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鉄塊チートの異世界ジャーニー  作者: くえお
第二部  鉄の勇者、大陸をゆく
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第68話 ヤ人族 滅亡の真実

里を辞し、呆然としていた生活の中、モーゼルは真実を突き止めねばと考えた。

日記を翻訳してくれたヤ人族を研究する学者は、リチャー・タントンと言う中年の男だった。

彼の研究によれば、ヤ人族は魔神にそそのかされた可能性が高いと言う。


リチャーはフィールドワークを通じて、ヤ人の文化・文明を追っていた。

それは古代の神々の謎の一旦を現代に伝える資料だとも考えていたからだ。


モーゼルはリチャーを連れてヤ人の里を何度か訪れている。

モーゼルでは分からない何かを学者が見つけてくれることを、期待した。


初めて訪れた際、リチャーは興奮した様子で資料をいくつか持ち帰り、研究の材料とした。


モーゼルは、先祖を冒涜されたく無かったから「破壊行為はするな」と伝えた。リチャーも、モラルのある学者で、研究で先人の魂を穢すことなく、可能な限り、遺跡として保存するよう行動してくれた。

交流は2年に及び、やがて親睦は深まった。


ある日、リチャーがモーゼルに、ヤ人討伐隊の生き残りがいることを教えてくれた。


モーゼルがその男に暴力を振るわないことを条件に、リチャーはその男の居場所を教えてくれた。


ヤ人族の討伐隊の生き残りという男は、ヨーラスのドイルの外れ、岬の高台に住んでいた。

モーゼルが訪ねて行くと、男は目を見開き、わなわなと震えた。


ヨボヨボのシワを刻んだ、老人だった。


復讐に来たヤ人族に殺されると思ったのだ。


モーゼルは男が落ち着くまで待ち、穏やかな目で「話を聞きたいだけだ」と告げた。

しばらく沈黙が続き、老人は言った。


「あれは、嫌な任務だった」と。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


男は、かつてクリスティンの街で騎士団に所属していた。


ある日、数百の騎士が集められ、蛮族討伐に出ると告げられた。

この世界では、いまだに文明に属さない部族が多く存在し、アルメニアでもヨーラスでも、山間部や離島には独自文化を築くものも少なくは無かった。


時折、文化衝突とでも言おうか、事故のようなもので、殺した、殺された、奪った、奪われたと言うような小競り合いが発生する。

そうした時に討伐隊が結成され、部族を討伐に向かう。


近年では、そうした討伐も減っているが、都市の平和を守るためには、必要悪とも言える掃討作業であった。


老人は当時、下っ端で、討伐対象については聞かされていなかった。

山間に住む少数部族を討伐する。

危険な部族だから、見つけたら即殺して良いと通達されていた。


細く険しい道を登り、数日かけて村へたどり着いた。


老人が現場に着くと、それは凄惨だった。家々は焼かれている。

女子供見境なしに、突き刺され、焼かれていた。


あちこちで、固えなあとか、関節を狙えとか聞こえてきた。

その時、呻きながら、立ち上がった男がいた。


その男は今のモーゼルそっくりで、目を血走らせ、立ち向かってきた。

手負いながらもその強さは異常で、瞬く間に数人の兵士が生き絶えた。兵士はものの数秒で、首をもがれ、手足を砕かれ、喉を突かれ、死んだ。


しかし、すでに毒が全身に回ったヤ人の男は、すぐさま、その場で崩れ落ち、兵士の槍で胸を貫かれて死んだ。


念のためにと、目と耳を切り落とし、最後には火をつけられた。


その時、上官が「軟化薬が効くとはな。あの胡散臭い魔族に感謝せねば」とつぶやいたのを聞いた。


燃えた遺体を放置し、凱旋する。


女子供が数名は逃げたと聞いたが、追うまでもない。

そう判断された。


なぜなら、この辺りは崖と、尖った竹林の魔境。


ヤ人族を追えるような状況では無かった。

それに少数のヤ人を逃したところで、もはや命運は決した。


兵士の中で噂されたのは、魔族の関与。


ヤ人族が疎ましくなった魔族が、功名心に逸る上官を焚きつけ、里を襲撃させたと言う話だ。

ヤ人族の里には、ほとんどが老人、女、子供で、男性は少なかった。

ヤ人族の強さは、長きにわたり伝えられていたから、誰もが知っている。


騎士団とはいえ、たかが数百の人間で、ヤ人族に無策で挑み、勝てるわけがない。

どうやって村の場所を知り得たのか、どうやって村に入れたのか、軟化薬は誰が作ったのか、薬をどのようにしてヤ人族に与えたのか。


それらを手引きした魔族がいると考えると、問題は解決する。


魔族はヤ人と共に百年近く戦ってきた。いや、見方によっては、都合よく使い捨ててきたとも言える。


兵士達は、様々な立場で、いろいろな現場を見たのだろう。ヤ人族襲撃が成功した理由には裏があることを、誰もが何らかの形で知っていた。

だが、兵士たちはそれぞれに思うところがある。虐殺に加わったことを思い出したくなかった。ヤ人を討伐したと触れ回って生き残りに復讐される可能性もある。さらには新たな過酷な指示が続く。

そして噂はいつか忘れられた。


老人は震えながら、話を聞かせてくれた。

そそのかしたという魔族の詳細を問い詰めたが、それは分からないと言った。


モーゼルは、一族に思いをせ、寂寞せきばくたる思いがした。


一族は、強さゆえに滅んだのだろうか。

人間からも魔族からも疎まれ、良いように利用され、果てに数を減らし、そして絶滅した。


モーゼルはそう考えると、複雑な気持ちになった。

何が正しいのかすら分からない。あやふやな昔話。


俺はどう、生きるべきか。

その時、モーゼルは激しく悩んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


モーゼルが、その内容を拙いながら伝えると、手を止めていたマグナが激昂した。


「ふざけるな! モーゼル。実際に手をかけたのは人間ではないか! 魔族がどうのと、話をややこしくしているだけだ。お前はそそのかされている! その老人が罪悪感を紛らわすために作った作り話だ。話を聞いた俺が馬鹿だった。いよいよ死ね。愚かな弟よ」


マグナが目を見開いた。


光る眼。


モーゼルは、かわそうとするが、今度はダメだった。


モーゼルの頭蓋が吹き飛んだ。


天地がひっくり返るような衝撃。普通の人間なら即死だ。


「モーゼルさん!」

声がしたと思えば、何人かの護衛が、モーゼルの加勢に駆けつけていた。


「来るな、逃げろ!」

モーゼルが必死で声を上げるが、次の瞬間、駆けつけた護衛の頭が吹き飛んだ。

文字通りの瞬殺だった。


吹き飛ばされ、仰向けに倒れるモーゼルの胸元に、マグナが刀を突き刺す。

「さらば、わが弟よ、最後まで貴様は弱かった」

このままでは、このままでは、クロガネ含め、フライドチンキ隊百人が全て殺される。


させるか。

モーゼルは胸の刀を素手で握り、立ち上がろうとする。

モーゼルの右目から上の頭蓋は、ザクロのように裂け、動けること自体が奇跡。


マグナが目を見開く。

モーゼルは、右手でとっさに防ぐ。右手が吹き飛んだ。


左手のアンバーナックルを叩きつけ、刀を折る。

マグナが足蹴にして、モーゼルを突き放す。


ぐにゃりと曲がった刀を見て、怒るマグナ。

「貴様! 一族の秘宝を!」

弟の命より、刀が大事か。


があ、と吠えたモーゼルが飛び上がり、マグナの肩に噛み付いた。

頭蓋が吹き飛んだモーゼルが、肉を引きちぎる。


「貴様に勝ち目などない!」

噛み付いてくるモーゼルを引き離そうとするマグナの叫びとともに、遠くで轟音が響いた。


圧倒的な気配の元、何かが降臨した。


鬼気、それも息が詰まるほどの。


死に際ながら、モーゼルにはわかった。


それは、明らかにマグナより強い。恐ろしい何かだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


空中が割れ、巨大な”それ”が降ってきた。亀裂が青く光り、空が割れる。


真空の空間に閉じ込められ、死滅寸前の俺たちの前に。


突然。


それは現れた。


巨大な剣が真空すら断ち切り、その切先に優しいとも言える挙動で、ボーゲンの体を左右に割いた。


肩口に刀を受け、真っ二つになるボーゲン。


顔は驚愕に満ち、青い血を吹き出して、地面に倒れる。


ボーゲンが崩れ落ちると共に、真空が弾けて、息ができるように空気が戻った。


「な!?」


驚愕しすぎて、誰も声が出ない。


目の前に屹立する巨体を見上げる。

それは、鎧を着た巨人。


高さ数メートルある巨体の黒甲冑。右手に抱えた巨大な剣。


長さ3メートルもあろう剣は、無骨な細身の、だが相当な重量感を感じるゴツい銀色。


どくろの仮面!!!


あの日、オリハルコンの巨人から、俺を助けた。ドクロの・・・。


竜を象った巨大なバイクが森を割り、現れた。

しゃがんだ姿勢のドクロ仮面が、宙を舞う。


マントを翻して、その巨体を飛び上がらせ、バイクに跨った。

肌を突き刺すほどのエンジン音。


その異様に、俺は震えることしか出来なかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 人族はその力に恐怖し、魔族には厄介がられて 利害が一致しちまい 兄は(なまじ)人間の恐ろしさに触れ憎しみを増幅させ 弟は人の優しさだけでなく矜持や清濁を理解し 今に至る……分かり会えないね…
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