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聖女マストダイ  作者: 深山セーラ
第三章 酒場の流儀
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10 準備

 イマジナリーフレンド発言は華麗にシカトされ。……なんやかんやで、依頼は受けることにした。まあ、レイの言う通りそもそも最初からやるつもりではあったんだけど……話聞いたあとだと、どうしても不安になる。


「なあ、ほんとに夜に行くのか?」


「はい……ピザおかわり! あとこれも!」


 ビクスさんは馬車出すって言ってくれたんだけど、あたし実は馬車酔いしちゃうタイプなんだ。


 戦いの前に満身創痍になっちゃたまんないし、ルークの背中に乗って運んでもらう都合上、夜からしか動けない。今はドリンクに引き続きビクスさんにご飯奢ってもらってお食事タイム。


 ココのときは遠慮があったものの、今ビクスさんに貸しの前借りをしているあたしはここぞとばかりに料理を頼みまくる。どうぜ全部ルークが食べるんだから、気になったものを全部ちょっとずつ頂くことも可能。パラダイスごはん。


「おいしかった!! ごちそうさま!」


 とくにオムライスが美味しい。今流行りの卵がふわふわのやつじゃなくて、普通に薄焼き卵で包んでるやつなんだけど……これが中のケチャップライスと卵のコントラストがベストでたまらなすぎる。


 酒場といえば酒!酒!酒!ときて不味いごはんが少し。ってイメージだけど、ここのは全部結構イケてるお味。手を合わせながら美味しすぎて叫んだら、カウンター奥の丸太みたいな腕のスキンヘッド店主がにっこりと笑って返してくれた。


 もはや隣席のルークは何か喋る間もなく食べていた。前みたいに食べながら泣いてはいなかったけど、多分美味しいって思っているはずだ。お腹すいてる状態で食べてんのに不味かったらそれって相当おいしくない。


「……あのさ……流石に夜までずっとこのペースじゃあないよな……?」


 テーブルに積まれていくお皿を見てビクスさんが顔をひきつらせながら呟いた。


「それはない……と思います」


 ビクスさんは不安そうだったがしばらくすると表情をニュートラルに戻し、ポケットの中から何かを取りだした。


「……これを持って行ってくれ」


 ビクスさんが吊るすように手に持っている革紐の先端には、ぎっちりと縛られた手のひらサイズの石がひとつ。青白い光をひとりでに放っていた。


「なんですか? これ」


「ほうれんそうくん2号だ。……あ、野菜じゃなくて、ほうこく、れんらく、そうだん、の方」


「ははぁ……」


 ……どっちでもいいって。……しかし2号ってことは1号もあんのかな、とか考えながら石を受け取る。


「これがあれば俺たちと連絡が取れる。一応地図は貸しておくけど、着くまでは石を通してこっちからもナビゲートするよ」


「え〜、すごい! そんなんできるんですか!」


「ご主人、おれにも見せてつかぁさい!」


「だーめ! 食べてから!」


 あたしは革紐を首にかけると、ぼんやりと光る石を手に取って眺めた。ここから声がするのかな? なんか不思議な感じだ。


「……戻ってきたときに返してくれよ。ギルドの卸売品だけど、結構高いんだ。なくしたら弁償だからな?」


 ビクスさんにそう言って警告されたので、わかりましたと言って頷いておいた。


 ……石っていうか、ほうれんそうくん2号をもらって準備は万端だけど、月が出るまではまだこの酒場にとどまっておくつもり。


 窓の外はまだ全然明るかった。

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