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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
72/214

第70話 やまもとたつやと云う男

〜〜回想〜〜


■ナミートの街を出てすぐの話ーーーー


荷馬車に揺られながら、遠くを見ていると、タツヤが声をかけてきた。

「ガーネさん、これから仲良くしていきましょうね! 僕は地球に戻りたいんです。この旅で、方法が見つかればいいなあ」

と白い歯を見せて笑った。

「そうだなあ。戻るか。俺は、ちょっと無理だなあ」

「え、どうしてです? こんな世界に居ても、漫画も無いし、テレビもネットも無いんですよ。それにご家族が居るって言ってませんでしたか? 心配じゃ無いですか?」

うーん。腹の底が見えん。何が言いたいのだろうか? 俺が心配していないとでも思っているのだろうか?

稚拙という言葉が浮かぶ。同意を強要するような口調。

「・・・俺には、他にやるべきことがあるんだよ。それに、ここも結構気に入ってる」

へえ、と言うタツヤの顔は、少し不満げだった。



■2日目の朝。再び街道にてーーーー


「昨日の訓練、なかなかでしたね。モーゼルさん、強すぎますよね」

「ありゃ、化け物だな。勝てる気がしない」

「普通、僕らみたいな、異世、いや渡ってきた人って普通、チートっていうのかな。もっと活躍すると思うんですよね、定番としては、僕ら弱すぎないですか」

不満顔で言う。

おい、タツヤくんよ。異世界人の話はご法度だ。声を下げれば良いってもんじゃない。

レイアとティアナは、ガールズトーク。エドガーは銃の整備、ローグは目をつぶっている。幸い聞かれてはいないようだが。

「まあ、この世界の奴らは化け物みたいなのが多いな。ゴンゲンのジジイもやばいし、魔族も危険だ。なんとか生きてるが、強い奴が多すぎる」

「ですよねえ。僕はもっと、無双したいんですけどねえ、こう、技とか名前つけて、それで、ハーレムとかむふふ」

「お前、帰るんじゃ無いのか」

そう突っ込むと、はははとごまかした。



■ガードナーを出た後、またまた街道にてーーーー


馬車の上。

「ガーネさんのこれまでの物語を、聞かせてくださいよー」

「・・・ゴンゲンから聞いたんだろう?」

「同郷の人としか聞いて無いですよ。なんかすごいスキルを持ってるとか、お金持ちだとか、ちらほら聞こえてきますけど、本当のところはどうなんですか?」

正直、自分のことをペラペラ話すのは好きでは無い。

それに、これは極秘任務。馬車の上で、身の上を語るほど、お調子者では無い。

こいつは。

「俺の話は禁止だ。山本くん」

あえて苗字で呼ぶと、口を尖らせて黙った。



■ガードナーを出た翌日、またまた街道にてーーーー


休憩中。

「小耳に挟んだんですけど、ガーネさんが持ってるって言うオートマタ、見せてくださいよお」

てか、誰だよ、こいつにその話を伝えたの。

「何の話だ?」

俺はとぼけた。

最近、どうも話が噛み合わない。最初は同郷の者ということで、嬉しかったが、話せば話すほど、会話が合わない。方向性の違い、って奴だろうか。

「逆に聞きたいんだが、なぜ、俺の話を聞きたがる? お前の話を聞かせてくれよ。どうやって生きてきた? お前を助けたという女性冒険者の話は? なぜゴンゲンはお前を選んだ?」

タツヤは、またハハハと笑った。

「いやあ、僕の話なんて、大したことないですよー。それに、前に飲んだ時、話したでしょ? 死にかけたって。辛い思い出なんですよ」

「仮に、俺がオートマタを持っていたとする。で、なぜ、お前に見せなければならない?」

と、直球で聞くと、え? と困惑した顔をした。

「え、同郷だし、助けあわないんですか?」と当然のように言う。

どうも立ち位置が違うらしい。



■ガードナーを出て3日目、馬車の上にてーーーー


タツヤが、レイアと楽しそうに喋っている。

「僕らの世界では、飛行機ってのが飛んでるんですよ。鉄の塊なんですけどね。大きな扇風機を回してね、空を飛ぶんです」

「えー、飛空船と似てるけど、違うの?」

そういえば、この世界にも空飛ぶ乗り物があるとか言ってたな。見たことないけど。

「あとね、テレビって言う遠くのものを見る機械もあるんですよ。すごくないですか」

えーうそ〜、とか、やだーとか。

軽い話だ。

退屈な街道。

って言うか、あいつ、異世界人って公表してたか? なんと言うか、あいつは一体、何なんだ?



■ガードナーを出て4日目、馬車の上にてーーーー


そういえば、タツヤは半年ほど冒険者をしていたと言っていた。

俺も、冒険者活動を少しはしたかったな。なんだろう、モンスターを討伐したり、お使いをこなしたり、レベル上げ、ランクアップ。それはそれで楽しそうだ。

「なあ、タツヤくん。冒険者生活をしてたんだろう。どんなだった?」

「えーっと。どんなと言いますと?」

「いや、ランクとか、好きなクエストとか」

「・・・そうですねえ。クエストねえ。いや、正直、あんまり印象がなくって。ランクも、いつの間にか上がってた、って感じですね。ハハハ」

何とも要領を得ない回答。

誤魔化すような、触れられたくないような。そんな印象を受けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


パチパチと言う炎の爆ぜる音。死体と一緒に積み上げた木の枝が、割れる音だろうか。

煙が思ったより多く出て、風向きによって、顔にかかる。人が燃える匂いは独特だった。

少し咳き込む。

タツヤが炎をじっと見たまま、黙っている。

しばらくして、タツヤが口を開いた。

「鉄を自由に変形させてましたね、それがガーネさんの、いやクロガネさんのスキルですね」

「・・・」

「それにあれが、オートマタですか。戦っているところを間近で見ましたけど、すごい戦闘力ですね。正直、羨ましいです」

心がざわざわする。

こいつは、燃える死体を見ながら何を言ってるんだ。

「モーゼルさんは残念でしたね。それでも生き残っただけでも儲けもんだ。もっと生きていることを喜ばなくっちゃ」

そういって、また軽い笑いをした。

次にタツヤが何かを喋れば、俺は奴を殴ったかもしれない。

だが、奴は何も言わずに、遠ざかっていった。

俺は、ただ、燃えていくモーゼルの死体をじっと見ていた。


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