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透明な彼と真っ黒な彼女  作者: 栖川 葵依
第1章 出会いと始まり
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第9話 横浜女子旅

 横浜駅のモアーズ前。

 ガラス張りの建物に朝の光が反射して土曜の人混みでざわざわしてる。


「おはよー!」

「遅い!電車1本分くらい待ったんだけど」


 紗月が腕を組んで笑うと美桜が慌ててごめんごめん!と走り寄ってくる。

 柚菜はスマホを鏡代わりにして髪型を直しながら、まだ集合時間ぴったりだしとフォローしていた。


 白石美羽がひょこっと顔を出し、ふわっと笑う。


「うちら全員集まるとさ、なんか修学旅行っぽいね!」


 旅行感あるよね〜!と広瀬舞がAirBodsを耳につけたまま手を振り、ノリよく答える。

 桐谷遥は腕時計をちらっと見てとりあえず時間通りなのはよかったと淡々と言う。


 全員揃うと自然にその場がぱっと明るくなる。制服じゃない私服姿のせいなのかいつもより大人びて見える気がする。


 すぐ横を通った女子高生がひそひそ声で笑う。


「ねえ、あの子たちめっちゃ可愛くない?」

「やば……インフルエンサーの集団ぽいね」

「ね、誰なんだろ?有名な人かな」


 少し後ろを歩く男子高生グループはテンション高めに騒いでいる。


「やば、あの子タイプなんだけど」

「お前には無理だろ」


 さらに通りすがりの中年の女性が足を止めて感心したようにぽつり。


「今の子たちってほんと大人っぽいのねぇ」


 そんな声があちこちから重なってモアーズ前は一瞬ちょっとした視線の渦になった。


「ほら見て、また言われてるよ」

「ほんと芸能人じゃないんだから」


 柚菜と美羽が顔を見合わせてくすっと笑う。


「でもさ、こうやって言われるの悪くないよね」

「舞は絶対好きでしょ。こういうの」

「え〜?バレた?」


 遥は軽くため息をつきながら騒いでると本当に芸能人に間違われそうと冷静に釘を刺すが、少しだけ彼女の口元が緩んでいた。

 でも、あたしは特に気にしなかった。

 こういうのは正直日常茶飯事みたいなもので、むしろ一々気にしてたらキリがない。


「ほら行こ!お腹すいた〜!」


 紗月が大げさに声を上げると美桜がもう食べ物の話!?と突っ込む。

 中華街まで歩き?遠くない?と柚菜がスマホのマップを見せると、美羽がでもその道で写真撮ったら映えそう!とすぐに乗っかる。


「えー、大丈夫大丈夫!遠足だと思えば!」

「小学生じゃないんだから」


 あたしたちはモアーズ前からぞろぞろ歩き出した。やっぱり電車で行くことにした。


「ほらこっちの車両のほう空いてる!」


 舞がいち早く指差して走り出す。全員で小走りになって、結局ドア近くで立ちっぱなしになる。


「席争奪戦負けたよ〜!」

「まあすぐだからいいじゃん」

「私は立ってる方が服シワにならなくていいけど」

「遥はモデルかよ!」

「でもほんとに大人っぽい!」


 ガラスに映る制服姿じゃない自分たち。

 ヘアアイロンで巻いた髪、春っぽいワンピやミニスカ、ショルダーバッグ。

 普段の放課後とは違うお出かけ女子のテンションで、電車内がちょっとした撮影会みたいになる。


「ねえ、このフィルター盛れる!」

「え、見せて!どのアプリ?」

「Flowerじゃなくてこっち!ほら〜」

「いや〜盛れすぎ!詐欺じゃん!」

「じゃあ投稿するときのタグどうする?女子旅、横浜、食べ歩き?」

「華のJKってタグも入れよ!」

「やめろって!痛すぎ!」


 スマホを覗き込む声と笑い声が重なって、立ちっぱなしでも退屈する暇なんてない。

 周りの乗客が一瞬こっちを見るけど誰も気にしない。むしろ何人かは羨ましそうに笑っていた。


 車窓からみなとみらいの景色が見えてきて、遠くに観覧車のシルエットが現れる。

 次の瞬間、全員の声が揃った。


「やば!もうテンション上がるんだけど!」

「観覧車は絶対乗ろうね!」

「夜まで残った方が夜景も見れるし、どうする?」

「え〜夜まで余裕で遊ぶっしょ!」

「賛成!!もとからそのつもり!」


 その声にまた笑いが重なって電車の揺れさえちょっと心地よく感じた。

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