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異種族恋愛冒険ファンタジー森の守護者と弓の冒険者  作者: やきそばぷりん
第四部:君にたどり着くための迷宮
4/8

第11章~第13章:君に辿り着くための迷宮

この物語は、異種族との恋愛や冒険を通じて、キャラクターたちの成長と幸せを描きたいという思いから生まれました。


主人公フィンが、様々な異種族の女性たちと出会い、葛藤しながらも前に進む姿を、読者の皆さんに楽しんでもらえたら嬉しいです。


彼女たちの個性や絆を丁寧に描きつつ、フィンと共に笑い、悩み、冒険する体験を共有できれば幸いです。異種族ファンタジーが好きな方は、ぜひこの世界へお越しください!

第11章:糸の先に潜む影


フィンは森の入り口に足を踏み入れると、周囲の静けさに身を沈めるように歩みを進めた。足音が響かぬよう、足裏を意識的に地面に押し当て、ひとつひとつの足取りを慎重に刻む。風が木々の間を吹き抜ける音、鳥のさえずりが遠くから聞こえてくるが、フィンの心はそれに惑わされることなく、ただ森の奥を見つめ続けた。


木々の隙間から漏れ出すわずかな光を頼りに、フィンは視界を広げつつ慎重に前進していく。今、彼が向かう先にあるのは、未知なる魔物の気配。どんな危険が待ち受けているのか分からないが、その場に立ち止まっているわけにはいかない。もしも森の奥に何かが潜んでいるとしたら、事前に気配を掴むための準備が必要だ。


進んでいくうち、フィンはふと目を止めた。目の前の木々の間に、他の木々よりもほんの少しだけ大きな木が見える。それはどこか、不自然なほどに目立っているような気がした。


その木の周りだけは、周囲とは少し様子が違っていた。茂みが薄く、草がわずかに広がっている。根元の近くには転がった石があり、どこか手が加えられたような跡が感じられたが、何となく不自然で、言葉ではうまく説明できない違和感があった。


フィンはその場所に不安を感じつつも、好奇心を抑えることができず、静かにその木の周りを歩いてみることにした。木の根元には何も異常はないが、上を見上げると、木の上に何かが掛かっているのが見えた。それは、蜘蛛の糸のように細く、筋状に揺れる光を反射している。しかし、それがただの糸なのか、不穏...、もしくは吉兆なのか、はっきりとは分からない。


フィンはその糸に目を凝らし、慎重に一歩後退した。足音を立てぬように、音を立てることなく後退する。糸の正体を確認するためには、もっと近づいて調べる必要があるが、今はそのリスクを取るわけにはいかない。暗闇の中でその糸が何を意味するのか、まるで予兆のように感じる。


そして、周囲を再度見回す。異常なまでに整然としているこの空間。自然の一部ではないような違和感が、フィンの胸に重くのしかかる。


フィンは蜘蛛の糸に目を凝らしながら、ふと思い出すことがあった。蜘蛛の糸といえば、アラクネという種族がいたな、と。確か、極めて稀な存在だと聞いていた。人間と蜘蛛の特徴を併せ持つ異種族。伝説や噂でしかその姿を知る者は少ないが、確かにどこかで耳にしたことがあった。


「まさか…でもほぼ存在しないとまで言われているアラクネがこんな場所に…?」


フィンはつぶやきながら、目の前の糸を再度観察した。その糸は、まるで命を持つかのように、静かに、しかし力強く張り巡らされていることが多いと記憶している。だが、もし本当にアラクネがこの森の中に潜んでいるのであれば、他の者たちが気づかぬはずはない。ましてや、森の広場で起きた出来事の原因がそれだとは考えにくい。だが、ひとたびその疑念を抱いてしまうと、フィンの思考は止まらない。


「いや、待てよ…(もしかしてワンチャンあるか?)」


フィンは思考を整理しようと眉をひそめた。


「この辺りに、もしアラクネが存在しているのだとしたら?今回の事件とも何か関係があるとしたら?辻褄が合うような気がしてきた。」


フィンは目の前の糸を見つめ、ゆっくりとその周囲を見渡す。確かに、この場所にアラクネがいるなら、これほどしっかりと糸が張り巡らされているのも理解できる。アラクネは蜘蛛のようにその糸を巧妙に使うことで知られているからだ。だが、それだけではない。アラクネは本来、孤独な存在だという。そのため、群れを作ることはない。それに、この森の奥のような場所にひっそりと身を潜めている可能性はあるだろう。


また、フィンは思い出す。この村にはあまり知られていないが、アラクネに似た存在が過去に目撃されたという噂があった。人々の目に触れないよう、森の奥にひっそりと暮らす種族。村の長老の話では、過去には奇妙な事件がいくつかあり、すべてがこの森の深い部分で起こったという。


「つまり、何かが潜んでいる可能性がある…それも、ただの魔物とは違う、もっと複雑で…。」


フィンの脳裏に浮かぶのは、あの伝説のようなアラクネの姿だった。もし本当にアラクネがこの場所に潜んでいるとすれば、彼が調べるべき糸の正体も、決して普通のものではないのだろう。


そのとき、周囲に微かな違和感を感じた。木々の間に風が通り抜けているはずなのに、どこか息を呑むような静けさが支配している。普通の自然の音が、まるで何かに遮られているように感じた。


「…まずい。」


フィンは不意に身を引き締めた。心拍が高まり、五感が一気に鋭くなる。冷たい汗が背中に滴り落ちる。その不自然な静けさが、何かしらの警告のように感じられた。


「これは、ただ事じゃないな。」フィンは自分に言い聞かせるように呟くと、再び静かに周囲を見回しながら、一歩後退した。






第12章:闇の中の美しき者


フィンは静けさの中、目を細めながら周囲を見回していた。息を呑むような重い静寂が続き、森の風の音すらもどこか遠く感じられた。風が動かぬ木々の葉を揺らし、自分の心臓の音だけが響いている。


その時、何かが動いた。


木の幹や枝の間、ほんのわずかな影の中に、確かに存在があった。細く、優雅に、そして無音で進んでいくその影に、フィンの視線が奪われる。恐怖や警戒心を感じつつも、好奇心が抑えきれず、彼の体は微動だにしないまま、フィンの視線は完全に彼女の物だった。


そして、その瞬間、突如として異様な感覚がほとばしる!


まるでフィンの全ての感覚が一瞬で奪われ、体が硬直したかのような感覚に包まれた。その感覚は、まさに自分の意識をどこかに置き去りにして、ただその存在に引き寄せられるようなものだった。


息が詰まり、フィンは目を見開いた。その視線の先に、アラクネが立っていた。


彼女の姿は、フィンが想像していたものとはまったく違った。その姿は、まるで天から降りてきたような美しさを湛え、彼女の柔らかなふくらみが魅力的に浮かび上がっている。。白銀に輝く髪が、その姿を幻想的に際立たせ、ほんのりとした光の中で、彼女の顔がぼんやりと浮かび上がった。


その美しい面影に、フィンは言葉を失った。


目を奪われるという表現は、まさに今この為に有るのだろう。彼は、まるでその目を離すことができないような感覚に陥った。彼女の視線が絡みつき、動けなくなる。時間が止まったかのように、ただ彼女の存在に吸い寄せられ、胸の鼓動が耳元で鳴り響く。


その顔立ちは、今まで見たどんな美しい女性とも比較にならないほど完璧で、まさにこの世の物とは思えないほどの妖艶な魅力が漂っていた。フィンの目は、その完璧な美しさを捉えることに必死だった。

彼女の麗顔は、幻影のようで、現実のものとは思えないほど美しく。時々冷たさも見え隠れする、それでも彼女にはどこか惹かれる魅力を感じさせる。


フィンはその美しさに圧倒され、思わず息を呑んだ。そして、その刹那、何もかもが止まったような感覚に陥った。時間さえも、空間さえも、彼の存在すらも消え失せ、ただただその美しさがフィンの全てを支配していた!


「うつくしい...」


そこに言葉は無かった・・・。その美しさが、彼の全てを奪い、自分の思いを悟られるかのように感じられた。

体の中のすべての感覚が、ただその一つの存在に吸い込まれていくようだった。


時が止まったかのような、その圧倒的な美貌に目を奪われながらも、フィンはふと我に返り、冷静さを取り戻そうとした。しかし、その冷静さすらも消し去られるかのように、再び彼の体はその場に固定された。


「まさか...これがアラクネ...?」


フィンは一度も見たことのないその存在を前にして、驚愕と興奮が入り混じった感情を抱えながらも、心の中でその疑問を浮かべた。目の前に立つ彼女が、かつての伝説に語られるアラクネであるならば、そこには確かな危険が潜んでいるはずだ。しかし、フィンはその危険さえも恐れることなく、ただその美しさに酔いしれるような感覚に囚われていた。


彼はその顔に視線を向けたまま、ただ呆然と立ち尽くしていた。


フィンはその美しい流れるようなラインを持つ姿に視線を奪われたまま、意識がどこか遠くに漂っているような感覚を覚えていた。しかし、次第にその目が引き寄せられるように、視線は自然と下へと移動していった。


目の前のアラクネの姿を見守りながら、フィンはその美しくしなやかな脚部に目を奪われ、無意識に息を呑んだ。そしてその瞬間、心臓が激しく脈打つのを感じた。


まるで精緻に作られた芸術作品のように、美しい紫と黒のグラデーションが絡み合い、鱗のような光沢が森の光に照らされて輝いていた。長く強靭な足は、どこか神秘的な力を感じさせるような存在感を放っていた。


その光景に、フィンは再び息を呑んだ。


やはり、目の前の存在はアラクネそのものだった。長く、重く、圧倒的な存在感を持つその姿に、言葉もなくただ圧倒されていた。彼の体はまるで石のように固まっていた。動けない、という感覚が全身を包み込み、視線をそらすことすらできなかった。


その時、アラクネはゆっくりと顔を向け、フィンと目が合った。彼女の目は、どこまでも深く、冷徹に見えた。しかし、それと同時に何か計り知れない感情がその目に宿っているようにも感じられた。何か、フィンを見透かすような視線——いや、もしかしたら彼女もまた、フィンの存在を何かしらの形で感じ取っているのかもしれない。


その静寂の中で、アラクネは一瞬立ち止まり、フィンの存在をじっと見つめていた。しかし、何も言葉を交わすことはなかった。彼女はただ、すぐにゆっくりと振り返り、森の奥へと歩き去って行った。


その背中がどんどん遠ざかっていくにつれて、フィンの体がようやく動きを取り戻した。彼は深く息を吸い込み、全身の緊張が解けるのを感じた。だが、それと同時に胸の中に湧き上がるのは、強烈な興奮と、同じくらい深い混乱だった。


「いったい、何が...」


フィンはその場に立ち尽くしたまま、自分が今見たものをどう受け止めるべきか分からなかった。アラクネの存在は予想以上に強烈で、彼の心を捕らえて離さなかった。その美しさ、その神秘的な雰囲気——そして、何よりもその目を忘れることができなかった。


やがて、フィンはようやく我に返ると、何も言わずに足を動かし始めた。無意識のうちに村へ向かって歩き出していた。心の中に広がる混乱と興奮を、どう処理すべきか分からず、ただ歩き続けることしかできなかった。


村が見えてきた頃には、フィンはようやく冷静さを取り戻しつつあった。しかし、心の中で渦巻く感情は収まることがなかった。あの美しいアラクネの姿が、彼の中で強烈に残り続けていた。


「戻ったら、どうすればいいんだろう...」


心の中で何度も問いかけながら、フィンは歩き続けた。




第13章:静寂の後に


フィンの足取りは重かった。彼女の姿が頭から離れず、心はその魅力に囚われていた・・・。


歩きながらも、彼はあの瞳、あの脚、そしてあの微少な微笑みの裏にある冷たさの様な何かを何度も思い返していた。もしあの存在が森の守護者だとしたら、これからどうすればいいのか。答えは見つからないまま、足は自然と村へと向かっていた。


村に到着すると、彼はすぐに長老の家へと足を運んだ。ドアを開けると、長老はいつものように静かに彼を迎えた。


「長老様、すみません。調査の事で報告があります。」


フィンはしばらく躊躇った後、アラクネのことを話し始めた。


「森の中で見かけたのは...おそらくアラクネです。人間に害は無く、森の守護神とよばれています。蜘蛛の様な見た目をしてるので、恐怖を感じる人もいるかもしれませんが...」


長老はゆっくりと頷き、優しい瞳でフィンを見つめた。


「なるほどのぉ、そのアラクネが子供を助けてくれたとおっしゃるのじゃな。ワシらには恐ろしく見える外見でも、森の守護者として、見守っておいでか。」


フィンは少し驚いたが、長老の言葉に頷いた。


「そうですね、見た目のせいで怖く感じるかもしれませんが、アラクネが森を守ってくれているのは確かです。私も文献でしか見たことは有りませんが」


長老は静かに立ち上がり、優しく言った。


「そうですか、・・・明日はどうなさる?」


フィンは決意を固めるように答えた。


「明日、もう一度調査に行ってみます。」


長老は頷き、フィンを労う様に言った。


「調査してもらえるのはありがたいが、無理はしないようにのぉ。」


フィンはありがとうございますと軽く会釈をし宿へ向かった。



———【翌日】———


フィンは再び森へ足を踏み入れた。心が急いて、足が自然と速くなる。

調査のことなどすっかり忘れていた。心の中でただ一つの思いが支配していた。

それは、もう一度アラクネに会いたいという強い願望だった。


”あの場所に行けば、また会えるのだろうか。”


あの独特な雰囲気を持つ複眼、氷の様な印象、そして何よりもその妖艶な魅力。


思いがけず、足は自然とあの場所へと向かっていた。

そして、再びその場に足を踏み入れると──



「…あ、あえた。」



驚きのあまり、思わず声を上げてしまった。

再び目の前に現れたアラクネは、やはり彼の心に不思議な感情を呼び起こさせる存在だった。


フィンは自分の目を疑い、冗談だと思って思わずほっぺをつねってみた。


「痛って・・・」


その痛みを感じても、目の前にいるのは、やはりアラクネだった。


美しく、神秘的なその姿が、昨日の自分の心を捉えたままだった。


言葉をかけようとしても、何も出てこなかった。

いつもなら自然に声が出るはずなのに・・・、今はただその姿に何もできない自分がいるだけだった。


思わず一歩踏み出し、声をかけようとしたが、言葉は喉で詰まった。目を見れば見返される気がして、言葉が出せない。何度も心の中で言葉を組み立てては崩し、やっと決心し、勇気を振り絞って声を出す。


「あのっ……」

と震える声を発した瞬間、アラクネは一瞬で距離を取った。


しかし、それ以上逃げる素振りも見せなかった。フィンはその動きに驚きながらも、すぐに冷静さを取り戻した。そういえば、アラクネに関する文献に書かれていたことを思い出した。

警戒心が非常に強いということだ。当然のごとく、アラクネの反応は自然なものなのだろう。


そして時は、静かに動き出す――。

とうとうアラクネちゃんに会えちゃったフィン君


『この出会いは運命か、それとも――?』


いったいどうなってしまうのか!? 次回、こうご期待!!


拙い部分も多かったと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました!

続きの執筆も頑張っていますので、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

感想や意見をいただけるととても励みになります!


(例:フィン君かっこいい!面白かった!や、2作目ならこんなもんやろ、面白くなかった、ベタすぎ等)


「何を書けばいいかわからない…」という方は、上の例を参考に、そのまま書いていただいても大歓迎です!

もちろん、どんな感想でも構いません!良いことも悪いことも、どんどん書いてくださいね。

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