6話 星霊の儀
俺はアルド。あれから時が過ぎて俺は6歳になった。
これまでにいろんなことはあったけれど今日は龍人生の中で一二を争うイベントがある。
それは星霊の儀と言ってこの世界では一般市民にまでスキル、魔術が扱えるわけなんだけれど、その素質を識別するための儀式らしい。
今俺はその儀式の為に街にある小さな教会の中で適当な席に座ってスキルを見ているのだが、やっぱりユニークスキルっていうのが分からん。
ちなみに素質は特殊な能力持ちか、神器、または神にしか判別できないんだとか。
俺には既に鑑定で自分のスキルはしっかり把握してる。そんなわけで他のガキ共が妙に緊張しきっているんだけど―――実際8人だけど―――田舎は噂の伝わり方が恐ろしいほど早く、変な能力だったりすれば直ぐに後ろ指をさされるんだとか。
「なぁ、アルドは緊張してないのか?」
で、その中の筆頭の5軒離れた家に住む黒龍人のボイラー。緊張なんてしてないぜ的に装っている彼だが目が凄く泳いでいる。というか少しだけ焦点がずれている。
大丈夫か?コレ。
「なんで?元から決まってる能力を見るだけだよ?どう足掻いたって結果は変わらないから緊張なんてできないだろ?」
「へ……?た、確かにそうかも……?」
俺が正論を叩きつけたところ目を点にするボイラー。ガキには難しい言葉だったかな?まぁでも俺の前世も17位とガキだったけど。
「だからお前も変に気張らなくても結果は変わらないんだからリラックスしてろよ」
「そ、そうするよ……」
そう言うとボイラーは深呼吸をして座り直す。さっきよりいくらか落ち着いたようだ。
それから待つこと5分。奥の部屋の扉が開き中から神父らしき人が出てきた。
80歳後半くらいだろうかとても立派な髭をお持ちで。
「これより、星霊の儀を執り行う。初めはボイラーから部屋に入りなさい、順番はこの扉に近い者から行うので、それを忘れぬように」
「い、いきなりか」
落ち着いていたボイラーだがまた緊張し始めたらしい。頼むから落ち着いてくれよ。
そしてビクビクしながら奥の部屋に入っていく。他の子供も真剣な眼差しで見送っている。これから自分も同じ事をするのだから得られる情報は得ておきたいってところか。
扉が閉まると只々静寂がこの場を支配した。子供たちにとっては永遠のような時間だろうが俺にとっては乗合馬車の待ち時間感覚だな。
2分くらい経っただろう。ボイラーが出てきた。顔色はよくむしろ嬉々としている。結果が良かったのだろう。
「俺、【暗黒騎士】の才能があるってさ!」
おや、自慢ですか。それだけ嬉しかったんだろうが確かにそうだろう。暗黒騎士は剣士の派生上位職である騎士と魔術師の派生上位職である暗黒術師の複合職であり不規則な攻撃を得意とする希少職だから。
本で読んでくれた母さん(今世)には感謝だ。
周りのガキ共はそれを羨み、自分にもあるかもと今度は喜々として部屋に入っていく。ちなみに俺は最後だ。
「私は【治癒師】だって!」
「僕は【軍師】」
「やった【拳帝】だ!」
嬉しそうに自慢し合う子供たち。コイツらかなり上位職多くないか?
治癒師はとにかく少ない、軍師はとにかく厄介、拳帝に至っては最上級職。
他の子供もかなりの才能があるみたいだ。
そして。
「アルド。来なさい」
俺の番がやってきた。部屋はかなり薄暗いが中心に何か光る玉がある。いや、ここは御神体を祀る大聖堂か。普段は開け放たないで年末年始のみ崇めることができるとか何とか。
ここでやるから意味があるのだろうか?ひとまず指示通りに玉の前に座り目を閉じる。すると目の前が真っ白になった。
※
―――???―――
ここは、何処だ?さっきまで大聖堂に居たはずだけど。
なんとなくあの神の居たところに似てるな。
〈龍人の子よ貴方の持つ力を示しましょう―――ってあれ?ああーーっ!貴方は転生神を殴ろうとした死人ボーイじゃん!〉
へ?あのときの女神?
〈いぇす!あい、どぅー!いやー面倒臭かったけど今年の星霊の儀の担当やってよかったよー。そうかー君も6つかー……って君の能力を教えるねー。えいっと〉
アルド 魂名:△●○□▼
生命力:高め、即死しない限りは本人の意志さえあれば生き延びる程度。
魔素生成量:普通、龍人での普通であり人間の約300倍程度。
身体能力:抜群、身体は自在に操れる。
知力:抜群、前世の記憶持ちで判断力、思考力はこの世界でもかなり高い。
種族能力
捕食吸収、形態変形、龍鱗鎧化
スキル
鑑定Lv10、再生Lv7、硬化Lv3、
身体強化Lv3、鑑定偽装、鑑定遮断、
鑑定妨害、魔力感知Lv10、天眼Lv1
ユニークスキル
吸収
加護
龍王の寵愛、炎神の加護→炎神の寵愛
適正職業:物理戦闘職全般、炎術師
すげー、鑑定でも見れない項目があったなんてな。ん?あれ、なんかスキルが増えてる?
〈あー、気付いてなかったんだね、リミッターをかけられてたから鑑定Lv1しか見えなかったうえに使えなかったのか〉
え?は?どういう……?
〈まぁ、詳しくは本人に聞いてよー、じゃあまたねー〉
あ、おいっ!待ってくれ!
………帰ったか。でも、これどうやったら戻れるんだ?
『あの、すいません』
今度はなんだ?後ろから声が聞こえたけど、まあ、見てみるか。
すると、そこに居たのは色白の幼い女だった。
これは2話で1話の分になる前編です。