第6話 夜の静けさと向き合わないといけないこと
さっきまで胸に灯っていた夕陽の余韻がふっと落ち着いて、静かな影が床に広がった。
ベッドに腰を下ろして、胸元に触れる。
そこにはまだ佑磨くんの言葉のあたたかさが残っていて、呼吸するたびにじんわりと世界が明るくなる。
……だけど、まだ小さな影が残っていた。
佐伯くんのこと。
窓を少し開けると夜風がするりと流れ込んできて、カーテンがゆっくり揺れた。
その揺れを見るだけで、胸がきゅっと締まる。
向き合わないといけないって、分かってた。
ずっと心のどこかで引っかかってたのに、怖くて、今日まで手を伸ばせなかった。
あの冬のことや彼の痛みとか自分の沈黙も――全部。
深く息を吸う。
あたたかさと痛みが静かに重なっていく。
指先がゆっくり動き出す。
迷いが完全に消えたわけじゃないのに、それでも前に進もうとする力だけは確かにあった。
〈月曜の放課後、屋上で待ってる〉
たったそれだけの文字なのに、打ち終えるまでに何度も指が止まった。
送信ボタンを押した瞬間、ふっと肩の力が抜ける。
すぐにスマホが震えた。
〈話すの俺も必要だと思ってた〉
短いのにその一行が静かに胸に触れた。
スマホを机に置くと、夜の静けさがゆっくり戻ってきた。
遠くで風が木々を揺らす音がする。
その優しいざわめきがさっきまで残っていた影をほんのすこしだけ薄くする。
あの頃は胸に届かなかった空気が今日はすこしだけ深く息になった。
私はそっと目を閉じた。
光も影も両方抱えたまま前に進む。




