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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第三部 クロガネ、鉄を打つ
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第96話 『スケルトの身の上』

極上の料理が豪華な皿の上に並ぶ。

一流ホテルのそれに勝るとも劣らない品質が、大陸横断鉄道の自慢だと、レイアが教えてくれた。

天豆のポルタージュ

ソルベドシャミニオン

川苺のフランボワーズ

エルジカのソテー、マルドの果実ソースあえ。

一つ一つの料理を乗務員が名前を教えてくれる。


「レイアさんよ、こんな贅沢して、お金は大丈夫なのか?」

「一応、私もB級冒険者だから、お金は多少持っているわよ。心配しなくても大丈夫よ。うふふ」

「何がおかしい?」

「最近まで数十億の資産があったのに、おもしろい人と思って、うふふ」


はあ、そうですか。そう言われると、また腹が立ってきた。

ウエジ、コロス。


肉を頬張る。


「それより、さっきの公爵とか言うのは何だったんですか。スケルトさんを見たら、態度をコロッと変えて逃げて行きましたよね」


「まあ、隠すことでもなし。それがしの兄はオルカと言う。フルネームは、オルカ=ロワ=シーワルド3世」

「それって」

レイアが驚いた顔をする。

「そう、シーワルドの現在の王だ」

「えええええええ!!!」

思わず声を上げてしまった。

周囲のテーブルの人々がこちらを注視する。


指を口に当てて目を見開く俺たち。スケルトだけ冷静に、食事を続けている。

「大声出しちゃだめよ」

レイアが自分のことを棚に上げて俺たちを嗜める。


「驚くほどのことではない。すでに王位継承権は放棄した。それがしはただのスケルト。王家とは、縁は無い」

「でもさっきのは」

「単なる方便というものだ。まあ、兄もそれがしの言うことなら少しは聞いてはくれるが。公爵ともあろうものが、このような異国で権力を振りかざすなど、国の恥さらし。とはいえ、奴らが力を持っているのは事実だ。関わらぬに越したことはない」

「てことは、その顔で、王子様? まじで?」

俺はつい言葉にしてしまった。

鬼瓦のようないかつい顔。壁のような巨体。傷だらけの真っ黒なすすけた鎧。

どれだけ贔屓目に見ても、歴戦の将軍。華奢な王子のイメージはない。


どちらかと言うと力でのし上がってきた男の匂いがする。


「若くして武者修行に出たそれがしは、お屋形様の戦い方に惚れ込み、礼を尽くして従者に加えてもらった。その際、余計な政争を持ち込まぬため、国からは離れた。ただそれだけだ」


ただそれだけ。そんな軽い言葉で片付けられる事情ではないはずだ。

それだけの艱難を乗り越えてまで、ぽっくんに師事する価値があったと言うことなのだろうか。


俺はスケルトの実力を微塵も知らない。だが、只者ではないことは気配でわかる。名前鑑定も、軽々弾かれている。表示は人類。


「厄介ごとにならなければ良いがな。あいつ、逆恨みしそうだが」

「放っておくしかないな。公爵も暇ではなかろう。あとで頭を下げておくか」

「もう関わらない方が良いんじゃない? 明後日の昼過ぎには魔法学園都市に着くわ。食堂は今日だけにして、明日はケータリングで部屋に食事持ってきてもらいましょう」

食堂車は乗客の数に比べると席数が少ないため、個室の乗客のほとんどは部屋で食事をする。ケータリングという言葉がこっちにもあることに驚いたが、自動翻訳がそのように解釈しただけと思い出し、なんだか味気なく思った。


それにしても驚くほど揺れない列車だ。食事の際に出されたワインも、揺れることすらなかった。

魔導力学のスイを集めた最新技術の結晶。田中が鼻息荒く言っていた意味もわかる。

それにしても順調すぎて、逆に嫌な予感がするくらいだ。

このまま何も無ければ良いが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


部屋に戻り、眠ることにした。

客間の椅子をたたむと、二段ベットになる。

あまり広いベッドではないが、十分だ。


さて、次のことを考えよう。


今、差し迫る脅威は、査問官の部隊の追跡。

流石に、今頃は、俺に対する手配が行き届いているだろう。指名手配の効果のほどは、いかほどだろうか。


こんなにのんびりと過ごしていて大丈夫だろうか? 不安がよぎる。

俺が敵なら、どう考えるだろうか。

俺の顔は今の所、はっきりとは割れていない。

魔法世界のことだから、どっかで写真的な魔法を盗み撮りされているかもしれないが・・・。

まあ、今の所、俺のことをはっきり捕らえた映像などはまだお目にかかっていない。

なので、そこらへんは、まだ大丈夫。だと思いたい。


仲間はどうか。


スケルトは突然の参加で、同行していることは知られていないだろう。

だが、レイアと田中は、顔が割れているのではないか。


俺なら、レイアと田中の似顔絵なり写真なりを配布して手配するだろう。

どちらも、資料を探せば、どこかに何らかの手がかりがあってもおかしくない。

レイアは、ナミートあたりの冒険者仲間。

田中は神聖教に保護された時の資料なんかに。

それぞれ写真なりが残っていても不思議はない。


諮問官がいかにバカでも、ウイユベールに尋問なりして、情報を集めるはず。

目撃情報を集め、グリフィンで逃げた先は、トレンだろうと推測されるだろう。

トレンからは列車に乗る可能性は高い。

俺なら、各列車に手配をかけるだろう。


最悪の事態を考えると、レイアの顔は知れ渡っていると思い行動すべきだ。

レイアは、すでに手配されていると考えた方が良い。


そうなると。少しばかり気を抜きすぎていたかもしれないな。

いつでも逃げられるようにしておいた方が良いかもしれない。


列車は、神聖教国ザイオンの首都、オルベリオンの方向へ進んでいる。

俺なら本国へ連絡して、どこかの駅で部隊を待機させるだろう。検問を敷く。

どこかの駅で捜査員を乗り込ませるか。理由をつけて駅で乗客を降ろさせて、そこを捕まえる。

もし列車を手配するなら、そのどちらか、その辺りは行うだろう。


乱暴な相手なら、個室に睡眠ガスや魔法で無力化を試みるかもしれない。

流石に、致命的な攻撃はしてこないとは思うが。


そうなると。どこで逃げるかだ。

外は暗闇だが、飛び出せば逃げられるだろう。

高速で走る列車と並走して捜査網を保つことは至難の技。と言うか、無理だ。

列車から飛び降りれば、安全と言える。


気配察知に異常なし。囲まれているような気配はない。


「大丈夫だ」

小声でスケルトが下のベッドから声をかけてきた。


俺が思案を重ねていると、声がした。一瞬なんのことか分からなかった。

「何?」


スケルトの低い声。

「緊張が伝わる。考えていることは、追っ手のことだろう。それならば、まだ大丈夫だ。察知されてはいない」


「・・・」

どこから来る自信なのだろうか。


「なぜ分かる」


「視線だ。特定の人間を見つけた時、ほぼ全ての人間は視線に特徴が現れる。レイアと田中にそのような目を向けた人間は今の所いない。誰にも気づかれてはない」

そうなのか。経験値の差ということだろうか。


「さらに、隠密スキルもそれがしには通じん。お屋形様の訓示を受け、あらゆる危険を察知する訓練を積んでいる。気配察知は無いが、それに勝る状況把握が可能だ。安心して眠るが良い」


歴戦の冒険者には、有無を言わせぬ説得力があった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



夜中にベッドから妙な気配がして、ベッドを降りたら、スケルトが死んでいた。

首を切られて死んでいた。

うわあと叫び、レイアを起こそうとして、血まみれになっているベッドを見て、田中とレイアも死んでいると思った。

うわあ。

体が重い。

個室を這い出る。

窓の外に巨大な目玉があった。

「死ねえ。死ねえ。死ねえ」

低い声が響く。電車に並走して巨大な目がこちらを睨んでいる。

やめろお。

戦おうとしたがスキルが出ない。

うわあ。


「ガネ。・・・クロガネ。起きろ・・・。ガネ」

体を揺さぶられて、目を開く。

外は真っ暗だ。


「寝ぼけるな。敵の気配だ」

スケルトが言う。


今のは夢か・・・・。


「敵? 気づかれていないと言ってなかったか?」

「ああ、この気配は人間じゃ無い。別の何かだ」

外か。

俺も気づいた。

この気配は。魔族か。空から近づいてくる。

それと、ドラゴン。マッドドラゴンと同じような気配だ。

「魔族が攻めてきた。あいつら。どこにでも現れやがる」

俺の奇運のせいなのか。それとも目当ては別か。

「この列車の守りはどうなっている? ヤラレっぱなしか?」

「何事ですか? 騒々しい」

レイアが起きてきた。

「敵が来たらしい。用意をしておけ」

「列車には対空砲が備えてあるはずだ。竜や鳥獣の攻撃に備えて一応の防御機構は備えてあるが」

「俺たちはどうする」

「まずは、状況を見よう。最悪、列車が転覆する恐れもある。いつでも逃げられる準備はしておけ」

スケルトは窓の外を警戒している。

「気づいているのか、まだなら伝えた方が良く無いか」

襲われたとき、何より大事なのは冷静に状況を判断することだ。

今、どのような状況にあるのか、まずはそれを知らねばならない。

「分断は危険だ。なんにせよ一緒に行動しよう。列車の隊員には、列車の両端に緊急通話用の端末がある。まずは、それで注意を促そう」

スケルトの指示は的確だった。

田中を起こす。この騒ぎで寝ていられるのは、大物の証か。

「むにゃ。朝ごはんですか。いてて」

田中の耳を引っ張り、敵襲だよ。と叫ぶ。

大慌てで着替え、荷物をまとめる田中。

「準備は良いか」

手荷物はまとめ終わった。他の連中も問題なさそうだ。

それにしてもスケルトはよくスキルを使わず、音もなく近づいてくる敵襲に気づけたものだ。

この男、やはり只者ではない。


窓の外は、夜の暗闇。音もなく忍び寄る敵。目的は何なのか。

俺たちを追ってきたのか、それとも目的は別か。

全く不明だった。


「・・・夜中に面倒臭いですねえ」

田中が目を擦りながら言った。

目が3になっている。漫画のような顔だった。


「これでちょっと調べますね」


田中の手には、ドローンが握られていた。大きさ的には、両手に乗るくらいのサイズ。

なんでもありかよ。


「54万円のナイトビジョン付きドローンです。軍事用に転用される素体ですね。そこの窓から飛ばしますね」

小さく開く窓がある。


ヴイーーーーーン。結構、でかい音がする。でかい蜂のような音だ。

窓の隙間から、ドローンが飛び立つ。


「もう、お金が無いですよ。また稼がないと・・・」

ぶつくさ言いながらモニターを見る。モニターはタブレット端末のような画面だった。


列車と並走して、どんどん上空に舞い上がっていく。モニターを全員が覗き込む。


「方角はどっちですか」

田中が聞くと、スケルトが南の方を指差した。


「山の方ですね」


列車は大陸を西に向かって走る。中央山脈の北側にある平野を進むため、山を左手に望みながら走ることになる。


モニターの中の景色が揺れる。画面は白黒。ドローンが旋回し、目標を探す。

画面の端に、いくつかの影が見えた。

小さい点。

「最新型は凄いですね。赤外線でここまで鮮明に見えるんですね。ちょっとモード変えますね」

画面が、サーモグラフの色に変わった。

「熱源感知モードにしました。拡大しますね」

赤色と紫色の世界。白色の点がいくつか見える。

5体。形は、これはドラゴンか?

「飛竜だな。近づけるか?」

「音がうるさいんで、多分、気づかれますよ。壊されたら、やだなあ」

画面の中のドローンが列車に向かって飛んでくる飛行物体に近づく。


編隊飛行する飛竜。だがそれは、野生の飛竜ではなく、背中に何かを乗せていた。

「ドラゴンライダーか。ワイバーンライダーかもな」

人間なのか、魔族なのか、夜中の暗視映像では、判別できない。


次の瞬間、画面が真っ暗になった。


「あ、壊された! ちぇ。5分も使って無いですよ・・」

落ち込む田中を尻目に、スケルトが言った。

「そろそろこちらに来るぞ。通報をする」

列車の端にある受話器に近寄る。

スケルトがそれを取り、しばらく待つ。

「襲撃は気づいているか? 飛竜部隊だ、至急備えた方が良い」


その直後、ドドドドという銃撃音が聞こえてきた。

威嚇射撃だろうか。


車両が速度を落とす。高速で走っているときに狙われたら、脱線しかねない。

危険が去るまで、停車させるのだろうか。


「逃げるか・・・何が目的だ」

スケルトが言った。


俺にも感じられた。気配が遠ざかっていく。


「奇襲部隊だろうな。警戒されたから引き返したか? ゲリラ攻撃か、他に目的があるか・・・」


スケルトの予想通り、この事態はまだまだ続く。

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