4話 アルドの記憶
時は暫く遡る。
竜王暦137年、人類暦1485年
世界を揺るがす大戦が起きた。当時巨大な勢力を持っていた【北の大帝国】。
その地に突如と出現した異界の軍勢の侵攻を期に世界は闘乱の自体へと突入した。
※
俺は「普通」を体現したような奴だった。
大して使えない特技を1つ2つ持っていて、大して強くもない。
友人はそれなりに居たし、好きな人もいた。
家族もそれなりにいて、十分に幸せな人生だった。今日までは。
街が火の海に染まり街を一気に絶望の色に染め上げる。助けを求める声や己の境遇を恨む声、悲痛に死に抵抗する声、親の屍の前で縋り泣く子の声、火の燃え盛る音、瓦礫となって崩れる建物の音、様々な音が支配した。
突然怪物が現れて街を破壊し尽くして去っていった。言葉にすればそうなる。
でも、その一文が俺の不幸を表せるとは言ってない。
大好きだった友人の消えゆく最後の言葉も。
「みん……な……い……き…………」
大好きだった家族が無惨に殺されるのも。
「お前たちだけでも……逃げろぉぉお!!」
好きだった娘が最後の力を振り絞って俺に告白したことも。そして、それに応えられなかったことも。
「もっと……早……く…………言えてれ……ば良かっ……た」
身の回りすら守れなかったことも、皆を供養できない事も、全部。
何より皆の命を背負って行けないまま死のうとする俺が、俺自身が一番嫌いだ。最後まで残ったくせに、生き延びた癖に!
「あぁぁあぁあぁぁぁぁあああ!!!」
涙と叫び声を上げることしか出来ない。身体は動かない。死にたくない。まだ死ねない。生きろ!生きなければ!生きろ!生きて!生き延びろ!死ぬな!立て!意識を保て!眠るな!…………意識が……クソっ……今度は…………守らないと…………………………俺が………皆を…………
………
……
…
※
真っ白な空間で目が冷めた。不安を覚えるほどの白、白、白。
俺は……いきてる?
―――いや、死んだ。
でも生きてる。
―――認めろ死んだんだ。
じゃあ今の俺はなんなんだよ!?
―――落ち着けよ俺。冷静になれ。
みんなは!?
―――さあな、分かるわけないのは分かってるだろ?
[おや?冷静に自分と対話する余裕があるんだ?]
誰だ!?
[おー怖い怖い。死んだばかりの所申し訳ないね]
……。
[察していたのは普及点。あ、他のみんなは生まれ変わってるから安心していいよ]
信じろってか?
[確かにw]
巫山戯てるのか!?
[いやだって人間の一人二人死んだって数が変わるくらいだもんw]
お前はどうしようもないクズなんだな。
[いや、神に向かってクズは草]
知るか。天界のゴミ。
[面白いねぇ君。そうだ、そんなに後悔してるなら生まれ変わらせてあげるよ。好きだった娘も生まれ変わりに行った世界にね]
今度はしっかり守れってことか?
[ボクなりの皮肉だよ。守れもしないのに守ろうとして、勘違いしてまた繰り返す君の愚かさの……ね]
分かったよ、やってやろうじゃねえか。
[苦労すると思うよ?そうさせてるのはボクだし]
知ったこっちゃねー!アイツだけでも守るためならてめぇの靴舐めてでも強くなってやる!
[じゃあ舐めて?]
オラァ!
[うわっ!?あっぶな!殴ったよ!?コイツ神に殴りかかったよ!?]
チッ……避けやがって……
〈ちょっとー五月蝿いよーってなに?ちょっと……殴られかけてたの!?そこの死人ボーイ!ガッツあるねぇ!〉
[なんで喜んでるの!?]
〈君面白いから加護あげるねぇ〉
[もうーなんだよー!萎えたじゃん。もう行ってこーい!]
※
《転生を開始します。業を背負っている為一定の種族にしか転生できません。
龍人に転生します。
転生者からの要望値が一定値以上になりました。【内容:自身のより大きな成長】を受託。
親和性優先で固有能力【吸収】をユニークスキルに進化させます。
レアパターン検出。ユニークスキル【吸収】ナンバー42658に自我発生。
更にレアパターン検出。ナンバー42658が転生者と判明。
魂を【吸収】ナンバー42658に封印、存在確立しました。
加護が付与されました。
以上で転生を終了します。》
※
目が覚めると知らない大人が二人いた。
「よ〜しよしアルド〜いい子だな〜」
30位のおっさんと。
「そうねぇ〜可愛い子ねぇ〜」
20後半のお姉さん。
「でも、あなたも可愛いよ?」
「言ってくれるな」
…………訂正。バカップルがいた、だ。
俺はこれからどう過ごせばいいんだよ……。
結城 蓮です。
深夜投稿!もうすぐ元日!
投稿少なくてスンマセン。
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また次回合いましょう。