介君には勝ち抜いて欲しいわけじゃなくて、SSランクとしてギルド所属ってのを明確にして参加して欲しいだけなんだ」


「参加だけ? でもなんで?」



 当然の疑問を投げかけてくる泰介に崇一は今朝輝夜に話したことをまとめて2人に伝えた。



「なるほどな、ギルドを守るためにSSが複数いるってことを周知したいと…。いいんじゃないか泰介、問題がなければ出たらどうだ。勝つ必要はないんだ、SSってのだけ認識させればいいんだから」


「いいよ。どうせシュウが出ないと思ってたから俺が出ようとは思ってたから。それで皆の安全性があがるなら断る理由はないでしょ」


「ありがとう」



 崇一は、すんなり提案を受け入れてくれた泰介と啓太に頭を下げた。



「気にするな、ギルドの問題でもあるんだ。各自が出来ることをすればいいんだよ。

 で、どうする今日の夜にでも政樹さんには話すか?」


「そう考えてる。埼玉側にも連絡しないといけないから明日から動けるように夜には話そうかと。おそらく啓太さんたちもまた呼ばれるだろうから空けといてもらえるといいかも」


「わかった。じゃぁ今日はパトロール当番なんでな俺は行くわ」


「じゃ、俺も」



 啓太が出ていくと泰介も一緒に出て行った。



「じゃぁ、俺たちは政樹さんに話をしに行くか。そのあとはどうする?」


「魔石の準備も必要だろうし、近場で魔石集めでいいなじゃない。使わなかったとしてもギルドの財産になるし」


「分かった」



 崇一と輝夜は政樹に闘技大会の参加の意思を伝え、夜にミーティングを開く事を聞くと近場の川に向かった。収穫としては少なかったがちょうどよい時間つぶしにはなった。







 その日の夜、前回と同様に政樹と瑠璃の部屋に主要メンバーが集まった。

 全員が集まったところで政樹が話し始めた。



「ちょっと予定より早かったんだが、崇一君より闘技大会の件で話があったので皆に集まってもらった。

 で、崇一君闘技大会へ参加するとのことだったが間違いないかな?」



 政樹には既に話してあった事だが、質問をしてきた政樹の視線の強さから最後の確認だと分かり、崇一は姿勢を正して答えた。



「はい。埼玉の代表として参加します」


「一応みんなの前で理由を聞いてもいいかな」




 


 昼に政樹には参加の意思だけを伝えていたので、ここにいるメンバーでは政樹、瑠璃、加藤が参加の理由を知らなかったのだ。




「はい。現在周囲の情報では当ギルドには輝夜しかSSランクが居ないと認識されています。そのため輝夜だけ何とかすればと考える奴らがギルドを狙う事が考えられます。大会に出てギルドに他にもSSランクがいると判明すれば手が出しにくい状況を作れると思いました。こんな状況なので少しでもギルドを守る方法があるなら取れる手段はとりたいと思いまして」



「そうなると泰介君も知られた方がいいと思うんだが?」




 崇一の理由を聞いて、政樹は泰介も出た方がより状況がよくなると考えた。




「はい、なので泰介には既に勝ち抜く必要はないけど、大会には参加するとのことで了承を貰っています」



「はい。俺も参加します」




 政樹が泰介に視線を向けると、泰介は崇一が言ったことに間違いがないことを示すため返答した。




「そうか、じゃぁ輝夜は崇一君nサポートにつくとのことだったから、当ギルドから3名の参加ってことで、県の方に連絡をとるけどいいかな?」




 


 政樹は全員を見渡し確認をすると、全員頷いて了解の旨を伝えてきた。

 その後は明日には県に連絡を取ることを確認するとその場は解散となった。


 


 



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