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12 決着……悪い教官にはお仕置きを


 一撃必殺の剣技の構に入るガドイルに対し、クルーシュは両手を挙げて無防備になる。


「さあ。好きなタイミングで撃つがいい。貴様の渾身の一撃をな」

「何言ってんだよお前! 本気で死ぬぞ!」


 動揺するガドイルを見て、クルーシュは確信した。


「貴様。戦場に立ったことがないな?」

「は?」

「見ればわかる。これだけ傍若無人な振る舞いを見せておきながら、いざ人を斬るとなると急に恐れを顔に出す。殺したくないという心が透けて見えるぞ」

「な、なにを言ってやがる! そんなわけねえだろ!」


 言葉とは裏腹に剣を持つ手が震えている。


「まともな戦闘経験を積んでいるなら、己の剣に覚悟を乗せることができるし、あるいは引き際をわきまえることもできる。相手を見極めることもできる。貴様はそのすべてが出来ていない」

「くっ……」


 剣を構えたまま、じりじりと後退する。


「脅しという格下にしか通用しない戦法をとっておきながら、通用しなかったときのことを考えていない。ぬるま湯に浸かってきた証拠だ。おおかた聖騎士団に入隊してから早い段階で戦場に恐れを抱き、教官という職に逃げ、立場の弱い相手を虐げてきたのだろう。哀れな男だ」

「う、うるせえ! あんまりふざけたこと言ってるとマジで殺すぞてめえ!」

「だからやれと言っているだろう」


 手を挙げたまま一歩近づくクルーシュ。


「ハァハァ……やめろ! それ以上近づくな! 本当にやるぞ! 死ぬぞ!」


 にらみを利かせているが、額には汗がにじんでいる。


「どうする? やめるか? 我は構わんぞ。虐げてきた生徒の前で情けない姿を晒すのならそれも一興」

「教官! そんなに煽ったら本当に危ないわ!」

「安心しろホラン。こいつには斬れんよ。心の底から臆病者だ」

「……なんだと?」

「聞こえなかったのか? 臆病者と言ったのだよ。ガドイル教官」

「…………やってやらぁ」


 一線を越えたくないという心と、引くに引けない心。ガドイルの頭の中で行われていたせめぎ合いは、その言葉が引き金となって決着した。



「やってやらぁ! 死ねぇぇぇぇ!」



 轟音が天を突いた。

 力と力がぶつかり合う衝撃波が路地を駆け抜け、砂埃が舞う。


「ケホッ……ケホッ……」


 うずくまって衝撃波を回避したホラン。


 少しして、風が吹き抜けた。桃色の髪が揺れる。

 煙が晴れ、教官の安否を確かめる。


「クルーシュ教官!」


 微動だにしていなかった。

 路地の真ん中で、両手を挙げたまま脇腹で剣を受けとめていた。


「……バカな」


 愕然とするガドイル。手の力が抜け、地面に落ちた剣がカランと乾いた音を立てた。


「さて。今度は我の番だな」


 クルーシュはガントレットの手でガドイルの頭を掴み、数センチほど持ち上げた。


「ああああ!」

「痛いか? だが、チーム42番への数々の悪行を清算するにはまだ足りんな。これから貴様には頭が破裂する寸前の痛みを一分ほど味わってもらう。安心しろ。殺しはしない」

「ひぃ! ゆ、許してくれ! 悪気はなかったんだ! ちゃんと謝る! 謝るから! すまなかったホーランアート! な? これでいいだろ?」

「だそうだ。ホラン、どうする?」


 ちらりとホランを見る。

 ガドイルもすがるような目をホランに向ける。


 悪逆非道の元教官が初めて見せた惨めで情けない顔。

 無能だカスだサンドバッグだと散々バカにしてきたくせに、ピンチになるとプライドを捨てて助けを乞う清々しさ。怒りを飛び越えて滑稽に思えてきた。


 だからホランはにこりと笑って、


「クルーシュ教官。やって」

「承知した」

「やめ……ぐあああああああああ!」


 地獄の釜で焼かれているかのような悲鳴は一分ほど続いた。


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