虐め撲滅委員会!?
『おら!早く、こっちこいよ!』
『……』
虐め
それは自分より格下の者を肉体的にも精神的にも痛めつける行為
その犯行は年が経つたびに陰湿かつ狡猾になってきている
『お前気持ちワリーんだよ』
昔も今も変わらず虐められる対象者によく見られるのは、
『本当本当。お前みたいなデブがいるとアツいんですけど〜』
容姿
『黙ってないでなんとか言えや。マジ暗すぎ!』
性格
そして、その他にも家族構成、、人種、
『……』
『あっはっはっは!無理だって、こいつ喋ってるところ見た事無いし〜』
プラスαとしてそれらの要素にコミュニケーションが苦手と言う事が付け加えられる
『ジャーン☆ペン持ってきたから体中に落書きしてやろうよ』
虐めをする加害者にも特徴は見られる、親が不仲、時間と力を持て余している者、なにか強いストレスを日頃感じている者、
だがこれに当てはまるのは最初に虐めを命令したり一緒にやろうと誘ったりする人間だけだ
『ねぇねぇ。こいつにも書かせよーよ♪』
『ちょ、ちょっと離してよ!』
虐める側は虐められる側と違って一人ではない。増殖するのだ
『おい、書かねーとお前も同じ目に遭わすぞ』
大半の人間は弱く何かに属さなくては生きて行けない
『っ…わ、わかったわよ』
家族、学校、会社、国、世界
どれも、集団である
『ミッチャンごめん!』
『……』
『あははは!本当に書きやがったー!』
『親友なのにヒドい〜キャハハハ』
その中から追い出されないよう人は否が応でもその方針に従い行動する
(ねぇねぇ、またあいつらやってるよ)
(本当だ。高橋も可哀想だよね〜)
自分は虐めに参加などしていないから加害者ではない?
そんなわけはない、見て見ぬ振りをしている時点で加害者なのだ
むしろ外から見ているだけの者の方が質が悪い
そんな学校のとある教室に長机を囲んで数人の生徒が座っている
(ザ…ザー…場所確定、E-5、E-5)
長机の中央にあるトランシーバーから感情のこもっていない女性の声が発せられる
『了解。そのまま監視を頼む』
一人の男が手に取り応答する
『皆、行くぞ』
正義感の強そうな顔をした男
『オッケイ☆』
長髪美女
『ふむ、久々の出陣だな』
ゴリラのような男
『……コイツ試せる…グフフ』
陰湿眼鏡
『正義の刃、正義の刃〜なのだ♪』
子供?
その男のかけ声で座っていた者達がゾロゾロと立ち上がり教室から散り散りに出て行く
『羽村、周りの状況は!?』
先ほどの男はトランシーバーの女に連絡をとっている
(…ザ…被害者女子1名、加害者女子4名内1名は被害者の親友。窓から覗いていた二人は現在現場を離れたため障害とはなりえない)
『了解!親友に無理強いした事は撲滅法7条に該当する。粛正レベルは4だな。皆に連絡頼む』
(…各員に連絡、了解……)
『にーくっと。これでいいんじゃね!?』
『あははははは。肉ってそのまんまじゃん!』
『……』
(…1番隊2番隊目標包囲完了)
加害者の女子達は何も気づかず被害者の額に落書きをし虐めを続け
『笑いすぎて腹痛い〜それ油性なのにどうすんのさ』
腹を抱えて汚い笑い声を上げる
『アハハハ』
だがその時正義は舞い降りた
『そこまでだ!』
笑い声を遮るように男が声を上げた
『は?』
加害者達は後ろを振り向くが誰もいない
『こっちだクズ共!我々は虐め撲滅委員会だ!』
上からハッキリと聞こえ一斉に空を見上げる
男は屋上にいるようだ
『い、虐め撲滅委員会って…』
『あの噂の!?』
『あんなの学校の伝説でしょ!どうせ…』
あれこれ言ってる加害者達を無視し
太陽を背負う男はゆっくりと手を上げ
『粛正開始!』
と加害者目掛けて振り下ろす
男の行動に理解できない加害者達の前にドッチボール球のような球体がコロコロと煙を出しながら足下に転がってくる
『な、なにこれ』
『た、ただのオモチャだよきっと』
そう言って茶髪ガングロ女が拾おうとしたその時
ボフン
という音とともに球が爆発し刺激臭と共に辺りの視界を完全に奪う
『きゃー』
『ごっほごほ、な、なにこれ!ごっほごほ』
先ほどまで笑っていた声が嘘のように咳と悲鳴をあげる加害者達
『ちょ、ちょっと!なんか体に絡まってくる!』
『きゃ、こっちこないでよ!』
『引っ張られるんだから仕方ないじゃん!』
混乱して仲間割れとは本当に醜い
『ギャーギャーうるさいクズ共だな』
加害者が騒いでいる間に煙が徐々に薄れ視界が開けて行く
『なんなのよ一体……』
『え…?』
何が起きたか分かっていない加害者達は自分たちの姿に呆然とする
『し、縛られてるね。私たち』
『な、ふっざけんな!この!この!』
『痛い痛い痛い!ちょっと動かないでよ!』
足がもつれ合いフラフラとあっちこっちに移動する
『ちょっと危ないって!わっ!』
『きゃー』
悲鳴と同時に転倒
『いったいー!もうなんなのよ!』
バタバタと足を動かしながら辺りを見て現状を把握しようとする加害者達
彼女達を影がフッと覆う
『あ?誰だテメー!』
『成功成功……グフフフ…』
『うっわー☆怖いよ〜』
『ザ・ギャルだな』
いたのは眼鏡をかけた不気味な男と小さなガキ、そして対照的に体の大きな男
下から見上げているせいかその男は2メートルはありそうに見える
『お前らこんな事してただで済むと思うなよ!』
リーダー格の女がパンダのような目で言ってくる
『おい、クズ共。粛正はこれからだぞ』
屋上の男が笑いながら加害者達にいう
『なんだぁ?今からリンチでもすんのか!?』
『それぐらいで済めばいいけどね』
男の横から女が姿を現し冷たい視線を向ける
『ゴンちゃん投げて』
『おう』
女がそう言うと先ほどの大きい男が加害者達を縛っている紐の先端を屋上に向かって投げる
先端には重りが付いているようで屋上まで直線上に向かっていく
『な、なにする気だよ!』
謎の集団全員が『は?』と言った感じで声をあげる
そして
『だからさっきも言っただろ』
『粛正だ』
『粛正です』
『粛正だろう』
『…粛正…グフ…』
『粛正なのだ〜☆』
当たり前のように一斉に粛正と言う言葉を口にする
『だから粛正ってなんだって……ギャーーーーー』
学校に悪の叫びが木霊する…
虐め撲滅委員会
(……任務完了)
それは虐めを許さない正義の集団
『あの……あり…ありがとうござ…いました……』
『どういたしまして。また、虐められたら委員会まで報告を』
『は…はい』
『利香!シャワー室まで連れってやれ』
『はーい』
『そう言えば明日は新入生が来るね♪』
『ああ、また忙しくなりそうだ』
その委員会に巻き込まれることになる一人の新入生
彼を描いたストーリーが今始まる