30話 相談
「うわ・・・」
お昼休み。
今日のお弁当に思わず驚く。
明らかにいつもより豪勢だ。
お弁当箱自体は少し大きめの2段重ねで下がご飯類、上がおかず。
白米は熱々でお弁当に入れると、湯気で蓋に水が溜まってべちゃべちゃになるからと、わざわざ冷やご飯にしてから入れてくれているし、毎日献立も違う上に、決して朝食や晩御飯の余りという訳ではないので本当に凄い。
今日のおかずは和食のおかずが勢揃いで、仕切られた中でびっちりと並べられており、ミニおせちのようになっていた。
下のお米も3分割で桜でんぶ、塩昆布、白身魚をほぐした物が乗っているエリアに分かれていた。
作るのにどのくらいの時間がかかるのか、恥ずかしながらここまで手の込んだお弁当を作ったことのない僕には想像ができない。
ただ、これだけのお弁当はただならぬ苦労があったに違いないし、もういっそお弁当は僕が自分で作ると申し出た方が良いのかも。
こんな僕にここまで持て成してくれるなんて、凛花の時間と手間があきらかにもったいない。
ここまで豪勢なお弁当を作ってもらったうえでこんな事を思うのは失礼かもしれないが、感動とは別に、早く兄離れさせなければという思いがどんどん加速する。
「本田弁当すごっ!運動会?w」
顔を上げると山上君。
普段話しかけられる事はないけど、流石に弁当に驚いて話しかけづにいられなかったのだろう。
「はは・・・まぁね」
「親が作ったの?」
「いや、妹がね」
「妹・・・?ああ従妹の子だっけ?」
僕は山上君と凛花の話をしたことはないが、僕が凛花と住んでいる事をぼんやりしっているようだ。
「うん」
「なー凄い可愛いんだろ?画像ないの?」
山上君が僕の目の前の席に座る。
あたりを見るといつも一緒にお弁当を食べている人がいない。
山上君から画像を求められているが、何だか本人の許可がないのに凛花の画像を気軽に見せることに、拒否感があって話を逸らすネタを考える。
あ、そうだ。
「ねぇ、山上君って彼女いるの」
「へ」
ポカーンとする。
「何だよ、本田俺の事狙ってんの?」
山上君が意味不明な事を言う。
「作ってみたくて。みんなどこで見つけてくるんだろ」
山上君は友達が多そうだし、分け隔てなくいろんな人と接しているから、沢山いそうだ。少し謙虚に説明口調で自分の意見を言い直す。
これで変なツッコミはされないだろう。
「でも本田彼女いただろ?」
う・・・その話になったか。
「いやぁ・・・」
「斉藤さんと付き合ってたでしょ?復縁しないの?」
「そ、そういう事じゃないよ」
「嘘つけよーお前らそれで今気まずい感じなんだろー」
「・・・・」
気まずいとかそういうレベルではない。
ただ・・・・
僕と茜の事は、もう良いんだ。
「良いから。それでさ、どうやったら彼女って作れるものなのかな」
「え、うーん、俺は同級生だったから・・・」
うわ、同級生か。
それじゃあ僕は無理じゃないか。
「え、お前彼女欲しいとかい言ってんのー!?」
僕の背後から大きい声がする。
僕だけじゃない、佐々木たちも若干驚いたようで僕の後ろを見る。
背後を振り返ると山田さんたち女子グループが立っていた。




