15. 報復と出発
翌日、崇一は響子と一緒にギルドのカウンターに挨拶に来た。
ギルド内に入ると、ラウンジからわざとらしいささやき声が聞こえてきた。
「昨日の今日でよく顔をだせるよなぁ」
「頭がいかれてるんだよ」
「除名になったんだから来なければいいのに」
崇一は聞こえてきた声を無視してカウンターに向かい響子と一緒に加藤に挨拶をした
。
「加藤さん、短い間でしたがお世話になりました」
「すいません。こんな急にやめる形になって」
2人が頭を下げると、加藤が苦笑いをして言ってきた。
「えっと、その件何ですけど、私もギルドをやめる事になってまして」
「え? どうして?」
「うちのプロダクションごと辞める事になったからだよ」
昨日は両親のマンションに泊り、崇一達と一緒にやってきていた輝夜が後ろから説明してきた。
「プロダクションごと?」
「そう。私が辞めるって伝えたらうちの両親がプロダクションごとギルドをやめるって」
「それって問題なんじゃぁ」
「うん。昨日のうちにプロダクション所属だった人は全員集められて残ってもいいって形で話したらしいけど、全員辞める形になったんだって。
まぁギルドへの所属は個人契約だから入るのも辞めるのも自由だから形式としては問題ないよ」
崇一は自分が発端で思わぬ事態になっているので冷や汗をかいた。
青白くなった崇一に比べ、輝夜はあっけらかんと問題ないと言い放った。
「シュウ、除名された人間が気にしても仕方ないよ」
「まぁ、そうなんだけどな…」
2人が話していると啓太たちがやってきた。
「おはよう。で、九条やっぱりやめるのか?」
「辞めるというより、昨日除名されたしね」
「そうか。輝夜ちゃんは…言わずもがなだな」
「うん。私も辞めるよ。というよりうちはプロダクションごと辞める形になったよ」
「そうか…」
啓太が顎に手をあて何やら考え出したと思ったら一緒に来ていた啓次と詩織に声をかけた。
「やっぱり、俺たちも辞めよう。問題ないよな?」
「ああ」
「私は最初から輝夜と一緒に行こうと思ってたし」
「なら問題ないな。じゃぁちょっと手続きをしに行くか」
啓太たちが離れたのを見計らって、先日助けた芳樹と真理たちの中学生のグループがやってきた。
「あの九条さん?」
「どうした?」
「ギルドをやめた後どうするんですか?」
「ああ、とくには考えてないな。それがどうかしたか?」
「いや、僕たちもついて行こうかと」
「いいのか? 俺なんかについて来ようとして?」
「大丈夫です。みんなで話し合いました。
九条さんは頼りになるし、輝夜さんも啓太さんたちも辞めるみたいだから」
「といってもなぁ、当てがないからなぁ」
崇一が考え出すと、輝夜が崇一の服を引っ張った。
「ねぇ、シュウ。母が言ってたんだけど、ここを出たらうちのプロダクションだけでギルドを立ち上げるんだって、シュウがよければそこに来ない?」
「え、そりゃ問題ないけどいいのか? 俺が起こした問題で辞める事になったのに」
「全然問題ない。っていうか今回の件はシュウは悪くないから」
「輝夜たちが問題ないなら、響子の事もあるから俺は助かるけど、本当にいいのか?」
「うん。いいよ。というより、シュウが来ないと私が入らないってことになってうちの両親が追ってくると思うけど」
「そうか。じゃあよろしく頼む」
「うん」
輝夜との話がつくと、崇一は秀樹たちの方をみた。
「という、形になるけど新しいギルドに一緒にいくか?」
「「「「「「はい」」」」」」
「なんだ、全員で嬉しそうに返事して、どうした?」
手続きが終わった啓太たちが嬉しそうにしている秀樹たちをみてやってきた。
「啓太さん、えっとシュウと秀樹君達がうちが立ち上げる新しいギルドに来ることになったんです」
「新しいギルド?」
「はい、母がうちのプロダクションを中心にして立ち上げるって言ってて。まぁまだ場所等は決まってないですけど」
「そっか。じゃぁ俺たちもそこに入れさせて貰えるか?」
「はい。問題ないですよ」
輝夜がシュウがギルドに来ることが決まったので嬉しそうに啓太たちに報告したのを聞いて、啓太たちも新しいギルドに参加することになった。
「よく出てきたな。もう一度身の程ってのを分からせてやる!」
いきなりラウンジに怒声が響いた。
赤染達が武器を既に出した状態で上への階段がある扉から出てきたところだった。
どうやらラウンジに居た何人かが崇一が来た事を赤染達に連絡したらしかった。
「『もう一度』って言ってるけど、いつそれを行ったんだ?
昨日の様子から隠してたんじゃないのか?」
「だまれ!!」
崇一が発言の揚げ足を取ると、顔を真っ赤にして赤染が怒鳴った。
「お~お~、本当に赤く染めたなぁ」
「ふざけやがって!!」
「覚悟しろ!」
一晩たち落ち着いて対処できるようになった崇一がからかうと、一緒にいた工藤や大野達も武器を構えた。
「輝夜ちゃん。回復を頼む。腕が治ったらこいつに思い知らせてやる」
工藤が治すのが当たり前との雰囲気で輝夜に回復を頼んできた。
「え? なんで治さなきゃいけないの?」
輝夜は嫌な奴に話しかけられ、眉をひそめながら疑問を返した。
「え? なんで?って、昨日こいつの所為で腕が斬られたから回復を」
治して貰えると思っていた工藤をはじめ、赤染達は崇一への怒りも忘れて輝夜を凝視してきた。
「何で私に頼むの? シュウを攻撃するような奴らを私が治すとでも思ったの?
それと私はもうユニオンをやめたので仲間でもないから治す理由もないんだけど?」
輝夜にしたらシュウの敵は当然自分の敵でもあるので、腕が無くなっていようが治す気は全くなかった。
その様子を見ていた周囲のプレイヤーは輝夜が明確に赤染達に対立し、さらにギルドを辞めた聞いて愕然とした。
赤染が先に我に返り、輝夜に声をかけてきた。
「輝夜ちゃん。そんな奴の言うことを信じるのか? そいつはAランクなのに勝手にイグに突っ込んで自滅した馬鹿だぞ」
「それが信じられないの。
赤染さん、以前イグが出た時私は結構簡単に始末出来たんだけど覚えてます?」
「ああ、輝夜ちゃんはあっさり倒してたけど、園田と2人だけのときは大分苦戦したよ」
「じゃぁ、SSランクではイグは楽に倒せると認めるんですよね?」
「ああ、そうだがそれがどうかしたのか?」
「シュウは、ゲーム時代私と同じギルドで SSランクだったんですよ。私は一緒に戦ってたので間違いありませんし、シュウちょっと腕を出して貰っていい?」
輝夜に頼まれると、崇一は別に見せなくてもいいとは思っていたが、このままだと輝夜が嘘つき呼ばわりされそうだったので、無言で左腕を出して、刺青を浮き上がらせた。
刺青は左上腕の肩付近にまで届いており、Sランクの上腕の中ほどで終わる刺青とは明らかに範囲が違った。
「な、SSランクだったのか…」
「そう、シュウだったらイグ程度楽に倒せるはずなんですよ。それがあんな重症を負ってたんだから赤染さんたちが言っている情報を信じられなくて当然ですよね」
「………」
赤染達が全員黙ったのを見て、周囲のプレイヤー達もどちらが嘘を言っていたかが分かった。
「シュウから、私のそばにいるなって脅されて妹を人質にされて手が出せなかったってのは既に聞いてます。
私がそばにいる相手は、私が決めます。あなたたちにとやかく言われる筋合いはありません」
輝夜の話を聞いて先ほどまで赤染達側についていたものも白い目を向けていた。
「輝夜、下がっててくれ。
向こうからまた喧嘩を売ってきたんだ、俺がやる」
崇一が輝夜の肩を持ち下がらせ、ストレージから双龍を取り出した。
「待ってくれ。俺たちが悪かった。許してくれ」
「怪我だってもう治ってるんだからいいだろ」
「すまなかった」
「謝るから、止めてくれ」
崇一が前に出てくると、赤染達は青ざめ慌てて謝りはじめたが、崇一は無視して風で赤染達を包むと周囲に被害が出ないように建物の外に運び出した。
「うわ」
「やめてくれぇえええ」
「たすけて」
「ゆるしてくれ」
外に運ぶ間も喚いている赤染達の様子に崇一は顔をしかめた、
「なぁ、散々あれだけやっておいて虫が良くないか?」
「悪かった。頼む許してくれ」
「すまなかった」
赤染達は崇一が声をかけても変わらず謝るばかりだった。
その様子を見て、周囲のプレイヤー達が崇一に嘆願してきた。
「ゆるしてあげて」
「これ以上はかわいそうよ」
「あんなにあやまってるだろ」
「あやまってるやつに手を出すなんてひどいぞ」
それを聞いて崇一は発言した奴らの方をにらんだ。
「だまれ!」
周囲が静かになったところで崇一は続けた。
「別に俺は自分が善人は思ってないし、お前らにどう思われても構わない悪人だと思うなら勝手に思ってろ。
売られた喧嘩を買っただけだ」
「でもあんなに謝ってるじゃないか」
「そうよ。許してあげて」
「じゃぁ、お前らはいきなり両腕を斬られ、膝も砕かれて、頭を踏まれ、足を剣でさされ、右足も切り落とされ、左目を潰されてもあいつらが謝ればゆるすんだな?」
「………」
誰も返事を返さなかった。
「俺には無理だ。負の連鎖だとか、どこかで食い止めなければいけないとか言う奴らが居るが、俺にはそんなんどうでもいい。そんなきれいごとであいつらがやったことは無くならない。
第一に自分がやり返されたくなかったら最初から他人にやらなければいいだけだろ。
どうせ自分がSランクで相手がAランクでまともな反抗が出来ないからって手を出す奴らだ、同じことを別のときにまたやるに決まってるだから俺が止めるなんて気もない、ただ自分が理不尽に味あわされた痛みの怒りを晴らすだけだ」
崇一が怒鳴ると誰も何も言わなくなった。
崇一はまだ謝り続ける赤染達に近づいていくと、赤染が雷の魔法を放ってきた。
「やっぱり、お前らはそういう奴らだよな」
謝る姿勢だけ攻撃を仕掛けてくると予想していた崇一は自分も雷の魔法を使い相殺した。
隙を付けたと思っていた赤染は、攻撃を防がれ目を見開いた。
その一瞬の間に崇一は赤染の両膝を剣の背を使って砕いた。
「ぐああああああ」
膝を砕かれ立っていられなくなった赤染はあおむけに転倒し、痛みにもがいた。
その様子を見て工藤達は土下座をして謝りだした。
「本当に悪かった」
「ゆるしてくれぇ、頼む」
「今の赤染の行動のあとでそれが信じられると思うか?
まぁ信じる信じないにかかわらずお前らが俺に売った喧嘩だろ、俺がきっちり買ってやったから返品はしないあきらめろ」
崇一は土下座したままの工藤達を蹴り上げ、体が浮かびあがったところで赤染と同じように剣の背で両膝を砕いて行った。
「ああああぁあぁあぁ」
「ぐ、うううううう」
「いでぇぇぇぇぇぇ!」
工藤達は体が地面に落ちると赤染同様もがき始めた。
「ねぇ、輝夜ちゃん同じSSランクなんだよね。こんなの酷いよ。止めてあげて」
「お願い、輝夜ちゃん」
赤染達の取り巻きの子が1人見てられないと輝夜に走り寄ると、続いて何人かの子たちも輝夜のところに駆け寄ってきた。
「シュウは、『こんなの酷いよ』ってのをあいつらにやられたんだよね…」
「え?」
輝夜が無表情のままつぶやくと、取り巻きの子たちが輝夜を見つめてきた。
「私は止めないから。私のシュウに手を出したんだからシュウがやってなかったら私が同じ事をあいつらにしてる。
止めたいなら自分たちで止めて」
輝夜の静かだが、怒気の籠った声を聞いて取り巻きの子たちも輝夜が怒っている事に初めて気が付き立ち尽くした。
崇一は輝夜たちの方を見て、特に誰も動く気配がないので、痛みでもがいている赤染達の残った腕と右足を風の魔法で切り落とした。
「助けてくれ、たのむ」
「おねがいします。ゆるしてください」
「わるかった、俺が悪かったから」
「いたい、だれか助けて」
「おい、そのままだと出血死するぞ、回復魔法を使って止めた方がいいぞ。そのぐらいの時間は俺も貰えたからな待っててやる」
這いつくばって助けと許しを請うだけ、出血を止めようとする様子もなかったので崇一が声をかけると、赤染達は慌てて自分たちの治癒を始めた。
出血が止まったのを確認したところで、這いつくばったままの頭を掴み全員の左目を潰した。
「次の雷で最後だ。自分たちが他人に何をしたかよく理解しろ」
「やめてくれ、今やられたら死んじまう」
「たのむ。これ以上は勘弁してくれ」
「許してくれ」
「おねがいします」
「お前たちだって俺が止めても止めなかったよな?」
崇一は落雷を4人の上に落とした。
全身にやけどをおい、4人ともしゃべらなくなった。
崇一はその様子を一瞥すると直ぐに輝夜たちの方に戻ってきた。
「おい、殺したのか?」
啓太が戻ってきた崇一に恐る恐る声をかけた。
「いや、殺してませんよ。生きてます。
あいつらが俺にしたことを返しただけなので、殺すことまではしませんよ」
そう言うと、崇一はそのまま足を止めずユニオンのギルドの建物から離れて行った。
輝夜たちは何も言わず崇一のあとについてきた。
しばらく立った時、崇一は一旦足をとめ、ついてきた輝夜や守、美香、啓太たち全員を見渡した。
「…俺は自分勝手な人間なんで、敵対する奴に容赦する気はありません。
見ての通り酷いこともやりますし、ここに来る前には人も殺したことがあります。
さっき一緒に来ると言ってくれたけど、考え直した方がいいかもしれませんよ?」
崇一が苦笑いを浮かべながらそう言うとまた歩き始めた。
崇一が背を向けて歩き始めて直ぐに輝夜が肩を組んできた。
「シュウ、気にしないでいいよ。シュウがやってなかったら私が同じことやってたから」
「崇一、俺たちの場合は今更だろ。ここに来る前からそんなの知ってる」
「崇一君が怒るときは理由があるから、気にしないで」
守と美香も直ぐに近寄ってきた。
「九条、お前が仲間を攻撃しないってのは短い付き合いだが分かってる。今回はあいつらから手を出してきたんだ気にするする必要はないよ」
「そうですよ。あいつらがやったこと聞いて僕たちもやってやろうと思いました。僕たちはついていきますよ」
啓太や秀樹たちもそのままついてきたのを感じて崇一は特に何も言わなかったが、赤染達に借りを返し終えてもすっきりとはしておらず沈んで閉じていた口元に笑みを浮かべた。
崇一が去って直ぐに取り巻きの子たちが赤染達の介抱に集まり、持っていた魔石を使い回復を図った。
「赤染君達があんなにあやまったのに、ここまでするなんてヒドイ」
「あんな奴辞めさせて正解だよ」
「こんな酷い怪我を負わされて赤染君がかわいそう」
「ちょっともっと魔石を持ってきてよ。回復魔法の使い手が3人じゃ足りないから」
主に女子が中心になり介抱をしている周囲で、介抱に参加していない男たちは冷めた目でみていた。
輝夜たちの話から赤染達が何をしたかを理解していたので、かわいそうとは思えなかったのである。
「ちょっとそこの男たちも運ぶの手伝ってよ」
ある程度回復したところで建物内に移動しようとしたところで女子たちから声がかけられたが一部の男しか動かなかった。
「何? あんたたちこんな怪我負わされた赤染君達がかわいそうじゃないの?」
「いや、思わないな。昨日の九条の状態をみてるからな。九条にあった刺し傷はそいつらにないし、やけどの具合も九条に比べたら断然に軽いだろ。九条はもっと酷かったぞ」
「な? あんなヒドイ奴の肩を持つの?」
「ヒドイ奴って、輝夜ちゃん話を聞いてたか? 同じことを先にこいつらがやってるんだぞ。それも1人に対して4人で!」
「それは、あいつが赤染君達を怒らせたのが悪いんじゃない!」
「輝夜ちゃんに近づくなっていうくだらない理由だったらしいけどな」
「う…」
周りに立ったままで動こうとしない男子は手伝う気がないのが分かり、女子と一部の男子だけで建物の中に運んだ。
「ねぇ、もっと強い魔石はないの?」
ソファに寝かせたあと手の空いた女子がもっと回復力のある魔石がないかカウンターに詰め寄った。
「ギルドに保管されている魔石自体にランクの高い魔石がなかったので…。
現在は、今出しているレベルのものしかありません」
「そうだ。魔石がないなら…。
そういえば輝夜ちゃんはどこに行ったの? いつ戻ってくるの?」
「輝夜さんはギルドを辞めたので戻ってきませんよ」
「え? どういうこと?」
直接聞いていた女子以外にも、カウンターのそばにいたプレイヤー達が集まってきた。
「ですから、輝夜さんはギルドを辞めました。
正確にいえば、輝夜さんが所属していたプロダクションごとギルドを辞めて行かれました」
「なんで? 輝夜ちゃんが辞める理由がないじゃない」
「辞めた加藤さんからの又聞きの情報ですが、九条さんに除名処分が下されたとき、一緒に行くために辞めたと。
プロダクションはSSランクの輝夜さんと一緒に行動するほうを選び辞めたらしいです」
「じゃぁ、赤染君達はどうなるの?」
「現状は部位欠損以外の治療だけになるかと…」
「そんな…」
「ちょっと待て、輝夜ちゃんが辞めたってことは今後何かあって大けがしても回復出来ないってことか?」
その問答を見たプレイヤーが、今まではギルドに戻ってくれば部位欠損があっても助かったのが今後はダメになると気付いて思わず叫んだ。
「な、まじか。どうする?」
「輝夜ちゃんがいたからこのギルドに登録したのに…」
叫びを聞いたプレイヤー達もそれに気づきお互いに相談を始めた。
「そういえば、啓太さん、啓次さんたちも辞めたんだよな?」
「え、そうなのか?」
「ああ、後和田達中学生パーティもやめたみたいだぞ」
「SSの輝夜ちゃんだけでなくAランクも抜けたのか…」
「おい、このギルドどうなるんだ?」
「そいつらが馬鹿やったことでなんで俺たちが困らなきゃいけないんだ!」
「そうだお前たちのせいだぞ!」
「どうするんだよこれから!」
一人が赤染達へ罵声を浴びせてから周囲のプレイヤーたちも赤染達を責め始めた。
中には先程介抱を手伝っていた女子も一部いて、赤染達側に立つのはほんの一部の女子だけになってしまった。
赤染はSランクで工藤達より早く回復したため、この騒ぎで意識を取り戻した。
最初は何を騒いでいるか分からなかったが、次第に今回の件で輝夜が出て行った事で自分たちが責められている事が分かった。
格下と思っていた崇一にやられた怒り、痛みと欠損した身体の不自由さで苛立ちを感じていたところに、昨日は一緒に崇一を責めていたくせに状況が変わって、あっさり自分たちを責めるプレイヤーたちにより苛立ちを感じ、倒れたまま逆に周囲を残った目でにらみ返した。
「うるさい。いつも俺らに助けられるだけのくせに、こんな時だけ喚くな。
大体お前たちだって、アイツと輝夜が一緒に行動を始めたことで疎ましく思ってたんだろうが! だから昨日だってアイツをお前たちも責めたんだろ」
「な、ふざけるなお前たちがこんな状況を引き起こしておいてよく言えるな」
「騒がしいぞ。お前たちは仕事に出ろ。赤染達はこちらで介抱するから、
輝夜以外にSランク以上の生属性がいないか現在つてを使って調べてもらっているか
らお前たちは心配するな。
また、今回の件はギルドでも詳しく調査して相応の対処を実施するから今は落ち着いてくれ」
騒いでいるところに理事の1人がやってきて、回復要員の心配はいらない、今回の責任問題は別途調査すると宣言したことで、一応その場は解散となったが、プレイヤー達を含め所員の人たちもギルドの先行きに不安を覚えたままそれぞれの仕事に戻っていた。
崇一達は直ぐに知らずに後日噂として聞く事になるのだが、この2日後赤染達はギルド内の自室で暴行を受けて亡くなり、ユニオンも瓦解まではしなかったがこの後も辞めるプレイヤーが複数いて経営が傾きかけることになった。




