ある会話
「世の中には生まれつき不幸な人と幸せな人がいる。不公平じゃないか」
「そう。じゃああなたはどっちなの?」
「不幸な人間に決まってるよ。見てわかるだろ?あたしは頭が悪いし、運動神経0で、人付き合いが苦手で友達もいない」
「そうだね。でもあなたには…」
「あんたの言いたいことはわかってる。確かにあたしは今恵まれた環境にいるよ。毎日食べるものに困らなくていいし、あたしを愛してくれる両親がいて、暖かい家がある。世界中にはそれすらない人がいっぱいいるよ。だからってその人たちが必ずしも不幸とは限らないさ」
「うん、そうだね。必ずしも貧乏な人が不幸で、裕福な人が幸せとは限らないよ」
「あたしは環境には恵まれたけど、才能には恵まれなかったんだ」
「だから不幸だっていうの?」
「そうだよ。成績優秀なあんたにはわからないことかもしれないけどな」
「違うよ。君のほんとに不幸なところは才能があるとかないとかそういうことじゃない。今自分にあるものに幸せを感じられないことだ」
「今あたしにあるものってなんだよ?」
「今自分で言ったでしょ?環境には恵まれたって。あなたがそれに幸せを感じられないなら、あなたは不幸な人間でしょうね」
「………」
「もし日常のほんの小さな出来事にも幸せを感じられたら、それは幸せな人間でしょう」
「…………」
「わかった?」
「あんたは幸せな人間か?」
「うん。今あなたといることが、とても幸せだよ」