プロローグ
『超魔大戦ギガノリア』という漫画作品が俺は好きだった。
当時はアニメ化やゲーム化などで有名になり、俺もその影響でその作品の大ファンになった。
物語の舞台は現代日本を中心としており、裏では超能力のような異能を持つ異能者が善と悪に分かれて戦う内容となっている。
単純明快な勧善懲悪なだけではなく、時には悪の覚悟に負ける正義もあり、絶望に負けた正義が悪に助けられるなどのどんでん返し的な展開もありという内容に大人も子供も夢中になっていた。
そんな世界に転生したのがこの俺、メイガス・スウロン。生まれはアメリカの生粋のアメリカ人だ。
転生した時期は原作開始の20年前、しかもちゃんとチート能力を複数所持した状態でだ。
この世界では魔力、巫力、霊力、呪力と様々なエネルギーが存在しており、俺のチートの1つとしてほぼ無限に近しいレベルのエネルギーを保有している。
まずは転生して数年はこのエネルギーの操作に集中した。幸いにも、この世界では的になるサンドバッグに困りはしない。
原作知識ではあるが、この世界には異能者だけではなく悪魔や妖怪などといった空想上のモンスターも存在してるし、ちゃんとした手順で儀式を行えば普通に召喚される。
故に、オカルトサイトなどでそれを知った素人が本気で儀式を行って悪魔や妖怪を呼び出して行方不明扱いになることはよくあることだ。
とはいえ、その強さはピンキリではあるが、大抵は異能者よりかは格下であることが大半だ。
だからこそ、俺の強さを鍛える絶好の経験値になってくれている。
しかし例外はいる。それが魔王や大妖怪と呼ばれる存在だ。
そういった存在は作中でキャラのトラウマを克服して覚醒という流れで出てくるため、ネットではかませボスなどと揶揄されていたりする。
まあ、そんな大物を呼び出すにはそれ相応の儀式と供物が必要になるので、個人で呼び出すのはとても現実的ではないし、俺が呼び出すのは普通の悪魔レベルだ。
そうして、ある程度戦闘に使える技や最低限の格闘技を学んだのと同時に、俺は悪魔を呼び出して戦闘訓練の経験値にしていた。
「このぉ!人間風情がぁぁぁ!!!」
「ああ、面倒だな。そろそろ召喚する悪魔のレベルを上げるか?」
右手を巨大化させて襲い掛かる悪魔を一切脅威とは認識しておらず、次に召喚する悪魔のレベルを上げることを考えている。
もしこの光景を何も知らない第三者が見ていれば、悲鳴を上げるなり、避けろと叫ぶなりしていただろう。
だけど、そんな心配が杞憂に終わるほどにメイガスと悪魔の力の差があった。
事実、巨大化した悪魔の右手はメイガスの周辺に張り巡らされた透明な魔力の障壁によって防がれてしまった。
「んなっ!?」
「悪いな。君程度の小悪魔じゃ俺のレベルアップにも使えなさそうだ」
傲慢な台詞を口にしながらも一切表情を変えず、視線だけ向けて単純な魔力放出だけで悪魔は大型トラックに跳ね飛ばされたように吹き飛んだ。
現在の俺の年齢は13歳、だが外見年齢は20歳を超えているように見える。
良く言えば大人びている。悪く言えば老けて見える。
だがそれで良かった。俺のこの世界での目的は原作キャラに出会うこと。
最初にも言った通り、俺はこの超魔大戦ギガノリアが大好きなのだ。それはストーリーであったりだとか、迫力満点の戦闘シーンなんかもそうだが、何よりもキャラの魅力が非常に大きいのだ。
例えばヒロインの聖女マリアナ。
彼女は回復系の能力を持ちながら非常に強い意志を持っており、例え相手が悪人であろうと助けようとする心優しい少女だ。
そんな彼女によって改心させられた悪役キャラが聖女のピンチに駆けつけたシーンは熱かった。
他にも獣の力を借りて戦う獣戦士のギギル。
彼は最初は戦闘狂であったが、仲間と旅を続けるうちに友情の温かさを知り、戦いを目的ではなく手段としてとして考えるようになる。
仲間キャラだけでなく、敵キャラも魅力的で、まだまだ語りたいキャラは沢山いる。
だが、何よりも語らなければならないのは何と言ってもこの物語の主人公であるロウス・ベルトディア、このキャラだけは決して外してはならないだろう。
まずこのキャラがどういった存在かと一言で説明するならば、非凡なる凡人。そう呼ぶに相応しい人物だ。
異能者としての才能はなく、異能者の総本山である学園でも最下位クラスに所属する落ちこぼれだ。
一応はそのクラスの中では上位に当たる存在ではあるが、学園ではそのクラスに所属するだけで恥じなのだ。
ストーリー序盤では主人公はそのクラスで将来は楽して生きていたいと豪語する、まさにダメな凡人のような考えをしていた。
そんな彼を変えたのが彼の幼馴染でエリートと呼ばれる者が所属できるクラスに席を置く、日向 カグヅチである彼女の存在だ。
彼女の事も存分に語りたいのだが、そうすると主人公であるロウスの語る時間が無くなってしまうので割愛させてもらおう。
ここで重要になってくるのは彼女がストーリーの中盤で死んでしまうことにある。
よくある展開と言われればそれまでなのだが、大切な人の死をきっかけに主人公が力の片鱗に目覚めて覚醒、そしてこれからの生き様を決める重要なイベントでもある。
それからは怒涛の連続で、彼女の死をきっかけにしてロウスは同じクラスメイトであった親友と彼女のライバルであった女の子と一緒に、その元凶である悪の異能力を倒す旅に出るのだ。
当然、力の片鱗に目覚めて覚醒したといっても元々は最下位クラスの男だ。その親友も同じクラスメイトである為、旅の当初は彼女のライバルだった女の子任せ。
だが、それは道中の雑魚敵だけの話で、名のあるネームドキャラに関してはロウスの機転を効かせた3人の連携で打ち倒すなど、主人公らしい活躍もするのだ。
そして、数々の強敵の戦いや厳しい修業を経て、ロウスは作中屈指の最強に成り上がるのだ。
本来ならば、もっと事細かにストーリーやそこで登場するキャラの魅力、そしてロウスがどのような感情を持ちながら強くなっていくのかを説明したいところだが、生憎と今は時間がない。
「さて、旅の準備は終わった。ならば向かうとしよう。まずはそうだな、やっぱり、作中屈指の不幸キャラから出会いに行くとするか!」