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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ちょこっと短編集

呪わば呪えの魔王様

作者: 五月蓬

短編です。


魔法の世界が舞台となります。


主人公最強のチートもの、下ネタあり、残酷描写ありのお話ですので、苦手な方はご注意を!


注意を無視して、私を呪っても、「呪わば呪え」とは言えませんよ?w


要は自己責任てどうぞ!




 近頃、この村の周辺には盗賊団が沸いていた。しかもそれは普通の凶器を握りしめ弱きを虐げるような、パッとしない小物ではない。




 最近になって現れた魔法を操る盗賊、『魔法盗賊』なのだ。




 魔法とは、時に火を起こし、時に水を湧かし、時に風を吹かせる不思議な力。


 人智を超えたその力は、以前は一部の特別な教養のある人間にしか使えない高尚なものだった。

 そう、盗賊風情になど手が出せない程に。


 ならば何故、彼等は空の上のものに手を触れることが出来たのか?




 その元凶が今、僕の前にいる。


「……で、その盗賊団を追い払えば良いわけね?」

「は、はい……どうか宜しくお願いします……」


 よぼよぼの村長が痛む腰を曲げながら頭を下げる相手は、見た目は若く、そして言葉を失う程の美貌を誇る妖艶な女。


 艶やかな唇に、手入れの行き届いた長めの爪のついた綺麗な指を当てながら難色を示すこの女こそ、全ての元凶であり僕が最も憎む相手であり、世界から讃えられると同時に疎まれる女、「魔王」と呼ばれる「ミゼル=バーデン」である。


「私は魔王と呼ばれる女よ?お人好しじゃないの。それなりの報酬がなければ動かないわよ?」

「で、出来る限りのことは……」

「出来る限り?……気持ちや努力が価値になると思ってるならそれは間違い。私が満足できなきゃ意味がないし、助けるつもりもないわ」

「そんな……」


 自分の蒔いた種なのに……最低な奴だ。村長の家の扉の隙間から様子を見ながら僕は憤慨した。




 僕が今まで彼女を見たこともなかったにも関わらず、彼女を憎む理由……それは彼女こそが魔法を広めた張本人だからだ。


 言った通り、魔法は学の無い人間には使えない筈だった。

 しかしそれは過去の事。それは全てミゼルの生み出した「魔本」のせいだ。


 魔本は魔法を誰もが使えるようにしたアイテム。「エルフィア」という木から作られたページに術式を書き込み、それに対応した呪文を唱えることで誰でも魔法を簡単に使うことが出来る。術式はある法則から出来ており、日夜新たな術式が開発されている。いずれ出来ない事がなくなるといわれる程に、それは限り無い可能性を秘めている。


 聞けば素晴らしいものと思えるだろう。しかしその弊害も計り知れない。




 エルフィアは伐採しつくされ、ただでさえ貴重だったその木は、人の手で育てられてはいるものの、すっかり数を減らしてしまった。


 エルフィアの不足は魔本の供給にも大きく響き、国や財力による格差が生まれる。

 僕達のいるような小さな村は、近くのエルフィアを得るための踏み台にされ、搾取され、魔法の恩恵も受けれない。

 人工のエルフィアに浸食された土地はどれほどになったか分からない。


 魔法は僕達には希望を齎さなかったのだ。




 それだけに留まらず、魔法は今まさに僕達に絶望を齎している。


 それが魔法盗賊。魔法を悪用するもの達である。


 奴らは力で奪った魔本を操り、弱きから全てを奪う。


 その標的に選ばれた僕らの村は、まずは蓄えを食い潰され、次に定期的な貢ぎものを要求された。

 そして無茶な要求に追い付けなくなると次は身売り……僕らの村はもうボロボロだった。


 対抗するための魔本も手に入らない。


 そして万が一魔本を得ても、反抗がばれればお終い。


 魔本を手に入れた事で、殺されてしまった僕の両親のように。




 そして村はその選択を迫られたのだ。反抗がばれる前に、素早く確実に実行できる選択を。




 それが魔本の創造者にして、魔法の問題を解決している「魔王」、ミゼルへの依頼である。



 正直僕は反対だった。僕らを不幸にした種をばらまいておいて、その種を摘み取ることに多大な見返りを要求する……そんな悪魔のような女に依頼など……ましてや僕の家族を奪った元凶を許せなかった。




 そんな女がこともあろうか依頼に難色を示している。


 この女に頼んでは駄目だ。盗賊より多くのものを搾り取っていくに決まっている。


「こんな村から金銭は期待出来ないし……仕方ないわねぇ」


 ほら見ろ。とんでもないものを要求するぞ。










「そこで覗いてる……可愛い男の子でも貰おうかしら?」




 ……え?







  ※※※※




 僕はこれでも十四歳だ。




 だから膝に乗せるのは勘弁して欲しい。


「あ、頭撫でるな!」

「ああん、可愛い!」


 うっとりとした表情で僕を抱き締めるミゼル。胸の柔らかい感覚に思わず顔が熱くなる。


「ミ、ミゼル様……ロイが報酬とは……どのような意味で?」


 村長は恐る恐る、頬を色っぽく染めるミゼルに尋ねる。


 ミゼルは悪戯っぽくくすりと笑う。


「やあねぇ。とって食いやしないわよぉ」

「性的に食いはするけどな」


 甲高い声がとんでもないことを言い放つ。


「な……!」


 その声の主を振り返って驚いた。


 小さい球体のような黒い体には蝙蝠のような羽。さらに異様なのは口も鼻も無く、あるのはぎょろりと開いた一つ目のみ。


 ミゼルの傍らには、絵本に出て来るような「悪魔」と呼べるような不気味な生き物が飛んでいたのだ。


「あら怖い?この子は『プッシー』。私の相棒よ」

「おう坊主!ついてねぇなぁ!こいつに目を付けられるたぁなぁ!こいつは無類の少年趣味だしなぁ!お前、何回くらいヤった事があるよ?」


 ヤった?何それ?そんな顔をしたら悪魔がゲラゲラ笑った。


「オイオイ、こいつチェリー君だぜ!」

「え~?最近の子供は十歳くらいでヤってるんじゃないの?……まぁ、初めてを奪うのも興奮しなくもないけど……やっぱりテクニックは重要よね?」


 何を言っているんだこの二人は?

 不思議そうな顔をする僕を可愛い動物でも愛でるかのように撫でると、ミゼルは「ま、いっか」と一言。


「取り敢えずこの子一晩借りるわよ♪」







  ※※※※




 正直、村の中でも僕が浮いている存在だということは分かっていた。「反逆者」の息子として、余計な火種を持ち込んだものの関係者として、僕は村から疎まれていた。


 最初は僕の両親に期待すら寄せていた癖に、盗賊が反逆に気付くと即知らん振り。さらには盗賊の要求が厳しくなれば、余計な事をと憎む始末。


 その事は十分に理解していた。




 しかしまさか二つ返事で「その子で良ければどうぞ」という言葉で売り飛ばされるとは思わなかった。


 今僕は、ミゼルがこの晩を過ごす宿に監禁されていた。


「監禁とは何よ?こんなに綺麗なお姉さんが一晩優しくしてあげるっていうのに」


 僕は驚いた。ミゼルに自分が口に出してもいない思考を見透かされた事に。


 するといかにも悪女といった感じの笑みを浮かべて、ミゼルは僕の頭に指を当てる。


「私には、人間の頭の中が見えるのよ?」

「……それも魔法なのか?」

「ハハッ!坊主!そんな魔法はねぇよ!あったら世の中滅茶苦茶だぜ?」


 ゲラゲラと笑いながら、悪魔のプッシーが周囲を飛び回る。そして僕がその疑問を提起する前に、その甲高い声で答えを述べた。


「『呪い』さ。『悪魔の呪い』」

「『悪魔の呪い』……?」




 その不吉な言葉に僕は息を呑む。するとミゼルは軽く笑いながら僕の頭を撫でる。


「『人心を見透かす』悪魔の力……それを得た代わりに、私は呪いをかけたプッシーを常に楽しませなきゃいけないのよ」

「プッシーが……呪いを?」




 呪いをかけた悪魔を相棒と呼んでいるのか?そんな疑問も直ぐ見透かされる。


「理解できないかしら?まあ、対価を払えなきゃ呪い殺されはするけど……意外と上手くやってるからね?」

「おうよ!こいつには随分楽しませて貰ってるからな!呪い殺す気なんてさらさらねぇや!」


 物騒な話をしながら楽しげに笑いあうミゼルとプッシー。そんな二人を僕はとても理解出来なかった。

 そして理解するつもりもない。だって僕はミゼルを憎んでいるのだから。




 そしてそんな僕に対して、全てを理解したようなミゼルはとろりとした表情で僕に抱きつきベッドに押し倒す。


「……私は面倒な話は嫌いだから、心中お察ししてどんどん話を進めちゃうけど……ロイ君は私が憎いのね?」

「……!」




 見透かされていた。そしてその事実はさらに嫌な事実を導く。




 ミゼルはそれを知っていて、僕を部屋に連れ込んだのだ。

 潤ったぷるんとした唇が僕の眼前にぐいと寄る。

 縛り付けるように綺麗な瞳が僕を射抜く。

 体にのしかかるように、その大きく柔らかい胸が僕を圧迫する。


「……あら。こんなに綺麗なお姉さんに抱きつかれても……嫌らしい妄想の一つも出来ないなんて……やっぱり疎いのねぇ」


 つまらなそうにミゼルは身を起こし、少し乱れた髪を手で整える。そしてとても冷たい瞳で横たわる僕を見下ろした。



「それとも……憎い相手じゃ抜けないかしら?」




 ミゼルが何を言いたいかは分からない。しかし返す言葉は決まっていた。


「憎いに……決まってるだろ……!お前のせいで……父さんと母さんは……!」


 ミゼルは涙を流し怒りをぶちまける僕を……




 鼻で笑った。


「ロイ君。世間知らずのあなたに教えてあげる。そういうのをね、世間では『筋違い』っていうのよ」


 ギュッと僕の頬を鷲掴みにし、ミゼルが再び顔を寄せる。


「あたしが元凶?バカ言わないでよ。悪いのは盗賊でしょう?」

「……!」

「それに、魔法のトラブルシューターで甘い蜜を啜ることの何が悪いの?何のために魔法をバラまいたと思っているの?」

「お前まさか……」


 魔王の顔が邪悪に歪む。その最低な答えを肯定するかのような笑顔を浮かべておきながら、ミゼルはそれを認める言葉を吐かない。


「……何にせよ、魔法を広めたあたしと、悪事に利用する人間と……どっちが悪いかくらいは分かるでしょ?」


 盗賊が悪いに決まっている。しかし、だからといってミゼルが悪くない筈がない。


「……何かを作るのには責任が伴うだろ!それがどういう悲劇をもたらすか!どんな影響が出るか!そんなことも考えないお前が!悪くない訳ないじゃないか!」




 言ってやった。しかしまさかあんな言葉が返ってくるとは思わなかった。




「じゃあ、あなたの両親も悪い人なのね」


 言葉も出なかった。


「オイオイミゼル。苛めてやんなよ」

「苛めてないわよプッシー。だってそうでしょ?村に後々迷惑がかかるかも知れないのに、勝手に突っ走って……それもあたしと一緒で後先考えない悪人のすることよね?」

「全部……元はといえばお前が……」

「だったらあたしを生んだ親でも、なんなら人間を生み出した神様まで恨みなさいな」




 此処まで、こいつは自分の責任から逃れようとするのか。村の為に戦った……僕の両親を侮辱してまで……!




「……何か勘違いしてない?」


 悪魔の目が全てを見透かす。そして吐かれた言葉は魔王のものだった。


「あたしは別に恨むななんて言ってないわ。でも恨むべき相手がもっといるでしょって言ってるの」



 そして言った。




「何かを呪いたければあたしを呪いなさいな。まあ、あたしは魔王だから……呪えば呪うほどに……大きくなるだけだけどね?」




 くすりと笑う。




「あたしで抜いて……満足できると良いわねぇ?……ね、チェリー君?」


 ミゼルは満足したように立ち上がり、大胆に服を脱ぎ捨てていく。

 そして服を撒き散らしながら浴室に向かい、ぼそりと最後の言葉を漏らした。


「ちょっと汗を流してくるわ。今夜は楽しませて貰うから……ね、ロイ君♪……プッシー。ロイ君が逃げないように見張っててね」

「あいよ」



 一つ目の悪魔がベッドに横たわる僕の腹の上で羽を休める。




 僕はただ、情けなく泣くことしか出来なかった。


 悔しい……何も言い返せない自分が情けない。憎まれようと平気な顔をしているあいつが許せない。


「坊主、悪いなあ。あいつはああいう奴だ。どれほど恨まれようとも、自分の腹を満たすためなら牛や豚を殺しちまうようなな」


 プッシーが腹の上でゲラゲラ笑う。

 一瞬言っている意味が分からなかった。


 しかしそれがある種の弁解であり、そして皮肉であることを理解する。


「お前ら人間に限らず……生き物ってのは何かしらの恨みを買って生きてんだ。お前らが何気なく買っている肉屋の肉はどうやって出来る?誰かが手を汚して家畜をしめてるんだよ。お前はそういう人間に『豚殺しの残忍な奴だ』と罵声を浴びせるのかい?」

「……それとは全く違うだろ」

「だな。違ぇねぇや!」


 何がおかしいのかは知らないが、プッシーはゲラゲラ笑う。悪魔のくせにもっともらしい事を言ったり、よく分からない奴だ。




「まぁ、別にミゼルを理解しろともミゼルを呪うなとも言わねーさ。むしろ存分に呪ってやるといいさ。ただな……」




 プッシーのぎょろりと大きい目が突然目の前に現れる。

 思わずビクッとしてしまう僕にプッシーは囁く。


「憎い相手に都合よく縋ろうとするなよ」




 縋る?

 僕が?

 ミゼルに?

 違う。あいつを頼ったのは村長だ。僕はむしろ反対なのに。


 悪魔のプッシーはそんな心をも見透かした。


「お前さ、『種を蒔いたのはミゼルだから、それをどうにかするのは当然』、とか思ってたろ?」


 言われて気付く。


「『自分で起こした問題を自分で解決して、報酬をふんだくるなんて最低だ』、と思ってたろ?」


 否定出来ない言葉の羅列。そして突き放すようにプッシーは僕の目の前で目を笑うかのようにぐにゃりと歪めた。


「甘えんなよ?別にミゼルにはお前らの為に豚を殺してやる義理はねぇんだ。自分が肉を食えないからって恨んでくれるなよ?」

「違う……僕は魔法の恵みが貰えないからあいつを憎んでるんじゃ…」

「なら肉をたらふく食っても同じ事を言えるか?」


 もしも、僕達が魔法の恵みを受けていたら……僕は本当にミゼルを恨んだだろうか?魔法で身を守り、豊かさを得て、困らない生活を送る……そうなったらむしろあいつに感謝するのではないか。




「たまたま火の粉が降りかかったのはお気の毒だが、それで炎をお前は憎むのかよ?だったら火の明かりもない場所で一人で生きるといい」




 プッシーの面倒臭い言い回しは少し分かりにくかったが、反論出来なかった。多分、この悪魔の言うとおりだ。


 魔法は僕達に不幸を与えたけれど、どこかでは幸福を齎している。

 火は物を燃やすけれど、闇の中に安寧を齎す。




 物事には色々な側面がある。きっとこの説教臭い面倒な悪魔はそう言いたいのだ。




「おい。説教臭いとか面倒とか随分な事を言ってくれるじゃねーか。ま、餓鬼の割には理解できたほうかね?」


 それでも理解したくないこともある。両親を奪った魔法をどうしても憎いと思いたい気持ちは消えない。


 きっとそれは僕が弱いから。村長達に「盗賊に刃向かうな」と言い聞かされ、あいつらを恐れているから。牙を剥いてはいけない相手だから、理由を付けて牙を剥いてもいい相手を探しただけだ。


 情けなくなった。意志も力も弱い自分が。




 そんな僕にプッシーは囁く。


 僕は忘れていた。こいつは『悪魔』だということを。




「力が欲しいか?」




 思わぬ言葉に「え?」と声が出る。


「其処にミゼルの荷物がある。その中の赤い箱に魔本と……そこに書かれてる魔法の呪文を纏めた本がある。その二つがありゃあ魔法の創始者、『魔王』ミゼルの魔法が自由自在さ。言っとくが、そんじょそこらの魔法とは格が違うぜ?」


 部屋の片隅に積まれた荷物の山の天辺には確かに赤い箱がある。


 身を起こしてそれを確認した僕に、プッシーは悪魔の言葉を囁いた。




「持ってけよ」

「え?」


 目玉がぎょろりと僕を睨む。


「あれでお前が盗賊をやっちまえばいい」

「え……でも、それは」

「泥棒だって?構やしねーよ、んなもん。ミゼルが憎いなら嫌がらせのつもりで持ってっちまえ。それに、お前がやることに意味がある」


 プッシーの甘い言葉が僅かに心を揺らす。


「盗賊の奴らを追い払うだけじゃ意味がねぇ。『二度と来るかこんな村』と思わせねーと、ミゼルが帰りゃすぐに戻ってくるぜ?だったらお前が追い払えばいい。そうすりゃお前がいる限り、奴らは村には顔を出せねぇ」


 確かにそうだ。


「それにお前が問題を解決すらゃあ……村の奴らはお前にきっと感謝するぜ?多分、お前の親の汚名も返上できるだろうなぁ」

「え?」




 父さんと母さんを?それを聞いた途端にぐいと心が引き寄せられる。


「しかも一冊のすげー魔本が手に入るんだ。暮らしどころか村全体が豊かになるぜ?」

「でも……」

「大丈夫。ミゼルは鈍いからな。こっそり持ってきゃ気付かねぇ。それにお前が逃げたらあいつも依頼を投げ出してすぐ帰るだろうよ。そしたら魔本はお前のもんだ」




 僕はごくりと息を呑む。


 そして……









  ※※※※







 布でグルグル巻きにされた丸い何か。それをするすると解くと、中から丸っこい悪魔がぷはっと飛び出す。


「っはぁ~、窒息死するかと思ったぜ!あいつ、俺を縛って逃げやがった!畜生、俺としたことが……」




 ガツン!


「いって~!何すんだミゼル!」

「くっさい演技はやめなさいな。ずっと聞こえてたわよ」

「ああ、そういや『天使の呪い』があったっけな。うっかりしてたぜ」

「……あんたの『悪魔の呪い』もあること、忘れてないわよね?」

「……そうだったな」


 わざと惚けてプッシーは笑う。

 対する頭から布を被ってそれ以外は産まれたままの姿のミゼルはそれを不快そうに睨み付ける。


「お前、何で素っ裸なんだよ!ヤる気満々じゃねーか!」

「そりゃね。でも今はそんな話はしてないわよ」


 珍しく重い空気を纏う(でも裸)ミゼルに、少し気圧されたのかプッシーは「へいへい」と笑うのを止めた。


「真面目な話をするのは分かった。だが服は着ろ。湯冷めすんぞ」

「お気遣いどうも」

 パチンと指を一弾きするミゼル。するとたちまち黒衣に身が包まれる。





「ああ、お前の言いたいことは分かるぜ?何であの餓鬼を焚き付けたんだ、だろ?」


 返事をしないミゼルにプッシーは一方的に答える。


「俺は悪魔だぜ?時に天使より優しい言葉を掛けて人間を導く悪魔さ」

「但し、導くのは堕落への道……でしょ?」


 飽きたようにそのやり取りを終え、ミゼルはプッシーを鷲掴みにする。


「このやり取りも飽きたわ。どうせ互いに心が読めるんだから、あたしとあんたの間に言葉は要らない」

「……珍しい。お前、あの餓鬼に何か肩入れしてねぇか?今回はやけにキテんじゃねぇか」




 ミゼルはプッシーの言葉に動揺一つ見せずににっこりと笑って丸い悪魔を握る力を強めた。


「だってぇ……ロイ君、かなり好みなんだもん♪十四の割に幼顔だしちっちゃいし♪最高じゃない?」

「……」

「夜はじっくり楽しもうと思ったのにあんたが逃がしちゃうんだもん。殺されちゃう前にむしゃぶりつくしたかったわ~」

「……ああ、お前はそういう奴だよな」




 ミゼルが気にかけていたこと。それはロイの身の安全ではなく、お気に入りの少年を逃がしたこと。

 人を思いやるつもりなんて魔王にはさらさらなかった。




「てっきりすぐに助けに行くかと思ったぜ」

「あんたも自分であたしが盗賊をシメても意味がないって言ってたでしょ、甘ちゃん悪魔。気になるなら人を唆すのやめなさいよ」

「っるせー。気にしてなんかねーよ」




 悪魔は改めて魔王には適わないと感じた。

 人を小馬鹿にする筈の自分が遊ばれるとは、やっぱりこいつは面白い。




「さてと。正直、こんな村なんかには興味がないけど……めぼしい子を見つけたのに、一回も寝ないで死なせちゃうのも惜しいわねぇ?」




 悪魔プッシーは心の奥底で呟く。




 結局お前は動くんだろ。全く読めない奴だぜ。




 お前は互いに心を読めると言ったが……




 誰がお前の心なんて読めるかよ、この魔王め。




「……さ、プッシー。あたしは何をすればいいと思う?悪魔さんの優しいお言葉で導いて頂戴」




 ミゼルは悪魔から手を離し、妖艶な微笑を浮かべる。

 プッシーは自身の心を見透かされていること、その上でミゼルが気付かぬふりをしていること、そしてミゼルの求める答えを理解した上でくくくと笑って言葉を与える。


「二度と眠れなくなるくらいの、この村の悪夢を植え付けてやるってのはどうだい?」


 わざとらしくぽんと手を叩いて、ミゼルは笑う。




「それ頂き♪寝不足は美容の大敵だものね♪」




 その相変わらずの笑顔に、悪魔でさえも寒気を覚えた。







  ※※※※




 僕は魔本と呪文本に目を通した。


 小さな村で育った僕は、勉強なんてロクにしていない。だから読める文字は、生活に必要最低限のものだけだ。




 どうやらミゼルは相当頭がいいらしく、見たこともない文字を使っていた。


 呪文が読めなきゃ魔本は使えない。この時点で僕はミゼルの魔本を殆ど使えない事が分かる。


 しかし幸いな事に、「攻撃用」と分けられた魔法のページには、僕にでも読めるものがいくつかあった。しかもそれは以前見たことのある盗賊の魔法よりも、相当に強力なもののようだ。


「よし!」


 これだけでも十分だろう、と僕は勝利を確信する。




 そうなると後はいつあいつらを退治しにいくのかが問題になる。

 村で迎え撃つのは駄目だ。村にも被害が出る。

 だから奴らの拠点に攻め込むのがいいということはすぐに思いつく。


 問題はいつがいいか、だ。


 少し悩んだが、最高の武器を手に入れる気が大きくなっている僕はすぐに決めた。




 今だ。




 プッシーはミゼルは絶対に魔本がなくなった事に気付かないと言った。誤魔化す手伝いもすると言った。

 しかしミゼルが気付く可能性も十分にある。

 そうなればすぐに取り返しにくる。しかも僕が逃げたとなれば、依頼も受けないかも知れない。そうなったらおしまいだ。


 だから今、気付かれる前に終わらせる。


 しかも今は夜。あいつらも休んでいるだろう。見張りくらいはいるかも知れないが、どうせ少数。上手くいけば普通に戦うよりもずっと楽に終わるかもしれない。







 そんな浅知恵を巡らせて、僕は今、やつらの隠れ家の近くにいた。


 見張りもいない。

 チャンスだ!


 うっすらと明かりの漏れる穴蔵に狙いを定めて、僕は魔本の炎の術式のページを開き、覚えた呪文を唱える。


 魔法の名は「神の与え賜うた炎」。そんじょそこらの魔法とは規模の違う火炎が穴蔵へと流れ込む。




 暫くの沈黙。







 そして僅かに遅れてゴォウ!と穴蔵で爆音が響く。


 穴蔵から焼けた布や木片が吐き出されたのを確認し、僕は拳をぐっと握った。



 やった!あの屑どもを退治してやった!あいつら、抵抗する間もなかった!

 震える肩をぐっと抱き締めて、父と母に思いを馳せる。


 その震えは嬉しさからか、本当は恐れていたのか、それとも今更人を殺めたという事実に怯えているのか、それはロイにも分からなかった。


 ただロイは呟く。


「父さん……母さん……仇はとったよ……」







「仇が……どうしたって?」




 聞き覚えのある声にロイは凍りついた。そして振り向きその顔を確認する間もなく、ロイの頭に鈍い衝撃が走り彼を地面にねじ伏せる。




 ……え?




「この餓鬼……滅茶苦茶しやがる!」

「なんつー魔法だよありゃあ」


 ガヤガヤと騒ぎながら、ゾロゾロと男達が周囲の影から姿を表す。腕に刻んだ蛇の模様、それはまさしく魔法盗賊「蛇」の証。




 何で……生きてる?




 這いつくばるロイの視線、すぐ傍の地面にぽたりと血が滴る。何かで頭を殴られたようだ。


 ぐらりと揺らぐ意識の中で、両親を殺した「あいつ」の声がする。


「餓鬼。夜襲とはやってくれるな。だか残念。こちとら狙われる身……周囲に感知魔法を張ってんだ。お前が近づいてきた時点でもう気付いてんだよ」


 蛇の首領、ベイスがぐりぐりとロイを踏みつける。

 そしてそのひょろりとした腕を伸ばすと、ロイの傍らに落ちる二冊の本を拾い上げ中身を覗く。




 そして驚愕。


「おい……なんだこりゃあ……見たこともねぇ術式ばっかだぞ!?」


 ページを進めるごとに、呪文本と魔本を交互に見る毎に、ベイスの顔は邪悪な笑顔に歪んでいく。


「すげぇ……ご丁寧に呪文に魔法の解説まで書いてやがる!しかもそこらの魔法とは格が違うぞ!」

「親分!俺達にも見せて下さいよ!」


 魔本を覗き込もうとする子分達を軽くあしらい、ベイスは本のページを捲る。開いたページをロイに見せつけ浮かべた下卑た笑みは幼顔な少年の顔を恐怖で歪める。


「なぁ。これ、俺達の穴蔵にぶち込んでくれた魔法だよな?」


 狙ったものを焼き尽くす業火。ロイは自分の目で見た灼熱を思い出し、身震いする。


 言わずともその先に見えている結末、それを思い浮かべた少年の目からは涙が溢れ出す。


 情けなく漏れる命乞い。


 やめて、やめて、やめて、やめて……




「自分でやったことがどういう事がどういう事か……餓鬼にはその体で思い知らせてやらねぇとなぁ?」

「やめて……ごめんなさい……ごめんなさい……!」




 汚く血と鼻水と涙と泥とで汚れたロイの顔を、ベイスは笑顔で見下して宣告する。


 ロイの死刑を。


「謝って済まないことだってあるんだぜ?」


 死刑宣告の呪文。



 グォォォォォォォォォォンッ!!




 悪魔の唸り声のような轟音と共に紅蓮の炎が立ち上がる。一人の少年の居た地面だけを飲み込む火炎を前に、盗賊達の笑い声が響いた。


「見ろよ!すげぇ!あはははははははは!こりゃ死ぬわ!」






 暖かい……僕は……死んだのかな……?




 赤に包まれながらロイは思う。




 ようやくお父さんとお母さんに会える、と。










 ぺろっ……


「……え?」


 頬を伝う生暖かい感触にロイは目を開く。


「あん、おいし♪」


 体を支える暖かい感触。覚えのある柔らかさ。ロイの目の前には蠱惑的な女の顔が映る。


「……え?何で……って、うわああああ!」


 そこでロイは気付く。自分がその女にお姫様抱っこされながら、顔を伝う血をぺろぺろと舐められていることに。


「や、やめろ!」

「あら、ロイ君お目覚め?ご機嫌いかが?」


 にこやかにとぼけた挨拶をするのはあの魔王、ミゼル。

 嫌がるロイをからかう様にミゼルは変わらずその舌をロイの顔に這わせる。


「やめろって!」

「え~?怪我してるから舐めて治してあげようと思ったのにぃ……」

「ほっぺたには怪我してないだろ!」

「あら、ほんと。いっけな~い」


 てへっ、と舌をぺろりと出して、ミゼルはロイを地面に降ろす。そしてくすりと笑って頭を撫でる。


「ま、怒れるくらい元気でなによりだわね」




 その微笑を前にして、ロイは目を背けた。悪いとは思いつつも、今更引けぬと本当の気持ちを押し込める。


「……何で助けたんだよ」


 明らかに不満そうな態度。ミゼルの前では心は見え見えなのにも関わらず、ロイはひねくれた態度を選ぶ。


 ありがとう、とどうしても言えなくて。ごめんなさい、と言えなくて。


 それをミゼルが見透かしたのかは分からない。


「え?そりゃまだ頂いてない男の子がむざむざ殺されようとしている男の子をみすみす見逃すあたしじゃないわよ。せめて初めてを奪うまでは逃がさないわよ♪」




 ミゼルは冗談っぽく言って、その後顔を意地悪く作り替えてロイの耳元で囁いた。


「あれ?あの悪党どもには『こめんなさい』を言えるのに、この綺麗なお姉さんには言えませんでちゅか~?可愛いでちゅね~ロイ君は♪」


 ロイの胸にその言葉がぐさりと刺さる。赤ちゃん言葉で馬鹿にされていることは、最早気にならなかった。


 そして、ロイの口から自然とその言葉が零れる。情けなく頬を伝う涙と共に。


「……ご…ごめ」







 ちゅっ。




 その言葉を遮るようにロイの口は塞がれた。優しい感触と甘い感覚が唇に染み込む。




 ミゼルの突然の口付けに、疎い少年も遂に赤面した。




「チェリーでウブなロイ君は、今回だけは口の初めてを奪うだけで勘弁してあ・げ・る♪あと、舌を入れるのも我慢してあげるわ♪」


 紅潮し唖然とするロイの頭を優しく撫でたあと、ミゼルはぐいとロイを引っ張り後ろに下げる。

 そしてその顔に魔王の笑みを浮かべて、呆然とする盗賊と対峙する。


「空気を読んで、あたしとロイ君のロマンチックなキッスを待っててくれてどうもありがと♪さ、出番入りますよモブの皆さ~ん!」


 盗賊達は決して善意からミゼルとロイのやり取りを静観していた訳ではない。




 まるで「本のページがひとつ抜けていた」かのように、気付いた時にはロイを抱きかかえ、自分達の遥か後ろに立っていた女を理解できずに呆然とするしかなかったのである。そんな盗賊達もミゼルに話を振られ、ようやく口を開く。


「テメェは何なんだよっ!?」


 ミゼルは答える。


「ミゼル=バーデン、見ての通りの可憐で優美なお姉さんで~す♪」




「ミゼル……?それってどこかで……」

「ミゼル……まさか……!」

「ま、ままま魔王ミゼルだっ!」




 小さい盗賊の男が声を上げる。それは盗賊達の中に広がり、混乱を引き起こす。


「やべえよ!魔王が出てくるなんて!」

「あいつら……魔王に依頼しやがったんだ!」

「殺される……俺達殺される……!!」



 ざわめきはバラバラ。しかし共通して語られるのは魔王への恐怖。その光景はミゼルの名の大きさを理解させるには十分過ぎた。


 盗賊達は怯えて命乞いを始める者まで出てくる始末。


 なんとミゼルの登場だけで、あれほどの荒くれ者の盗賊達との対立が、戦わずして決着がついた……








 ……かと思われたが。


「慌てんなバカどもが!」




 それは首領のベイスの一言でねじ伏せられる。


「魔王ねぇ……確かにヤバい奴が出てきやがった。だが、予想外でもねぇ。むしろこれで合点がいったぜ!」


 ベイスが手に持つ魔本をぱしぱし叩く。


「あんな餓鬼がこれほどの魔本を書けるわけがねぇ!ってことは裏には相当ヤバい奴がいるってこった!それが魔王、なら納得じゃねぇか!魔王ならこれ位余裕で書けるだろうしな!」


 ベイスの言い分はごもっとも。しかしそれは目の前の女がミゼルだと明らかにするだけで、絶望をより深めるだけ。


 だがベイスは余裕綽々。


「……となると問題は何で餓鬼が魔本を持ってたかってことだ!あんな餓鬼にミゼルが進んで魔本を渡すとは思えねぇ!だったら考えられるのは餓鬼が本を持ち出したってところか?」

「正解!」


 ミゼルはにこやかに返答。それを聞きベイスは自身の優位を確信する。




「……ってことは、お前の大切な武器は俺達の手にあるわけだ」




 ミゼルの魔本は、ロイの持ち出した魔本は今、ベイスの手の中にある。


 それはつまりミゼルの魔法はベイスの手に握られているという事。ミゼルには対抗手段がないという事。


 しかもミゼルは手ぶら。魔本を持つ気配はない。

 そして魔本の創造者、ミゼルなら魔本なしで魔法を使える可能性もあるが、魔法は儀式の手間や時間の掛かるもの。魔本がなければ争いに使うことなどままならない。


「つまりはお前は絶対に俺達には勝てないって訳だ!」




 ベイスの言葉に子分達は狼狽えを忘れ、笑みを浮かべ始める。そして余裕の声さえ上げ始めた。


「そうだ……負けるはずがねえ」

「魔王を殺せば俺達の名が上がるんじゃねぇか?」

「これってむしろチャンスだな!」




 盗賊達は魔本を構え、志気は最高潮。既に臨戦態勢に。




「そ、そんな……僕のせいで……」


 ロイは今更自らの犯した過ちに気付く。

 しかし時すでに遅し。


 ロイは再び意味を持たない謝罪の言葉を吐こうとした。




 しかし遮る甲高い声。


「ククッ!馬鹿どもめ!負けフラグ建てまくりやがって……」

「……プッシー?」

「お前も馬鹿だなぁ?ミゼルの事がまるで分かっちゃいねぇくせに心配なんざしてんじゃねぇ」


 肩に乗っかる丸っこい悪魔が笑い声を上げる。ミゼルは振り向かずに悪魔に告げる。


「じゃ、プッシー。『次こそ』はロイ君の事お願いねん♪次舐めた真似してくれたら…………ね?」

「分かったよ!二度と目に針千本なんて勘弁だしな!」

「宜しい」




 こきりと肩を鳴らし、ミゼルが一歩踏み出す。その瞬間、ミゼルのから漂う空気が一気に変質した。




「『私』は魔王。魔王ミゼル。以後お見知り置きを」




 ロイは戦慄する。


 喩えるならば、どこか陽気な明るい空気が……一気にどす黒くなった印象。さらに言えば、それは明るい色を塗り潰すただの黒でなく、無数の色を混ぜ合わせたような混沌とした黒。




 ロイでも気付いたその変化に盗賊達が気付かぬ筈がなく、蛇達は怯えるように反射的に魔本の力を行使していた。




 赤、赤、赤……


 降り注ぐは火の雨。魔法の炎。

 今まで、幾つもの村を焼き、幾つもの命を蝕んだ赤は、今まさにミゼルに浸食せんとしている。




「ミゼル!」




 響くロイの声。


 しかしそれは意図もたやすくかき消される。




 ジュッ!


 大量の炎が一瞬でかき消される音で。



 黒を赤で塗り潰せる筈がない事に、盗賊達は今更気付いた。


「あっつ~い!汗かいたらどうしてくれるの?」

「な、なんで効かない!?魔本もないのに!」


 盗賊が声を上げる。ミゼルは笑顔でそれに答える。




「『私は炎に呪われている』」




「あいつに罹るは『炎の呪い』。侵略し、不可侵を司る炎の領域に踏み入った者への呪い」

「え?」


 プッシーの言葉にロイはきょとんとした。


「つまりは『炎』は恐れられ避けられるべきものだった。獣達は今でもその理に従っている。それにも関わらず、『炎を支配する』という傲慢な人間を『炎』は呪った。その相手こそが魔王ミゼル」







「如何なる炎も私にとっては紙切れみたい。折るのも切るのも自由自在」


 ミゼルはくくっと笑い声を漏らし、唇に指を当てて投げキッス。


「バキューン♪」







「美しい……」

「……は?お前何言って……」

「ミゼル様!俺をお許し下さい!あなた様に逆らうなんて……!」




 盗賊達の一部が目の色を変えて跪く。そして何度もミゼルに見惚れるように恍惚とした表情で許しを請う。




「『私はサキュバスに呪われている』」



「ミゼルはサキュバスに呪われている。女の味を知っている男で、あいつに魅了されない奴はいない」




 骨抜きにされた子分達に怒鳴りつけるベイス。しかしとろんと酔ったような子分達は使い物にならなくなっていた。


「ひい、ふう、……十人近く残ったの?あらあら盗賊さん達、結構女を知らないのねぇ。何?もしかして男色家?」

「テメェ、何しやがった!」

「落としたのよ」

「何なんだお前は一体!」




 ベイスの焦りを前に、ミゼルは笑顔で答える。


「魔王、でっす♪」


 ミゼルがバチーン、とウインクする。ふざけた態度が再びベイスに火をつける。


「……お前ら!魔法が効かねえなら直接なぶり殺せ!」

「お、おおおお!」




 盗賊達が武器を手に突撃する。


 しかし魔王が慌てる筈もない。




「『私は鬼に呪われている』」


 ミゼルはその腕を軽く天に向けて突き上げる。そして迫り来る盗賊を前に、それを無視するかの如く振り上げた手を地面に振り下ろした。


 ズズゥン!



 前衛の盗賊は思わず転げる。それ程の大地の揺れ。そして盗賊は腰を抜かして立てなくなる。


 地面には無数の亀裂が走っていた。その女の細腕は地面を軽々と砕いていたのだ。


「う、うわああああ!」


 盗賊達の中に恐怖渦巻く中、倒れなかった残りの盗賊の一人が叫びと共に必死で突撃する。そしてそのサーベルはミゼルの体に振り下ろされ……




 ザクリ。




「よ、よくやった!テメェらも続けぇ!」


 肩にめり込んだサーベルに、ミゼルは視線を落とす。


 滴る赤い血液。


「あらら」


 とぼけた声を上げたミゼルに、ベイスの指示で一斉に志気を取り戻した盗賊達が襲い掛かる。




 サーベルが腕を切り落とし、棍棒が頭蓋を砕き、槍が腹を抉る。


 ぱたりと四肢を失い全身を血に染めた女は地面に転がる。しかしなおも盗賊は,を引かない。


 蛇達は恐怖をかき消すように、もう生きているとは思えない女に凶器を振り下ろす。




 ごつ、ざく、ぐちゃ、ぐちゅ、ぬちゃ、べちゃ




 舞う血飛沫に汚れながら、盗賊は肉のこびり付いた凶器を何度も振り下ろす。

 あまりにも凄惨な光景に、ロイは顔を蒼白にし、悲鳴も上げられずにへたり込んだ。


「ミゼル……」







「読んだ?ロイ君」



 今度は盗賊達の表情が凍りついた。


 凶器を振り下ろす手を思わず止め、生きている筈もない声の主に視線を落とす。


 ぐちゃ、べき、ごり、ぬちゃ


 切り落とした四肢が独りでに戻ってくる。割れた頭が塞がっていく。凶器にこびり付いた肉がずるずると主の元に戻っていく……




「あーらら。服が汚れちゃったじゃない……血の汚れってなかなか落ちないのにぃ」


 むくりと女は身を起こす。綺麗な肌で、綺麗な形で、血塗れの服を溜め息混じりに見渡しながら。


 黒は赤では塗り潰せない……


 盗賊達は動くことも出来ずに、ぽつりとそのまんまの感想を漏らした。たった一言……


「化け物……」







「……ミゼルは、一体何者なの?」


 唖然と立ち上がった女を見つめるロイに、肩の悪魔は答えた。


「『魔王』さ」




 プッシーはくくっと笑い、ぐにゃりと一つ目をまるで嫌みな笑みでも浮かべるように歪める。


「大体、ゲームに出てくる魔王ってのは全ての人間に憎まれる『悪役』と相場は決まってんだろ?」

「ゲーム……?」

「おっと、この世界じゃゲームは通じないか。……じゃあ余計な言い回しは省いていうが……お前に話した『豚の話』、ありゃミゼルに当てはめるのはちとずれてるな」


 プッシーの話にロイは首を傾ける。


「何故なら、『豚殺しは豚以外には災いを齎さない』からな」


 ミゼルは後退りを始める盗賊達に歩み寄る。


「あいつは豚だけじゃねぇ。『全てのものに災いを齎す』。しかも豚殺しが食べる為に豚を殺すのに対して……」


 ミゼルはこきりと首を鳴らす。その一つ一つの動作が盗賊を怯えさせる。




「あいつは災いの為に恵みを齎す」





「『私は吸血鬼に呪われている』」




 ミゼルの口から牙が覗く。そして徐々にその様子に変化が現れる。




「あいつは見ての通り『ありとあらゆる生き物から呪われている』。それも、自ら望んでだ」

「望んで……?」




 ロイには理解できない。それも当然。


「理解できないだろ?俺にもできない」


 悪魔はくけけと悪魔らしい笑みを浮かべて目を閉じる。


「あいつはとある悪魔の遊びを邪魔した。悪魔は一国の王を操り国一つを玩具にして楽しんでいた。あいつはその悪魔をぶん殴って無理矢理契約を結ばせた。お陰で悪魔と王との契約は取り消し。王はさぞかし怒ったそうだぜ。なんたって人心を掌握する力を奪われたのだから。……悪魔もあとちょっとで戦争ってゲームまでたどり着けたのに、って大分ムカついたらしいぜ?」


 人事のようにプッシーは語る。


「あるところに天から見放された国があったそうだ。日の射さない暗闇の国だ。あいつはそこを見放した天使を締め上げて、日の光を奪い取ったそうだ。お陰で天から恨みを買う事になったが……逆に追っ手を退けて、天の炎やら知恵の実やら、ありとあらゆるものを奪い取った。天はもう怒り浸透。人間に余計な知恵が渡ったと憤慨したそうだ。それだけでどれだけ呪いを受けたかな?」


 ミゼルの唇がゆっくり動く。それを眺めながらプッシーは語る。


「吸血鬼もサキュバスも、人魚も化け狐もボッコボコだったな。ありゃ笑えたぜ」

「ミゼルは……どれだけ呪われてるの?」

 ロイの問いに対するプッシーの答。


「ざっと、13の13倍に13を足したものの13回13乗したものから13を引いてから13を掛けた程度……かね?」


 訳の分からない数字だが、ロイは理解する。


 ミゼルに罹る呪いの重さを。


「分かるか?それだけの呪いを背負ってんだ。弱いわけがないだろうよ」

「……」

「そしてそれだけの呪いを背負ってんだ。強いわけがないだろうよ」

「え?」







「『私は狐に呪われている』。そのせいで、子を成せない体になったけれど……お陰でこの醜い姿を隠せるようになったの」


 ズ、ズ、ズ、ズ、



 角、角、角、角、尻尾、尻尾、尻尾、尻尾、羽、触手、牙、翼、目玉、

腕、腕、首、鱗……




 ミゼルの姿はあらゆるものをゴチャゴチャに混ぜ合わせたような、混沌としたものへと変貌する。



 異形の化け物は、裂けた口から金色と紫色の息を吐き出し、無数の口で笑った。




「……で、誰から食べて欲しいの?」


 腹の辺りの大口をガバッとと開き、三つの目でガクガク震える盗賊達を睨みつけるミゼル。




「ミゼルは無数の呪いを使役し、人智を超えた力を操ることが出来る。だがその代償として途方もない苦しみを背負ってる。それこそ死んだ方がずっとマシな位にな」


 悪魔、プッシーが語っていた呪いをロイは思い出す。

 『プッシーを楽しませなければ死ぬ』


 そんな呪いを他にもミゼルは背負っている?




「狐の呪いはあいつに子孫を残すことを許さない。吸血鬼の呪いは定期的な血液の摂取を要求し、サキュバスの呪いは性行を。炎の呪いは身を焼くような熱さを常に与える。知恵の呪いは何かを常に学ばなければ死を齎す。本の呪いはあらゆることを、それは例えば一時の痛みでさえも忘れる事を許さない」


 鳥肌が立った。そんな状態で、いや今プッシーが話したのはほんの一部なのだから、それ以上の状態でどうして生きられるというのか?


 そして其処までして呪いを集める意味があるのか?







「ひ、ひぃぃぃぃっ!」

「あ、待て!お前らぁっ!」


 魔王ミゼルを前にして、遂に盗賊の下っ端達は一目散に逃げ出した。


 残るは最早プライドだけで立つ首領ベイスのみ。


「……あああああっ!死ねぇぇ!」


 ベイスは怒り狂いミゼルの魔本を開く。そしてがむしゃらに呪文を唱えた。




「……おい!何で魔法が出ねぇ!?」


 魔法は出なかった。先程までは使えた魔法が。


 何故?




「『私はエルフィアに呪われている』」



「は?」




「エルフィアは呪われた木。災厄を顕現する悪魔の木。私は『エルフィアの災厄顕現を魔法として使役する』呪いを背負った。お陰でエルフィアに膨大な魔力を捧げなければいけなくて辛いわ」




「魔本ってのはタダで魔法を使える便利ツールじゃねぇってこった。ミゼルの魔力を犠牲にエルフィアの災厄を利用する手続きをする通信機みたいなもんだ。ま、『竜の呪い』で魔力は有り余ってるから堪えないみたいだがな」


 プッシーは語る。ロイはプッシーの言葉がいまいち理解できないが、『ミゼルがその身を削って魔本を魔法を使える道具にしている』ということは分かる。


「何で……」

「エルフィアは放っておけば災厄を生む。だが、お前のようにそれを知らない人間が多いのは何故だと思う?」


 ロイの問いにプッシーは問いを返した。

 そして答えを待たずして答える。


「その前に伐採されちまうからさ」


 悪魔の目が嫌らしく歪む。


「エルフィアの呪いってのは本来は周囲の多数の人間に及ぶもんだ。だが今ではあいつが全て背負ってる」

「え……」

「とある国と国が戦争をしていた。今は戦争は終わってる。奴らが憎しみの矛先をミゼルに変えたからだ」

「……」

「神は増長した人間に裁きを下そうとした。しかしそれは人類には及んでない。人間を唆した元凶は、ミゼルだと神は判断したからだ」




「あいつはこの世の全ての『呪い』を肩代わりしてんだよ」


 呪いの肩代わり……その言葉をロイはどう理解すればいいか分からなかった。割り切れない感覚、プッシーはそれを伝えて何をしたいのか。




「言ったろ?あいつは『魔王』、恨まれ役だ。でもな、世の中にはそうそう都合のいい悪党なんていないんだぜ?」


 都合のいい悪党。

「争いを巻き起こす王も理解できる大義名分を持ってるかもしれない。あの盗賊達だって、貧困に苦しむ家族の為だとか同情に値する何かを持ってるかも知れないぜ?」


 勿論、そんな事はないんだがなとプッシーは補足しつつ、ミゼルの有り様を語る。


「あいつはそんな何かを確実に持ってない。呪われる為に手を汚す。『呪い』っていう酷く身勝手な矛先を全て自分に向けさせる為にな」

「……何のために?」

「全ての存在の為にさ」







「魔法は私が許可しないと使えないけど……あなたはまだ続けるの?」

「クソッ!クソッ!この化け物め!お前さえいなけりゃ……!」


 魔王ミゼルはベイスの最後の苦しい言葉を聞いて、にこりと笑う。




「私がいなければ?そうね、あなたからすれば私は邪魔で、目障りで、憎い存在かも知れないわね」




 ミゼルは手を振り上げて、ベイスにぐっと顔を寄せる。そして言い放つ。




「憎いのなら呪いなさいな!呪わば呪え!結構よ!何故なら私は、呪われるべき『魔王』なのだから!」


 ミゼルの威圧にベイスは言葉を返せない。


 そんなベイスにミゼルは遥か後ろに控えるロイに聞こえぬようにぼそり囁いた。




「『私はロイに呪われている』」




 バチーンッ!!




「え……?」


 振り上げた手から放たれたビンタに、ベイスはよろめく。人間とは思えないその馬鹿力は、確実にベイスの意識を奪い取った。


 薄れゆく意識の中、最後にベイスはミゼルの言葉を聞く。




「一発あなたにお仕置きしないと……もっと嫌われちゃう面倒くさい呪いよ」







  ※※※※




「……で、随分と舐めた真似してくれたじゃないの」

「ふにぃ」


 プッシーはぐいぐいぶにぶにと体を引っ張り回されながら、間抜けな声を上げる。


 そこはミゼルに貸し出された宿の一室。夜中の内に依頼が片付いてしまったので、ミゼルはとりあえず報告は明日にということで、部屋に戻っていた。


 プッシーの話を聞いたせいか、妙に気まずそうにしているロイといるのも疲れるので、彼は家に返している。




「何、余計な事をロイ君に吹き込んでくれてんのよ、おらおらおらおら」

「や、やめてくれ!ふにぃ!」


 されるがままのプッシーは心の奥底で「弁解の余地をくれ!」と念じる。


 悪魔の呪いでそれを読み取ったミゼルはようやくプッシーを解放する。




「ふはぁっ!助かった!」

「まだ助かってないわよ」


 珍しく怒り心頭のミゼルにプッシーは慌てて弁解する。


「別に他意はなかったんだよ!ただ、心を覗いたら、あいつならお前の事を理解できると思っただけだ!」


 目を閉じ、プッシーは語る。


「お前もさ、いい加減苦しいだろ?他人に呪われ続ける人生が。だからせめてお前にも救いがあったらな……って」

「プッシー……」




 ほろりと涙を流す悪魔。







 ミゼル、その頭を鷲掴み。


「……で、本当の所は?」

「……憎い対象があんまり悪そうな奴じゃないと判ったら、あの餓鬼がどういう反応するのかと思ったから遊んだんだよ!ギャハハハへブシッ!」


 プッシー、壁に生き埋め。


「……まさかお前が素直に良く思われるのが苦手だったとは思わなかったぜ」


 プッシーは壁にめり込んだまま呟く。それに足を一発ぶち込むと、ロイの心を覗いた時から顔を赤いままにしているミゼルはベッドに飛び込んだ。







  ※※※※




 ロイは見事に悪魔の悪戯に引っかかっていた。


 自分が今までミゼルを恨んでいたこと、それが本当は的外れだとは思っていた。


 しかし村の為に……いや自身が弱くて逆らえないが為に、ロイは本来盗賊にぶつけるべきだったそれを、自分に危害を加えないであろうミゼルにぶつけていただけだ。


 ……そんな事を考えている時点で、どこかで『魔法の普及の功労者』として、世界に良いものを齎した者として、ミゼルが悪口を言った奴は皆殺しするような悪人ではないと認識していたということでもあったのだが。


 改めて血を流しながら(すぐに復活したものの)、自分を助けにきてくれた恩人に、自分はなんて事を言ったのだろうと後悔する。


 少し前まで開いていた傷口に手を当てる。「舐めれば治る」と無理矢理ミゼルに舐められた傷口は跡もなく消えている。これも何かの『呪い』なのか、だったらミゼルはこの傷の為に何を支払ったのか……


 少なくともロイは『傷』という呪いと『盗賊』のという呪いをミゼルに押し付けてしまったのだ。プッシーの言葉を借りれば肉にありついた、ということか。


 そして言葉通りに肉にありついた途端にミゼルに対する認識が変わっている自分に吐き気がした。




「結局……僕は」




 ミゼルに御礼を言わなきゃいけないのに、なんと言えばいいか分からない。




 ミゼルは朝が来たら出て行くだろう。


 その時には……




 ロイは誰もいない部屋で目を閉じる。






  ※※※※




「本当に有り難う御座いました!まさか一晩で盗賊を追い払って下さるとは!」


 尊重の退屈な謝礼を適当に聞き流し、ミゼルは溜め息をつく。


「おいミゼル。随分とテンションが低いなぁ?まさかあの餓鬼が来てないのが寂しいのか?」


 ミゼルは首を横に振る。


「いいえ。あの時は盗賊をビビらせる為に『これが私の本当の姿だ』、みたいなノリだったけど……あれは『狐の呪い』で化けてただけで、本当は私はこのまま素敵なお姉さんで、あんな化け物じゃないのよ、って言っとくんだったわって思って……あー、ロイ君に化け物だと思われたままお別れなんて~」

「……安心しな。どっちにせよ化け物だ」


 呆れてプッシーは目を閉じる。実際に本気でそのことで悩んでいるから困る。


「ま、いっか……じゃ、そろそろ行こうかしら?新しい可愛い子があたしを待っている!」

「このビッチが……」

「それではご機嫌よう」




 村長に、村に別れを告げ、ミゼルは村に背を向ける。




「あらま」


 するとその視線に飛び込んできたのは、唯一の気掛かりだった少年、ロイだった。


「ロイ君!もしかして、話聞いてた?だったらあたしも釈明しなくて済んで楽なんだけど」

「狐がどうとかいう話?」

「そうそう」




 ミゼルは満足げに頷く。


 「ずっとロイが話を聞いていたのを知っていた」のに、わざとらしく見せた反応にロイは少し表情を暗くした。




 このまま謝らせないでお別れするつもりなんだ……




 昨日の夜、どうにも善意的な視線は苦手だと言っていたことを思い出し、ロイは確信する。




 だけど負けてなるものか。ここで謝らなければ後悔する。そしてロイが謝罪を言葉にしようとしたその時……




 ロイの口は再びミゼルの唇で塞がれた。


「言わせな~い♪」




 唖然として立ち尽くすロイ。しかし頬を赤らめつつ負けるらものかと口を開こうとしたロイに、ミゼルは二冊の本を差し出した。


「はい!」

「……これって」


 それは魔本と呪文書。ロイが夜に持ち出したものだ。


「これあげるから、今度からはあなたが村を守りなさいな」

「でも、これを使うとミゼルが……」




 言いかけたロイの頭を撫でて、ミゼルは笑う。


「いーのいーの。慣れっこよ。それに呪いが増えれば増えるほど、あたしは強くなるんだし」


 ぐいと魔本を押し付けて、ミゼルはバチンとロイにデコピンする。


「痛い!」

「痛いでしょ~?」


 悪戯な笑顔でミゼルは囁く。


「痛いならあたしを呪いなさい。謝れなくて悔しいならあたしを呪いなさい。両親のことでも呪いなさい。それがあたしの力になるから♪」




「『呪わば呪え』。なんたってあたしは……『魔王』、だからね♪」




 ロイは額に手を当て、呟いた。


「……呪ったら、また会えるの?」

「……ま、呪わずともいずれは浚いにくるけどね♪」

「なんだよそれ……」




 ミゼルは善意を受け取らず、呪いを受けて前に進む。




 それは暗く濁っているけれど、何より強い想いの塊。




「絶対に赦さないからな!一生呪ってやる!」




 新たな呪いを受けて、ミゼルは魔王の笑みを浮かべる。




「『呪わば呪え』♪」





短編とは名ばかりの長文にお付き合いいただき有り難う御座います!拙い文章ですが、少しでも楽しんでいただけたなら光栄です!


よろしかったら、是非是非、感想ご意見何でも宜しくお願いします!

今後の参考にさせていただきますので……(-人-)

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