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48話 純粋悪

「じゃー前修学旅行の班決めするぞー」


「「「「はーい」」」


スポーツ大会も終わり、高校最大級のイベントである修学旅行の時期になった。

うちの学校は沖縄に行くのが毎年恒例。


今日は修学旅行で、宿泊する部屋、一緒に回るグループを決める。

ちなみに、自分は怪我をしたばかりという事でスポーツ大会は強制欠席になってしまった。


「茜ーもうお土産何買うか決めた?」


「え、わかんない、何が有名なんだっけ!」


「え、それで半袖で良いの?長袖が良いの?結論暑いのか寒いのかわからんくね?」


「俺は半袖しか持って行かない予定」


「マジかよww」


右隣の茜と、左隣の慶太君たちが、それぞれのグループで沖縄に胸を踊らせてワイワイ話している。

僕は海を見るのが大好きだし、沖縄に行った事はないので、楽しみだった。高校1年の時までは。


僕は誰と同じグループになるんだろう。


こういう時、僕のような友達の少ない、いや居ない人間は、友達が居ない同士で固まったりするのだろうけど、うちのクラスは良いのか悪いのか、俗に言う仲間外れになっている友達グループに属していない人間は、僕一人しかいない。


最近は、僕が意見してからという物、直接チクチク言葉を言われなくはなってきているけど、それでも好かれている訳ではないので、周りから話しかけられる事なんか勿論ないし、自分の悪口を聞いてしまって嫌な思いもする事は今でも普通にある。


もういっその事サボってしまおうかな。

はは。



「は~いじゃあグループ決まったなぁ。って、本田ーお前どうするんだよ」


「!」


みんなの視線が僕に集まる。

いつのまにそこまで話が決まっていたんだ。


クラス全体のグループ決まっている中、決まっていないのは僕だけだった。


先生は単純な疑問として聞いてきてるんだろうが、今の僕には自分を追い詰めている、という風にしか思えない。


「はーい。本田は俺らのグループと一緒に回りまーす」



声の主は慶太君だ。


「お、そうなのか。じゃあ決まりな」


先生が黒板に向きなおして、その後、先生が修学旅行のルールを説明する段階に進んだ。










「もしかして舐めてんの?腹パンでもしたら、その姿勢は変わる?」


「う、ごめん」


部活で夏希に怒られる。


夏希は基本、上手くできない所に関しては寛容だが、いつもは出来ている所が出来ていなかったりする事には厳しかった。


ただ、どうしても、修学旅行の事が頭から離れない。


集中すれば嫌なことを忘れられるからって理由で部活探ししてたのに、悩み事で集中できなくなったら元も子も無い。



・・・・



今日も夏希と二人きり。

この時間は大好きだ。


誰にも邪魔されない聖域のような気がして、ここでだけは本当に落ち着いていられる。


夏希はどう思っているかは知らないけど。



・・・・そういえば、修学旅行の件で思い出したけど慶太君と夏希はちょっと前まで付き合っていたって、由希奈が言ってたな。


考えないようにはしてたけど。


「おい」


気が付いたら夏希が僕の目の前に居る。


「私と一緒にいるのに上の空なんて良い度胸してるじゃない」


座っている僕の頭の上にポカっと優しくグーにしたこぶしが置かれる。

げんこつのつもりだろうか。


顔は少しだけ怒っているようだったが、出会った当初ほどの鋭い目つきではない。


「手間のかかる坊主ね」


そういって、夏希は頭の上に置くこぶしをパーにして、ふざけ半分で僕の頭をなでるようにした。


「ほら坊ちゃん、何を考えてるのか言ってみなさい」


夏希は少し僕を見下すように胸を張ってにやつ着ながら言う。

なんだか由希奈のような仕草だが、由希奈のような胸はないのでそこまで胸元は前に出ていなかった。


「おいエロ猿。金取るわよ」


今度は本当に怒っている表情になり、ギロリという擬音がピッタリな強い目線になる。


女性は見てるって目線で分かるっていうのは本当だったのか。


「い、いやさ今日修学旅行の班決めがあったんだよ」


話題を逸らしたくなって、急いで話す。


「修学旅行?あはは。いじめられっ子なのに修学旅行なんか言って大丈夫なの?」


かかか、と笑いながら夏希が言う。

畜生。コイツ僕の彼女じゃないのかよ。


僕たちのこのパワーバランスを崩す事なんて一生できない気がする。


「気まずかったら行かなくても良いんじゃない?」


夏希にしては優しい事を言う。

そういうのは「意地でも出席しろ」ってタイプかと思った。


「行かなかったら一生馬鹿にするけどね」


・・・・・


「修学旅行にはいくよ。一生に一回しかないしさ。行かなかったら本当に負けみたいじゃん」


そう言うと夏希はなんとも言えない顔になる。

ポジティブな表情には見えるけど。


「ふふ、新しい虐めエピソード増えて将来テレビ出た時のエピソードトークが増えて良いんじゃない」


言いながら夏希が自分の半紙の位置に戻る。

勿論僕には将来芸人になろうという目標はない。


それと正直、言う必要がないなら言わなかったけど、俄然慶太君との関係が気になってしまう自分がいた。


そういえば、以前慶太君が書道部に来た時に大喧嘩になったのも、そういうバックボーンがあったからなのか今思うと。


ちょっと探りや反応を見る意味でも、慶太君の名前を彼氏としては出したくなってくる。

非生産的な行動だろうとは思うが。


これが誰かと付き合って執着するって事なのかな。


「で?どんな班になったのさ」


まさか夏希の方から聞かれると思わなかった。


「それがさ、僕、慶太君たちと同じになったんだ。向こうが余った僕を入れる形で」


聞いたので、そのまま言ってしまう。

夏希は今まで見たことのない、少し、難しい顔をしていた。


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