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2.戦闘

俺は、平群臣神手と共に都への道を歩いていた。

そういえば、具体的に今は何があった時期なのかを理解しないとな、と思った俺は、神手に質問をすることにした。


「一つお聞きしたいのですが、最近何か重大な事件が起きたりしませんでしたか?」


「最近か?そうだな・・・。最近ではないかもしれないが、直近だと二年前、敏達天皇が亡くなったことだな」


これで分かった。

現在は586年である。

この暖かい気温、畑の様子から察するに、5月ごろだろう。

となると、直近で起きる出来事は、来年の7月に大連の代表例で大臣である蘇我氏のライバル関係にあるとされる、物部氏が滅ぼされることだろうか。

ここで、俺はあることを予想する。

もしかしたら、この戦いに例の敵が関与することで、蘇我氏陣営が負けることになるのではないか・・・と。

ならば俺のすることは、この戦いで例の敵の相手をすることだろう。

この時代の戦闘のレベルはあまり高いとは思わない。

ただ、例の敵は歴史を変えれるほどの強さを持っている。

俺が負けるとは思えないが、念には念を入れるべきだろう。

都についてひと段落したら、誰かに手合わせをしてもらうか。


「おい、もう着くぞ。今から天皇のとこ行くが、無礼のないようにな。」


「わかりました」


門をくぐると、そこには血の海が広がっていた。

一瞬、この時代ではこれが当たり前なのかとも思ったが、平群臣神手が驚愕の表情を浮かべていることから、すぐにこの状況が以上であると気づく。


「・・・何があった」


神手が、かろうじて息をしていた者に声をかけた。

その者は、かすれた声で神手に説明をする。


「つい先ほど、自らを乱気流と名乗るものが現れ、一瞬のうちにこのような状況に・・・」


そう言うと、男の意識は途切れた。


「・・・初任務だ。お前はここらで倒れている民衆を家の中な入れてやってくれ。俺は都の中の様子を見る。もし敵を発見した場合、隠れながら都の中に潜入し、俺に報告しろ」


「分かりました」


神手は都に向かって一直線に走り出した。


明らかに、彼は焦っていた。

この状況で明らかに怪しいのは俺なのだが、それにも気づかないほどに。

ただ、俺的にはものすごくありがたい。

ここで敵を見つけ、倒すことで信頼を得ることができれば、今後俺も動きやすくなるだろう。


「やるか・・・」


そう言って、俺は救助を始めるのだった。






実をいうと、近くに敵がいることは分かっていた。

では、なぜ動かなかったのか。

それは、これが正史かどうかが分からなかったからである。

むやみに事件に手を出してしまうと、歴史が変わってしまう可能性もある。

どうするべきか・・・。

そう考えて目をつむった瞬間、一瞬にして後ろに人の気配が現れた。

反射的に体勢を落とし後ろを振りむくと、眼前には既に剣があり、俺に向かって振り下ろされている。

ぎりぎりのところで体をそらし、その攻撃を回避、すぐさま相手と距離をとった。


「あぶねっ・・・」


まだこの時代の戦いを見ていないから断定はできないが、この「乱気流」は恐らく未来の者とみていいだろう。

なら、戦っても大丈夫だな・・・。

そう思い、俺は意識を戦闘用に切り替えた。

同時に、相手の間合いぎりぎりまで体を近づける。

だが、ここで俺はあることに気づく。


「隙が無い・・・」


はっきり言えば、こいつはいままで相手してきた者の中でもトップクラスの実力者だろう。

俺が攻めあぐねていることに気づいているのか、乱気流が俺に話しかけてくる。


「どうした・・・こないのか? ならば、俺から行かしてもらおう」


気づけば、乱気流は俺の目の前にいた。

高速で横に振られた剣を、何とか回避する。


「ほう・・・」


さらに追撃。

回避行動を行うも、避けた先には剣が振り下ろされている。


「ちっ・・・」


避けては追撃。

これを何回も繰り返している。

・・・完全に受け身になってしまっている。

それは何故か。

回避後すぐに体制を整え反撃の構えに入るも、乱気流は既に防御の構えをとっているうえ、すぐに自分が一番有利となるような間合いをとってくるのだ。

改めて、強い相手であることを理解する。

歴史を変えようとしているだけはあるってことか。

一度、深呼吸を行う。

俺は、これまで凪の言っていたことに半信半疑だった。

だが、実際に過去に来て敵と対峙して分かった。

凪の言っていたことは真実であり、俺の敗北は歴史の改変を意味すると。

頬を数回たたき、気持ちを入れなおす。

そうだ、受け身になっている場合ではない。


「さあ、いくぞ・・・」


剣を持つ相手に対し、拳でどう勝つのか。

それは、剣を振る前、振った直後の隙を狙う。それだけだ。

先ほどよりも早く・・・。


一瞬で、相手との距離を詰める。

乱気流は、さっきまでのスピードに慣れていたせいか、少し、ほんの少し・・・反応が遅れた。

その隙を俺は見逃さず、横腹に蹴りを入れる。


「くっ・・・」


態勢が崩れる。

・・・このチャンスを逃すわけにはいかない。

俺は、腹部、顔面、足へと連続で攻撃を加える。

乱気流もなんとか反撃しようとしているが、今の俺のスピードについてこれていない。

わざと相手との距離をあけると、乱気流はチャンスとでも言いたげな顔で剣を振り下ろしてきた。

・・・残念だが、これは罠だ。

連続で攻撃を加えられた相手は、焦りからか無理な攻めをしてくる。

俺はその攻撃を回避し、乱気流に強烈な一撃を叩き込むのだった・・・。






しばらく経つと、神手がこちらに向かってくるのが見えた。


「神手さん、どうやらこいつが犯人っぽいです」


「な・・・お前がこいつを倒したのか」


神手は、ありえないといった表情でこちらを見ている。

まぁ、無理もないか。

先ほど出会ったばかりの謎の男が、事件の犯人を倒していたのだから。


「ふむ・・・」


神手が、悩む素振りをみせる。

おいおい、やっぱり俺が怪しいとか言い出すんじゃないだろうな・・・と少し心配したものの、その心配はすぐに杞憂だったと分かった。


「お手柄だ。戻ったら、なにか褒美を与えよう」


「ありがとうございます」


「だが、その前に用明天皇に何が起きたかを報告しなければならない。お前もついてきてくれ」


これは、かなりのチャンスではないのか。

蘇我氏や天皇とつながりを持っておくことで、任務達成に大きく近づけることができる。


「分かりました」


そう言って、俺は神手についていくのだった。

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