表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第三部 クロガネ、鉄を打つ
85/214

第82話 『旅立ちの決意』

次の日の朝。

レイアの部屋のドアをノックする。

扉が開き、レイアが顔を出した。


「待たせたな。俺はもう大丈夫だ。水都へ向かおう」

「・・・その顔。吹っ切れたみたいね。じゃあ、今日発ちますか?」

俺がうなづくのを見て、レイアが言った。

「じゃあ、荷造りをするから、ちょっとだけ時間をください」


これからどうするかは決めた。


レイアと二人で、水都を目指す。細かいことは、なるようにしかならない。また襲われたらどうするかって? 逃げるに決まっている。もう守るものはない。


昨日、再び手に入れた錬成と、身体強化だけで戦っていく。

そのために、いくつか試したいことがあった。


レイアが部屋を出てきた。冒険者らしい準備の早さだ。

小ぎれいにまとめた緑の髪。小さな風呂敷と、錫杖。

ビロードのような透けるシルクの衣装と、編み上げのブーツ。


「さて、どこから? 挨拶には行くわよね?」


まずは、ゴードンのところに行く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


武器屋のドアが閉まっていたので、ノックをした。

赤ら顔のドワーフがジョッキを片手にドアを開いてくれた。


「なんじゃい、こんな朝っぱらから。おお、テツオか。なんじゃい、その顔は」


怪訝そうな顔をするゴードン。


「世話になったな大将。俺は、行くことにした」


すっかり仲が良くなった俺たちは、大将、テツオとお互いを呼ぶようになった。

職人同士、認め合える間柄として、この2週間、世話になった。


「・・・そうか」


ゴードンは、扉をバタンとして閉めて、店へ引っ込んだ。


レイアが不安そうな顔で俺を見てきたが、大丈夫だ。


ほどなくして、また扉が開いて、太い手が出てきた。

手に、大きな袋を握っている。


「餞別だ。持ってけ。また来いぞな・・」


俺は、嬉しかった。


「ああ。必ずまた来るぜ」


そう言って、袋を受け取った。


バタンと音を立てて、扉が閉められた。


「寂しいのかしら」


レイアが、肩をすくめた。


受け取った袋は、次元収納袋のようで、中を覗くと、いくつかの武器が入っていた。

助かる。武器がなかった。

ゴードンのところへ先に来たのも、武器を譲ってもらうつもりだったのだ。


大事に使わせてもらうぜ、ゴードン。


「さあ、次はギルド本部だ」


俺たちは、武器屋を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ギルド長の部屋へ通されて、一通り挨拶を述べた後、マインのギルド長リューシー=リンは、その長い銀色の髪をなびかせて、レイアに向けて言った。


ギルド長は、陰ながら色々、手配をしてくれた。なんか、余計なちょっかいもあったが・・・。


「レイアよ、覚えているか。私がなぜ、この街でギルド長をやっているか」


突然の質問に、レイアが驚いた顔をしたが、笑顔で答えた。


「確か。強い人がこの街には集まるから。でしたね」


リューシー=リンは、笑顔でこちらを向き、

「ああ、そうだとも。ゴンゲンから、お前の戦闘力は聞いた。力を盗まれ、腑抜けたと聞いたが、その気配。猛者特有の魔力の匂いだ。どうだ。ヤラナイカ」


どこかで聞いたようなセリフで、誘ってくる長身美人エルフ。

腕が鈍っていたところだ。命までは取られないだろう。

これだから、戦闘馬鹿は嫌いなんだよ。ギルド長ってこんなのばっかりかよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ギルド本部の訓練場で、リューシー=リンが腕を組んで、こちらを見ている。


「さあ、楽しませてくれよ。そして結婚してくれ」


長身の美人エルフが、挑発的な笑みを浮かべる。結婚のくだりは聞かなかったことにする。


緑色のマントをはためかせ、両腕を開くと、そこには2本の長剣が握られていた。


「まあ、今回は模擬戦だが、実戦形式でいく。私は、エルフ森影流双剣術の免許皆伝。どうだ、剣士は経験済みか? さあ、胸を貸してやる」


両手を開き、構えた。


まるで鷹が羽を広げたかのような雄大な構え。


女だてらに、俺より頭一つはデカい。


リーチも長い。


俺は、ゴードンからもらった風呂敷から、2振りの剣を取り出した。


一つは俺が鍛えたあの炎の剣、そしてもう片方は、ただの鉄の剣だ。


「ほう。二刀流か。私に剣で挑むとは良い度胸だ。その剣はなんだ。炎の魔剣か」


右手に構えた炎の剣が、熱気を放つ。持っているだけで汗が出る。これはこれで考えものだ。長時間、この暑さに耐えての戦闘はきつい。

そして、左手の変哲もない鉄の剣、これが俺にとっての最大の武器だ。


リューシー=リンが、間合いを詰めてくる。音もなく、前傾姿勢で。


振り上げられた右手に、炎の剣で対応する。ガキンと音がして剣を弾くが、そのまま回転して、左手の剣、そして、また右の剣が次々と襲ってくる。


上下に振り分けられた、その連撃を至近距離で裁くのは、至難の技。肩口にかすり傷を負う。


蹴りを入れられ、間合いを取られる。


「はっは! なかなかやるな! 若人よ! 反射神経が良いな。剣筋は3流だが、素質はあるぞ」


さすがは、免許皆伝。マントの動きと、長身のおかげで、剣筋が読めない。


前後に立体的に剣を振ることで、遠近感が取りづらく、体に隠した剣で、軌道を読めなくする。


動きは、どちらかというと、剣道よりもフェンシングに近い。半身に構えて、連続で突いてくる。


何度か、火花を散らせながら、剣を打ち交わす。


リューシー=リンの技は多彩だった。足元を狙ったかのように見せて、顎へと突き上げる。切りに行くと、手首を狙ってくる。

左手の剣でこちらの剣を巻き取り、そのまま刃を滑らせてくる。


炎の剣が燃え盛り、相手を威嚇するが、涼しげな表情で躱す。


「くそ、熱も捌くのか」


俺がつぶやくと、

「剣とは、世界と己をつなぐ架け橋。我が意を通し、悪意を断つ。あらゆる現象を防げるようになってからが、剣士としての本道よ。心せよ若者。

さあ、さらに剣戟は増すぞ」


リューシー=リンの腕の速度が上がった。

まるで腕は4本も8本もあるかのように、変幻自在に剣を振るってくる。


俺の傷が増える。昂ぶっているおかげで、痛みはそれほどでもないが、血まみれだ。


強い。


俺も本気を出す!


左手の剣に力を込める。


これが俺の新しい力。


「む」


リューシー=リンが、目を開いた。


襲いかかってきた俺の鉄剣が、溶けた。正確には、俺が溶かした。


液体のように形を変え、鞭のようにしならせてリューシー=リンの剣を巻き取りながら、マントを切る。


「く、鉄を・・・変形させるか。錬成!? なんという速度!」


リューシー=リンが、呆れたように言う。


以前のように自在に操作はできないが、柔らかくして鞭のように振るったり、固めたりはできる。応用すれば、このように変形させられる。


出来た隙に炎の剣を突き刺す。


「むう」


剣を2本重ねて、炎の剣を弾いて、後ろにリューシー=リンが跳びのき、


「ふん。大したものだ。ここまでにしよう」


と、微笑んだ。満足してもらえたようで何よりだ。


マントに剣を仕舞い、再び腕を組むリューシー=リンに俺は謝った。

「マントを破いてすまない」


「心配いらん。修復の加護がかかっておる。それにしても。

 女神の加護を失って、その強さ。結婚してくれても良いが・・・貴様は、もしかしたら。いや、曖昧なことは言えんが、一度、神眼で鑑定してもらった方が良いぞ」


神眼。


「それは何故だ?」

結婚を無視して俺が問うと、

「・・・自分では、自身の異常性に気づいておらんようだが・・・貴様は戦っている途中で、明らかに、剣速が上がった瞬間があった。これがどう言うことが分かるか?」


いや、何を言っているか分からない。

それはそんなこともあるだろう。手加減や、集中することや、感情で力が増すなど、様々な要因で力は変わってしまう。


俺がそう答えると、


「いや、そう言うことではない。明らかにスキルがレベルアップした。つまり、貴様は戦いながら、スキルがレベルアップする。これがどれほど異常なことか分かるか?」


全く分からない。


「スキルというのは、魂と結びついている。魂とは、その名の通り、心の塊。その魂のエネルギーを獲得して、我々はスキルを成長させている。

通常、スキルの成長は、よく聞け」


――戦闘後に行われるのだ――


「戦闘を終え、相手の魂のエネルギーを吸うことで、スキルが上がる。技術系のスキルも然り。例えば鍛治のスキルを成長させるためには、鉄を何度打とうが意味はない。鉄を打つたびにスキルが入るわけではないのだ。品物を完成させ、魂を込めて、初めてスキルの成長するための条件が整う。

貴様のように、一合ごとに剣の腕が上がるなど、前代未聞。いや、過去の英雄にその特性がなかったわけではない。が、5分や10分の試技で、スキルが上がるなど、そのような異常な成長は、あまりにも、あまりにも・・・」


リューシー=リンは言い淀んだ。


「・・・やめておこう。杞憂きゆうである」


リューシー=リンは最後にそう言った。


もらった武器一覧


・常炎の両手剣(クロガネ作)

  炎封じの鞘(ゴードン作 袋内延焼を防ぐため)

・風の魔剣 魔紋入り(クロガネ作)

・鉄の剣(素材のみ)

・疲労の斧(ゴードン作)

・氷結の棘短刀(ゴードン作)

・破城の片手槌(ゴードン作)

・モルゲン鋼の盾 打ち直し(ゴルドー作・ゴードン打ち直し)


・聖魔鉄の鎧(クロガネの持ち物・ゴードンが繋ぎ手を仕立て直し)


・オリハルコンの投げナイフ(ゴードン作)

・マキビシ

その他、伐採剥ぎ取り用のナイフ、缶切り、爪切り、調理器具など雑貨 多量

(在庫処理と思われる)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次元収納の秘密


市販の風呂敷 1メートル四方の長方形

 これの上に物を乗せ、畳むと重さと嵩が無くなる。


ゴードンからもらった次元収納

 風呂敷を袋状にしたもので、大きさは内部を広げると3メートルほど。

 そのため、口から物を入れると、内部に物をしまえる。

 口が広く、直径1メートルくらい開く。

 実は、クロガネは気づいてないが超高級品。

 クロガネが持っていた無限収納に比べれば性能は劣るが、出回っているものの中では、次元魔法の限界に近い最高級品質。

 レイアも好意に甘えているため何も言わず。(言うとクロガネが遠慮すると思い)

 ケチなゴードンにしては、大奮発したが、実は元はちゃっかり取っていることは、後ほど明らかになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ちゃっかり……そうだよね〜 主に相反する属性剣はどこにイッタノヤラ…、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ