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6:褒美

無事に領都にたどり着いた姫達であったが城までノンストップで爆走したことで城も城下も大騒動になった、ついでに女装した不審者の情報も流れたがこっちの方は領主の婦人と令嬢の騒動のお陰で最小限のダメージに収まった?

「ひどい目に有った」

「でも父ちゃん格好以外は格好良かったよ、あれなんか言葉が変だね」

くすくすと笑う息子の笑顔を見ればリチャードの気持ちは報われる、今は城の客人用の間に居て服装もちゃんと男装である

「しかし豪華すぎて落ち着かないな」

「でも無駄に豪華というよりは必要な所にお金が掛かってる感じがして僕は好き、前に見た商会の家酷かったもん」

本当に良く見ている子だ、いわゆる成金趣味というのはこの世界にも当然有る一代かそこらで急に財を築いたのだのだからそれも仕方が無いとリチャードは割り切ることにしている、息子の言葉を聞いてからもう一度見回してみればなるほど確かに装飾にこだわっている部分は豪華に見えるが防衛などの観点から言えば無駄なスペースやデッドスペースが少ない様に感じる、質実剛健の上にちょっぴりおしゃれといった所か

「父ちゃんあまり時間がないから手短に伝えておくね、僕の魔法なんだけど」

ロバートが言うには土の様な物をイメージ通りに出すことが出来るということ今の限界は昨日のサイズという他には火・水・風が日用使い程度には出せるがこれはロレンシアから教えてもらったもので聖異物との契約の影響ではないらしい、そして昨日の返送というか変化(へんげ)なのだが本人にも分類ができないということで感覚的には土の様な物と同じなのだというがリチャードには全く理解できない

「しかしそうなると聖異物の影響は無いのか?」

「ううん、魔力の総量がすんごい増えてるよ、その前は日用魔法も何回か出すだけでスッカスカになってたけど今は減った気がしないもん」

「それだけか?」

「今のところはそう」

「聖異物は物質的なものに限ると思っていたんだがな」

そうこうしているうちにドアがノックされ

「失礼致します」

「はいどうぞ~」

べしっと息子に叩かれるもうちょっと威厳を出せということみたいだ

「御息女様をお連れしました」

「お父さんお兄ちゃん!」

連れてきたのはロレンシアであったが村に居た頃とは雰囲気が全然違うこれが城での彼女の姿ということなのだろう

「ロレンシアお姉ちゃんありがとうございます」

見様見真似なのだろうカーテシーをしようとしてナイラがよろけてしまう

「ふふふ無理にしなくてもいいのよ、それとお姉ちゃんもここまでねこのあとははいかいいえだけを言っていればあとはお兄ちゃんがなんとかしてくれるわ」

村に居た頃のロレンシアが出てきて少しホッとしたリチャード、これからずっとこの冷たい対応をされるのかと内心では嫌だったからだ

「リチャード様はもう少し腹芸というものを学ばれた方がよろしいかと存じます」

至極真っ当な正論をぶつけられてしまい凹むのだった、そしてそれを見た息子に

「そういう所だと思うよ」

と更に正論をぶつけられてしまうのだった

このあとは一日中ロレンシアのレクチャーに費やして終わった、リチャードだけ居残りで練習する羽目になったのは言うまでもなかった


翌日結局ロバートが商人、リチャードはその父で護衛係と言う配役に落ち着いたそれほどまでにリチャードのコミュニケーション能力は壊滅的だった、ナイラに関しては年齢を考慮してなにかやらかしてもよっぽどでなければ本人には罰は下らないだろうということだった…要するに保護者の監督責任ということだ、発言権はほぼ無いが責任は全て被る…親は辛いね

いよいよ謁見と言う時が来た

「この服首が苦しいな」

「父ちゃんの首が太いだけだよ」

「苦しいことには変わりないだろう」

「ちょっとの時間で済むんだから我慢しなよ、絶対に緩めちゃ駄目だよ」

「お兄様わたしは?」

「ナイラはいつもよりちょっと畏まるくらいで大丈夫だよ出来る?」

「わかった!」

どっちが大人か判ったものではない、ロレンシアは頭を抱えている

謁見の間に招かれレクチャー通りに膝を折り頭を下げて領主の登場を待つドラが鳴りいよいよ領主様の登場と相成ったのだが既にリチャードがふらついている

表面上は冷静なロレンシアも内心では冷や汗ものだったのだがリチャードの動きがピタリと止まってホッとする、これはロバートの仕業であった父親の身体を例の魔法の土のような物体で物理的に固めてしまったのだ

「面をあげよ」

下半身だけを固定しているのか問題なく顔を上げるリチャードだがその顔は明らかに

(へぇ~領主様ってこんな顔なんだ~)

と言っている流石にこれにはロバートも気付けないようだった

「我が妻並びにここに居る我が娘を送り届けてくれたこと感謝する、妻に関しては体調がすぐれぬ故同席出来ぬが許せ」

その場には領主とその令嬢の姿があった

「ありがたき御言葉身に余る光栄でございます」

「光栄でございましゅ」

八歳児の受け答えとは思えない言葉に感心する領主ペネイデス・マーフィード、おまけの娘の受け答えは年相応腹を立てる道理はない気になるのは父親の存在だ何処からどう見てもお上りさんで全く集中できていない、事前の情報で既に可怪しいとは思っていた、八歳児が商人で父親がその護衛何の悪戯かとしか思えなかったがそうする意味がわからなかった、二人共最愛の妻と娘を護った人物無下にするつもりなど毛頭なかった、しかしこう面と向かって見てみると苦し紛れでもこうしなければ体面が保てないとわかってしまう真面目な顔を続けるのすら難しい

しかしそうなるとその息子の出来が気になり始める聞けばお転婆娘の舵取りまでしたと言うではないか男でなければ、側使いとして欲しい所だそれほどまでに娘はお転婆であった、朗報も有るその妹だ気難しい娘が気に入っているというのだ兄程ではないが優秀でギフトの祝福以前だと言うのに既にいくつかの魔法も使えると聞く、そしてそれが我が娘の負けず嫌いを刺激しているという、是非欲しい逸材である

しかし優秀な子二人に対してこの父はどうだ…物理的にはこの父が護ったということなのだから優秀では有るのだろうしかし優秀の種類が違う馬鹿となんとかはという類だろうか…悩ましい情報から察するにこの父親が商人で息子がそのサポートというのがしっくりくる、しかし態々(わざわざ)設定を変えてきた事を考えると… 配慮(設定)が仇となり領主も内心ではどう扱うべきか迷っていたというかめんどくさくなっていた、これはうだうだ考えずにさっさと褒美を取らせて終わりにしたいそう考えたのだ

「して今回の褒美だが、我が妻と娘を護ったのだそちらの望むことはあるか?できる限りの褒美を取らせるぞ」

「では私共としては」

「要りません」

即答で答えてしまうリチャードにあちゃーと頭に手を置くロレンシア、見上げた忠義では有るが形式上それでは困るのだ要らないと思っていても最低限の要望でも出さねば落とし所が作れない他の者が何か褒美を受ける時も悪しき前例になってしまいかねないのだ、頼むからなにか褒美を要求してとロレンシアは切実に願う

「父様そうはいかないのです」

「なぜだ?領民なのだから領主を護るのは当たり前ではないか」

素直すぎるどストレートな考えにお願いだからもう喋らないでと心から願うロレンシア

「ふふふ…ハハハハねお父様面白いでしょう」

「たしかに面白いなここまで表裏のない男は初めて見たわ、止めだ止めこの男には形式が通じぬ腹を割って話そうではないか、リチャードであったか?この場ではそなたの息子が言うように褒美を取らねばならぬのだ」

「しかし、領民が領主に尽くすのは」

さっきと同じやり取りになりかけた所で

「商売には対価が必要であろう?それと同じだ、救われたのだからこちらもその恩に報いるそう変な話ではないだろう」

「助けたのは商売ではなく亡き両親や村人たちの死を無駄にしたくなかったからです」

「見上げた男よ、その村人やそなたの両親は我が領民、領民のためというのなら領主はその恩に報いたいのだ」

そこまで言われてやっと渋々これは受け取らなければならないものかも知れないとリチャードが考え始めたのだから商人には向いてないのは誰にでも判るさすがのロバートも呆れていた、しかし

「ロバートよ、そなたの父は融通は利かぬかも知れぬが信念の男だ尊敬に値する立派な男だ、妻と娘の件領主としても一人の父親としても感謝する褒美に関しては話し合って決めるが良い、ロレンシアよお主は褒美についてこの親子に寄与できるものを教えてやるが良い、それでは退出させてもらおう久しぶりに愉快な会話であったぞ」

「はっ!」

娘の手を取り領主ペネイデスは退出して行き謁見は幕を閉じた


「父ちゃん!」

「リチャード殿」

勿論部屋に戻ってから息子とロレンシアの二人からこっぴどくお説教があったのは言うまでもない


「で、父ちゃん褒美どうするか決めた?」

「それなんだがなお前にも聞いておきたい、ナイラのことだ」

「ナイラ?ナイラのことなのに僕に聞くの?」

不思議そうにリチャードを見る息子

「ああ家族のことだからな、ナイラには先に話してあるんだがナイラをここに住まわせてもらえないかと思ってるんだ、ウェネルヒア姫様やシャルデリア様にも良くしてもらってるしロレンシア様からも気に入られている様だったからな」

「ナイラはどうしたいの?」

「私お兄ちゃんみたいに勉強したいの」

「確かに勉強もできるけど姫様やロレンシア様と一緒になれると決まってるわけじゃないんだよ?知らない人と一緒に生活するんだよ」

念の為にと色々とデメリットを妹に伝える兄、一見まともそうなことを言ってるように見えて妹と一緒にいたいのが見え見えである、ナイラは物心ついたときから父と兄が居ない生活が普通だったがロバートからすれば一緒に居たい時期に離れ離れになった分一緒に居たい気持ちが強いのだろう

「ナイラはお兄ちゃんが嫌いなの?」

「ううん好き大好き!」

それなら何故?と理解できない感じだ

「お父さんはさみしくないの?」

助け舟を出してほしくて苦し紛れに父に声を掛けたのだが

「寂しいに決まっている、だがナイラは安全な場所で育ってほしいと思ってる、お前の時も同じ気持ちだったがあの時はそうするしか無かった幸いお前が商売が好きであってくれたから良かったがナイラも同じとは限らない」

ごくごく真っ当な答えが返ってきた商売でも同じくらい説得力の有る受け答えをしてくれればとロバートは思うのだった

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