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13. 仲間からの攻撃



 ギルドの外に出るとすでに軽トラックを確保して、赤染達以外のメンバーが待っていた。


「九条君、こいつらが今日一緒に行くメンバーだよ」


「よろしくお願いします。九条です」


「ああ、よろしく俺は工藤透、渉と同じアイドルユニットをしてる。Aランクだ」


「大野望だ、Aランク。渉と透と同じユニットだ」


「俺は園田卓巳、俳優だ。ちらみに赤染と同じSランクだ」


 3人の自己紹介を聞いて崇一は赤染に質問した。


「あれ、赤染さんのユニットって4人でしたよね?」

「ああ、もう一人、水沢太一ってのがいるんだが、あいつはBランクでな。今日は参加しない」

「わかりました。今日一日よろしくお願いします」


 自己紹介後、全員荷台に乗り移動を開始したが、話していたのは赤染、工藤、大野の仲間内だけで、もともと親しい人以外としゃべる事がない崇一と、あまりしゃべらないのか園田は無言で景色だけを見ていた。

 目的地に着き、崇一達が下りると軽トラックは直ぐに引き返していった。


「えっと、赤染さん。今日はこの川沿いを下流に向かっていくって事でいいんですよね」


「ああ」


 崇一は、周囲を見渡し警戒をしながら赤染に軽トラックの荷台で話されたことを確認した。

 赤染がバスタードソード、工藤が棍、大野が盾とハルペー、園田がナックルとそれぞれ準備したのを確認した後、崇一は歩き出した。


「じゃあ、行きますか」


 荷台で話されたとき、今回初めて参加する崇一が先頭に立ち、まず戦闘を実施し赤染達は戦い方を見る事と補助という形になっていたので、ストレージを開きつつ先頭にたった。

 ストレージに手を入れ、武器を取り出そうとしたとき、背後から赤染と大野に両腕を切り落とされた。

 後ろはギルドの仲間だけだったので完全に無警戒だったので避けることも出来なかった。


「な!? ぐっああああああ!

 何を」


 とっさに振り向こうとしたところで、工藤と園田により両膝を砕かれた。


「ああああああ」


 崇一は立っている事が出来ず顔面から地面に倒れた。鼻血が出た事も気にせず、痛みに耐えながら魔法を使おうとすると赤染から声がかけられた。


「魔法は使うな。妹がどうなっても知らないぞ」


 崇一は響子の事をだされて、見えないところにいては手を出されても助けられないので発動しかけていた魔法を止めた。

 うつ伏せの状態から起きれないので首をねじり赤染の方を見た。


「な、響子に何をした!」


「まだしてないよ。ただお前が魔法を使ったと分かったら、ギルドに残っている仲間に連絡を入れる形になっている。そしたらカウンターで仕事をしているお前の妹を攻撃する手はずになってる。あと、俺たちからの定期連絡が無くても攻撃する形になっているから変な気はおこすなよ」


 赤染の話を聞いているうちにも切られた腕からの出血で意識が一瞬飛びかかった崇一は、とっさに無属性の回復魔法を使い、出血を止めた。膝も一緒に治そうと意識をしたが、工藤が回復魔法の光を見て砕いた膝をさらに踏んできた。


「ぐっぁあああああ」


「おいおい、そう簡単に治させるわけないだろ。出血は止めないとまずいから放置したけどよ」


 あまりの痛みにしばらく悶絶していると、赤染が頭を踏んできた。


「おいこれから言うことをよく聞けよ」


「な……なに…が、したい…んだ…」


「お前、ちょっと目障りなんだよ。だからちょっと立場を分かってもらおうと思ってな」


「た…ちば?」


「ああ、お前みたいな冴えない奴が輝夜のそばにいたら目障りなんだよ。たまたまアイドルと仲良く出来ただけなんだからいい思い出にはなったろ? 後はおとなしくしておけってことだ」


 そう言うと、赤染は剣を崇一の太ももに突き刺してきた。


「い”っああああ」


 崇一が悲鳴を上げると、園田が赤染を止めた。


「おい、あまりやりすぎるな。死ぬぞ」


「大丈夫だよ。こいつもAランクなんだ普通の人より強化されてる。何完全に死ななければ輝夜がいるんだから平気だよ。

 それよりこいつには身の程をもっとしっかり理解してもらわないとな」


 そういうと顎をしゃくって、頭から足を退けると、背中を踏んだ。

 それを見た大野が崇一の頭のところに屈みこんできた。


「やってみたかったんですよねコレ。

 以前は取り返しがつかなかったんでやれなかったですけど」


 そう言いながら、大野は崇一の髪を掴み頭を持ち上げると、左目に指を突っ込んできた。



「ああああああああああああああああああああ」


「うわぁ、ぐちょぐちょ、きたね~」


 大野は笑いながら突っ込んだ指を振って着いた体液を振り払った。

 その次は膝を踏んでいた工藤が足をどけ、ストレージからナタを取り出し、崇一の右足首に当てた。


「やめろ」


 工藤は崇一の制止を無視して、ナタの背を思いっきり踏み抜いた。


「があああああああぁぁぁぁぁぁぁあぁああぁぁぁぁ」


 目のとき、右足のときともに痛みのため体を暴れさせようとしたが背中を踏まれ動けず声を上げ耐えるしかなかった。


「さて、出血も止めないとな」


 大野がそういいながら、ハルペーに火を纏わせ右足首に押し当てた。


「あああああああ」



「いやぁ、ここまでやったのは初めてだな。軽く殴打するとかは何度かあったけど、ここまでやると後遺症で大変だからなぁ」


「そうですね。回復魔法様々ですね」


「ただ、すっきりはするけど、こっちも汚れるのが難点だな」


「仕方ないですよ」


 崇一が悲鳴を上げる横で工藤と大野が笑いながら話していた。


「そろそろいいか。じゃぁ最後に魔法をつかうから、ちょっと離れろ」


 赤染はそういうと、自身も崇一からはなれ、崇一に雷を落とした。

 崇一は悲鳴も上げず気絶した。


「うわぁ、皮膚が焦げてますよ」


「おい、渉これ死んでないよな」


「ああ、よく見ろ浅く呼吸してるだろ。気絶してるだけだよ」


「おい、出たぞ」


 3人が崇一の周りで様子を見ていると、園田が大声を上げた。

 3人が園田の方を向くと、園田は川岸を凝視していたので同じ方向を全員が見た。

 ちょうど川からイグが上がってくるところだった。


「ちっ、ほんとに出たか。透と望は、俺たちのサポートをしてくれ、Sランクが2名いるんだ大丈夫だ。

 園田いくぞ」


「ああ」


「わかった」


「お前こそ遅れるなよ」


 そういうと赤染と園田はイグに走り寄って行った。


「さて、こいつも死なれちゃ困るから保護しないとな。望こいつをつれて少し離れるぞ」


「了解」


 工藤達は崇一の襟首を掴むと引きずってその場を離れた。

 赤染と園田は、園田が接近し離れすぎないように移動しながら打撃を加え、赤染が園田が作った隙をついて斬撃を加え直ぐに距離をあけるとの形で戦闘を実施していた。


「以前は無傷で戻ってきたけど、やっぱりSSランクがいるのとでは違うか」


「でも、やっぱり2人ともすごいですね。イグを押してますよ」


 邪魔にならないように離れたところで見ていた工藤達は以前とは違い、体のあっちこっちに傷を作っている2人をみて、やはり楽勝とまではいかないなと感じていた。


「でもこれって丁度よくないか?」


「へ?」


「だから、当初の予定ではミスをして戦闘で怪我したって方向で報告する形になっていただろ?」


「そうですね」


「でもイグが出たし、このままなら倒せるし魔石も手に入るから証拠になる。

 前回が運がよかっただけで、Sランクの2人がそれなりに傷ついていれば、こいつの説明も省けるだろ?

 何とか助ける事は出来たって」


「そうですね。確かにその方が無理がないですね」


「だろ」


「じゃぁ、赤染さんが戻ってきたらその方向でいくと伝えましょう」


「そうだな。この様子ならもう少しで終わりそうだしな」




 しばらくして、赤染と園田が多少ふらつきながら戻ってきた。


「思ったよりきつかったな」


「以前は輝夜が居たから、ここまでの相手とは思わなかった」


「二人とも怪我は大丈夫か?」


「ああ、問題ない。魔石を使えば治る範囲だな」


 赤染が答えを聞いて、工藤は園田にも確認した。


「園田も同じ感じか?」


「ああ、そうだ」


「魔石を使えばってことは、自分の無属性回復はもう使い切ったのか?」


「ああ」


「そうだ」


「なら、ちょうどいい。そのままギルドに戻るまで怪我しててくれ」


「は? お前ふざけてるのか。いいから回復用の魔石をよこせ」


 怒る赤染を慰めつつ、工藤は先ほど大野と話した内容を2人に説明し、納得させた。

 2人が戦闘を終えた時、大野が呼びに行ったギルドの迎えの軽トラックに乗って全員戻った。

 ギルドに戻ると4人は慌てた様子で直ぐカウンターに向かい、回復要員と魔石の準備を依頼し崇一をラウンジに運び込んだ。


 その様子を見た、先に戻ってきていた守と美香は慌てて崇一に近づき持っていた魔石で回復を始めた。

 カウンターで仕事としていた響子も慌てて出てきて2人の手伝いを始めた。

 そこに生属性持ちのプレイヤーとギルドで保管している回復用の魔石を持って加藤もやってきた。

 守と美香は生属性のプレイヤーに場所を譲り、回復魔法が使われるのを見ていることしかできなかった。


 加藤の方は、魔石をもって赤染達のところにいって魔石で回復をさせていた。

 赤染達がある程度回復すると、啓太が赤染達に近づいて、状況を確認してきた。


「おい、赤染、何があった?」


「啓太さん。イグがまた出ました」


「イグが?」


「はい。それで最終的には俺と園田で倒したんですけど、九条君は前回の結果がよかったからか突っ込んで行って庇いきれませんでした」


「おい、ほんと」


「すごいですね。流石赤染さんだ。

 無謀に突っ込んだ九条君まで助けるなんて、自分たちもそんなに怪我を負ってるのに」


 赤染の答えを聞いて、SSランクの崇一があの重症で、Sランクの赤染達がこの程度で済んでいる事に疑問を感じて質問をしようとしたところで、赤染達とよく一緒にいる鈴木が赤染達を大声で褒め称えた。

 周囲で様子を見守っていたほかのプレイヤー達も鈴木の声を聴き、口々に赤染達を褒めはじめた。

 そんな周囲に軽く手をあげて答えながら赤染は回復魔法を使っているプレイヤーに声をかけた。


「どう? 九条君は大丈夫そう?」


「はい、ここまで回復するば命に別状は無いです。ただ、私の回復魔法のレベルでは欠損した部位が治せないし、ギルドに保管してある魔石の質も良くないので部位欠損レベルを治す魔法は込められていません。

 後は輝夜さんが戻ってきて回復魔法を使ってもらうしか…」


「いや、ありがとう。命が助かれば輝夜が助けてくれるよ。君も疲れただろうもう大丈夫だから、ありがとう」


 赤染に感謝され、生属性のプレイヤーは顔を赤くして嬉しそうにその場を離れた。

 また、その様子をみて鈴木を筆頭にプレイヤー達が優しいとか、さすがとか褒めはじめた。


 場の空気から弾かれた啓太は、啓次のところに戻り小声で話した。


「啓次、どう思う?」


「どうってこの件だよね。俺は知らないけど兄貴が言うとおり九条君がSSならあやしいね」


「だよな。

 まぁいい、詩織たちはいつごろ戻る予定だったか知ってるか?」


「そろそろ戻ってくる予定の時間だけど…」



 そう話しているうちにギルドの前に軽トラックが到着し、輝夜と詩織たちが下りてきた。

 それをみて響子が走って輝夜のもとに向かった。


「輝夜ちゃん、お願い兄さんを助けて」


「え、シュウがどうかしたの?」


「いいから、はやくこっち」


「え、だからどうし…。シュウ!」


 響子に引っ張られながら建物に入ってきた輝夜は直ぐに崇一を見つけ、慌てて駆け寄った。


「どいて!」


 崇一のところに着くと、周りに居た人達をどかし直ぐに回復魔法を使い始めた。

 しばらく無言で回復を続けていると、崇一の欠損した部位も修復され完全に元の状態に戻ったが直ぐに目は覚まさなかった。


「これで大丈夫。

 えっと守君、美香さん。シュウを救護室に運ぶから手伝って」


「「わかった」」


 崇一を救護室に運び、寝かせて響子達に後を任せて輝夜はラウンジに戻った。


「みんな! 何があったか教えて」


 輝夜が声を上げると、啓太たちが直ぐによってきて簡単に説明してくれた。

 話を聞き終えると、輝夜は赤染達に近づいていった。


「赤染君達がシュウと一緒にイグと戦ったって聞いたけどほんと?」


「ああ、九条君を治してくれたんだね。ありがとう。イグと戦ったのは本当だよ」


「シュウの回復の件は気にしないで、私が治したいだけだから」


「でも、一緒に戦った人を回復してくれたんだからね。お礼ぐらい言うよ」


「で、啓太さんから漠然とした話は聞いたけど、詳しく教えて」


「いいよ。今日はAランクの九条君がどんな戦い方をするのか把握するため一緒に行動をしたんだ」


「なんで?」


「なんでって、ギルドの依頼でA以上のランクは一緒に行動をすることがあるからね」


「そう。それで?」


「ああ、とりあえず参加メンバーで知らないのは九条君だけだったからまず戦闘を見せてもらおうって話になってね。

 九条君を先頭に討伐に進んだんだ。そこでイグとあってね。

 前回啓太さんと一緒に戦ってそれなりに戦えたからか、九条君が一気に突っ込んでね。

 何とか庇いながら距離を開けた時にはもうひどい怪我を負っていてね。そのあと急いで園田と一緒にイグを倒して戻ってきたんだ」


「イグが本当にでたの?」


「ああ、輝夜と一緒に行ったときみてるし間違いない。魔石もあるよ」


 赤染はポケットから橙色の魔石を取り出した。


「本当にイグだけだった? 他に何かいなかった?」


「イグだけだったよ」


「ホント? イグだけが相手ならシュウがあんな怪我をするなんておかしい。何か隠してる?」


「何も隠してないよ。なぁ透、太一とかも輝夜に言ってくれよ」


 輝夜が赤染を問い詰めていると、鈴木が数人の赤染のファンの女の子を連れてきて輝夜を止めた。


「輝夜ちゃん。やめなよ。赤染さんたちは無謀にも突っ込んだ九条君を助けてくれたんだよ。

 それに今は治ってるけど、赤染さんたちも怪我してたんだから」


「わかったから、離して」


 女子たちに引っ張られ、周囲を囲まれたので輝夜は赤染達から離れ、ここに居てもどうしようもないので、崇一のところに戻ることにした。

 輝夜がその場を離れた時、芳樹と真理たちが啓太のところにやってきた。


「啓太さん。今聞いてきたんですけど九条さんが重傷って聞きましたけど大丈夫なんですか?」


「ああ、芳樹たちか、九条は無事だ。輝夜ちゃんが回復したから元に戻ってる」


「そうですか。良かった…」


 芳樹は安堵の息を吐いた後、小声で続けた。


「でも九条さんがイグにやられたって本当ですか? 前回あんなに圧倒的に勝っていたので信じられないんですけど?」


「俺もだ。どうも赤染達が何かを隠してるとは思うんだが…。下手するとイグ以上の敵が出た可能性も考えないといけないな」


「イグ以上のですか、考えたくないですね」


「まぁ、九条が起きたら情報が入る。お前たちは心配するな」


「はい。で、今九条さんは?」


「救護室に居るはずだ。ただ起きているかは分からないけどな」


「じゃぁ、お見舞いはだめですかね?」


「いいんじゃないか。怪我は全く心配ないし、後は起きるだけなんだから。

 そうだな。俺たちと一緒にいくか?」


「「はい」」






 輝夜が救護室に向かっていると、前から響子の手を引っ張って早足で歩いてくる崇一と合った。


「兄さん、ちょっと落ち着いて」


 崇一に引っ張られている響子も、その後ろについて来ている守も美香も困惑した顔をしていた。



「よかった。目が覚めたんだ。調子はどう? 気持ち悪いとかない?」


「輝夜。どけ」


 輝夜が心配して声をかけたが、怒っている崇一は答えなかった。


「どうしたの。何を怒ってるの? それに響子ちゃん痛がってるよ」


「うるさい。今は響子と離れる訳にはいかないんだ…。そうだお前が響子と居てくれ。

 いいか響子、絶対輝夜から離れるな」


 そういって輝夜に響子を押し付けると早足でラウンジに向かっていった。


「響子ちゃん。シュウどうしたの?」


「分かりません。起きたらいきなり私の手を掴んで移動を始めたんで」


「そう。とりあえずシュウを追うよ」


 輝夜達は何を怒っているか分からなかったが、崇一のあとを追うことにした。




 赤染達が他のプレイヤー達と今日の戦闘の様子などを話していると、ラウンジのドアを強く開けて崇一が入ってきた。

 激しい扉の音にラウンジにいた全員が崇一の方を見た。

 ちょうど崇一のところに向かおうとドアに向かっていた啓太たちも驚いて立ち止まった。


「お前ら、覚悟は出来てるだろうな」


 そういうと崇一はストレージから双龍を取り出した。


「ああ、九条君起きたんだね良かったよ」


「は? 何ふざけてる。借りは返せさせてもらうからな」


「九条君。何を言ってるのか分からないんだけど…そうか、大分ひどい怪我だったからね起きたばかりで混乱してるんだね」


「ふざけたことを」


 崇一は双龍を構え走りだすと、周囲から非難の声が上がった。


「九条、助けてもらった相手に何武器向けてんだ。相手が違うだろ」


「そうよ。まずはお礼を言うべきでしょ」


「九条君サイテー」


 いきなり周囲から文句を言われたので、訳がわからず崇一は立ち止まった。


「なにをいってるんだ?」


「まぁまぁみんな落ち着いて、九条君は混乱してるだけだから、俺は気にしないから」


 赤染が周囲に気にするなとアピールするとまた赤染を褒める人達が出てきた。

 崇一が周囲の様子がおかしいことに気付き困惑していたが、再び攻撃に移ろうとしたところで啓太と啓次に掴まれた。


「おい、九条、一旦落ち着け、今はまずい」


「離せ! 今はもくそもない。やられた分はやり返す!」


「いいから落ち着けって、輝夜ちゃん達も手伝ってくれ」


 後ろについて来ていた輝夜達にも声をかけ崇一を抑えようとするが、輝夜は崇一の目の前に移動して声をかけた。


「シュウ。どうしたの? イグにやられたって聞いたけど、何があったか教えて」


「イグにやられたって何をいってる? 俺はイグと戦ってないぞ。あいつらが響子を人質に襲ってきただけだ」


「な、そういうこと…」


「え? 私が…。それで…」


 いきなり自分名前が出てきたので響子はびっくりしたが、先ほどから兄が自分をそばに置きたがっていた理由が分かった。

 また崇一がSSランクと知っており、イグを簡単に倒せるはずが重症を負っていた事に不審におもっていた輝夜たちも驚いた。まさか、ギルドの仲間が攻撃をしたとは思っていなかったのである。


「ああ、あいつらギルドに居る仲間が響子を襲うって。こっちが手出しできない事をいいことに好き放題やりやがって、絶対にやり返す」


 崇一がそう言うと、聞こえていた周囲のプレイヤー達が反論してきた。


「赤染さんがそんな事するはずないだろ!」


「助けてもらったのに、混乱してるか何だかしらないけどいい加減にして」


「だいたいAランクで赤染さんに勝てるはずないだろ」


「うるさい! だまれ!」


 崇一は叫ぶと、周囲のプレイヤーを傷つけない程度に軽く風で吹き飛ばした。

 赤染達までの人だかりが無くなると、風による加速をつけて接近し、4人が反応する前にそれぞれの片腕を切り落とした。


「ああああああああ」


「がっ」


「うわあああああああぁぁぁぁ」


「いてぇえええ」


「まずは一つ返却だ」


「おい九条正気か?」


「何斬りつけてんだ」


「赤染君になにするの」


「きゃああああ、透君!」


 周囲からの悲鳴と怒声が湧きあがり、崇一を攻撃しようと走りだすものもいたが、風に阻まれ進めないでいた。


「おい、輝夜ちゃん、止めなくていいのか?」


「なんで? 止める必要あるの?」


 啓太は同じSSランクの輝夜に止めるように催促をしたが、輝夜は赤染達をにらみながら拒否した。

 啓太は輝夜も怒っていることに気付き、また自分も赤染達の行動に怒りを感じていたのでそれ以上言わなかった。


「さて次だな」

「やめんか!!」


 崇一がさらに攻撃を加えようとしたとき、怒声がラウンジに響いた。




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