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異種族恋愛冒険ファンタジー森の守護者と弓の冒険者  作者: やきそばぷりん
第五部:君の瞳が映すもの
5/8

第14章~第16章:君の瞳が映すもの

この物語は、異種族との恋愛や冒険を通じて、キャラクターたちの成長と幸せを描きたいという思いから生まれました。


主人公フィンが、様々な異種族の女性たちと出会い、葛藤しながらも前に進む姿を、読者の皆さんに楽しんでもらえたら嬉しいです。


彼女たちの個性や絆を丁寧に描きつつ、フィンと共に笑い、悩み、冒険する体験を共有できれば幸いです。異種族ファンタジーが好きな方は、ぜひこの世界へお越しください!

第14章:名前を呼んで


「俺、フィンって言います。アラクネって言う種族のかたですよね!」


言葉を口にした瞬間、フィンは自分が発した言葉に愕然とした。


――なんでこんな簡単なことしか言えないんだ。


照れくささと焦りが入り混じり、胸がどんどん高鳴っていった。


普段の自分なら、もっと気の利いたことを言えるはずだった。優雅で、相手の心に響くような言葉を選べたはずだ。なのに、彼女の前に立つと、それらはすべて霧散し、ただの自己紹介しか口から出てこなかった。

彼女の全ての眼がわずかに動いた。その仕草は、まるで「?」とでも言いたげに見えた。


沈黙が流れる。


フィンは思った。


「何もないのか、もう何もないのか、これ以上何もできないのか!?」


しかし、次の瞬間――


アラクネは、そっと、とてもゆっくりと近づいてきた。


フィンは近づいてくる彼女を見ていただけなのに、幸せだと思う自分がそこにはいた・・・。


彼女の動きは滑らかで、迷いがなかった。そして、フィンの目の前まで来たかと思うと、彼の手に触れる程度の距離で止まった。


それだけで、心臓が跳ね上がる。


近い――。


彼女の銀色の髪が微かに揺れ、森の薄明かりの中で、光を反射して淡く輝く。彼女の全ての眼がこちらを見つめている。冷たさを帯びた鋭い視線。しかし、その奥に潜むものは、果たして何なのか。


彼女の唇が、ゆっくりと動いた。


「あなたは、私が怖くないのかしら?」


静かで、落ち着いた声だった。


フィンは即座に答えた。


「怖いとかとんでもない!とっても美しいよ!」


それは、フィンの本音だった。思わず口をついて出た言葉。取り繕う余裕などなかった。ただ、目の前の彼女が、恐怖の対象ではなく、魅力そのものに見えた。


アラクネの目が微かに見開かれる。


「……あなた、人間じゃないの?」


「えっ……?」


フィンは困惑した。


「いや、人間だけど……。」


ますます混乱するような表情に変わるアラクネ。


頭が真っ白になる。どういう意味だろう?


「人間は私をみたら普通怖がって逃げるものよ?」


フィンはその言葉に驚いた。

アラクネ、いや、――彼女はあまりにも淡々と、当たり前のように語った。


”人間なら、大抵は目の前にいる彼女のような異種族に対して、怖がって逃げるもの”


だと言われても、フィンはその理由が全く掴めなかった。むしろ、自分が感じるのは恐怖ではなく、どこか運命的な感情だった。


フィンは少し考えて、思わず口を開いた。


「なんで…逃げるんだ?君は怖くないだろ?」


彼女が少し首をかしげる。

「なんでと言われても、答えようがないわね」


その仕草さえ、どこか優雅で、無駄な動きが一切なかった。


「だって…、君は綺麗で素敵なアラクネ族の女性にしか見えないだろ?だったら、恐れる理由なんて無いじゃないか!」


フィンの言葉は自然に出ていた。自分でも不思議に思うほど、緊張が解けていくのを感じた。


しばらく無言で、彼女はフィンをじっと見つめた。

何か考えている様子だったが、その沈黙が心地よく感じられるほどに、フィンはリラックスしていた。


そして、やがてエリシアがゆっくりと口を開いた。


「へぇ……そうなんだ」


その言葉には、どこか不思議そうな響きがあった。まるで自分が初めて聞いた何かを理解したような、少し驚いたような表情をしていた。


その瞬間、フィンはじっとしていられなくなった。


「えっと……」


言葉を探しながら、すぐに続けた。


「名前だけでも教えて欲しい!」


驚くほど焦りがこみ上げてきた自分に驚きながらも、心が求める言葉を口にしていた。彼の顔は、気づかないうちに紅潮していた。


怖がらないフィンを見て、彼女は少し混乱した様子だったが、どう見てもフィンの方が動揺しているように見えた。


彼女はしばらく黙ってフィンを見つめていたが、やがて唇がまた動いた。


「私はエリシアよ。」


その声は、先ほどよりもどこか柔らかく、優しさを含んでいた。


「あなたはフィンだったかしら。よろしくね?」


その一言が、フィンの心を打った。エリシアという名前を耳にした瞬間、彼の中で何かが確かに変わった気がした。彼女が自分に名前を教えてくれたことに、心から安堵を感じながらも、どこか嬉しさが込み上げてきた。



『よろしく、エリシア』



フィンは自然と答えていた。


フィンの口元には自然な笑みが浮かび、心が温かく満たされるのを感じた。嬉しさと安心感が一緒になって、ふっと心が軽くなった。



第15章:冷徹な視線の先に


フィンはエリシアの目の前に立ち、少し照れくさそうに笑った。胸の中ではまだドキドキしていたが、持ち前の明るさで気を取り直し、すぐに話を切り出した。


「実は魔物調査の依頼で来たんだよ。」


俺はそう言って、彼女の反応を探るように見つめた。


エリシアはその言葉を聞くや否や


”複眼が一瞬でフィンを捉え、単眼が冷たくフィンを見据えた”


「それって、私のことかしら?」


「えっ、あっ、う、うん、そうなんだけど…。」


フィンは焦った。


「でも調査依頼だから、それが何か確認しに来ただけだから。あくまで調査だからさ。」


エリシアは軽く目を向けただけで、ほんの一瞬、何かを考えているような表情を見せた。

その微妙な反応にフィンは少し驚きつつも言葉を続けた。


「村の人たちは、『お供え物をしていないから魔物が現れたんじゃないか』って言ってる人たちがいてさ、お供え物をしようって話になってるんだ。」


エリシアが少しため息をつきながら面倒くさそうにその言葉に反応した。


「そう…それで?」


フィンは少し考えてから、照れくさそうに笑って言った。


「村の人たちが心配してるみたいで…。もし受け取ってくれるなら、みんな安心すると思うから。」


「私が取りに行くのかしら?面倒ね・・・。」



ちょっと目をそらしながら、フィンは続けた。


「少しだけでも気にかけてくれると嬉しいな…なんて。」


エリシアは無表情でフィンを見つめ、まるで彼の気持ちを何も感じていないかのように、淡々と話を続けた。


「まあ、いいけど…それで。」


その冷たい声に、フィンは少しドキッとしたが、それでも笑顔を浮かべて答える。


「本当!?ありがとう、エリシア!」


と元気よく言いながら、内心では少しホッとしたような気持ちになる。


エリシアの冷静さに少し戸惑いながらも、フィンは彼女の反応を少しでも引き出せたことに満足していた。彼にとって、エリシアの冷たい態度さえも魅力的に感じられるからだ。


フィンは少し照れくさそうに笑いながら、エリシアに告げた。


「じゃあ、一旦村に戻って報告しなきゃだから、今日はこれで帰るね。」


エリシアは一瞬の沈黙の後、無表情で返答した。


「わかったわ。」


フィンはエリシアを見て、少し間を置いた。


「あの…次も会ってくれるかな?」


エリシアは視線をそらし、少し考えるように言った。


「さぁ、わからないわね。でも、気が向いたらね」


フィンはすぐに明るく反応した。


「そうだよね、気が向いたらでいいんだ。けど、また来るからさ!」


と、元気よく言ってから、少し照れたように笑った。


エリシアはその反応を見て、ほんの少しだけ口元を緩めたが、すぐに冷静な表情に戻り、


「フフフ、じゃぁね。」


どこか興味なさそうに言った。


フィンは足早に村へと向かって歩きながら、心の中でふと思った。


『次、また来るときは…何かプレゼントを持ってきた方がいいかもな。なんだか少し照れくさいけど、エリシアには喜んでもらいたいし。』


そんなことを考えながら歩いていると、村が見えてきた。胸の中で、彼女のことを考えると、どこか温かくなった気がした。


村に着くと、村長がフィンを待っていた。

「お帰りよ、フィン殿。どうじゃったかのう?」

フィンは静かに頷くと、村長と一緒に村長の家へ向かい、報告を続けた。


フィンは少し息をついてから答える。


「やはり、アラクネでした。」



村長は頷きながら、少し眉をひそめた。


「そうか…アラクネ様じゃったか…。しかし、本当に実在したとはのぉ…。村の皆には言わないでおいておくれ。混乱させちゃぁいかんからの。調査ご苦労様じゃったのぉ、ありがとう」


フィンは穏やかに言った。


「村の脅威では無くて良かったですね、私はこれで王都へ戻りますので」


村長は心から願うように言った。


「道中気を付けるのじゃぞ、アラクネ様のご加護が有らんことを」


そうフィンに言い、村長は村の広場へ向かい村人を集め話をしていた。


村長はしばらく黙って考えていたが、やがて口を開いた。「調査した結果、どうやら村の守り神じゃったらしいのじゃ。これからは皆でお供え物をしようと思うんじゃが、どうじゃろうのぉ。」村長は少し不安そうな表情で村人たちと話し合いながら、意見を求めた。


フィンはそれを見守りながら、心の中で何かが少しずつ形を成すような気がした。エリシアのことが頭から離れなかった。


その後、フィンは村の状況を確認し、王都に戻る準備を整えた。エリシアとの再会を心待ちにしつつ、彼の胸は少しドキドキしていた。


王都へ帰る途中、フィンはずっとエリシアのことを考えていた。

「次に会ったら、何を話そうか、プレゼントは何が良いかなぁ、どんな顔をしてくれるだろう」

と、心の中で繰り返しながら、次に会うときのことを思い描いていた。




第16章:エリシアへの想いと贈り物


黄昏時、王都に戻ったフィンは、黄金色に染まる街並みを見ながら、森で出会ったエリシアのことがずっと心に残っていた。


「エリシア、ほんとに綺麗だったな…。」


銀色の髪と冷たい視線、それでいてどこか暖かく感じさせる。

あの雰囲気の女性は、今まで出会ったことがなかった。


フィンは、そのままギルドへ向かうことにした。ギルドは広く賑やかで、受付嬢が明るく迎えてくれた。


「お帰りなさい、フィンさん。調査の結果、どうでした?」


「うん、村は無事だったし、特に問題はなかったよ。」

フィンは調査報告書を受付嬢に手渡した。


「それならよかった!安心しました~。お疲れ様です!」

受付嬢は書類を受け取り、手際よく確認していく。


「ありがとうございます!また何かあればその時はお願いしますね」

にこっと微笑みながら、報酬を手渡した


「ありがと、じゃぁまたな。」

俺は軽く手を振りながらギルドを後にした。


外に出ると、肌寒い風が頬を撫で、夕方の街は少し静かになり、ほんのりとした夜の気配が漂っていた。

その中を歩きながら、エリシアの姿が頭から離れなかった。


「あの瞳、アラクネ特有の複眼も…やばいくらい綺麗だったなぁ。」


口元に笑みを浮かべながら言った。

冷たい表情の裏にある儚げな雰囲気が、どうしても忘れられなかった。


「プレゼントはどんなものが喜んでもらえるかな~」


日が暮れかけた街を歩きながら、フィンはそう考えたが、今日はもう遅いし、王都に戻ったばかりだ。まずは宿に戻ろう。


「明日、買い物にでも行くか。」


そう決めたところで、宿へと足を向けた。


宿に戻ると、疲れた体をベッドの上に投げ出した。

あの冷たい眼が、ふと優しく見えた瞬間を思い出す。

胸の奥が少し締め付けられるような感覚が心地よかった。


「なんでだろうな…ただ会っただけなのに、こんなに心が騒ぐなんて。」


少し照れくさくなり、顔を隠すように寝返りを打った。


眠れそうで眠れない夜を過ごし、翌朝、フィンは目を覚ますと、昨晩の決意をすぐに行動に移すことにした。


「思い立ったが吉日、だな!」


と心の中で叫び、急いで支度を始めた。軽い食事を済ませると、宿を出て街を歩きながらエリシアに似合うプレゼントを探しに行くことにした。


王都の朝は、まだ静かな空気が漂っていた。

街道を歩きながら、いくつかの店を覗いてみたが、なかなかピンとくるものは見つからない。

――少し歩くと、道の脇に小さなアクセサリーショップを見つけた。


店に入ると、カウンターの奥に戦士のような男が居て、思わず声を上げた。


「えっ!あれ!?ここってアクセサリーショップだよな?鍛冶屋じゃないよな…」

入り口の看板を改めて見てみた。


店主はその様子に気づき、豪快に笑った。


「わっはっは、気にするなって!ちゃんと細工は出来るからよ。それで、兄ちゃん、彼女へのプレゼントかい?」


フィンは一瞬、言葉が詰まり、顔を真っ赤にして慌てた。


「あっ、いや、その、彼女っていうか…その…」


フィンは動揺しつつも、なんとか笑顔を作って誤魔化そうとした。


「いや、そんな…まぁ、そうだけど…」と、軽く手を振りながら。


店主はおかしそうに笑いながら、

「ふはは、焦らなくても大丈夫だ、ゆっくり選んでいきな。」

と、フィンの様子に気づいていたようだ。


色とりどりのアクセサリーの中で、フィンの目に止まったのは、隅に飾られたかんざしだった。

細かい細工が施された漆黒のかんざしは


『まるで夜空に浮かぶ月のように、静かな輝きを放っていた』


そのかんざしを見た瞬間、「これだ!」と感じた。


「彼女の銀色の髪にこのかんざしを留めたら、きっと綺麗だろうなぁ。」


そう思い、迷うことなく、フィンは店主に向かって言った。

「これ、ください!」


「がっはっは、良いの選ぶじゃねぇか!彼女さんもきっと喜ぶぜ。綺麗に包んどいてやるからよ。」

店主は嬉しそうに微笑みながら、かんざしを丁寧に包んでくれた。


プレゼントを手に入れたフィンは、ウキウキしながら店を後にした。

「エリシアがこれを見たとき、どんな顔するかな?」

…想像するだけで胸がドキドキしてきた。


その後、ギルドをちらっと覗いてみたものの、大森林に関するクエストは見当たらなかった。

彼の頭の中にはすでにエリシアのことしかなかった。

自然に顔が緩み、次に会うのが楽しみで仕方がなかった。


プレゼントを大事に抱えたまま、王都の街を歩き続けた。



――フィン君、ドッキドキだぁ!


まさか!? いよいよか!? いよいよなのか――!?


次回、こぉぉう、ごきたーーーーい!!(お楽しみに!)


拙い部分も多かったと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました!

続きの執筆も頑張っていますので、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

感想や意見をいただけるととても励みになります!


(例:フィン君かっこいい!面白かった!や、2作目ならこんなもんやろ、面白くなかった、ベタすぎ等)


「何を書けばいいかわからない…」という方は、上の例を参考に、そのまま書いていただいても大歓迎です!

もちろん、どんな感想でも構いません!良いことも悪いことも、どんどん書いてくださいね。

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