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26話 怒り

「ちゃっちゃとやっちゃうよ〜目標15分ね」


「「「は〜い」」」


掃除の時間。

今日は音楽室での掃除だ。


基本、掃除はいつもの如く僕一人を除いてみんなで駄弁るのだが、音楽室の掃除は先生が教室にいるので、みんなそこそこ真面目に掃除する。


良かった。

これなら部活に早く行けるな。


音楽室の掃除は広いので、僕は右奥のピアノの裏側をホウキではく。

何とか隙間に腕とホウキを入れて、ゴミを掻き出す。


うん、綺麗に取れた。

あとは後ろの埃を集めている部分に、この埃を持っていこう。


振り返ると、すぐ後ろで茜が掃除をしていた。

掃除の時間で僕の近くに近づく人なんかいないので、少しだけびっくりする。


でもこの教室は広いし、早く終わらせようと思えば当然の行動か。

ピアノの埃を、僕が埃を集めていたエリアにホウキで持っていくと、茜もそこにゴミを集め始める。


「ねぇさっき何つぶやいてたの」


話しかけてくることはないと思っていた茜が、僕に話しかけてきた。。


「さっき?」


「授業中に言ってたじゃない」


授業中・・・?

あ、『彼女かぁ』とつぶやいたなそういえば。

やっぱ周りに聞こえる声量だったか。


「別に何でも無いよ、ただ・・・」


「ただ?」


こうやって話していて、ちょっと前の僕らの関係であれば、茜に彼女の役を頼んでいたかもしれないと思った。


僕が一番仲が良かった女友達って物心ついてから、ずっと茜だった訳だし。


でも今の関係性はどうだ。


僕は拒絶されて、たまに僕が離れていても、聞こえるような声量で馬鹿にされている。


なので、大切な凛花の事を話すべきでは、勿論ない。

いわば内側の弱みを見せるみたいな相談な訳で。


「本当に。茜には関係ない」


「・・・・あっそ」


茜を僕の返答を聞きくと、

ゴミをそのままにして、慶太君や雄哉君がいるグループの方へ歩いて行った。


一体なんだと言うんだ。

ただ単に掃除を手伝ってくれたのか、それとも僕の呟きが気になって聞きにきたのか。


「アイツと話してたの?w」


雄哉君が茜に話しかける。

アイツとは考えなくてもわかる。きっと僕の事だろう。


雄哉君は何かと茜に絡みに行っているような気がするな。好きなんだろうか。


「あんな陰キャと話す訳ないじゃない。やめてよ」


「ぎゃはははw茜ちゃんわるーw」


雄哉君はこちらをちらりとみて、大笑いしている。

茜はこっちを見もしない。


相変わらず胸糞悪い。











久々に悪意を向けられて少しムカムカした。

もっと我慢強い性格だったはずだけど。


最近ストレスが溜まっているのかも。

まぁ良いや。部活に行こう。


人気ひとけの少ない校舎を歩いて、部室に向かうのは、少しワクワクするから好きだ。


早く教室を出て向かおう。

パッと顔を上げると真横の席に座っている茜が、まだ帰る準備をしている。


あれ、みんなと言った訳ではなかったのか。

騒がしい声が先程教室を出て行ったので、てっきり茜も出て行ったのかと思った。


先程の気まずさはあるが、そもそも普段から会話をしないので、干渉せず出ていこう。


「今日も行くんだ。部活」


「う、うん」


また話しかけてくる。

でも僕に話す事なんかない。


それだけ答えて行こうとする僕。

それ以上の会話は必要ないし、続けても色んな状況を悪化させるだけだと思う。


「じゃ」


「逃げるの?」


逃げる?

意味がわからない。普段避けているのはそっちじゃないか。


「逃げるって、僕に用でもあるの?」


先程の胸糞悪いやり取りのせいで少し言葉がキツくなっている自覚があるが、

特に気を使う必要もないのでそれを抑える事をしない。


「ううん。あんたなんかに用はない。でもよく部活なんかできるね。楽しい?」


茜は少し怒っているように見えた。

部活に行く理由なんて、なんもないだろ。


「言ったろ気まぐれだって」


「女目当て?夏希ちゃん可愛いもんね」


「違うって」


侮蔑するような顔と声色で言われる。


「ああ、それはないね。だって凛花ちゃんが許さないもんね」


少し、小馬鹿にするような、

見下すような薄ら笑いをしながら茜が言った。


「な」


凛花が悪く言われている気がして思わずカッとなる。

僕を馬鹿にするのは良い。


僕が我慢すれば良いだけだから。


でも凛花が馬鹿にされる覚えはないはずだ。

凛花と茜の絡みなんてなにもないはずじゃないか。


「僕が部活に行くか行かないかなんて茜に関係ない。それに凛花を悪く言われる覚えも無い。それだけはやめてくれ」


我ながら、言いたい事をスラスラと言った気がする。

普段自分の発言が誰かを傷つける事にならないかなど、注意を払って発言しているつもりだが、今は明らかに感情が優先されている。


「偉そうに私に説教する気?ムカつくのよアンタ。悪びれもなくヘラヘラして、しかもまた部活に入る?ふざけないでよ。そんなの許される訳ないじゃない。アンタ一生」


僕らしかいない教室で、茜は静かに激昂していた。

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