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お助けジェシカの冒険  作者: 五所川原しなこ
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プロローグ

別作品『乙女ゲームだと思って転生したらRPGだったので努力あるのみ!』のお助けキャラ、ジェシカのお話です。

本編に組み込むはずだったのですが、本編に出てこないキャラが多くなってしまって、わかりにくかったのでバッサリカットして、別の話にしちゃいました。

基本的には同じ世界観ですが、別作品として読めるように調整しています。

生まれた時からずっと病弱。

あまりにもしょっちゅう具合が悪くなったので、中学校を卒業した頃には、入院しないといけないような危ない時は自分でもわかるようになっていた。

でも、本当に本当に危ない時って、誰かを呼ぶ余裕もないんだなあ。

ああもう本当にダメ、と思ったところまでしか覚えていない。

次に気が付いたのは、まばゆい真っ白な空間で。全然見たことないところで。

目の前に女の人が2人いた。片方は白いワンピースのようなドレスを着ていて、光の加減か、眩しくて顔が良く見えない。

もう一人、知らないおばさんと何か話し合っている。

おばさんはお母さんくらいの年齢だけど、お母さんっぽくはない。なんか、キャリアウーマーン!って感じの人。

2人はしばらく話していたけど、ふいに、おばさんのほうが下のほうに落下していった。

落下?

それを見て初めて、自分の足元にも何もないのに気が付いた。

なんで?私、浮いてるの?

ここはもしかして空の上なの?

怖くなって下を見たら、臙脂色の屋根が美しい特徴的な尖塔がちらりと見えた。

ホシミチの魔術師の塔のような、先は尖っていて、下のほうはきれいなカーブになった屋根だなあって思ったけど、下に続く壁の色もテラコッタの煉瓦もそのままで、あれって本当にホシミチに出てくる塔じゃないかしら。

よく見たら、横にホシミチの王宮もあるような。

ホシミチ、こと『星の導き』は、私がものすごくハマったゲームだ。

ファンタジーRPGに乙女ゲームの要素を取り入れて、いろんなタイプのイケメンを揃えてた、グラフィックがとても美麗なゲームだったなあ。

操作性や難易度もちょうどよくて、夢中になって何度もプレイしたっけ。

病気がちな私は学校も休むことが多くて、教室ではどうしても少し浮いていた。

そんな私にとって、キャラたちのほうが親しい友達だった。

キャラたちが行く場所も覚えてる。

馴染み深い学び舎、木漏れ日が美しい森、水面が光る湖、美味しそうな食べ物を売っている屋台。

どこもハッキリ思い出せる。

間違いない。あれはホシミチの世界だ。

大好きなゲームの風景が見えるということは、これは夢なの?

私が足元を見ているうちに、話し声がした。さっきの人達以外にも何人か女性がいたのだ。年齢も服装もまちまちで、でも、顔立ち的に、全員、日本人っぽくはある。

「ごめんなさい。皆さん。お待たせしてしまって」

ワンピースの女性が言った。

「ワタクシは女神リリーナ。あなたがたの世界の女神ではないですけどね」

女神って、自分で女神って名乗るんだ。

ちょっとびっくり。

でも、それよりも名前が気になった。

リリーナ。

それは、ゲーム『星の導き』、通称ホシミチの主人公のデフォルトネームだ。

さっきの風景と言い、なにかホシミチに関係があるのかしら。

女神は続けた。

「ここは死んだあと、一時的に魂が立ち寄る異空間です」

さらっと言われてさらに驚く。

死んだあとって、じゃあ、やっぱり私は死んだのかしら。

すごくショックなんですけど。

周囲の女性たちもなんかざわざわしている。

「じゃあ私は死んだのかしら」

かなり年上に見える、こちらは本当にお母さんみたいな感じの女性が尋ねた。

「そうなりますね。ここにいるからには」

身も蓋もない。

「私は末期癌だったから驚きはしないんだけど。直前のことって覚えていないものなのね」

女性はフフフと笑った。

笑ってる場合でもないような気がするんだけど。

それってすごく苦しかったから意識がなかったとかじゃないかしら。

と、自分も病気で死んだらしい私は考える。

みんながそれぞれ感慨にふけっている間にも、自称女神はサクサク話を進めていく。

「異世界から転移すると、その移動時のパワーが能力となって与えられます。

 ワタクシの世界の救世主を探して候補者を集めていたのですが、先程の女性に決定しました」

それで、彼女はあの、ホシミチの世界へ降りて行ったのだという。

「じゃあ何、私たちは無駄足?」

隣にいた20代くらいの派手なメイクのお姉さんが言った。

「そうなりますね。でも、ここに集まっていただいたので、そのお礼はします」

「へえ。どんな?」

「特別な幸運を授けましょう」

とくべつな幸運。とはどんなものだろう。すごく美人とか、お金持ちとか?

少なくとも健康ではあるのだろうな。高校生で死んだ私はきっとそんなに幸運じゃなかった。

ぼんやり考えているうちに、順々に他の人達は消えていった。

「最後はあなたですね、お若いお嬢さん。あなたは何がいいでしょうね。長生きとか?」

長生きは…したい。けど。

「私、最初の人が行った世界に生まれたいです。あれ、ホシミチの魔法王国ですよね?」

私が言うと女神は困ったように首を振った。

「あまりおすすめはしません。あそこはこれから世界の危機を迎えるので」

「でも」

「それに、転移のための道を開いて、先程の方に強力な加護を付けてしまったので

 あそこにいくとあなたにはあまり加護を与えられなくて」

すまなそうに女神が謝る。

世界の危機。加護をもつ救世主。

ホシミチのラスボスは世界を滅ぼす魔物、邪竜だ。

ヒロインは攻略対象であるイケメンの仲間たちと一緒に邪竜に立ち向かう。

もしかして、これから、あの世界に邪竜が出てきて、さっきの人が戦うのだろうか。

そんなところに行ったら、私なんかひ弱いからすぐ死んでしまいそう。

でも。

それでも。

ホシミチの世界がいいな。

闘病中の私の楽しみだった、あの綺麗でキラキラした世界がいい。

加護のない私には何も出来ないかもしれないけれど、あの世界が助かるように何かしたい。

前回は毎日更新にしていたのですが、ちょっと無理かもなので、月~金 更新で。

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