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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
71/214

第69話 ドクロ☆ライダー再び

音が戻る。ドドドと言う排気音。

何だ? 何が起きている?

ドクロライダーは、いや、ドクロ☆ライダーは、ウィリーし、村へ爆走する。


商隊を襲っている雑魚魔族をその巨大な剣で、まるで金魚すくいでもするかのような気軽さで、ついでとばかりに突き刺しながら駆ける。

森の木々をなぎ倒しながら、駆け抜ける。


俺も慌てて、追う。


隊列の中程でバーナビウスが見えたが、こいつはナイトメアに任せよう。


「ナイトメア、あのデカイのを止めろ。殺しても良い」


俺の声にナイトメアが向かう。

タツヤとレイアはナイトメアを知っている。


ナイトメアがバーナビウスに蹴りを入れた。


俺はそれを見届けて、改めてモーゼルの元へ急ぐ。


モーゼルを助け、体勢を立て直す。

俺はそのことしか頭になかった。


ドクロ☆ライダーが味方してくれている。

勝てるかもしれないと思った。


ドクロ☆ライダーはウィリーしたまま、爆音と爆煙をあげ、村へ突っ込んだ。

巨大な剣を振りかぶり、振り下ろす。


モーゼルにつかみかかられていた、魔族の男は、ドクロ☆ライダーに気づき、対処しようと身構える。

モーゼルを突き放し、刀を向けた。


黒い髪の男がドクロ☆ライダーの一撃を曲がった刀で受け止めた。

「貴様何者だ!」


巨大な剣を受けて地面に足跡を食い込ませて男がずり下がる。あの剣を受け止めるなど、常人ではあり得ない。こいつがあのモーゼルを苦戦させた相手か。


遠くからこっそり鑑定!


ヤ人族。


名前が出ない。奇しくも、モーゼルと同じ種族の男が居た。


モーゼルが語った兄の名。確か、マグナ。こいつがそうか。


黒髪の男の目が光ったと思った次の瞬間、ドクロ☆ライダーの頭が爆発して首がなくなった!


俺は目を見開いた。


あまりの衝撃に、風景がスローモーションのように遅くなる。


ぐらりと崩れるドクロ☆ライダーの巨体。

しかし。

崩れると思われた、巨大なドクロ☆ライダーの胸が開いて、3メートルくらいの大きさの、宇宙戦隊ヒーローのような鉄甲冑が飛び出し、そのままマグナの腕を切った。

が、浅い。断ち切るまではいかない。



搭乗型巨大ロボ!? 本体飛び出した!?


え、本体? 何? 本体が出たの?


銀色に輝く甲冑。細く、すらっとしたフォルム。顔面は強そうな、ガラスのような目と、牙のような装飾。


光るサーベルに左手にはショットガン。


かっこよすぎる。


走りながら近づく。モーゼルまであと少し。

どちらも強すぎて近寄れない。俺は、慌てて立ち止まる。


地面に伏せるモーゼルを助けたいが、踏み込む隙がない。くそっ。できることといえば。せめて。


鑑定!


ドクロ☆ライダーMKⅡ


ど、ドクロ ライダー ま、マーク ツゥー?


二人の剣戟が始まった。

全く見えない。集中力を高め、ゾーンに突入しても、見えない。

速い。早すぎる。火花が散るが、手すら消えている。


なんだこれ、ヘカトンケイルぶりの登場かと思えば、力押しではなく、技巧を見せつける。


「ぐ、強い。これほどのものが、人間に与するのか」

マグナが叫んだ直後、袈裟懸けにマグナの胸が切り裂かれた。


その時、モーゼルの叫び声がした。

モーゼルが立ち上がり、頭を半分失ったままの状態でマグナに掴みかかったのだ。


この時、俺は初めてモーゼルの状態に気づいた。モーゼルがすでに致命傷を負っていることに。

頭が弾け、血まみれになっている。


ドクロ☆ライダーに気を取られていたマグナは、隙を見せた。

「貴様、まだ生きているとは、しぶといぞ!」


曲がった刀で、モーゼルの足を切ろうとするマグナ。

次に首に刃を押し当て、ねじり切ろうとした。

流れる血、モーゼルが構わず再度、マグナの首に噛み付いた。


「うがああ! 死に損ないが!」

貴様、貴様、貴様。


うわ言のようにマグナが叫び、モーゼルが切り刻まれていく。


ドクロ☆ライダーは、その様子をじっと見ている。加勢する様子もない。モーゼルを助ける様子もない。


「モーゼル!」

俺は叫んだ。


このままではモーゼルは死ぬ!


俺は慌てて鞄の中からエリクサーを出した。どんな傷でも治るこの薬なら。

モーゼル、もう少し待て!


俺は、意を決して、バケモノ達の戦いの中に飛び込もうとした。


その瞬間だった。




ドクロ☆ライダーが、モーゼルを後ろから貫いた。

マグナの体ごと・・・。


目を見開くマグナ。


そしてモーゼルの体から、剣を振り抜き、そのまま、抜いた剣を再度マグナに突き立てた。



「うぐ、コアが」

バキンという音とともに血を吐くマグナ。


だが、それだけでは無かった。


ドクロ☆ライダーは、倒れそうになるモーゼルの傷口に手を突っ込み、心臓を抜き出した。

流れるような動作で、何の躊躇もなかった。


口から血を吐き、瞳の色を無くすモーゼル。


!!!!


俺の衝撃は、精神の限界を超えた。


味方じゃないのか、この野郎!

うわあああ。俺は吠えた。


鉄を突き刺し、殺してやる!


顔面にべちゃりと当たる。モーゼルの心臓が投げつけられた。


目を開くと、ドクロ☆ライダーは跡形もなく消えていた。


一瞬の戸惑い。


だが、やるべきことは。

モーゼルに駆け寄り、心臓を戻そうとする。


エリクサーの瓶を強引に開け、モーゼルに振掛ける。

モーゼルの手が、俺の手を掴み、制止した。


「無駄だ。俺は死ぬ」

ごふ、と血を吐いた。


俺は、叫ぶ。

「クッソおおお。死ぬな、モーゼル。奥さんは、息子は」

俺の問いかけに、モーゼルは中空を見て返した。


「思えば」

モーゼルはまた血を吐いた。

「俺は、人を育てたことが無かった。それだけが悔いだった。最後にお前に少しだが教えることができて良かったと思っている」


血を吐き出しながら喋るモーゼルを見ていられない。目から涙がボトボト溢れて止められない。

「死ぬな。大丈夫だ。死ぬな、死なせない」

俺は、エンシエントポーションの蓋をあけ、モーゼルの体にふりかけた。

しかし、傷が塞がる様子がない。どう言うことだ。


頭を吹き飛ばされ、心臓をくり抜かれ、喋れることが奇跡だ。

「息子を、息子を頼んだぞ。クロガ・・・・」

完全に瞳孔が開いた。


あのモーゼルが死んだ。


「ぐ、なんだこの有様は・・・。き、貴様は。 コアが壊された。くそ」

マグナがよろけながら、立ち上がってきた。


グフ、と血を吐き、膝をついた。


コアを砕かれまだ動くとは、こいつは。それに、疑問に思わなかったが、コア? こいつは、モーゼルと同じヤ人族のはず。なぜ、コアがある?


と、思った瞬間だった。

背後の地鳴りに気づかず、俺は吹き飛ばされた。


飛ばされながら、空中から見ると、俺を吹き飛ばしたのは、バーナビウスだった。


紫の血を流しながら、両脇にボーゲンの遺体を抱え、バーナビウスが俺を吹き飛ばしたのだ。


「マグナ、これ以上は無理だ。ボーゲンが、ボーゲンがやられた」

バーナビウスが弱気な声で叫ぶ。


吹き飛ばされながらも、続くマグナの声もはっきり聞こえた。

「・・・撤収だ・・・貴様、この屈辱は忘れんぞ。あのドクロの騎士にも伝えておけ!」


俺の視界が捉えた最後、紫の霧に沈む、魔族の姿だった。


俺は吹き飛ばされながら、奴らの声を聞いた。


這い蹲り、動かない体で、俺は誓う。

ああ、覚えておけ、モーゼルの仇はいつか必ず。


――――――――――――――――――――――――――――――


危機は去り、完全に日が暮れる。


誰もが呆然としていた。


レイアだけが、忙しなく行き来をしている。

回復術師が全て死んだという。


ナイトメアが残骸を拾い、死体を運ぶ作業を続けている。


商隊は、旅を続けることが不可能なほど、損失を出していた。


うなだれる冒険者たち。


何よりモーゼルを失った心許なさが、商隊を包んでいた。


フライドチンキは生き延びたようで、全員を村の中まで導くと、意気消沈するメンツに声をかけた。

「これは、予想外ね・・・。残りの人数は?」

「35人です」


「うち護衛は?」

「7名」

大損害であった。


不幸中の幸いか、隼の魁、レイアとタツヤは無事だ。俺を含めると6名。あと一人以外は、護衛が全て死んだことになる。めちゃくちゃな損失だ。


満身創痍のフライドチンキが、か細い声で言う。 ところどころ聞き取りずらかった。

「ガードナーに連絡を入れたから、ここで待機しましょう。・・・外は危険よ。一旦計画を練り直します。各自建物に入り、自衛すること。護衛のみんなも疲れているところ悪いけれど、交代で見張りをお願いするわね」


夜になり、死体を村の中央に集め、火をつけて燃やした。死体を操る魔物や、霊が取り付きゾンビ化することもある。この世界では、死体を放置することは危険なのだ。


モーゼルの亡骸も積み上げられた死体の中で燃えている。モーゼルの形見として、頭髪の一部と、国宝のアンバーナックルと、ドクロライダーが投げてよこした心臓をカバンにしまう。

そして、あの日、あの酒場で、モーゼルが見せてくれたペンダント・・・。これは、必ず家族に返そう。俺は、ペンダントを首にかけた。


なぜ、ドクロライダーは、心臓を投げて寄越したのか。なぜ、モーゼルを殺したのか。

俺の頭はぐちゃぐちゃだった。


ドクロライダーは、ヘカトンケイルの敵対者ではないのか? なぜ、ここで現れた? なぜ俺を助ける? なぜモーゼルを殺した?


疑問が尽きない。


だが、そんなことを考えている心の余裕は無かった。

死ぬと聞かされていながら、俺は、モーゼルが死ぬことが想像できていなかった。理解できていなかった。半信半疑だった。

モーゼルの最後の顔が浮かぶ。俺はモーゼルを救えなかった。


くそ、俺は弱い。俺が強ければ、モーゼルを救えたはずなのに。


ボーゲンは強かった・・・


女神のコンテナなしの俺では、全く歯が立たなかった。多少強くなったと自惚れていた。


あのクラスの敵が、ゲリラ的に進軍してくること自体が、そもそも恐ろしすぎる。

異世界の転移術は、戦略を覆す。

国境とはいえ、敵の最大戦力にやすやすと侵入された事態は、どう考えれば良いのか。


モーゼルが死に。他にも70名近い死者が出た。


次にもう一度マグナが襲ってきたとき、誰が止められるというのか。


理不尽すぎる。


これがこの世界の現実なのか。

強者が蹂躙する世界なのか。

あまりに理不尽ではないか。


俺は怒っていた。

そして、全てを見失おうとしていた。


この怒りはどこにぶつければ良いのか。全く見当もつかない。

知識の書を開き、調べる。誰がモーゼルを殺したのかを。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

マグナ=ビッグズ

元ヤ人族 通称 瞬殺のマグナリア 危険度SSSS 食用(自重)

第二魔王軍の最高戦力。第一の魔将軍。ヤ人族固有の戦闘力と、魔技抜刀術を組み合わせ、その破壊力は何者も寄せ付けない。ヤ人族最後の生き残りの一人。

育ちの親をも恨み、人類を恨み、その果てに魔人となる。口下手で常に目を閉じるが、その瞳を見たものは誰一人生き残っていない。

スキル 不明 種族特性 内燃

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


安定のSSSS。二人目だ。スキルは不明ときた。

次は、あいつだ。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

ドクロ☆ライダーMKⅡ

種族 謎 危険度 謎 食用 謎

謎の正義のドクロ☆ライダーの中の人。

剣が得意。強い。

他は内緒♡

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


俺は知識の書を地面に叩きつけた。真面目に破いてやろうかと思った。中の人?

ふざけるな。

ギャグパートは通じない。モーゼルにとどめを刺したのは、こいつだ。

俺は頭を掻きむしった。



しばらく広場で燃える死体の山を見て呆然としていたら、横に人が座った。

タツヤだった。

「モーゼルさん、残念でしたね」

炎に照らされて、タツヤの顔が赤く照らされている。

「・・・・ああ」

と、俺は短く声を返した。

正直、誰とも話したくは無かった。

「僕でよかったら話を聞きますよ」

脳裏に第三の魔王の最後の言葉が浮かぶ。


――あの人には気をつけたほうが良いですよ――


俺は、誰を信じれば良いのだろうか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 助っ人に命を救われたが、恩師をその者に殺されその後の 意味不明な行動に困惑し意気消沈、軽い疑心暗鬼に陥る クロガネ…、 たが、 がんばってクロガネ!まだ君には仲間や《大切な物》があるじゃな…
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