プロローグ
炎に焼かれ、戦いの衝撃で崩れる家々。
五、六歳の幼い少女は、倒れながらその光景を見るだけしかできなかった。
虚ろになっていく意識の中、少女の視界は禍々しい体躯を誇る魔物の姿を捉えた。牛のような頭部に、体は筋骨隆々。右手には凶悪な棍棒を持っていた。
その魔物は少女に気がつき、一歩、また一歩と少女に近づいていったのだ。
少女は、恐怖に陥りながらも逃げることができなかった。体がいうことをきかない。
そして、少女の近くまで寄ると、魔物は雄叫びを上げながら棍棒を振り上げた。少女は、力いっぱい目を閉じた。
魔物の雄叫びは、途中から悲鳴に変わった。
少女は、戸惑いながらも恐る恐る目を開いた。
ドラゴンランス。騎竜専用の強大な槍が、魔物を貫いていたのだ。
少し遅れて羽ばたきの音と共に、赤い竜とその竜に乗る竜騎士が降り立った。意外なことに、竜騎士の年齢は五十代初めごろの老騎士だった。しかし、老いを感じさせず、今だ歴戦の騎士だということが雰囲気でわかる。鎧のあちらこちらに、真新しい戦いの跡が残っていた。
竜騎士は、倒れている少女を起こした。
「大丈夫かい?」
「――は、はい」
少女は最後の力を振り絞って小さく呟いた。
「もう、大丈夫だからな」
老騎士は、慎重に少女を抱き上げた。
千年前。人類は、魔物たちを辺境の大陸に追い立てることに成功した。しかし、三百年前魔物たちは大軍をなして再びこの大陸を襲ってきたのだ。
二百年にのぼる人類と魔物の戦いが始まった。そして、とうとう百年前にどうにか、人類は平和を手に入れることができた。しかし、平和とは名ばかりで、大陸各地にはいまだ魔物たちが現れるのだ。
新作というか、昔ながら書いてる作品です。最近モチベーションが上がらないので投稿します。皆さんよろしくお願いします。