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四話 助けて

登場人物が増えていく




「嫌がらせを受けている? いいえ。皆さん良い人です。そんなことありません。ええ、中央教会に勤める聖女の皆さんにはいつもよくしていただいています。……そうですね。すこし、心配をかけすぎていることがあります。私の力不足ですね。……え? 測妃様とミハイル殿下ですか。はい、おふたかたにもとてもよくしていただいています。測妃様は厳しいですが、これも私のためだと、優しく厳しく接していただいています。ええ、ミハイル殿下も、いつも私のことを思ってくださり……ふふ、最近、よくがんばっているとミハイル殿下に褒めていただきました。それから……」





 リアは日に日にやせ細っていく。もともと華奢な少女であったが、今の状態はとても健康的とは思えない。骨と皮に、申し訳程度の肉がついているだけだ。

 忙しくて食事を抜くリアを心配したソフィーは時折リアに食事を渡していた。最初はサンドイッチだったが、仕事をしながら食べていた時に挟んだ具材を落として聖衣を汚してしまったのを見てから、栄養豊富な黒パンに野菜ペーストを混ぜるようにした。

 野菜ペーストを混ぜた黒パンは成形が難しく、不格好になりやすい。

 それでも、リアに少しでも栄養を取ってもらおうと、ほかの聖女たちと共に必死で作った。しかし、ソフィーが謹慎から開けた後、リアは一切の食事を受け取ろうとしなかった。

『お腹は空いていない』『これ以上太ってはいけない』『食事ならちゃんととっている』

 そんなことを言っているが、ソフィーから見たリアは《やせ過ぎ》だ。心配しているのはほかの聖女も同じようで、あの手この手で食事を与えようとするが、全く受け取ってもらえない。唯一飲み物は受け取ってもらえたものの、少しでも栄養を取ってほしいと思って甘い果実の汁を入れたところ『太るから』と受け取ってもらえなくなってしまった。


 ――これしきの事で太るわけ無いでしょう! 一体、誰がリア様にそんなことを


 おそらく、マグダレーナ測妃かミハイル殿下か、その両方だろう。

 男爵令嬢にとって、その二人は雲の上のような存在だ。どうにかしようと動こうにも、動くことができなかった。

 そして、ソフィーの心配事はほかにもある。数日前から、友人であるエレノアの嫌な噂を聞いたのだ。


『リアを押しのけて筆頭聖女の座を狙っている。そのためにリアを陥れようとしている』


 彼女はそんなことをする人ではない。もし狙っているなら、リアに対し正々堂々と筆頭聖女の座をかけた戦いを申し込むような、まっすぐな人なのだ。


 ――誰か助けて


 あの方を、誰か救って。





 時は少しさかのぼって、ここはリーヴェルン村。魔王が吐き出した瘴気の残骸が少し残るため作物が育ちにくいと言われていたが、ここ数年である程度改善された村だ。

 そこに建つ古びた教会には司祭が一人勤めていた。名をフィンという。村人からはフィン神父と呼ばれている。

 森で瘴気の浄化を行い、魔物を退治してから帰ってくると、郵便受けに手紙が入っていることに気づいた。

 ここに手紙が来るのは久しぶりだ。

 宛名は――カシウス・エルドラン。その下にフィルガスト・ガロン。差出人はエレノア・ハーゼルベルク。

 なんとなく、嫌な予感がした。


 カシウス・エルドランが教会を訪ねてきたのはその日の夜である。




「元気にしていたか」


 白髪交じりの黒髪どころか、黒髪交じりの白髪と言った方が良い好々爺――それがカシウス・エルドランだ。彼はフィンにそう言うと、人好きのする笑みを浮かべた。年齢は五十代前半だが、見た目年齢はそれより上に見える。それだけ、苦労が多かったのだろう。


「わざわざここに寄らず、さっさと王都に向かえばいいのに」

「弟子の顔を見たいんだ。文句があるか?」

「――と言いたかったが、これ」


 フィンから差し出された手紙にカシウスは首を傾げた。


「はて? エレノア嬢か」

「手紙をもらうのは珍しい相手か?」

「そうでもない。が、わざわざ《フィルガスト》の名も書いてあるということは、なにかしらの緊急事態かもしれん」

「……?」


 その場で手紙の封を切り、カシウスは手紙を読む。フィンはそれを横目に夕食の支度を始めた。

 しばらくして、夕食のシチューの入った器を持ってカシウスのところに戻ったフィンは、頭を抱えた彼の姿を目にした。


「なんかあったのか?」

「ああ。もう少しゆっくりしていく予定だったが、明朝出発することにした」

「じゃあ、朝飯は持ち歩けるサンドイッチを作っておく」

「すまんな」


 食事をしながら、カシウスは手紙の内容をかいつまんで語った。曰く、リアという聖女が測妃と第三王子によって虐待されている可能性があるということだ。

 フィンの眉間に皺が寄る。結果的に良かったことだとフィンが思っているが、彼がリーヴェルン村に左遷させられたのは、準聖女に性的暴行を行おうとした聖騎士を殴り飛ばし、ついでに決闘を申し込んだためだ。決闘にはフィンが勝った上に、聖騎士の悪事を暴いて騎爵位をはく奪させたが、教会のお偉方はフィンの行動が気に入らなかったらしく、左遷を言い渡された。

 本当は上もフィンから司祭の地位を奪い、教会に近づけないようにしたかったらしいが、少々込み入った事情があり、それができなかったという。


 ――臭いものに蓋をして、好き勝手やるバカを野放しにするとこは変わってねえな。


「もしかしたら、お主の手を借りるかもしれん。なるべくこの村から離れないようにしてくれ」

 カシウスから言われ、フィンは頷いた。




 十日後、フィンの元に王都に行ったカシウスから手紙が届いた。





フィン神父はこれからも出番があります


リア:嫁いびりされてる

ミハイル:見て見ぬフリするタイプのクソ夫。口だけで慰めていい夫になった気でいる

マグダレーナ:嫁いびりするタイプの姑。息子チャン奪った女は許せん


ソフィー:いい人。パン作りが得意

エレノア:いい人。趣味は読書


カシウス:剣聖の称号を得た聖騎士だったが今は大司祭となっている。多分亡くなった勇者にクソデカ感情を抱いているタイプ

フィルガスト:カシウスの弟子。今の聖剣の持ち主。

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