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18. 模擬戦

 翌日、朝食を食べて少ししたところで泰介達がやってきた。

 崇一と輝夜は、夜の見回り後少し仮眠を取っただけだったので、多少眠かったが笑顔で出迎えた。

 取り合えず、空いていた教室を借りてそこで話し合うことになり、泰介達から自己紹介を始めた。



「じゃぁ、俺から紹介するよ。

 まず俺が瀬上せがみ泰介たいすけ、中一で昨日言ったとおりセッタの名前でプレイしてた。

 ランクや属性は2人が知っての通り。

 あ、俺の事は泰介で呼んで、仲間もそう呼ぶから。


 で、俺らのチーム頑火輝石エンスタタイトの紹介になるけど、まずこっちがヘッドの石渡いしわたり海斗かいとさん。中三で、俺の幼馴染の兄貴分」


「よろしく。昨日はすいませんでした」



 泰介が紹介すると海斗が頭を下げてきた。



「ああ、気にしないで」



 昨日の様子と大分違うので崇一が唖然としていると、輝夜がさらっと流した。



「じゃぁ続けるよ。

 そっちから順に

 ひがし厚浩あつひろ、中三。

 飯田いいだ哲彦てつひこ、中二。

 五十嵐いがらし明人あきと、中一。

 久保田くぼたれい、中三。

 田中たなか幹雄みきお、中三。

 神宮寺じんぐうじ紀一郎きいちろう、中三。

 加藤かとう公貞きみさだ、中一。

 宇土うど仁哉じんや、中二。

 吉田よしだ頼牙らいが、中二。

 海斗さん含め全員Cランクだよ。


 ギルドは頑火輝石の名前で作ってたけど、俺以外は週に1、2度やるかやらないか程度だった。

 だから別行動してたけど、覚えてるかなぁ、何度か俺を訪ねて臥龍鳳雛のギルドに来たことがあるよ。


 昨日も言ったけど根は悪い奴らじゃないから、俺ともどもよろしく」


「セッタの友達なんだろ。こっちこそよろしく。

 じゃぁ俺たちだな。


 まず俺は九条崇一。高三だ。そこの泰介とゲームで同じギルドだった」


「次は私、松永は芸名なので本名の月城輝夜で覚えてもらえるとうれしいかな。

 高一でシュウと同じく泰介くんと同じギルドでした」


「「「「「よろしく(おねがいします)」」」」」



 崇一が自己紹介したときは頷きはしたが無言だった連中が、輝夜が自己紹介すると一斉に挨拶をしてきた。

 崇一が苦笑いを浮かべていると泰介が話を続けてきた。



「俺たちはここが地元だけど、シュウたちはどうしてここに来たの?

 たしか輝夜ちゃんはユニオンに所属してたと思うけど?」


「ああ、俺がユニオンをクビになってな。輝夜や他の仲間がついて来てくれたんだ」


「クビって何をしたの? それとも引きこもりよろしく何もしなかったから追い出されたの?」



 ゲーム内の会話で崇一が引きこもり気味なのを知っていた泰介は、これから一緒に行動した場合、働かないようならお荷物になりかねないので、何もしなくて追い出されたのかと心配になった。



「なんだよその何もしなかったってのは」


「だってシュウでしょ。日がな一日ゲームのため部屋に引きこもってた。

 俺だって結構入ってた方だけど、シュウには敵わなかったからなぁ」


「うるさい。

 今回はユニオンのSランクのやつとちょっともめ事があってやり返したら追い出されたって形かな」


「何があったの?」


「いや、大した事じゃないから」


「今後付き合ううえで知っておきたいんだけど?」



 崇一が話を終わらせようとすると泰介が詳細を聞いてきたので、輝夜が代わって説明をした。



「えっと。私がシュウのパーティに入ったら、Sランクだった赤染達がシュウを襲ったの。

 後でやり返したんだけど、そんなところにずっといるのも問題があってみんなで抜けたって形だから、シュウが何か悪さをしたわけじゃないから、大丈夫」


「襲われたってシュウはSSでしょ。Sランクなら何とかなったんじゃないの?」


「シュウの妹さんを人質にされてね」


「そういうこと。確かにあまりそんな場所には居たくないね」


「でしょ。そういわけでシュウが出ていくとき私たちもついてきたの」


「じゃぁ、今は何処にも所属してないんだ?」


「今所属のギルドは無いけど、うちのプロダクションを中心にしてギルドを立てる予定で、今は新しい拠点探し中ってところ」


「へぇ、探し中…。ちょっと待ってって」



 泰介は話を中断すると、手招きでチームのメンバーを集めた。



「海斗さん、シュウたちがギルドを立ち上げたら俺たちもそこに入れてもらわない?」


「何でだ、今までそんな事気にしてなかっただろ?」


「まずシュウと輝夜ちゃんのSSが2人いるってことと、輝夜ちゃんはSSで生属性持ちだからなんかあった時助かる確率が高い。以前は3~4日に一回出るだけだった敵が毎日出るようになってきているし、噂だと沿岸部には強い敵も出始めてるみたい。今後の事を考えたら今のうちに落ち着くのも手だと思うけど。

 まぁ、俺が2人と同じギルドだったからまた一緒にやりたいってのもあるけど、どう?」


「確かにな、チームにも生属性はいるが強い回復は使えないしな…。

 お前たちはそれでいいか?」



 海斗は周囲で話を聞いていたやつらの顔を見渡し、全員が頷いた事を確認した。



「よし、泰介。お前の提案で行こう」


「了解」



 チームの許可が得られたところで泰介が崇一達のところに戻ってきた。



「ちょっと今みんなで話たんだけど、その拠点が決まってギルドを立ち上げたら、俺たちも入れてもらっていい?」


「大丈夫。泰介君たちなら歓迎するよ」


「ああ、大丈夫だと思うぞ。一応月城さんたちに確認しておくから」


「じゃぁ、そういうことでお願い」


「ああ」


「あ、そうだ、ギルマスは? ギルマスも女だったの?」



 泰介が臥龍鳳雛のギルドマスターだった輝夜の兄について質問をしてきて、輝夜が下を向いてしまった。



「アスボンは輝夜の兄で本当に男だったんだけど、大崩壊の日に体が耐えられなくて亡くなったんだ。

 あとミオも同じく耐えられなかったって聞いてる」


「え、じゃぁ臥龍鳳雛って俺らだけになっちゃったの?」


「ここに居る3人だけだな」


「そっか、ギルマスもミオも死んじゃったのか…。会ってみたかったな…」


「そうだな。俺も輝夜から聞いただけだから、直接会ってみたかったな。

 それより、まさかお前が不良だとは思わなかったぞ」



 崇一は湿っぽくなったので、話題を変えることにした。



「不良って…。まぁ確かにこの見た目ならそう思われるよね」


「だろ。今は染めてないみたいだけど、見事に髪の先端は金髪だし、ピアスもしてるし」


「俺自身はそれほど不良ってほどではないんだけどね。

 どちらかというとゲーマーだから。

 ただ、幼馴染がチームのヘッドになった関係で一緒にいるというかなんというか」


「幼馴染って海斗君か」


「うん。近所でね。俺の兄貴分なんだ」


「そっか。それで1人だけどっぷりゲームに浸かってたのか。

 チームなのに1人だけ別ってちょっと不思議だったんだよな」


「うん。中途半端に入っている俺を仲間と認めてくれてるみんなには感謝だよ」



 崇一は現実とゲームが違う事は分かっていたが、ヤーグが女だったことがあったのでセッタが不良だったこともすんなり受け入れる事が出来たし、実際に話してみると輝夜のときと同じで、見た目じゃなくて言動がセッタだったので安心した。

 その後は、主に輝夜の周りに集まっていたがお互いに雑談をした後泰介達は帰って行った。




 崇一達が体育館に戻ると、守や啓太たちが寄ってきた。



「大丈夫だったか?」


「へ? なんで?」



 寄ってくるなり崇一達を心配する声が上がり、崇一と輝夜は訳が分からなかった。



「だって、見るからにヤンキー崩れの連中が集団出来たんだぞ。崇一はともかく輝夜ちゃんは心配だろうが」


「ああ、そうだよな…」



 崇一と輝夜は泰介がゲーム内の仲間だってしっており、泰介の仲間なら大丈夫と思っていたが、崇一だって昨日の初対面の時は警戒していたのだから初めて見る人達なら明らかに不良の集まりにしか見えない彼らを警戒するのは当然だった。



「大丈夫だよ。彼らは今後うちのギルドの仲間になるから」


「そうなのか?」



 啓太がほんとに大丈夫なのかと顔に表して確認してきた。



「まぁ、あの見た目だし不安になるのも分かるけど彼らの中に泰介って奴がいて、そいつが臥龍鳳雛の仲間だったんだよ。

 俺と輝夜の武器等を作ってくれた生産をメインにしていたやつで、SSランクだから今後の事も考えて一緒に居てくれた方がみんなも助かると思うけど」


「なんだゲームの仲間か。じゃあ大丈夫か。

 でもSSの生産プレイヤーか、確かにいてくれると助かるなぁ」


「全員中学生みたいだしヤンチャなところがあるかもしれないけど、実際に話してみるとそんな悪いやつらじゃないよ。

 まぁ、あとは付き合っていって掴んでいくしかないけど」


「そうか。でもお前たちの仲間だったんだろ。じゃぁ心配いらないな」



 啓太たちも安心したのか各々自分の場所に戻って行った。





 その日の夕食時、政樹と瑠璃から全員に話があった。



「一応何ヶ所か候補を見つけてきたんだけど、全員が一か所に住める場所にすると現在市街地に作成されている防護壁より外側になっちゃうみたいなんだけど。それでもいい?

 川沿いにある防護壁より外ってことは無いし、一部壁の作成の手伝いをすれば電気も流せるように配線をしてくれるって話にはなってるんだけど…」


「社長がOKならそれでいいんじゃないですか。幸いうちらはノンプレイヤーの集まりじゃなくて、プレイヤーもいるんですし、自分たちの建物の周りに自分たち用の防護壁を作れば問題ないかと思うんですけど。

 逆に、市街地に無理に作ってお互いの連絡などが取れない方が問題だと思いますし」



 瑠璃の話に、プロダクションの人が答えた事にみんなが頷いていた。



「他のみんなも今の意見に同意とみていい?」



 瑠璃は念のため再度全員をみて反応をまったが、特に反論意見は出なかった。



「じゃぁ、明日その候補を見てくるからもう少しだけここで待ってて頂戴」


「「「「「わかりました」」」」」



 瑠璃が締めたことで各自で食事を再開していると、輝夜が瑠璃に話しかけた。



「ねぇ、ママ新しいギルドに入りたいって人がいるんだけど、問題ないよね?」


「何? 基本的にギルドに入りたいって人は受け入れようとは思ってるけど、赤染君達の例があるから面接してどのような人なりかは判断しようと思ってるけど?」


「うん。それは賛成なんだけど、入りたいっているのが地元の不良少年達なんだよね」


「何それ、大丈夫なの? その様子だと輝夜は話をしたみたいだけど」


「うん。大丈夫だと思う。それにその中に1人ギルドの仲間がいて、ほらセッタって生産を担当していた子の話はしたでしょ」


「ああ、輝夜の武器とか防具を作ってくれた人でしょ」


「うん。今回入りたいって言ってくれてるのがそのセッタとセッタの友達なんだ」


「シュウとも話したんだけど、仲間ってのもあるけど今後の事を考えるとセッタのSSランクの生産者ってのは仲間に居てほしい人材なんだ」


「そういうことなら問題ないわよ。逆に歓迎だわ」


「ありがとう。じゃぁ今度あった時に彼らには伝えておくから」


「分かったわ」



 その後は新しい場所にこの部屋が欲しいだとか、一緒の部屋にしないかなど新しいギルドでの生活にむけて色々と想像しながらの雑談となった。


 翌朝、崇一達が体育館の隅でのんびりしているとまた泰介達がやってきた。



「シュウいる?」


「おう。泰介こっちだ」


「ああ、よかった。これから俺たち川に討伐に行くんだけど、一緒に行かない?

 海斗さんたちとも話たんだけど、シュウたちがどんな風に戦うか見てみたいんだって」


「ああ、俺は構わないぞ。輝夜はいいか?」


「いいよ」


「じゃぁ、外で待ってるから」



 崇一は輝夜の許可も得られたので、直ぐに準備を開始した。

 体育館を出たあたりで、少し離れたところで待っていた泰介がやってきた。



「ごめんね。2人とも、どうやら同じSSでも俺は生産特化だったから前衛の場合どんな風に戦うか興味があるみたいで」


「気にするな。これから一緒に戦うんだ。気になって当然だろ。

 あと、ギルドへの参加は問題ないぞ、昨日許可が出たから」


「そっか。ありがとう。

 じゃぁ、今後は一緒の行動の方がいいかな?」


「そうだね。他のプレイヤーとも慣れた方がいいから明日以降は一緒に行動する形でいいんじゃない」



 泰介の疑問に輝夜が答えた。



「分かった。みんなにも言っておくよ。

 じゃ、2人とも今日はお願いね」


「「OK」」





 川原に着いて、崇一と輝夜が先頭で進み始めたのだが、出てくる敵がEランクのショゴス等ばかりなので崇一の魔法で刻まれるだけで終わっており、戦いの参考にもならなった。



「どうする? このままじゃ何の参考にもならないと思うが…」


「だよね。でもこのあたりだとこいつらぐらいしかいないし…」



 崇一の疑問に、泰介も困ってしまった。

 いつもは泰介はサポートで他の人に戦って貰っていたので気にしてなかったが、この辺の敵ではSSランクの戦闘を見るという意味では弱すぎた。



「ねえ、泰介君、SSランクでも泰介君は認められてるよね。

 その時はどうしたの?」



 2人で突っ立って考えていると輝夜が質問してきた。



「俺のときは、元々仲間だったし一度魔法とか見せて終わったんだけど」


「そっか…。いっその事下流の方に行ってみる?」


「でも車はどうする? 俺は今ある大型バスは運転できないぞ」


「走って行くってわけにもいかないよねぇ」


「俺と輝夜についてこれるのは泰介だけだろ」


「だよね」



 しばらく3人で悩んでいると、海斗が加わってきた。



「あの、問題なければ俺たちと戦って貰えないですか?」



 海斗は崇一達がランクも年齢も上だということで初対面時より丁寧な口調になっていた。



「俺と輝夜と、そっちのチームでって事?」


「はい」


「いいんじゃない。何かあれば私が治すから。このままここで悩むよりかは早いと思うよ」



 輝夜の賛成もあり、泰介は審判で模擬戦を行う形に決まった。



「ねぇ、シュウ、私とシュウで行くの?」


「海斗達はそう希望してるけど?」


「2人で行ったら戦いにならないんじゃない?」



 輝夜が崇一に確認をしていると泰介がやってきた。



「それでもいいよ。どうせ2人が強いっての認識したいだけだから。

 戦い方なんて見ても分かる連中じゃないし」


「え、いいの?」


「うん。逆に魔法でも剣でもいいから一気に殲滅した方が、後々付き合いやすいと思うよ」


「そんなものなの?」


「不良なんてそんなもんだよ。特にうちのメンツは単純だから、強いと分かれば素直になるし」


「そっか」


「じゃぁ、いくぞ。半々で輝夜が右5人を攻めてくれ。左は俺がやる」


「分かった」



 輝夜が納得したところで、崇一は既に準備を終えて待っている海斗達の方に向かった。

 15mほど離れてお互い向き合った。

 きちんと海斗達の装備を見るのは初めてだが、海斗の両手剣をはじめ片手斧と盾、両手剣、槍、ハルバード、斧、双剣、杖と見事に分かれていた。中には変わった武器で大鎌や鎖ってのもいた。



「なぁ、泰介、これはワザとかぶらないように決めたのか?」


「そうだよ」


「でもこんなにバラバラだと連携しずらくないか?」


「だね。実際きちんとした連携をとったことは無いし…」


「そうか…」



 あまりにもバラバラな武器なので崇一は思わず泰介に確認をしたが、やはり連携等は考えた構成ではないらしい。

 今後一緒に行動するにあたり連携をどのようにとるべきか不安になってしまった。



「とりあえず、双方とも準備はいい?」


「ああ」


「はじめてくれ」


「じゃぁ、致命傷はなし。一度攻撃を受けたら直ぐに離脱してね。

 開始!」



 泰介は崇一と海斗が了承したのをみて、模擬戦の開始を宣言した。




 崇一は風と雷の魔法を体に付与して体と神経のスピードをあげ、一番最初に大きく両手剣を振りかぶって走ってくる海斗に目標を定めた。

 海斗は泰介の仲間ってことで一応手を出すことを辞めていたが、先日の件にしこりを感じていたのか合図とと同時にダッシュをして攻撃を仕掛けてきた。



「速攻か。様子見とかはしないのか?」


「SS相手にそんなの無駄だろ?」


「それもそうだ」



 崇一はそう答えながら走りだし海斗の目の前に一瞬立ち止まってから後ろに回った。

 海斗は一瞬で目の前に移動してきた崇一にあわてて両手剣を振り下ろしたが既に崇一はその場におらず、後ろから軽く首筋に刃を当てられていた。



「な…」


「はい。まず1人と、あぶないから少し離れてて」



 崇一はまだ構えたまま動き出していなかった4人の方に向かった。



「は、はやい…海斗さんが…」


「呆然としている暇はないよ」


「くそ」



 片手斧と盾を構えていた厚浩に走ってきた勢いで足払いをかけ転倒さつつ、そのまま右隣にいた両手剣をもった哲彦の後ろに移動し両肩に軽く斬りつけた。



「はい。2人目っと」



 両肩を斬りつけたあと、転倒から起き上がろうとしている厚浩の背中を剣先で軽く突いた。



「う」



 刺さってはいないが、剣先で押された事が分かり厚浩は起き上がるのを辞めた。



「はい。3人、おっ」



 そこに左側から鎖が伸びてきて、厚浩の背中に向けて伸ばしていた崇一の腕に絡まってきた。



「せいっ、今だ」



 崇一の腕に鎖が絡まったのを見ると公貞は、崇一の体勢を崩すため一気に引き、明人に合図をした。

 崇一は体にかけていた筋力強化の魔法を強めると、槍を突いて近づいてきた明人の背中に向けて、鎖を逆に引っ張り公貞を当てた。



「うわぁ」


「がっ」



 2人が一緒に転倒すると、腕に絡んだ鎖はそのまま双剣をそれぞれの頭に突き付けた。


「そんな…」


「早すぎだろ」


「終了っと」



 崇一は突き付けた剣先を下げると、輝夜の方を見たが向こうも既に終わっていた。

 どうやら一斉にかけてきた5人の周囲に炎の壁を作り閉じ込めてしまったらしく、輝夜は最初の場所から動いていなかった。



「まぁこうなるとは思っていたけど、はい、模擬戦終了!」



 泰介も想定していた結果通りになったのであっさりと終了を宣言した。



「えっと大丈夫か?」



 崇一は転んでたり軽く皮膚を切られて立っていた海斗達に声をかけた。



「はい、大丈夫です。

 とんでもない速さですね。SSってみんなこんな感じなんですか?」


「タイプによるかなぁ。俺は風を主体としたスピード系に特化してたから。

 中には全くピクリとも動かない防御主体の人とかもいたしね」



 海斗の質問に崇一はゲームでの対戦の様子を思い出した。



「へぇ。そんな人もいるんですね。会ってみたいですね」


「そうだね。会えたらいいね」



 あくまでゲーム内での話なので該当の人物が現実でも生きているか分からないが、崇一はあえて言わなかった。

 輝夜達もこっちに歩いてくるのを見て崇一は泰介に尋ねた。



「で、このあとどうする?」


「特に予定は無かったから帰るつもりだったけど?」


「時間があるなら練習しないか?

 ギルドの他の子を見てたりするんだけど、やっぱり戦闘そのものに慣れている方がいいから。

 俺と輝夜と泰介はあくまで助言だけで、海斗君達主体で戦って貰って問題点等を指摘していく形なんだけど」


「ああ、ゲームでもやってた奴ね。

 大崩壊後そんな事やってなかったなぁ。でも確かに海斗さんたちを鍛えるってのはいいかも。

 ねぇ、海斗さんどうする?」


「こっちはやって貰えるなら、ぜひ頼みたいが…」


「じゃぁ、この後は海斗君達の練習といこうか」



 泰介も海斗達の了承もあり、その後は守達にやっていたように後ろで見守りながら討伐をさせる形になった。

 4時間ほど経過したところでその日は終了したが、海斗から再指導を頼まれギルド参加以降、一緒に組んだ時に指導することになった。


 避難所に戻るときに海斗達と話しながら帰ったのだが、気に入られたのか中には崇一の事を兄貴と呼び出すものまでいた。

 今まで崇一は他人との接触を避けてきていたので、そんな風に呼ばれる事がなかったので気恥ずかしかったが、うれしくも感じていた。


 そんな崇一達と少し離れて輝夜と泰介が話していた。



「ねぇ、輝夜ちゃん。恋人とかいるの?」


「何、いきなり。泰介君はそんなタイプじゃなかったと思ったけど?」



 輝夜は、ゲーム中の泰介が彼女だとかに興味を持つ前にシューティングゲームの高ポイント獲得にはだとか、隠しアイテムの見つけ方だとかゲームにしか興味をしめしていなかったので、そんなことを聞いてくるのを不思議に思った。



「ああ、俺がどうこうって話じゃないよ。

 ちょっと仲間から聞いておいてくれって頼まれてね」


「そういうことね」


「そういうこと。で?」


「残念ながら、今恋人はいないよ」


「そっか。じゃぁあいつら喜ぶな」



 泰介は仲間が喜びそうな情報に嬉しそうに笑ったが、輝夜は直ぐに前に歩いている人に聞こえない程度の声で補足情報を言ってきた。



「ただね。募集もしてないから。

 一応、いまアタック中だから。シュウ以外に声をかけられても相手をする余裕がないから」


「そっか。シュウが好きなんだ。で、勝算は?」


「最近になってやっと以前のような自然な感じで接する事が出来るようになったから。これからかなぁ。

 ただ、シュウが松永輝夜に興味があったのは知ってるから、下手な子よりは勝算があると思ってる」


「そうだね。ゲーム中でも嫌ってほど話してたしねぇ」



 泰介はゲームの中で崇一達と話していた内容を思い出し苦笑いした。



「ま、そう言う訳で、その聞いてきた仲間の子には無理だって伝えておいて」


「了解」



 輝夜と泰介は少し離れていたので早足で崇一達の集団に加わった。

 泰介はそのまま崇一のところに行き、肩をポンと叩いた。



「うん。どうした?」


「大変だね。シュウ。頑張って」


「何が?」


 崇一は訳が分からず聞き返したが、泰介はそれだけ言うと直ぐに離れて行った。



「気にしない。海斗君達の指導の事だって」


「そうか?」



 泰介と一緒に崇一のところに戻っていた輝夜は、泰介の言いたいことは分かったがあえて違うことをいった。

 崇一は何か発言時の表情とかから違う意図があったようにも感じたが、答えてくれるとも思えず、しばらくしてそのことは忘れる事にした。


 その後も特に何もなく避難所に到着したので解散となった。


 

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