6 暴走
今日はよく頑張ったと思う。倉庫の中だってほとんどガラクタばっかだったけど一応整理整頓はしたし。王様たちともお話したし。
後は体綺麗にして寝るだけさ♪ と食後部屋に戻ってきて、寝巻きを取りに寝室の扉を開けた時、ふと気づく。ベッドの上に剣が置いてあった。
「あれ、こんなとこに置いたかな」
流石にばっちいから布団の上には乗せないと思うんだけどなあ。棚の上に置いたはずなのにへんなの。剣が勝手に移動するわけないし……とりあえず棚の上に避けとこ。
そう思って剣を手に取った瞬間、急に体が軽くなって、なにか思う間もなく意識が遠のいた。
体がぐにゃぐにゃする~~
あいや? 廊下がぐにゃぐにゃなのかな?
廊下をよれよれになりながら歩く。壁にぶつかって方向転換しつつもゆっくり進んでいく。
まるで自分の体じゃないみたい……
ふらふらして、ええ、なんか、え?
足が止まらない。前に人が2人。 ちょっと背の低いあたしと、ルティナ様。喧嘩しているみたい……
『ねえ……! わたしたち、姉妹じゃない! どうして……!』
『うるさいわね、あんたみたいな愚鈍なのお姉さまなんて思ったことないわよッ!』
床に座り込んでるあたし? ……を怒鳴りつけるルティナ様?
……まあ、そう邪険にするなよ…… とかなんとか思いながら、まっすぐ進む。
あたしは2人をすり抜けた。
気がついたらルティナ様の部屋の前にいた。いつの間に階段を登ったんだろう。剣の鞘を持つ右手をドアノブにかけたとき、その冷たさにふと気がついた。
……さっきまでのって、何!? 夢!?
もうぐにゃぐにゃは収まっていた。あたしはルティナ様の部屋の扉を無言で開けた。
「えっ! レイデ? ……どうしたの!?」
椅子に座って本を読んでいたルティナ様は、いきなり部屋に侵入してくるなり後ろ手に鍵を閉めて剣を抜いたあたしを見て立ち上がった。
「ようやく会えたな」
すみません、体が勝手に。って言いたかったのに突然口から思ってもない言葉が出る。ようやく……って、そもそもルティナ様とはご飯前に会ったばっかじゃない!
「……っ!」
ルティナ様は怯えたように息を呑んだ。後ずさりして、後ろのテーブルにぶつかって止まる。
「私の復讐は、貴様の悲鳴から始まることになりそうだ」
何言ってんの!? 口が勝手に動いて、左手が勝手に剣をルティナ様に向けて、足が勝手にルティナ様を追い詰める。
「レイデどうしたの!? ……やめて!」
あたしが思っていたことをルティナ様がそのまま口に出してくれた。
ガタガタ手が震えて、抵抗した。しかしあたしの体は止まらない。怯えるルティナ様にむかって、ゆっくりと剣を振り上げる。
やめてよ! ルティナ様をあたしに斬らせないで! そもそも『私』って誰だよ!
あたしの体返してよ!
返せよッ!!
「きゃあああぁ────っっ!!」
強くそう思った瞬間、途端に再びぐにゃぐにゃが始まって、剣を握る腕から力が抜けた。