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17. マイルドヤンキーとの遭遇



 崇一達が川に着くと、11名の少年の集団が戦闘を実施していた。

 主に前にいる6人が4体の敵と戦っており、後ろの5人は少し距離を空けて眺めているだけだった。



「ショゴスだけか。やっぱり高いランクはいないみたいだ。

 邪魔しちゃ悪し、別の場所に行こう」


「了解」



 崇一は戦っている相手がショゴスだけであることを確認したあと、邪魔にならないように別の場所に移動することにした。



「おい、そこのやつらちょっと待て!」



 輝夜と一緒に背を向けて歩き出した時、大声で呼び止められた。

 振り向くと、後ろで戦闘を腕を組んで見ていた背の高い大柄の少年が4人を引き連れてこちらに向かってきた。

 濃い眉の鋭い眼光をした180cmを超えるがっしりとした体格だが、顔が若干幼さがあるので中学生だろうと思われた。

 髪の毛は短髪だが先端部分が茶色になっていて、大崩壊後染め直しをしていないことが伺えた。



「なんだ? 邪魔をしたなら謝る。

 この地域は初めて何で川の様子を見に来ただけなんだ、悪かった」



 崇一は、近くにより過ぎていたかと思い謝罪した。



「いや、お前に用はない。そっちの女…やっぱり松永輝夜か」


「ね、言ったとおりでしょ」



 先頭の男も含め耳や鼻にピアスをしている者もいた。

 男と話しているうちに4人が崇一達の周りを囲うように移動してきた。

 崇一は移動中だったので武器をまだ出していなかったので魔法を直ぐにでも発動できるように意識しながら会話を続けた。



「だからどうした?」


「確か噂では回復属性持ちだったよな。

 どうだい輝夜ちゃんそんな冴えない男より俺たちと一緒に行動しない?」


「そうそう、そんなやつより楽しいよ」


「俺たちのグループなら輝夜ちゃんも守ってあげられるから」


「結構です。守ってもらおうとか考えてないし、シュウ以外と一緒に行動するつもりもないので」



 男たちが口々に誘ってくるのを輝夜はきっぱりと否定した。



「そんなこと言わずに、海斗かいとさんと一緒の方が安全だよ。ね?」


「きゃっ」



 周りにいた男の1人が、輝夜のお尻をポンと叩いてきた。

 輝夜の悲鳴が聞こえた瞬間、崇一はそいつを風で吹き飛ばしていた。

 思わず動いてしまったが、念のため怪我等していないか横目で吹き飛ばした奴の様子を探っていると、男たちが騒ぎ出した。



「てめぇ、いきなり何しやがる!」


「覚悟できてんだろうな」


「人の連れに手を出してきたのはお前たちだろ、やるなら俺も手加減はしないぞ」


「へぇ、兄さん。俺たち全員を相手にするきか?」



 先ほどの大柄な少年が一歩前に出てきた。

 それをみて、周りの少年たちの1人が慌てて、戦闘をしていた残りのやつらの方に走って行った。



泰介たいすけを呼んでくる」


「全員で11人か。やっぱりつるまなきゃ人を威嚇することもできないんだろ?」



 走っていく奴をみて、崇一はワザと少年達を挑発した。



「いいだろ。俺が相手してやる」



 崇一が怖がっていない事が分かったのか顔をゆがめ大柄な少年が前に進み始めると周りの少年が止めはじめた。



「だめですよ。海斗さん。今、泰介が来ますから、泰介に任せましょう」


「泰介が言ってたでしょ。プレイヤーは見かけじゃ分からないから気をつけろって」


「おい、お前、今泰介ってのが来る。そいつがお前の相手だ」


「離せ。なめられたら終わりだって分かってるだろ。俺がケリをつける!」


「おい、お前ら絶対離すなよ。

 兄ちゃん、直ぐ兄ちゃんの相手が来るから逃げるなよ」



 少年たちが海斗と呼ばれる少年を羽交い絞めにし崇一から離れて行った。

 崇一はてっきり目の前の少年がリーダでこのグループをまとめているものだと思っていたが、別のやつの方が強いらしい。



「輝夜、ごめんちょっと下がってて」


「うん。まずそうだったら私も手を出すからね」


「ああ」



 崇一は、戦闘を終わらせこっちに走ってくる小柄で顔も体型も丸っとし、ほかの奴らと同じように髪の毛の先端だけ金髪に染めている奴を見て、輝夜を下がらせた。 



「おいおい、何やってんだよ。

 海斗さん一般の人とかには手を出さないじゃなかったの?」



 やってきた少年がそう言いながらやってきた。



「ちょっと勧誘したい奴が居て声をかけたんだが、こいつらが馬鹿やってな。

 でもなめられる訳にはいかないからケリをつけようとしただけだ」


「あちゃ~っ。

 そこの人ごめんね。悪気はなかったと思うんだけどこいつら言動が馬鹿だから。

 許してやってよ」



 新に来た泰介と言う少年は頭をかきながら、軽くペコと頭を下げてきた。



「な、泰介ちょっとまて、このままじゃなめられるだろうが」



 羽交い絞めにされていた海斗が泰介に文句を言ってきた。



「お前以外はこのまますんなり帰してくれなさそうなんだが?」



 その様子をみて崇一は泰介に声をかけた。



「でもさぁ、SSの俺が他のプレイヤーに手を出すといじめになっちゃうからさぁ。

 お兄さんも無駄に怪我はしたくないでしょ?」


「輝夜もう少し離れていてくれ。場合によっては巻き込んじまう」



 泰介が笑いながら言ってきた内容に崇一は気を引き締めなおして輝夜に距離をさらにあけるように言った。



「シュウ、何度シュウと前線をやってきたと思ってるの?

 シュウの行動の邪魔もしないし、巻き込まれないから」



 輝夜は溜息をつきながら、いざという時に回復出来るように逆に一歩崇一に近づいた。



「へぇ、SS相手ってわかっても逃げようとしないんだ?

 根性すわってるねぇ」


「「やっちまえ泰介」」


「俺たちをなめたこと後悔させてやれ」



 泰介が前に出てくると周囲の男たちが応援を始めた。

 泰介が近づくのに合わせて若干下がりつつ間合いを取って、崇一と輝夜はストレージから武器を取り出して構えた。



「へ? 双龍と鳳月!」



 泰介は崇一と輝夜の武器を見て目を丸くして立ち止まった。

 崇一達も泰介がこちらの武器の名前を知っている事に驚いた。



「なんだ、これを知ってるのか?」



 崇一はゲームの中の知り合いかと思い、質問を投げたが、泰介は崇一を無視して仲間の方に声をかけていた。



「海斗さん。まずいこの2人ともSSランクだ。

 おまけに生産系だった俺と違って、ガチ戦闘組!」


「な」



 泰介の言葉を聞いて、海斗達が後ずさりをした。



「海斗さん。ここは俺に任せて、絶対に口を出さないでくれ」



 泰介はそういうと、こっちを向くなり手を合わせてきた。



「わるい。ゆるして。

 シュウとヤーグ相手に喧嘩するつもりはないから」


「「は?」」


「こいつらも悪い奴じゃぁないんだ。ゆるしてやって」



 先ほどまでの生意気そうな態度から一転して、ひたすら謝ってくる泰介に崇一はどうしようかと思い輝夜の方を見たが、輝夜も困惑した顔で崇一の方を見ていた。



「でもヤーグが女でしかも松永輝夜だとは思わなかったよ。

 シュウや俺達の猥談にも普通に付き合ってたから本当に男だと思ってたんだけど」



 崇一達が困惑している間に、泰介は謝っていた態度からもどってにこにこしながら崇一達のそばに歩いてきた。



「まっいいや。また会えてうれしいよ」



 泰介はそう言いながら手を差し出してきたが、崇一は呆然とその手を眺めるしか出来なかった。



「あれ? どうしたの2人とも」



 崇一達が一向に握手も挨拶もしてこないので泰介は首をかしげた。



「誰だお前? 俺たちの事もこの武器の事も知ってるみたいだけど?」


「ああ、自己紹介がまだだったね。ごめんごめん」



 崇一が問いかけると、笑いながら謝ってきた。



「でも知ってるも何もそれを作ったのは俺だし、ギルドの仲間じゃん」


「へ?」


「セッタ! 本当にセッタなの」



 何を言ったか一瞬分からなかった崇一をおいて、セッタだと気が付いた輝夜が泰介に近づいた。



「うん。はじめまして。さっきも言ったけどヤーグが輝夜ちゃんだとは思わなかった」


「こっちこそ。はじめましてと久しぶり」



 輝夜は泰介が差し出した手を握り返し挨拶をした。



「本当にセッタか?」



 崇一がいぶかしげに自分を見ていることに気が付いて、泰介は白い槍を取り出した。



「疑い深いなぁ、はいコレ。虎牙も俺のオリジナルだからこれで分かるでしょ」


「たしかに虎牙だな。…久しぶり」


「久しぶり」



 白い刃と柄に虎が彫られている槍を確認した崇一は緊張をといて泰介の手を握り返した。



「こんな場所じゃなんだから、場所を移さない?」


「ああ、分かった」


「ちょっとシュウ。見回りは?」



 泰介が提案してきたことに話したいこともあった崇一が頷くと輝夜が止めてきた。



「あっ、そうかこの後…。

 すまない。ギルドの見回りの時間がもう少ししたらあるんだ。

 話たいのはやまやまなんだが、明日あたりに会えるか?」


「いいよ。シュウとヤーグは何処にいるの?」


「避難所なんだが…。輝夜名前分かる?」


「ううん。分からない」



 崇一と輝夜は避難してきたばかりで避難所の学校が何と呼ばれているところか分からなかった。



「避難所? もしかして中学校を使った奴?」


「そうだ。分かるか?」


「うん。この付近で学校をつかった避難所は一つだけだから。

 じゃぁ、明日そこに行くから」


「分かった」


「またねセッタ」



 学校自体は複数あるのだが、分散させるより一か所の方が守りやすいし管理もしやすいとの事があり、避難所として使用されている学校は一つだけだったので泰介にも場所が分かった。

 泰介が避難所に来てくれる形になり、ここでは一旦解散する形となり、崇一と輝夜は避難所の方に戻って行った。




 2人が居なくなると、海斗が泰介に近づいてきた。



「どういうことだ。泰介」


「海斗さん、あの2人は聞いてて分かったと思うけど、俺がゲームで入っていたギルドの仲間なんだよ。

 海斗さんたちも何度か俺のところに来たときに会った事があるはずだけど。

 ほら、シュウとヤーグって前衛二人組がいたでしょ」


「そうか。お前の仲間か」


「うん」


「わかった。お前たちあの2人には手をだすなよ」


「「「「了解」」」」


「「「押忍」」」


「「わかりました」」



 周囲の仲間がすんなり肯定してくれたので、泰介も安心して話を続けた。



「で、海斗さん、全員で明日改めて挨拶に行こうと思うんだけどいいかな?」


「ああ。わかった。

 で、確認なんだが、あの2人ともSSなのか?」


「うんそれは間違いない。その上生産特化だった俺なんかと違って、あの2人はギルドの中で完全に戦闘に特化してたから」


「じゃぁやっぱり強いんだな」


「うん。あの2人が連携して前線で戦うのは何度も見てたから。

 現実世界ではどうかはまだわからないけど、とりあえず俺は相手にはしたくないかなぁ」


「そうか。でも良かったな仲間が無事見つかって」


「だね。ありがとう」



 泰介と海斗が話していると、周りにいた男達が泰介に詰め寄ってきた。



「「「「(おい、)泰介オレ(たち)も輝夜ちゃんに紹介してくれ(よ)」」」」


「明日、会いに行くから。その時紹介するから」


「よっし」


「おっしゃー」


「じゃぁ、俺たちも上がろう」


 泰介は、はしゃぐ仲間に声をかけ撤収を開始した。


 

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