第8話「世界を救う魔王」
魔王軍、出撃。
その報は、瞬く間に絶望に沈む世界を駆け巡った。
佐山が率いるモンスター軍団の力は、人々の想像を遥かに超えていた。
オークの軍団が、都市を蹂躙していた暴走モンスターの群れをいとも簡単に鎮圧し、飛行部隊が人々を孤立した地域から救出する。
ゴブリンの工兵部隊が破壊されたインフラを驚異的なスピードで復旧させ、スライムたちが毒や汚染地域を浄化していく。
彼らは、破壊者ではなく、秩序の執行者だった。
佐山の完璧な統率のもと、モンスター軍団は各地のスタンピードを次々と鎮圧し、『終焉の教団』の拠点を破壊していった。
追い詰められた教団のリーダーは、ついに最後の切り札を切る。
彼らの本拠地である古代遺跡の祭壇で、禁断の召喚儀式を執り行ったのだ。
その目的は、神話の時代に世界を滅ぼしかけたと言われる、伝説の厄災。
世界を喰らう者、終焉竜デミウルゴスの召喚。
空が、禍々しい紫色に裂ける。
次元の裂け目から、デミウルゴスがその巨体を現した。
それは、古竜すらも赤子扱いするほどの、まさに神の領域に属する存在だった。
その竜がただそこにとどまるだけで足元の岩肌はひび割れ、空気中の魔素が凍りつくように枯渇していく。
息を吸うことすら困難になるほどの重圧を放つ、絶望の化身そのものだった。
デミウルゴスの放った一撃のブレスで、佐山のモンスター軍団の一部が塵と化して消滅する。
その力は、あまりにも絶対的だった。
誰もが、世界の終わりを確信した。
しかし、佐山は諦めなかった。
彼は、自らのスキルの全てを解放する。
「全員の意識を、俺に繋げ!」
それは、前代未聞の試みだった。
配下にいる数十万もの全てのモンスターたちと、意識を完全に同調させる。
無数の命と、無数の心を一つに束ね、神話級の厄災に挑む。
『主よ、我らの力を!』
『マスター、信じてる!』
『グルアァァァ!』
オークキングの剛力、ゴブリンの知恵、ワイバーンの翼、ロックゴーレムの頑強さ、そして古竜の悠久の魔力。
ありとあらゆるモンスターたちの想いと力が、奔流となって佐山へと流れ込んでいく。
佐山の体は、膨大なエネルギーに耐えきれず悲鳴を上げるが、彼は歯を食いしばって耐えた。
佐山は、仲間たちとの絆を、その身に宿した全ての力を、唯一の武器としてデミウルゴスへと立ち向かう。
古竜の背に乗り、天高く舞い上がった佐山は、一つの巨大な光の塊と化していた。
「これが、俺たちの……俺と、仲間たちの全力だァァァッ!!」
無数の魂が結集した一条の光が、佐山の手から解き放たれる。
それは世界の理すら書き換えるほどの、圧倒的な熱量と質量を伴う魂そのものの輝きだった。
流星群のごとき速度で放たれた光の奔流は、デミウルゴスの吐き出す極大の闇のブレスを正面から真っ二つに切り裂き、そのまま空間を削り取るようなごう音を立てて、絶望の化身の巨大な胴体を完全に貫き去った。
世界が、純白の光に包み込まれる。
やがて、光が収まり、静寂が訪れた時、そこにデミウルゴスの姿はなかった。
禍々しかった空は、元の青さを取り戻していた。
『終焉の教団』の野望は、ここに完全に潰えたのだ。
戦いが終わり、世界は救われた。
その一部始終を見守っていた人々は、もはや佐山を「魔王」とは呼ばなかった。
絶望の淵から世界を救った、唯一無二の英雄として、心からの称賛と感謝を送った。
佐山は、傷つきながらも生き残った仲間たちに囲まれ、穏やかな光が差し込む空を、静かに見上げていた。
もう、彼は孤独な少年ではない。
かけがえのない仲間たちと共に、彼はこの世界で生きていくのだ。
魔王と呼ばれた英雄の物語は、世界中に希望の光をもたらし、大団円を迎えた。




