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0.1話 幼馴染と妹

「貴方は何故ここに居るんですか?」


無表情のまま、真っ直ぐ目をみて尋ねてきたこの子は、凛夜から聞いていた話だとまだ中学生との事。


だけど中学生とは思えないような容姿をしている。


化粧の技術が上がった今、可愛いだけの子なんて幾らでもいるけど、この子は格が違うような、綺麗と言うより麗しいという言葉で形容しても何ら不自然じゃないとすら思う。


従妹と聞いていたけど、本当に凛夜と血が繋がっているんだろうか。


「初めまして凛夜から話は聞いてる。私は斉藤茜。凛夜とは幼馴染なの、よろしくね。」


アポイント取った上で訪れて、全く知らない人がにいたら私だってびっくりするし、従妹ちゃんの質問はごもっともだと思う。


しかも凛夜とは家族同士って言うし。も〜・・・・何でこんな気まずい出会い方しなきゃいけないのよ。凜夜のバカ。


「・・・・・・」


従妹の子は心を閉ざしているようにも見える。でも最初からこうだった訳ではない。


この家に来た当初、凛夜と楽しそうに微笑ながら話をして、私にも柔らかい笑顔で挨拶してくれた。


美人さんが笑うとこんなに可愛いんだと思ったくらい。


凛夜がゲームをしようと、居間から、自分の部屋にゲームを取りに行った途端、従妹ちゃんの顔がスイッチをオフにしたように表情が消えてしまって、さっきの質問。


「あ、あの〜、急にいてびっくりしちゃった?ごめんね。でも私は凛夜とは仲良くて、だから従妹の貴方とも仲良くしたくて・・・・ほら、うちのワンちゃんも連れてきてるの。マックスって言ってね凜夜とも仲が良いんだよ」


うちで飼ってるコーギーのマックスを紹介する。

彼女は興味がなさそうだった。


あれ~みんなこの子を見せると表情が変わって仲良くしてくれるのに。

緊張している私をよそに、マックスはのんきに私に抱きかかえられながらㇵッハしていた。


・・・・もしかしてこう見えて緊張してる?私歳上だし。


そんな事を考えていると、ゆっくり目を伏せて、再びこちらに視線を戻しながら凛花ちゃんが口を開いた。


「それは先程お伺いしました。今は、何故ここにいるのか、とお伺いしています」


・・・・・・何か、怖い!


よく見ると、表情は無表情とかじゃなくて、冷たい。

言葉使い自体は柔らかくても、私の心にグサグサ刺さるような言葉を言ってくる。。


これがチクチク言葉という奴なのかしら


勝手に感じているだけかもしれないけど、場に流れる空気は、詰められているような緊迫感でいっぱい。


どうしてここまで怒ってるのよ~


あ、もしかして凛夜の事を慕っていて私にヤキモチを焼いている・・・とか?

凛夜とは本当の兄妹じゃないのに「兄さん」と読んでいるし。


・・・・・・・いやいや、アイツがこんな可愛い子に慕われるなんて無い。


そうよ、あんな無計画で、流されやすくて、忘れっぽい抜けてる奴が、こんな別世界の女の子に好かれる訳ない。




今だって私が連絡してあげたり、迎えに行ってあげないと遅刻しそうになったり、部活で忘れ物したりする、だらしない奴なんだから。


理系教科は凛夜の方が出来るけど・・・・


でも、そ、総合点だったら私が勝つ事だってあるし、文系教科は私が教えてあげる事もある。


とにかく!その位ダメな奴で、幾つになっても私がいないと何もできない。

こんな子に好かれる訳ない奴って事。


おっと、脳内で脱線してしまい、従妹ちゃん・・・凛花りんかちゃんだっけ?

この子を置いてけぼりにしてしまった。


よし、ファイトよ茜。

気合を入れるためにマックスの顔を見ると私の腕の中でのんきに寝ていた。


「勉強を教えて貰ってるの。数学はアイツの方が出来るしテストが近いから。もしよかったら一緒に勉強しましょう」


「アイツ?」


凛花ちゃんが、私の発したワードに静かに反応した。

ああ、そんな家族の前で駄目だよね。


「そうでしたか。ですが私は兄さんと婚約していますから、貴方がもうここに来ないのであれば可能ですが、そうでないなら仲良くするのは少し難しいかもしれないですね」


薄ら微笑みながら凛花ちゃんに言われた。


「こ、婚約!?」


え、ええ!?

この子って凛夜の従妹だよね?


家族なのに結婚?

あれ?従妹って結婚できるんだっけ。


凛花ちゃんはというと、それから喋らなくなってしまい、気まずい空気が流れて、

場にはマックスの寝息だけが響く。


「おまたせ〜コントローラー3人分探すのに手間取っちゃった」


呑気にやってくる凛夜に苛立ちを覚えるのと同時に、この張り詰めた空気に救いが訪れたような複雑な気持ちになった。


従妹ちゃん怒らせちゃったからなんとかしてよ












勉強の気分転換がてら、3人でレースゲームをする事になった。

レースをしながら獲得したアイテムで、相手を妨害したり自分を強化して1位を狙うゲーム。


獲得するアイテムによって勝敗が変わる、かなり運が絡むゲームで、ゲームが苦手な私でも勝てる事もあり、凛夜の家に来た時はたまに行う事もある。


凛花ちゃんは先程の冷たくてピリピリとした雰囲気はすっかり無くなり、朗らかな柔らかい表情で凛夜に来るまでの電車の事や中学校の話をしている。


うう、私、嫌われちゃったのかな。

そういえば昔から年下との付き合いが苦手だったのかも。


先輩であれば敬語で接すれば良いけど、後輩との接し方って難しい。


「茜」


「え!?」


「ぼーっとしてないで、キャラ選びなよ」


「ご、ごめん」


「あはは、茜はたまに意識飛んじゃうからなぁ」


呑気な凛夜に本気の怒りが込み上げて来そうなのを抑える。

全くもー・・・・私は、この10分位で寿命が縮まるような思いをしたのに。

元はといえば凜夜がちゃんと紹介してくれたらこんな事にならなかったのなぁ


もしかして私を困らせるためにわざと二人きりにしたのだろうか。

だとしたら、絶対、絶対絶対許さない。


しばらくは迎えに何か行ってあげないし、忘れ物しても貸してあげたりしない。

私に頼って多分、私を怒らせたらどうなるかわかってないようね。


ふと凛花ちゃんを見ると、私なんか興味がないというような感じで、こちらを見てすらいなかった。

マックスは寝るのにも飽きたようで凜夜の足の裏をなめている











「兄さん、なぜこのレースゲームでは他の運転者をコースの外に落としているのですか?」


ゲーム中、凛花ちゃんが質問している。

大人っぽく見えるけど、やっぱりまだ中学生なのだろうか。

シンプルに質問するこの子がかわいらしいと思ってしまった。


「そいうゲームだからだよ」


「実際に車を運転して邪魔な車を落としたらダメですよね?このゲームは人気ですが、この行為に嫌悪していない人が多いという事ですか?」


「落ちたら死んじゃうから。でもこれは死ぬ訳じゃないし復活するから大丈夫なんだよ」


「死ななければ邪魔しても良いんですか?ですがこの前は危害を加えなくても人は悪意からくる行動に嫌悪すると習いました」


「この競技に参加していると言う時点で、こういう行為をされる恐れがあると同意している、という事だから悪意とは違うんだ」


平和なのかそうじゃないのかはわからない話題で楽しそうに凛花ちゃんが凛夜と会話をしている。


凛花ちゃんは機嫌は、傍目から見てかなり良くなったように見えた。

とりあえず良かった。


ギスギスしたままだと私も耐えられないし、せっかく遊びにきた従妹の凛花ちゃんが、私がいる事で不機嫌なままなのも可哀想。


「あ」


私のキャラが、後ろから甲羅をぶつけられたのをきっかけに減速する。


「では兄さん、相手の同意があった上であれば、ルールの範囲で相手を害しても致し方ないので問題はない、という事なんですね」


凛花ちゃんが楽しそうに言いながら、私を後ろから追い抜いて行った。

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