第1話 <普遍>
【⠀第1話 】 <普遍性>
頭痛がする。そう頭の中でぼやきながら1人少年は道を歩く。その日は雨が降っていて雨でコンクリートが濡れたときの不快な匂いが鼻を突く。
毎日の登下校、道端の石ころを今日の相棒にして蹴飛ばしながら道を進む。「この時間がずっと続けばいいのに」と思うときもあれば「早く学校につかないかなぁ」というときもある。そのうち「自分は結局どうしたいんだ」と、学校についたときに考えるようになっていた。
「伊野 那由多」それが少年の名前であった。那由多は小学校、中学校と通い、今では地元の高校に通い先生からの評判は良く、周りの人とはあまり喋らないが真面目なやつだというような認識をされていた。
学校についたらまず教室の窓から外を覗く。そこには当たり前だがいつも通りの風景が広がっていた。校門をくぐるクラスメイト、近所迷惑なんじゃないかと心配になるような大声で挨拶をしている教頭先生。本当にいつも通りで退屈だ。
あまり喋らない那由多だがクラスに一人だけ仲が良い奴がいた。そいつの名前は「荻野 悟」といって休み時間にも窓をずっと眺めている那由多を気にかけてくれていた。初めは「大きなお世話だ」と思っていた那由多だったが何回もくるうちに悟の心遣いを無下にするのもと思い会話をしたらいつの間にか仲良くなっていた。
窓を眺めていると悟が話しかけてきた。「おはよう那由多、今日午前中授業らしいから放課後どっか遊びに行かなね?」那由多は返す。「いいよ。どこがいい?」悟は返す。「カラオケとか?」那由多は返す。「いいね。楽しそうじゃん。」このまま放課後に遊びにいく予定ができ、会話が弾むなか、チャイムは鳴る。チャイムは残酷だ。どんなに楽しいときでも鳴ってしまう。でもチャイムが鳴らないと授業が永遠に続いてしまう。そんなことはあってはならない。チャイムは我々にとって平等であった。
1時間目、2時間目、3時間目と授業をうけ、ようやく4時間目にさしかかった。「これが終われば遊びにいけるな」人付き合いが良いとは言えない那由多だったが悟と遊びに行くのを楽しみにしていた。そんなときに起こったんだ。これから那由多の人生を大きく変えてしまう大変なことが。