1.苦しみに満ちた幸せの中で
高校入学して約1ヵ月、やっと見慣れてきた通学路を歩いていく。
高校に近づくにつれ同じ高校の制服が目立つようになってくる。
明日からGWということもあり周りの生徒はみんな浮足立っているように見える。
その中で蕾斗は一人で胃を痛めながら学校に入っていった。
それもそのはずで人見知りである蕾斗はまだクラスに全くなじむことができていなかった。
蕾斗はクラスの後ろの扉からひっそりと入ると窓際一番後ろにある自分の席に着いた。
着くと同時に隣から女子生徒の声がした。
「おはよう。蕾斗」
「おう。おはよう」
彼女は蕾斗の隣に住む幼なじみであり、この教室で唯一会話ができる人物の卦田城花蓮である。
「そんな死にそうな顔して、あんたまだ慣れないんだね」
「俺の人見知りのひどさはよく知ってんだろ」
「いやぁ、改めてひどいなぁと感じてね。だってもう明日にはGWなんだよ?」
「そりゃそうだけどさ・・・」
蕾斗が反論できないでいると教室の扉が開いて担任が入ってきた。
「みんな席着けよ~」
担任の一言で教室が少しずつ静かになった。
蕾斗はタイミングよく始まったHRに安心して前を向き、花蓮はその様子に呆れながらも慣れているようで気にすることもなく担任の連絡に耳を傾けた。
昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴り学校中から騒々しさがでてきた。
蕾斗は人の群れを避けるようにチャイムからワンテンポ遅らせて教室を出た。
向かう場所は旧校舎に2階真ん中にあるトイレである。
この一ヵ月の間、蕾斗は昼休みの過ごし方を探していた。
試行錯誤の上、でてきた結論は便所飯だった。
場所もしっかり考えて選んでいる。
旧校舎一階の一部は物置として利用されており人が出入りしていることが時折あり、3階の一番奥もやましいことがある人達が利用することがたびたびある。
何故それを入学1ヵ月でボッチである蕾斗が知っているかというと、場所決めのため確認した際にたばこの吸い殻とやった後のゴムが落ちていたのである。
そんな悲しい選考を経て選ばれたトイレにて蕾斗は食事をとっていた。
その最中にポケットにしまったスマホが鳴った。
画面を見てみると家族LINEに父親からGW中家族で遊びに行こうかとの提案が書いてあった。
もちろん予定などない蕾斗はその場ですぐに返した。
『俺は暇だし、いいと思うぞ』
『蕾斗が暇なのはわかってるから心配してねぇよ。というか彼女くらい作ってデートでもして来いよ』
『兄貴に彼女なんてでいるわけないじゃん。友達すら作れないのに』
『あっ私は明々後日に花蓮姉さんと買い物行くからそれ以外で』
父親の徹次に下世話な話を振られた上に妹の紫羽乃にとどめを刺されてしまった蕾斗は、一人で便器の上で下向きながら残りの昼休みを過ごした。
この作品は自由気ままにゆっくり書いていくつもりですのでよろしくお願いします。