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透明な彼と真っ黒な彼女  作者: 栖川 葵依
第1章 出会いと始まり
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第4話 午後のガイダンス

 午後は体育館への移動から始まった。

 廊下を歩く足音が重なって、床がいつもより騒がしい。

 窓から差し込む午後の光がまだ白くて制服のスカートの影が足元にくっきり落ちている。


 体育館に入った瞬間、ざわざわした声が耳に押し寄せる。

 前のステージでは先生がマイクを調整していて、椅子のきしむ音やプリントを配る音がやけに響いた。


「これから二年生の行事予定と選択授業のガイダンスを始めます」


 マイクの声が体育館に響くと空気が少し引き締まる。

 頭上の蛍光灯がまぶしくてあたしは瞬きをした。


 来月の校外学習や球技大会の予定、文化祭の準備スケジュール。

 それから来週から選択授業が始まるという説明。


 プリントの黒い文字を目で追いながら小さく息を吐いた。

 なんとなくそわそわする。


 隣では梨沙がこっそりと身を寄せてきて小声でささやく。


「校外学習、今年どこ行くんだろね」

「去年は動物園だったじゃん。今年はもうちょいマシであってほしい」


 美桜が前の椅子から振り返り、小声で言う。


「まだ先だけど文化祭の出し物は今年こそカフェ系やりたい〜」

「わかる!うちら絶対似合うし」

「ねえ、購買にさ、新しいパン入ったの知ってる?」

「え、どんなの?」


 美桜が目をきらっとさせて、すぐに身を乗り出す


「チョコのやつと、あとメロンパンのクリーム入り!」

「絶対食べたい〜!今日行こ今日!」

「もう昼休みダッシュ確定じゃん」

「じゃあ早めに行こ」

「お、やる気出たじゃん」


 説明が終わると体育館の空気が一気にゆるむ。

 生徒たちは立ち上がりプリントを抱えて列になって体育館の出口へ向かう。

 窓から差す光が少し傾き始めていて廊下に長い影を作っていた。


 教室に戻ると黒板にはすでに明日の時間割が書かれている。

 明日から本格的に授業が始まるらしい。


「やっと終わった〜」


 椅子に座った梨沙が伸びをする。


「今日めっちゃ歩いた気がする」

「分かる。もう足だるい」

「てか、あのパイプ椅子まじで固くない?」


 梨沙が机に突っ伏して言い、紗月が明日からもっと座りっぱなしになるんだけどねと笑った。


 プリントをスクールバッグにしまいながら、あたしは小さく息をついた。


 疲れた……でも、少し楽しかったかも。

 昨日よりも重さが少しだけ薄れている気がした。

 まだ完全に溶けたわけじゃないけれど、今日の終わりがこんなふうに感じられるなら明日もたぶん大丈夫。


「あー、明日から授業とか憂鬱なんだけど。一限から数学とか正気?」

「無理すぎ。誰か代わりに受けてくんないかな」

「この後、原宿行くでしょ」


 帰りのホームルームが終わりチャイムが鳴る。

 椅子を立つ音が重なり教室の空気が一気に軽くなる。

 あたしはスクールバッグの肩紐を直して外の光に目を細めながら歩き出した。




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