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第1話「日常のひび割れ」

「焔花ちゃん、お昼まだだろう?」

 カウンターから顔を出したのは、店主の古谷さん。白い髭を揺らしながら、にこやかに私を見守っている。

あれから十年――父が残した手がかりを頼りに、私は最も古くからやっている古本屋で働きながら、本が入荷するたびに「白炎」という言葉を探していた。

 あの切れ端の本を見つけるために。


「……はい。ちょっと買ってきます」

 そう言ってエコバッグを持ち、私は店を出た。


 ――この世界には、炎を操る人間がいる。

 生まれながらに炎術を宿す者たちは、「炎術士」と呼ばれている。


 炎術士の中でも、国に仕え人を守るために使う者は「守炎者」。また日常を静かに生きる者もいる。

 対して、力を欲望や破壊のために振るう者は「逆炎者」と呼ばれる。


 彼らは人々の日常を脅かす者であり、いまや世界のほとんどの犯罪は逆炎者である。

守炎者と逆炎者との戦いは長年続いており決して犯罪が無くなることはないが、その均衡が崩れれば、一瞬で街は燃え落ちる。

国の為、人々の為自分の力を尽くしてまで戦う

いわば守炎者は人々にとっての「ヒーロー」だ。



 私は……そのどちらにも属さない。

ただ日常を静かに暮らすもの……いや

「復讐」いまの私に残ってる唯一の生きる糧

これじゃあ守炎者にとって…私は……わたしは…逆炎者となるのだろうか……

先のことは分からない―――

 今はただ、古本屋で働きながら、父が残した手がかりを探している。




 昼食を買って戻ると、店先に人だかりができていた。

「なんだ……?」

 足を速めると、店の中から怒号が聞こえる。


「いい加減に金を出せ! じじい!」

「や、やめてくれ……」


 古谷さんに、男が掴みかかっていた。柄の悪い客。しかも、手にはナイフ。

 客たちが悲鳴を上げ、誰かが外に向かって叫ぶ。

「誰か! 守炎者を呼んで!」


 ちょうどそこへ、青い制服を着た炎術士が駆けつけた。守炎者――炎術士育成局に属する者だ。

「その手を離せ!」

 そう声を上げるが、男の刃先は古谷さんの喉元に迫っていく。


 考えるより早く、私は飛び込んでいた。

 昼食の袋を地面に放り投げ、男の手首を掴み、ひねり上げる。

「ぐっ……な、なんだお前!」

 鈍い音とともに、ナイフが床に転がる。

 一瞬の隙を逃さず、私は男の体を押し倒した。


 静まり返る店内。

 周囲の誰もが、私を見て言葉を失っていた。


「……君…やるじゃないか」


 その時、背後から低い声がした。

 振り返ると、さっきの守炎者だ。よく見るとひときわ威厳を持つ男だ。

(この人は…………幹部クラスの守炎者だ)

 まっすぐに私を見据え、口元に微笑を浮かべる。


「君、炎術士育成局に興味はないか?」


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