入部
あの日=おそらく入学式の1週間後。僕は放送室の前に立っていた。
というのは、僕が放送部に入部するからだ。「放送部」つぶやくだけでもかっこいい。なんだろう?このかっこよさ。分かる人にはわかるが分からない人にはさっぱりわからない。僕にはわかるそのかっこよさが…
「どぉーーーーーーーーーーんっ!」
訳の分からない擬音語をがして放送室の扉が開いた。そして僕は
「ぎゃぁぁーーーーーーー!」
今までにないくらいの悲鳴を上げ、倒れた。
目を開けるとそこはもうTHE保健室。白い壁がまぶしい。そして横にはたぶん3年生の先輩。は?状況が全く理解できない。学生向け青春小説の主人公が1ページ目からこんなことになってていいのか?
「おーい」
「おーい」
「ちびちゃん寝てるんだから静かにしてあげなさいよぉ」
うるさい。うるさい…
「だからうるさいって言ってんだろぉぉぉ!!!!!!」
ここで僕のとび蹴り炸裂。黒縁メガネをかけたガリ勉風の先輩、鼻血を出して倒れた。
・・・何秒かの沈黙。
!「だだだ大丈夫ですかーーー!」どうやら僕はひどいことをしてしまったようだ。名前も知らない先輩に。「て て て」「え?なんですか?」「テクマクマヤコン。」ぱたっ
せんぱぁぁぁぁい!!
保健室の先生(※おせじにも美人とは言えない)によると軽い貧血で先輩は大丈夫らしい。にしてもひどいことをしてしまった。
「ところで…どなた?ですか?」もう一人のギャルっぽいギラギラした先輩に尋ねる。「あ?あ!あぁあたし?」そうです。あなたしかいないでしょ。「あたし、こうみえてねぇ。えへっ誰だと思う?」
それを聞いてんだろ。名札つけてねぇし。「え?誰…ですか?」「放送部長。」「へっ?」
「だぁーかぁーらぁ放送部長なの。私。」「マジですか?」「そうマジで。」「そっそうですか。ごめんなさい!!!」
訳も分からず謝る僕。そしてさらに追い打ちをかける放送部長。「あ、ちなみにあの人副部長ね」状況が全く読み込めないぞ。あのチャラくてあほっぽい人が放送部長だとぉぉぉ?許せん!実に許せん!そしてとても信じがたい。僕の理想の放送部とは程遠い。
―僕の理想―
清楚で美人。なのに面白い!成績は学年トップ!超美声の部長と、成績は並だか運動部所属でジャ○ーズ顔のイケメン副部長。そして全てが平凡の僕ら部員。そんなでこぼこ放送部がお送りする校内放送☆
よしっ!さっきのは聞き間違えだ(^o^)もう一度聞いてみよう!
「あの~放送部に入部したかったんですが放送部長って…」くい気味に「あたしだけど?なんか?」
「いや…なんでもないです。」…聞き間違いじゃねぇぇぇ!!!まじか。さらば僕の夢。こんにちは現実。「じゃ、入部届に必要事項書いて親の許可とかもらってきて明日顧問にてーしゅつね!」「はいっ!」言ってしまったぁぁぁぁ!!!入部する気ゼロなのに言ってしまった。僕は断れない性格だったことすっかり忘れてた。
と思ったら次は保健室の先生が「これからよろしくね。山村明人くん!私は保健室の先生兼放送部顧問の吉川真美よ。」なぁぁぁぁ!?ヤマムラアキト…僕の名前じゃないか!!!!!!なぜ知っている?「どうして僕の名前を?」「だって、上靴にでっかく書いてあるじゃない1-2山村明人って。」バカ親ぁぁ!
―こうして始まった僕の中学校生活そして憧れのはずだった放送部入部。
成績、身長、ルックス全てがに平凡な僕の平凡な日常が変わった!というわけでもなく。
ただただ憂鬱な日々が始まろうとしていた。いや、確実に始まる。