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偽装結婚のはずが、なぜか溺愛が止まりません 『先に惚れたら破滅の溺愛ゲームと、恋する二人は思い込んでいる』  作者: 緋色の雨


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プロローグ

 長らく戦争が続いていたグラニス竜王国とマギノリア聖王国の国境沿いにある荒れた平原。両国の旗が掲げられた荒れた平原に使節や兵士が集まって、張り詰めた空気を漂わせている。

 その中央で、眉目秀麗な王子と、見目麗しい令嬢が向き合っていた。


「……お久しぶりですね、レナート様」

「……ああ。アストリッド、ようやく会えた」


 グラニス竜王国の第二王女アストリッドが凜とした声を発して微笑めば、マギノリア聖王国の第一王子レナートも親しみを込めて破顔した。

 二人は幼なじみでありながら、九年越しの再会となる。

 戦争が二人を引き裂いたからだ。


 両国の戦争は膠着状態のまま長期化へと至る。

 グラニス竜王国は魔石の最大産出国で、マギノリア聖王国は魔導具の技術大国である。その両国が戦争を長く続けたことは、周辺諸国の経済にまで影響を及ぼした。

 その結果、第三国の仲介があり、ようやく二国間の戦争が終結した。その講和の条件、あるいは平和の象徴として、両国のあいだである取り決めが成された。

 その一つが、アストリッド第二王女とレナート王太子の婚姻である。


 グラニスの氷の令嬢と、マギノリアの聖王子。

 幼い頃に将来を誓い合ったにもかかわらず、戦火に引き裂かれた。悲劇の主人公である二人は祖国のために献身を捧げながら、愛する者との再会を夢見て和平を実現しようと奔走する。

 その努力が実って戦争は終結、愛する二人はついに再会を果たした。


 ――という美談と共に発表された政略結婚である。


 表向きは、戦争が本当に終結したのだと国民を安心させるためのパフォーマンス。

 そのために生み出された作り話。

 その裏で、二人は自国の王から密命を帯びていた。



「マギノリア聖王国は兵器となる魔道具の開発に着手している可能性があり、講和はそのための時間稼ぎだと思われる。ゆえにアストリッドよ。聖王子を籠絡し、その秘密を暴き出せ」


 アストリッドが自国の王――つまりは父親から与えられた密命である。

 そして――


「グラニス竜王国は魔石を爆弾にする技術を研究している可能性があり、講和はそのための時間稼ぎだと思われる。ゆえにレナートよ。氷の令嬢を籠絡し、その秘密を暴き出せ」


 こちらはレナートが自国の王――つまりは父親から与えられた密命である。



 つまり、惚れたら破滅の溺愛ゲーム。

 聖王子と氷の令嬢の政略結婚、ではなく――


「レナート様。いつか迎えに行くと言われたあの日からずっと、貴方のことを想い続けておりました。ですから、こうして再会できて本当に嬉しいですわ」


 貴方は覚えていないでしょうけど――と、心の声は決して表に出さずに微笑んだ。そんなアストリッドをまえに、レナートは幸せを噛みしめるように胸の前で拳をきゅっと握る。


「覚えて、くれていたのか。俺もそなたと中庭で交わした約束を忘れた日はない。だから、政略結婚とはいえ、そなたが結婚に応じてくれたことを俺も嬉しく思っている」


 そなたは社交辞令かもしれないがと思いながらも、レナートは本当に嬉しそうに破顔する。



 政略結婚のために用意された美談は作り話だ。

 だが、その話は偶然にも、二人の思い出と酷似していて――話がこじれた。自分はその思い出を覚えていたのに、相手は忘れている。だから作り話が必要だったのだ、と。


 だが、レナートは中庭と具体的な場所を示した。それは、子供の頃の約束を忘れていたら出てこない言葉だ。それを理解した瞬間、アストリッドは感動に身を震わせた。

 心臓が高鳴り、いますぐレナートの胸に飛び込みたくなる。

 寸前、アストリッドは拳を握って踏みとどまった。


(違う、惑わされたらダメよ。これは政略結婚。約束を覚えていたからといって、レナート様がわたくしを愛しているとは限らない。これは相手を惚れさせるための策略なんだから)

(再会したアストリッドが可愛すぎる。それに、あの日の約束を覚えてくれていたなんて、まるで夢のようだ。――だが、ここで我を失う訳にはいかない)


 二人は幸せに打ち震えながらも、密命を果たすために必死に平静を装っている。相手国には二心があるという疑心暗鬼にとらわれ、とっくに両思いであるとは夢にも思わず。


 ――これは、惚れたら破滅と思い込み、とっくに惚れている相手を籠絡しようと画策する、不器用な二人を微笑ましく見守る政略婚ラブコメディである。

 

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